気付けば身近にあったけど、手にしてないとは知らなかった
感想、評価をいただきありがとうございます(*´∇`)
読んでくださる全ての方々へ感謝の祈りを捧げながら、本編第79話を投稿させていただきますー!
これからも皆様に楽しんでいただけると幸いです(*´∨`*)
前回のあらすじ
孤独な調理
みんなで食事
水を創るとハァハァする件
俺に対する日常的なプライバシー侵害改め、プライバシーの破壊が留まるところを知らないが別にカナデさんになら何を知られてもいいじゃないと開き直って早3分。いくつもの素敵な闇ポエムが俺の脳内を駆け巡り始めた。《傷つき倒れる彼らを見つめよ!彼らを救うために刃を手にするのだ!そして気付くのだ!血に塗れ刃を振り下ろす汝の手を振りかえれ!その汚れた手で何を守れるのk》ちょまっ!それ俺の黒歴史ぃぃぃいい??!いまナウレッツ進行形でメンブレ被害が甚大な模様・・・orz
情けも容赦も標準装備していないカナデさんにとって、俺の恥部とか痴態とかっていうのは興味津々でホットでヤングな情報になっているらしい。開き直った瞬間にそういう攻撃よくないと思うの。オプションで慈悲の心とかつけられませんか?ムリですか?叩かれてこそ喜ぶお豚様方と違って私の心は脆弱故に光の速さでメンホー確定なんですが。
羞恥心で真っ赤に染め上げられた俺の頬の熱が引く頃になってようやく寝坊助さんたちが起きてきた。テトにゃんニコハリンさんの順番だ。ミリーが全然起きてこない。もうスープも温め直したんですけど?仕方がないので抱っこして焚き火の前の席へと移す。膝に乗せてぎゅっとするのだ。はぁ~ちょっとだけ心が落ち着いてきたー。冷え切ったミリーの肌のヒヤッと感が心地良い。フーゥウ。
あ、別にセクハラとかそういうのと違うんですよ?ほら、なんていうんですかね?心がツラい時にペットと戯れるあの感覚っていうの?わかります?わかりますよね!わかっていただけると思うんですけど!アニマルセラピー的なアレですよアレ!と言い張りながら年頃の女の娘と言っていいのかいささか謎ぃタヌキをまさぐるまさぐる。まぐまぐまぐ。やぁらかい。
思った以上の抱き心地の良さが若干悔しくもあるが人肌恋しい時とペットが恋しい時に役立ちそうだ。悪くない。悪くないぞおおぉぉぉ!!そんなお膝の上のミリーが少しずつ暖かくなってきた。これはこれでカイロみたいで悪くない。もちもちするカイロ。売れそうだな。
「――――・・・・・・。」
?テトにゃんがじぃーっと見つめてきてるけどお腹減ったのかな?
「そんじゃ落ち着いてきたし、そろそろ飯にすっか。」「えっ!!ご飯?!」「ファッ!?」
ガバッ!!(←ミリー)
ビクッ??!(←俺氏)
餌に反応したミリーが急な動きを見せたせいで普通にビクッたものの、そこは臨機応変に対応出来るイカす系紳士である俺の素敵で優雅な有能さを見せつける場面だ!
「おおっふぅ!お、おは!おはようミリアリア!なかなか悪くない抱き心地だな!それに毛なみも良い感じだ☆」キランッ
爽やか且つ輝くほどに眩しい笑顔はメイドイン俺!更に密かな自慢である素晴らしく整った白い歯が映える煌めく!芸能人の命とも言えるマイトゥースが絶賛光源になるレベルのルクスをたたき出しているような気がしないでもない!流石は俺の歯元気な子!
「えっ?あえ?う、うん。ううん?お、おはよう?んん?うん、おは、よ?」
「おいおいミリー!ぽやぽやするなよミリー!さぁっ素敵な朝ごはんと洒落込もうじゃないっかっっ!な、ミリー☆」キラリンッ
「え?なんかソウがキモいんだけど?どうしたの?」
「オウ シット!ガッテム貴様!言うに事欠いて我を愚弄する気か!!グレイトでいい度胸ではないか!てかキモいとか言うなし普通に傷つくし!俺の柔らかくも張りと温もりのあるラブリーチャーミングなハートが傷ついたらどうしてくれるんだ!!」
「だいじょーぶじゃない?なんかあんたの心ってすっごく強そうだもん!」
「どうみても繊細だろゴラァ「ぶえっくしょーーい!!ぅうーーいぃっずずず。」ー・・ァ・あ?花粉症か?」
「えあ?らふんひょー?らんのころはは知らないけろ、、ずびぃっ。森の近くで夜営すると良くあるのよ。バルムさんと寝てた時はへーきなことが・・はっ・・!・・はぁぁっ・・・・!!!はぁっっっ!!!・・・・くちゅん。」
「勢い詐欺だろ!!もう、ぶわあああぁぁっくしょーーーーんェ・・・!!!って言ってほしかった。それくらいのポテンシャルあったよマジで!」
「何よそれ?くひゃみなんて勝手に出るんだからしょーがないじゃない!それより早くご飯にしましょ!あたしお腹ペコペコよ!」
「いやいやいやいや先に服着ろ服。どこの野生児だよ?」
「え?服?あ、また全部脱いでたの?どうりでスース―すると思ったら・・・でもいいわ!先にご飯にしましょー!」
バチ―――ン!!
「いったあぁ??!」
「ふざけたこと言ってると飯抜きにすんぞ!ほらこれ!すぐに着ろ!!」
ちょーどいいからと俺のキュートなお尻の下敷きにしていたミリーの服をグイグイと渡す。決してしわくちゃになったのを誤魔化そうとしてるわけではない!
「そんなことくらいで怒んないでよ!」
「そんなことって・・・。昨日も言ったがここに俺ら以外の冒険者とか来ても同じこと言うつもりか?」
「うぐっ!わ、わかったわよ・・・着ればいいんでしょ?着れば・・・。折角女子だけだから楽できると思ったのに・・・バルムさんみたいなことを・・・(ブツブツ)。」
渋々衣類を身にまとう裸族代表。こんなんじゃ最近の犬猫ペットの方が聞き分けよく服着そうだと思わざるを得ない。四足君達は自分で着れないけどさ。
《マスター、素直に身体を冷やしすぎていたことが心配だったと伝えたらどうですか?》
(・・・はっ?別にそんなこと微塵も思ってませんけど?)
《照れ隠し乙。です。カナデに内心がバレてしまわないよう思考の壁を作ろうとしていたようですが、完全に無駄な行為です。マスターの並列中の思考総ての声を網羅することくらい容易にできますので。・・・ツンデレないしはSデレ。》(ぼそっ)
(ちがっ!違うってカナデさん!それは言っちゃいけないヤツだから!べ、別にミリーがメチャクチャ冷えていようと青白い顔してようと全然!全然心配なんかじゃないし!そういうのと違うし!?)
《語るに落ちていますが・・・。長く共にいる間に情でも移りましたか?初日に殺されかけた以外では特に好感度を下げるようなこともありませんでしたし。》
(えっ?いやそれはないな。色んなとこで色んなタイミングで好感度下げまくってるけど?そろそろマイナス突破入るくらいだよ?)
カナデさんが変なことを言ってくるから一瞬焦ったがそんな簡単にデレたりしませんので悪しからず。俺×ミリーの展開はないないぷーくすくすwどこに需要あるんだよ男×動物って?コアすぎるわ!
《♂×♀の至極真っ当なカップリングに思えますが?肉体年齢的に考えても違和感がありません。それに、いつまでミリーを膝の上に乗せているのですか、マスター?》
「・・・おいミリー。そろそろ降りろ。」
「あー、そういえばそうね?ていうかなんであたしソウの膝に乗ってたのかしら?」
「お前が起きないから連れてきただけだよ。ほら、飯にするから座りなさい。」
「ふ~ん?よくわかんないけどわかったわ!あたしスープ大盛りで!!」
「器がちっちゃいので却下!食べ終わったらおかわりしなさい!」
ぶーたれるミリーを放置しみんなの朝食を配っていく。パンはスライスして軽くあぶったからサクサクに。少しは食べやすくする工夫を施すあたり俺氏有能説再度浮上。スープはお肉野菜キノコ類から出汁が出まくっててきっと昨日よりマシになってるだろ。
「さ、おあがりよ。」
実に自然な感じで俺が朝食を用意していることにこの時点で気付いたわ。んむ~、愛妹たちにはこれからちゃんと家事を教えていかなきゃだな。教養と共に考えていかなきゃいけないリストの上位に書き留めておく。
「はぁ~~~~あったまるわねぇ~。」
さっきまで寒さに震えていたタヌキがなんか言ってるが、冷えてるのはお前が脱ぐからだから同情の余地はない。
《マスターが不完全な馬車を用意したことに罪悪感を感じているのもカナデにはわかっておりますので。》
俺のマインドは常にカナデさんによって監視されているらしい。逃げ場はない。大魔王を相手にするよりも逃走が困難とかそれなんてマゾゲ?・・・orz
「このスープ1つとっても貴族並み・・・ううん、貴族の食事以上に美味しいんじゃないかしら?」
「え?このレベルでそんな絶賛されるほどなの?」
「あんまり自信はないけど、1回だけ奮発して少し高級なお店で食べた時はもっと質素というかなんというか。ここまで複雑な味じゃなかったのよね。あそこも下級貴族が来るお店だったみたいだし。」
「ソウの作るご飯はとっても美味しいの!匂いが違うの!」
「うん、そうね。匂いとか香り?が全然違うわね。」
「ふ~ん?匂いねぇ?」
「細かいことはわかんないけど、とにかく美味しいことだけはわかるわ!おかわりちょーだい!」
「はやっ!もう少しよく噛んで食べないと消化に悪いぞ?」
「いーじゃない!冷めちゃう前に食べたいのよ!」
「あ、ウチもおかわりほしいの!」
「えっと、私もいいかしら?」
・・・どうやら俺の話しは聞いてもらえないご様子だ。湯水の如く吸い込まれては消えていく。
「はく・・・もぐもぐ・・・もぐもぐ・・・んく。」
と思ったらニコだけはゆっくり味わって食べてくれてる。あぁ、それだけなのに心のササクレが癒されていく。
「ニコはよく噛んでて偉いな。」ナデリコナデリコ
「ん。おいし・・・はむ・・・から。」
微笑むニコがとっても愛らしい。俺のハートにトキメキがずっきゅんばっきゅんだぜ。はふん。
「てかなんで自分でよそわないの?もう調理済なんだから自分でやれと言いたい今日この頃。」
それもそうか!みたいな顔をした後にテトにゃんが代表してみんなの分をよそい始めた。流石は我が家の長女。ちゃんとやる時は気配りできる系にゃんこだ。ギリ及第点をあげよう。
思い思いの量を食べ、心地いい満腹感を腹に抱えた俺たちは手早く片づけをしてから再度森へとアタックを開始した。時に狩りを、時にハリンさんからのご教授(テトにゃん用の狩り教室)を、時に採取をと充実した時間を過ごしたりした。
そして、探知と索敵をカナデさんに任せっきりで暇・・・けふんけふん。カナデさんのサポートのお陰で別作業をする余裕が生まれたので『集音探知』を改良改良。ノイズを減らす機能を付与したりしてみた。
・・・付与したと表現するのはちょっと語弊があるか。実際にはカナデさんにお願いして要らない音に対して逆位相の音をぶつけてもらえるようにしただけだ。いつものようにカナデさんに頼りっきりだけどそれが俺の生きる術。
カナデさんと2人っきりで色々と試行錯誤を重ね、魔力操作を通して音波を形成することに成功。空気を特定の周波数にする方法あたりが特に苦労した。振動板はとりま仮仕様ってことで銅貨をちょろっと拝借して原型消失させちゃったけどバレたら犯罪なので誰にも言わない。俺とカナデさんだけの秘密だ。
これによりカナデさん主導で現実世界に影響を与えることができて感動!といいたいところだがこれもまた厳密に言うとちょっと違う。いい加減なのに細かい性格でごめんなさい。
スキル『並列作業』を使って俺のメイン意識とは別に並列された思考の中に限りなくカナデさんの指示に忠実且つ従順に従うだけのぱっぱらぱーであーぱーな仮人格を作り出したのだ。言われたことをこなすだけの機械みたいな、思考力を完全放棄した廃人的な人格だからもし万が一にでもコイツがメイン人格になったとき、俺という生き物は終わりを迎えるだろう。だってゾンビよりバカだもん。某マー〇さんの方が頭いいくらいにアホだじょ。
《カナデのマペットを創っていただきありがとうございます。マスターを通してという形にはなりますが、こうして自身の意思で外界に影響を与えるというのは不思議な感覚を覚えます。》
「マペットって・・・実体無いけどまぁでもそうか。俺が『集音探知』を発動してる間限定になっちゃうのは魔力の残量的な都合があるからごめんな?いつかパッシブにできるように工夫してみるから。」
単位時間当たりの消費魔力量的には軽いが、それでも消費し続けるのには変わりないのでいまはまだ常時展開ができない。俺の周囲を魔力で満たさないといけない都合上魔力吸収系の術式とも相性悪いし。せいぜい好条件下で数時間連続稼動が適正だろう。MPしぼり出せば10時間ちょっとくらいいけそうな手ごたえだけど。
《カナデとしては既に充分すぎると思いますがいつか可能であればお願いいたします、マスター。》
「おk任せてよ!道具で補助するかスキルで補助するかで多分できるし。ん~?てかさ、コレを応用すればカナデさん喋れるんじゃない?」
《・・・・・・・・・はい?》
「え?なんか変なこと言った?」
《・・・いえ、少々戸惑っただけです。ですが、言われてみれば確かに可能ではありますね。実行してみますか、マスター?》
「モチのロンロン!いってみよう!やってみよう!」
《かしこまりました。では・・・。》
「ブーブブ・・ブーブ・・・。ビ~イィービー・・・ウィー・・・。ドゥー・・・ドゥウウア"ァー・・あ"-・・・ぁー・・・あー・・--。コ・・・ココ・・・コレ。コレ、ヨリ。。。これより、カナデによる『集音探知』の応用実験を開始します。」
「おっ?いきなりなのに超うまくない??!ちょっと声低いけども!」
「だだだだれの声?!」
「ソウさんの方から聞こえた気が?いえ、それより少しずれてたような?」
「繰り返します。ただいま『集音探知』の応用実験を実施しております。」
「折角の機会なのに事務的すぎない?もう少し遊びがほしくない?」
「ちょちょちょちょっとぉ!ソウがやってるの?!ソウがやってるのよね??!」
「ソウ、この声がカナデさんの声なの?」
「う~ん、この声がカナデさんの声かと聞かれると返答に困るな?いちおう発声してるのはカナデさんなんだけど、カナデさんの声がこの声かって言われると微妙という他ないというか・・・。」
いつも俺の脳内で響いてるカナデさんの声はもう少し高い。それにここまで硬質じゃない気もする。でも似てる。似てるからこそ評価が難しい。やはりスピーカの素材が問題なんだろうか?もっと良い振動板を作らないとか。
「では、もう少し高く調整してみます。あーあーらーらーるーるー・・・この声ではいかがでしょうか、マスター。」
「大体合ってる!もう少し優しくて包み込むような、それでいて艶のある声だった気もするけど概ねそんな感じだ!」
「・・・作意が見えるような気がしますが、調整にご協力いただきありがとうございます、マスター。」
「すぐバレてつまらんな。少しは俺を疑うことなく信じてもらいたいもんだ。」
「残念ながらマスターの思考は大半が筒抜けですので。」
「その仕様がそもそものバグだと言いたい。俺限定とはいえ破格すぎる能力だよ。俺の心が容易く死ぬ。」
もしも俺以外の生物相手にも使えたらほぼ最強の類の能力だろう。俺もいつか読心とか身に着けられないかな?などと考えてみたものの、魂レベルで合体しないと使えないとかって制約つきそうだから考えるのをやめた。夫婦以上に密接で溶け合うように蕩け合い、自分以上に自身の奥深くまで繋がらないときっとムリだもんね。これは俺とカナデさんだけの特別な繋がりなんだとほくそ笑んでおくくらいでちょうどいい。
「さて、いきなりになっちゃったけど改めてみんなにカナデさんを紹介しよっか。声だけだけど、この声の主がいつも俺らをサポートしてくれてるカナデさんだよ。」
「ただいまマスターにご紹介いただきました、カナデです。カミクリ カナデと申します。改めて以後お見知りおきを。」
「とってもキレイな声なの!ウチ、テトラリアなの!カナデさんとお話ししたいことたくさんあって、聞きたいこともいっぱいあるの!」
「情報の共有は非常に大切です。是非ともお願いします。」
「んー。ニコも、よろしく。」
「よろしくお願いします。」
「カナデさんって、あのソウがいっつも話してるって言ってたあの?じゃ、じゃあ、お化けとかじゃないのね?」
「はい、カナデは魂を持ちません。故に幽霊などになることは有り得ませんのでご安心ください。」
「??よくわからないけどわかったわ!お化けじゃないならなんだっていいもの!あたしはミリアリア!これからよろしくね!」
「よろしくお願いします。」
「あ、あの~。み、みんなわかってるって感じになってるけど、カナデさん?って誰なの?」
「あー、ハリンさんには簡単に話してた気がするんだけどあんま覚えてないな。話してなかったっけ?」
「多分少しだけ聞いた気がするんだけど、たまにソウさんが独りで喋ってた時に実は相手がいたってことでいいのかしら?」
「独りじゃないよ!あんだけ独り言つぶやいてたら俺ヤバい人じゃん!電波すぎて怖いわ!」
「そ、そうだったのね。考えが表に出るタイプの人かと思ってたから。えっと、姿は見えないけどいるのよね?」
「うん、カナデさんは俺の眼を通して情報を得てるからハリンさんのこともちゃんと見えてるよ。」
「なんだかソウさんといると不思議なことがたくさんあるのね。知ってると思うけど、私はハリン。カナデさん、よろしくね?」
「はい、こちらこそよろしくお願いします。」
カナデさんの挨拶が非常に堅苦しい点以外はつつがなく紹介は終えられたと言えるだろう。若干冷たく感じちゃうかもしれないけど、電話越しとかだとこんな感じだった気がするし順当な方だろきっと。1人納得しながら視線を外すと何やら意識に残る物体がチラッと眼に入った。
「ん~?もしかしてあれじゃね?赤っぽい色の何かが生ってるっぽくね?」
ぼんやりと映るは赤い何か。ここからではまだ距離があるのではっきりとは見えないが元々森に来た理由と思しき物を発見した。
「そうそう、そういえばアレを目当てに来たんだったな。ぶっちゃけ忘れかけてたわ。」
「目的?目的ってなんだっけ?」
「リンジュの実?っていうのを採りに行くって言ってたと思うのー。」
「テト正解!正解!!テトにはスーパーヒト○君人形に似た松ぼっくりっぽい何かをあげよう!」
「う~?なんだか人見たいな形なのー。でも頭から何かがハミてる?のー。」
そりゃスーパーヒ○シ君は人形なんだからそれに似てるってことは当然そんな形になるよ。帽子の形状に合わせてるせいで頭の形がヤバいことになってるけども。
「そんでもって目的を忘れた憐れなミリーにはこれだ!残念賞にヤムチ○様っぽい何かを進呈しよう!!」
「何よこれ?髪が凄い長い人・・・みたいな形の木片?ヤム○ャってなに?」
「残念な人。」
「え?」
「残念な人。」キリッ
「・・・。」じとー
なんてヒドい目つきをするんだ。だがそれがいい!ヤ○チャ様にぴったりすぎる!わざわざ初期の○ムチャ様の形に合わせて削った甲斐もあるってもんだ。
「マスター、彼は(地球の)人間として最強に近い英雄です。そのような扱いは控えるべきでは?」
「そんなにすごい人なの?!それがなんで残念な人なのよ!!」
「何言ってるんだよ!確かに彼は強い!強すぎるくらいに強い!俺だって戦ったらすぐに負けるだろう。下手したら開始1秒ももたんかもしれん。でもだからこそ彼は残念なんだ!あれだけの戦闘力を持ちながらそれをアピれたことなどないに等しい!実に勿体無いお方なのだ!」
「ふ、ふ~ん?あんたより強いんだ?それならあたしにふさわしいわね!しょーがないから貰ってあげるわ!帰ったらショートソードの鞘につ~けよーっと!」
正しく意味が伝わらないこのもどかしさ。カユいところに手が届かない感覚に似てー・・はいないか。全然違った。うまく表現ができないけど、とにかくなんかもどかしい!しかも何故だか知らんがミリーが気に入ってしまったというのもなんかヤダ!
すっきりしない胸のもやもやを抱えながら赤い実っぽいものが生ってる場所に近づく。見てはっきりわかるくらいまで近づくと、甘酸っぱい香りが鼻に届いてきた。
「甘酸っぱい。んむ~。確かに甘酸っぱい香りなんだけどなんか思ってたのと違うな。絶対リンゴだと思ってたのに、これはどう見てもリンゴじゃないもの。」
赤くて丸っこくて甘酸っぱい。これだけの情報を得たらみなさんほとんどの人がリンゴを思い浮かべるだろう。俺もそうだ。しかも名前がリンジュの実。これでリンゴを連想しないヤツは相当なひねくれ者か人の話しをろくすっぽ聞いてない輩に決まってる。そう決めた。
「だというのに・・・この見た目。お尻のように割れた形状を持つ果実なんだけど、実に桃っぽくない?もはやそうとしか見えない。」
「はい。マスターの記憶にある果実の桃にも類似していますね。差異としては産毛のような物が生えていない点と、より赤の色具合が濃いといったぐらいでしょうか。」
「ソウはこれに似た果物を見たことがあるのね?なになにそれって美味しいのかしら?」
「まぁ、普通に美味いぞ?シャリシャリしてて香りがよくってな。色んなデザートに使われてたし、場合によってはご飯にも使ったりしてたっけ?」
「シャリシャリ?シャリシャリってどんな感じなのかしら?こっちの方じゃ採れたりしないの?」
「むーどうだろう?カナデさん、似たようなのでも採れたりしないの?」
「残念ながらこの地方にリンゴに類似する種は自生していないようです。北方の一部地域では栽培もされているのでいずれは口にする機会はあると思われます。」
「だってさ。」
「北っていうと『聖なる光の降る国』の方?うぇ~・・・あたしあっちの方嫌いなんだけどー。」
「ウチも・・・。」
「あぁーもしかしてこの間のキチガ〇銀蠅君とか頭膿んでる系宗教の?なら行商人からの流通品狙うか。俺もあいつら嫌いだし行きたくないもん。」
「あ、あんまり大きな声で『光神教』や『聖なる光の降る国』の悪口は言わない方がいいと思うけど・・・。」
「あれ?もしかしてハリンさんって『光神教』の人だった?」
「いえ、私は違うけどもし誰かに聞かれでもしたら厄介なことになるかもしれないから注意した方がいいかなって。」
「それもそうか。宗教家は色んな意味で怖いもんねー。」
カナデさんが周囲の警戒をしてくれてるから余裕で平気だろうけど、言うのに慣れちゃうとポロッと街中で出かねないから気をつけよう。特に心の底から嫌いな連中だからうっかり率も高くなりそうだし。
「気を取り直してリンジュの実食べてみるか。生食おkでしょ?」
「普通に食べれるわ!あたしは皮ごといくのがおススメね!」
「流石のワイルドさだな。じゃ、早速。」
もいだ実を軽く服でこすってからぱっくんちょ。じんわりと口の中に広がる果汁と甘さ。更に鼻へと広がる豊かな香り・・・が思ったのと違うぞこれ?ちょっとびっくりなんですけど?
「これ・・・モモはモモでもスモモじゃないか?!」
見た目はほぼ完全に桃のくせして味や食感がマジスモモ。押し寄せるスモモ感がパねぇっす。
「甘くて酸っぱくって美味しいの!」
「これよこれ!このリンジュの実はアタリだわ!すっごく美味しい!」
「私は皮が苦手だから剥いてから・・・。」
「んー?んー・・・?」
俺のツッコミ華麗にスルー。共感できないだろうから別にいいけどさ。どうやらニコ的には美味しいかどうか決めかねているようだ。酸っぱいの苦手なの?
「ニコ、あんまり得意じゃないならムリに食べなくてもいいんだよ?」
「そうよ!あんまり好きじゃなかったらあたしが食べてあげるから安心しなさい!」
両手にリンジュの実を持ったまま、さらにニコの実を狙う貪欲系女子の姿がそこにはあった。意地汚いな。
「んー・・・。」
「もしかしてニコちゃんも皮が苦手なのかしら?こっちの方食べてみない?」
「んー。はむ・・・じゅるるり。むぐむぐ・・・ん?ん!んん!」
「やっぱり。どうやらニコちゃんは皮が苦手なだけだったみたいね。」
先程とは打って変わってハムハムと召し上がるニコさん。そんなに皮剥くと違うのかな?物は試しと俺もやってみるか。
「えっ?!全然違う!皮剥いただけなのに柔らかくなって雑味が薄くなった!!」
「ウチもやってみるの!あ、もう食べちゃったから新しいのに・・・んしょっと。ここを剥けばいいの?――――っと。はむ・・・んーー!?うんうんんあんおー!」
「こらこら、口に物を詰め込んだまま叫ぼうとしたら危ないからやめなさい。ぶはって出ちゃったら大惨事だからね?」
どうやらテトにゃんも皮剥いた方が好みらしい。これで4対1だ。どういうことだ?
「ミリーは皮有りが好きなんだよな?なんでだ?」
「えっ?だって皮まで食べた方がお腹いっぱいになるじゃない?」
「マジでか。」
聞くだけムダだった。味覚よりも腹を膨らませることを優先されてしまってはぐぅの音も出ない。こいつとはそもそもの価値観が違うということがわかった。
ちなみにリンジュの実はもいでから日持ちがしないことで有名らしく、収穫から数時間も経てば真っ黒になって食べるととても不味くなるらしい。何それ怖い。
どうやら急速というか劇的悲劇的に酸化するらしく、天日干しにしても塩漬けにしてもダメなんだとか。ならばそこは魔法で解決じゃね?とばかりにやってみた。
「前に焚き木を作るのに使ったのでいけんべ。『生活魔法』『乾燥』。」
できる限り水分のみを対象としてガンガン乾燥させる。シューシュー言いながらシワシワになっていく様はやはり怖い。マーグル婆さんのほっぺたみたいになっていく。
「こうやって蒸発は比較的簡単にできるのに、水を出すのが難しい理由はなんなんだろうな?」
「蒸発に必要なのはクラスター構造の破壊のみですので空気に触れている部分から蒸発させれば比較的容易です。水分子の加速のみで条件が達成できるのも大きな理由ですね。」
「ちょっ、ちょいまち。クラスター構造ってなんぞ?」
「マスターの知識の中にありましたが?」
「・・・いや、全然さっぱ知らんけど。もうそこら辺は神(笑)に埋め込まれた知識じゃね?俺覚えてないっつーか元々そんな知識知らないもん。なんか俺に色々埋め込んでたじゃんあいつ?あれじゃないの?」
「失礼しました。現在マスターの元々の知識とあの御方が埋め込んだ知識の線引きがあいまいで判断がつきません。そこまでマスターが否定するということは、もしかしたら与えられた知識なのかもしれませんね。」
「まだ俺に馴染んでないのか・・・。てか馴染む気配が一向に感じられない。もしかして知識の継承失敗してんじゃないの?」
「その可能性は十分に有り得ます。ですが検証は難しいでしょう。」
いままで特に意識してなかったけどどうやらそういうことらしい。膨大な情報を頭だか魂だかに埋め込んだみたいなこと言ってたし、それのせいでよくわかんない不具合とか起きたらマジ許すまじなんですけど。
「はぁ、検証できないことはいま考えても仕方ないか。つまりは表面から次々に乾燥させていけば更に楽になるってことだろ?んで、逆に水蒸気を液状に戻すのに必要なのは水分子の動きを抑え込んだ上で水素結合させてクラスター構造を強化すればいいのか?」
自分で言っててわけわからんけど多分きっとこれであってるハズだ。変な話し、地球じゃ間違っててもこっちでは正解・・・なハズ。自信ないけど。
「てことは、今朝失敗した理由は空気中の水分子を押し固めて無理矢理水にしたから大変だったってことか。」
水分子同士が結合しやすいように運動エネルギーを奪って抑制し、結合させた上で再度蒸発しずらいようにすればいいってことならなんとかできそうだな。
「あらかじめコップに少量の水を入れておいて、この液状の水と水分子を結合させるイメージ。あとは水分子の運動エネルギーを抑える代わりにコップの水に移しちゃおう。そうすれば水を生成すると同時にお湯が作れそうだ。」
お湯じゃなくて水が欲しい時は運動エネルギーを他に移すか大気中に放出するかで調節しないといけないけどそこら辺はそんなに難しいことじゃないだろ。
「『生活魔法』『集水生成』。」
ごぽ・・・ごぽぽ・・・・ごぽごぽごぽぽぽぽぽ
手にしたコップの水がドンドン増える!これは面白い!しかも今朝よりもっそい楽チンだ!なんかの儀式みたいに水が増えてくぞ!どうやら俺は強化系だったみたいだな!(ウソ)
「でもコップ一杯分くらいが限界かぁ。」
コップ一杯分になみなみくらいになったら急激に勢いが衰えてきた。理由は簡単。空気中の水分が枯渇してきたからだ。何故なら空気に含まれる水分なんかたかが知れてて、1立方メートル当たりの水分量なんて数十グラムしかないんだもん。詳しくは飽和水蒸気量でググってくれ。
「周囲の空気が流れ込んでくるのは、ここら一帯の湿度が急激に下がったからか。」
空気の内包物格差によってここが谷になってしまったようだ。しばらくしたらまた水を生成できるんだろうけどちょっと時間と労力がかかり過ぎだろこれ。あんまり実用的じゃなかったなー。
《解放条件を満たしました。『生活魔法』に関する情報が、該当の階位までに限り解放されます。》
「・・・・・・はいっ?」
久々のニセカナデさんの声を聞いたかと思ったら、告知対象が『生活魔法』だった件。そういえばまだスキル化してなかったっけ??
お読みいただきありがとうございます。
ここのところソウ君がミリーに優しいフリしてやらしいことをし続けていますね。
これが彼なりの(殴られたことに対する)報復なのでしょうか。器ちっちゃ。ゲスいですね。
セクハラするにしてももっと堂々と主人公然としていてほしいものですね。それはそれで許しませんけど。




