サイドストーリー 受付嬢の憂うつ
本編ガン無視してサイドストーリーが2つあがってしまいました。
完全にやってしまった感がありありです。
反省もしてます。でも後悔もしてます。
本編書けばよかったですが、一応本編の次話も6割りくらいは書けてますので明日あげます!ごめんなさい!
―――ある日のギルドにて―――
「あ、ミレーせんぱーい!おはようございまーす!」
「おはようリーフ。今日はどうだったかしら?」
「今日もいつも通りにぎやかでしたよ!あ、でもそういえばブデノードさんに捕まったのに無傷でやり過ごした新人さんがいましたっけ?」
「あら・・・ブデノードさん、また悪い癖が出たのね。はぁ・・・以前みたいに治療費を払えばどうにかなるってご時世でもないからいい加減止めなくっちゃダメね。厳重注意で聞いてくれたらいいんだけど。あとでロゾリンさんに相談しておくわ。
あ、それで?その新人君が大丈夫だったってこと、はかなり腕が立つってことなのかしら。」
「いいえ!むしろ線が細くて荒事なんかまったくできそうにない方でしたよ!なんでも薬草とかの素材系だけ採取するつもり?だとかで登録って言ってましたね。あ、あと女性でした!スゴくキレイな黒髪の!」
「・・・むしろブデノードさんがいつも以上に衝突しそうな感じがするわね。」
「そうなんですよ!例の大剣抜いちゃってましたし。いくら『弱体化』がかかってもあれじゃあって思ったんですけど、ヨハンさんが止めてくれたんです!お陰で助かりました~!」
「ねぇちょっとリーフ?その話しぶりだとあなた、止めに入らなかったように聞こえるんだけど・・・まさか」
「あっ!?い、いえ!ちゃ、ちゃんと私も止めに入りましたよ?!もちろんじゃないですか!当たり前ですよ!ででででもですね?ブデノードさん止まってくれないどころか聞いてもくれなくって、それで仕方なくヨハンさんがですね!」
「確かにブデノードさんならあり得るわね。けどまぁ、ギルド内での揉め事はしっかり止めないとダメよ?もし他に人がいれば頼んででも止めに入ること。いいわね?」
「・・・はーい。次からは頑張ります。」
眼を泳がせ視線を合わせようとしないリーフを見て、ミレーは深くため息を吐く。ブデノードさんと同じで先は長そうね、と小さく呟いた。
―――別の日―――
「―――てか2人ともサブマスに呼ばれてるんでしょ?俺、そういうのに絡まれたくないからもう行くね!魔石、換金しといて!ちなみにコレ、デカい方の牙ね!よろしくバイバイ!また来るよ!」
早口にまくし立てるソウを見つめるリーフとミレー。頭が追いつくよりも早く<ピクシー・ゴブリン>と<ウォー・ピクシー・ゴブリン>の魔石をテーブルに残したソウが足早に相談室から逃げていく。
「ま、待って!まだ話しは終わって・・・って、振り返りもせずに。」
止める声も虚しくソウの姿は見えなくなってしまった。
「魔法でゴブの集団を・・・ねぇ?作り話にしては突拍子もない話しだったわね。」
「ミレー先輩はさっきの話しは虚言だと思ってるんですか?」
「当たり前よ。ウチにも魔法を生業にしてる冒険者はいるにはいるけど、数が少ない上にあんなに若くないのは知ってるでしょ?魔法の習熟にはそれだけ時間もかかるものなのよ。」
特にこの街の中では、とつけたすミレーはゆっくりと魔石を数え始めた。
「それに魔法関連の装備も身に着けていなかったみたいだし、ホントになんなのかしら?あの子。」
「で、でも、『宣言宣誓』の魔法具では犯罪歴はまったくなかったんですよ?アレの判定って嘘も入るじゃないですか!」
「アレの宣言内容では人の命や財産に関係する範囲って言葉が入ってるじゃない。これくらいの嘘なら指定範囲外よ。」
「いえ、あのーですね、ソウさんはその宣言内容も言ってくれましたけど、その前に過去に一切の犯罪はないって宣言されてましたけどぉ・・・。」
「・・・なんですって?」
「ひゃっ?!せ、先輩!眼!眼が怖いです!」
「そうさせてるのはアナタでしょう?」
「うぅ・・ごめんなさい。でもですね!私が説明するより早くに宣言しちゃったソウさんがアレなだけで、私だってボンヤリしてたわけじゃないんですよ?!」
「言い訳はあとで聞くわ。それにしてもどういうことかしら?本当にこの数のゴブを短期間というよりも短時間で仕留めたの?」
「やっぱりソウさんってすっごい魔導師様なんじゃ・・・。」
ドンドンドンッ!
「リーフ!ミレー!いつまでこもってるつもりだ!もうすでに冒険者は出て行ったと聞いたぞ!仕事をサボる口実にするのはいい加減にしないか!」
「「はい!すぐ行きます!」」
サブギルドマスターに怒られ飛び出す2人。その2人を睨み続ける彼の瞳は鈍く光っていた。
―――更に別の日―――
「おう、リーフの嬢ちゃん!ちょっとこいつの処理手伝ってくれねぇか?」
「あ、はい。大量持ち込みですか?」
「いやいや!大物の方だ!持ち込んできたのは黒髪のお嬢ちゃんなんだが、確かソウって名前だったか?なんと<マーダージャック・ウルフ>の持ち込みに<丸蜂>も複数でな。解体は十分な状態なんでサクッとやっちまおうと思ってな。」
「・・・ソウさん、ですか。」
「ん?なんだお嬢ちゃん?知ってるヤツだったか?」
「まぁ、そうですね。ちなみにですが、討伐をされたのはどなたかお聞きになったりは・・・?」
「いんにゃ?あまりにもいい状態だったんで軽く聞いてみたがはぐらかされちまったな。解体は人に頼んだみたいなこと言ってたと思うが、討伐の方もきっと凄腕のヤツらに頼んだんだろ?大分状態がいいぞ!アレわ!」
「そう・・・ですか。」
腑に落ちないままに手早く買い取りの処理を終えたリーフはミレーにこのことを相談しにいった。
「わかったわ。」
細く長い息を吐いたあとにミレーは短く言葉を返した。眉間のシワを揉みながら考え込んでいる様子から、納得がいっていないことがよくわかる。それもそうだ。私もそうなんだからとリーフは思った。
「それで、明日また来るでしょうからその時は、ぜっ・た・い・に連れてくるのよ!ソウさんが何を考えているのかきっちりと聞かなくちゃいけないわ!」
「は、はい!・・・で、でも、なんでそんなにソウさんに拘るんですか?もし仮に、誰かに頼んで素材だけ持ち込んでてもギルドとしては問題はないと思うんですけど・・・?」
規定上は問題だが一部そうしたやり取りをしている者はいるし、それで問題になるのは盗賊などが絡んで活動資金としている場合くらいなもの。今回は関係がないと首を傾げるリーフ。
「はぁ・・・リーフ?アンタももう少し考えなさい?もしソウさんが本当に申告偽証をしてるだけならまだいいわ。いえ、よくはないんだけどその程度なら直接ギルドに来れないキズ持ちと繋がってるだけでしょうから。でもね、逆にソウさんが言ってることが真実で、単独でこれだけの戦果を出せる人物ならしっかりと考えていることを知らなきゃ危ないのよ。」
「?どうしてですか?ソウさんがお強かったら疑問も全部解消できていいことのような気がしますけど?」
「・・・<マーダージャック・ウルフ>はメタリカーナ近辺で最強の部類のモンスターよ。それを苦も無く倒せる人物が何処から来て、何を目的にしてるかも知らないでアンタは平気でいられるのかしら?
普通それだけの力があれば他所のギルドでそれなりのランクにいるか、ランクアップを断り続けるにしても少なくともギルドへ登録はしているハズよね?」
「そ、そうですが。」
「それに、私の知り合いや伝手で聞いてみた限りじゃあの子、この街の他の冒険者や戦える力を持った人に接触してないみたいなのよ。もし他の人に頼んでるならそれだけの戦力がこの街の近くか、人知れずどこかに隠れてることになるわ。そんな武力を隠しておくなんてロクな理由じゃないと思わない?」
「言われてみれば確かにそうですけど、ソウさんは悪いことはしないと思います!まだそんなお話ししたことないですけどいつも良くしてくれますし、むしろこっちがご迷惑かけちゃってますよ?」
「迷惑なんてかけて・・・いえ、呼び出すと露骨にイヤそうにしてたわね。でもそれだって必要最低限しかしてないわ。」
少し考えを改めかけたが、首を振ってそれを制する。
「どちらにしてもロゾリンさんにも相談して今後のことを考えましょう。この街に、ギルドに害がないとわかればいいだけだもの。明日はしっかりと腰を据えて話しをするわよ。」
それだけ決めると席を立ち、ロゾリンことサブギルドマスター(以前怒らせたのとは別である)を探したがこの日は会えなかった。他の職員に確認したところオオテ商会にて備品の仕入などについて交渉をしにいったということだった。
「仕方ないわね。明日、改めてロゾリンさんに相談するとしましょう。」
「そうですね。ソウさんとお話ししてからでも遅くないですし。」
「あ、そうだ。ねぇリーフ?明日私は非番だから相談室で待機してることにするわ。ソウさんを見つけたらなるべく静かに連れてきてちょうだいね?あまり騒がしくするのは好ましくないから。」
「もちろんです!」
「いちおう先日のゴブの情報を確認する名目で呼び出した体にするつもりだしね。できればソウさんにも討伐に参加してもらって実力を見られたらいいんだけど・・・。」
「任せてくださいミレー先輩!」
―――翌日―――
大声で騒いで注意を集めたリーフがソウさんを連れてきてくれた。ちゃんと注意をしたハズなのにこの子はもう~~~・・・。
気を取り直してゴブの討伐の話しを振ったが軽く断られてしまった。どうも討伐依頼は来ていないとのこと。これは、そもそもソウさんのランクが低いままだったことを失念していた私のミスだから仕方がないわねと割り切るミレー。
それにやっぱりギルドランクを上げることにも興味がないらしい。申請も出す気はないと言われてしまえば私にはどうすることもできない。受け答えは丁寧な部分もあるけど、どうにも反応が冷たく感じてしまうのはこっちがしつこくしているからなんだろうと思う。現にソウさんはそう言ってる訳だし。
本当はもっと色々と話しを聞いておきたかったけど、ソウさんが連れていた2人の奴隷に話しが移った途端にソウさんの雰囲気が変わってしまいそれどころじゃなくなってしまったのも痛かった。紹介された時は笑顔だったけど、眼が笑ってなかったのよ。
「とりつくしまもなかったわね。」
「そう、ですね。」
それにあまり呼び出しをするなと強くはっきり言われてしまったからにはこうして強引に会って話す機会を持てそうにないわね。
「次はどうやって時間を作ってもらえばいいのかしらね。」
「こうなったら普通にソウさんと仲良くなる以外ないんじゃないでしょうか?!」
「それができれば何よりだけど、伝手もなければ宿もわからないわよ?」
「あ、いえ!ソウさんは多分『防壁の憩い宿』に泊まってますよ!」
えっへんと胸を張るリーフ。憎たらしいことに大きく弾むソレを叩きつけたくなる衝動をなんとか抑える。ダメよ。ツッコんだら私の敗けよ!
「それは良い情報ね、リーフ。貴女もやればできるじゃない?」
「えへへー!だって、私があそこをおススメしましたから!」
バッチ―――ン!!ブルンブルンッ!!
「いひゃーい?!!」
「なんで黙ってたのよ!大事なことよそれ!!」
その後、でもぉとかだってぇとか言い訳を繰り返すリーフの胸をはたき続けたが、イライラもストレスも発散されることはなかった。都度揺れる胸のせいじゃないと思いたかったミレーであるが、途中からリーフの顔を見ていなかったことだけは間違いない。
―――また別の日―――
「じゃあリーフ、『防壁の憩い宿』にいってくるけどもしその間にソウさんが来たら呼び止めておくのよ。」
「はい!任せてください!」
「・・・返事がいいのが逆に不安になるわね。いい?ここから絶対に離れないようにするのよ?もしお手洗いに行きたくなったらキンジルかトトックに頼みなさい。あの2人もソウさんの顔覚えてるみたいだから。」
「だいじょうぶです!さっき済ませましたから!」
この子の素直な所は評価してあげたいんだけど、年頃というかすでに結婚適齢期なのにこの幼い感じはどうにかならないのかしら?不安しかないけれど外で交渉となるとちょっと任せ辛いし仕方ないと思って行くことにしましょう。
そう自分を説得しミレーが去ってから間もなく、ギルドの前を通り過ぎようとしているソウの姿を発見したリーフは慌てて声をかけた。
「あー!ソウさん!ソウさーん!ちょっと!あ、あ、あ、い、行かないで!行かないでください!あぁ行っちゃう!あ・・・あ・・・あー!ミレーさんがここ動いちゃダメって言ってたけどソウさん行っちゃうし、どうしよう?!ソ、ソウさーーん!待って―!!」
はぁはぁはぁと息を荒げるが既にソウの姿は見えなくなってしまっていた。
「ど、どうしよう・・・ミレーさんに怒られちゃう。」
間もなく帰ってくるであろうミレーにこのことを伝えるべきかどうか悩みに悩み、黙っていることに決めたがすぐにバレてメチャクチャ怒られた。どうやら他の職員に告げ口をされたらしいことがあとになってわかった。
「黙っててくれたらよかったのに。」(ぼそり)
「何かいったかしら、リーフ?」
「いえ!なんでもありません!」
それから暫くソウの足取りはつかめなかった。宿にも帰らずギルドにも来ない。もしやミレーが宿に行ったことがバレて警戒されているんじゃないか?そんな不安が2人を襲う。
「・・・探られて姿をくらませるなんて怪しすぎるわね。」
「でも、キンジルさんに聞いた話しでは『城砦の矛』に依頼を出したらしいですよ?内容はちょっと確認できませんでしたけど。」
「規定上見ることはできないのは仕方ないわ。それよりもドコでバルムさん達と知り合ったのかしら?滅多に街にいない彼女たちと街中で知り合うチャンスは限られてるハズだけど。前々から知り合いだったとか?」
形の整ったアゴ下に指をあてがい上を見つめるミレーがこぼすが、正解はわからなかった。まさかミリーが暴力事件を起こしたことがきっかけとはわかるハズもないことだが、ソウへ対する疑問は解消されることなく積み上がっていく。
だがソウを呼び止めるのに失敗した日から6日後、予想もしないところからソウの情報を得ることができた。
「それ本当ですか?!」
「あぁ、この間の偵察ん時拾った冒険者のことだろ?俺様は前に会ったことなんざ覚えちゃいなかったがアイツらが覚えてたからな!黒髪のお嬢ちゃんなら俺様たちが運んでやったぜ!」
ゴブの偵察の際に冒険者を保護した話しは聞いていたが詳細は確認していなかった。更に詳しく聞くとソウはかなりの大怪我を負ってしまい、街に着くなりどこかに運ばれていったとのこと。病院かと思ったがギルドに連絡が来ていないことからその可能性は薄いとはミレーの弁。
「これは俺様の勘だが、あのお嬢ちゃんは簡単にくたばるような玉じゃねぇな!かなりの数のゴブも片付けてたのもあるが、それになんつーか、森の中で見た時にそんなこと思ったぜ!」
ブデノードの説明からは言いたいことは何もわからなかったが、ソウが森の中で戦っていたことだけは伝わってきた。
「それより偵察の報告の件だろ?トメズ!報告してやってくれ!俺様は酒でも飲んでくるからな!ほれおめぇらもさっさと来い!久々の酒だ酒ぇ!」
もう少し詳しく話しを聞きたかったがブデノードはすぐに食堂へと行ってしまった。目の前にいるトメズも報告だけ済ませたらすぐに行ってしまうだろう。
「―――ということで、以前報告した巣以外はなさそうでしたね。廃村のような物は見つかりましたが、いまは何も住み着いたりはしていなかったので焼き払いました。報告は以上です。ちなみに、あのソウという女性のことで何かありましたか?」
予想は簡単に裏切られ、何故かトメズさんからソウさんの話しを振ってきた。
「いえ、実はいくつかお聞きしたいことがあったんですけど、ソウさんにはちょっと避けられてしまっていて・・・。」
「ギルド職員を避ける、とはまた穏やかじゃない話しのようですね。」
「あ、いえ。お聞きたいことはそんなに大したことじゃないんですけど、ちょっとこちらがしつこくしてしまって。多分嫌われてしまったんじゃないかと。」
「ちなみに聞きたいことはどんなことで?私にも協力できることかもしれませんし。」
「ありがとうございます。でも本当に大したことじゃないのにトメズさんはお気になさらないでください。」
いちおうミレーさんには内密にと言われていたのを思い出してお話しはここまで。トメズさんが手伝ってくれたら心強いですが、ミレーさんに怒られるのはこれ以上はちょっと・・・ですね。
「まぁ、気が向いたら声をかけてください。同じギルドの仲間ですからね。協力できることがあればいつでも。では。」
いつもより少し饒舌な感じのトメズさんはブデノードさんたちを追いかけて食堂へと歩いていった。あとでミレーさんにも相談しましょう。もしかしたらトメズさんも一緒に探ってくれるかもっていうのも伝えないと!
その夜報告を終えたリーフはミレーに怒られていた。軽々しく周りにわかるような行動はするな、と。
「ちゃんと協力断ったのにぃ。」(ぼそ)
その言葉がミレーに届いてしまい、その日は更に怒られることになったのは言うまでもない。
―――2日後―――
またミレーさんに怒られてしまった。久しぶりに会ったソウさんが元気そうだったのでつい呼び止めることを忘れてしまったからなので完全に自業自得なんだけど、ミレーさん怖いです。
あんまり怒るとシワが固まっちゃ・・・いえなんでもありません。つい出来心で思っただけです心の中読まないでください!
「今回のソウさんの用事は、ブデノードさんたちに救助のお礼してただけみたいですよ?」
「ゴブの巣の偵察依頼で偶然救助したって話しよね。報告を聞いた時は全身血塗れですぐに意識を失ったって聞いてたけど、もう怪我はいいのかしら?」
「なんでもブデノードさんたちが大袈裟だっただけで大したことはなかったそうですよ。大きな怪我もなさそうでしたし。あ、でも少しだけ痩せてたような?ダイエットですかねぇ~?」
「・・・怪我の後遺症だと思うわよ。きっと食欲が落ちてたとか熱が出たとかあったんでしょう。大きな怪我や過度の疲労から体重が落ちるのはよくある話しよ。」
「それはなんとも羨ま・・・あ、いえ、お怪我されてたんですもんね!そんなこと思っちゃいけないのはわかってるんですけど最近ちょっとこの辺のお肉がですね・・・えいっ!えいっ!」
ぷにぷにと脇腹のお肉を摘まんでみせるリーフの表情は真剣だったが、それがかえってコミカルに見える。
「スタイルなんて気にしてないと思ってたけど、急にどうしたのかしら?」
「ミレーさんひどいですよ!私だって女の子ですから!最近ちょっと食べすぎちゃって気にしてるんですよー!さっきソウさんにもお腹辺りを見られてた気がして・・・太ったって思われたんじゃないかと・・・。」
「ソウさんに?あなたカウンターに座ってなかった?」
「座ってましたね?」
「それじゃお腹見えないじゃない?」
「え?・・・あ、あれ?そうでした!あれれ?じゃあなんでお腹見られてたって感じちゃったんでしょう?」
きっともう少し上を見てたんだろうと思ったが、その理由が悲しくて少しイライラして言うのをやめた。なぜならミレーもよく見ているからだ。
「持てる者の余裕かしら・・・。」
同じスレンダーな者同士のささやかな共感を意識して少しだけソウと近づけた気がしたミレーだった。
―――翌日―――
「いよいよね。」
「はい!ようやくゴブの巣が片付きますね!皆さんお怪我されないといいんですけど。」
今日はかねてより計画されていたゴブの巣駆除作戦が実行される日だ。召集された冒険者はほとんどがEランクかDランク。率いる監督役に元Cランク冒険者だったギルド訓練所の教官であるゾンゼがついている。
現在メタリカーナは過去に類をみないほどの冒険者不足である。特に高ランクの者ほど召集が難しい。故に数を頼りにしたて声をかけた。けれど、それにも予想以上の時間がかかってしまったがなんとか人数は十分に集まったらしい。
「ホントなら高ランクのパーティーで頼んだ方が被害が少なく済むんでしょうけど、これ以上放置するとゴブの数が増えちゃうから仕方ないわね。」
「いまの時点で50匹くらいでしたっけ?集まって下さった冒険者さんたちが36名なのでそんなに難しくないってゾンゼさんは言ってましたけど。」
「Fランクの駆け出しならともかく、Dランクまで入ってるから大丈夫よ。本来ならDランク3~4パーティーくらいで十分なくらいだもの。まだ若いEランクの練習にちょうどいいってことだと思うわよ。」
「それなら安心ですね!」
安堵の表情を浮かべてから自身の両肩をなぞり両手を組んで額に当てる仕草をするリーフ。
「全知神様の御慈悲が賜れますように。」
「おおげさねぇ。」
「私には祈ることくらいしかできませんからね。それに、この間Eランクに上がったばかりのモズ君たちのパーティーも参加してますから。」
「あの子たちもうEランクになってたの?確かあなたが登録担当してからまだ4ヶ月くらいじゃない。随分と頑張ったのね。」
「それはもう!毎日毎日依頼を受けてましたから!5人でダンジョン行くんだっていつも言ってますよ!」
「それなら私も祈っておかないとね。彼らが良い経験をできますように。」
リーフは首から下げたペンダント用いて簡略式の祈りを捧げた。それから少し経って。
――ドタドタドタドタッ!!
「あ、いた!リーフ姉ちゃん!」
「あれ?モズ君たちどうしたの?まさか遅刻して置いていかれちゃった?」
「違うよ!今回の依頼中止だって!ゾンゼ教官に言われて伝えにきたんだ!」
「えぇっ?!ど、どういうこと?」
「それが―――。」
モズたちの話しによると今回の討伐対象は既に駆除されてしまったとご領主様の末の御長女様に言われたらしい。なんでエリザベート様が?と思ったが、もしかしたら騎士団が遭遇してしまったのかもしれないと思い直し続きを聞く。
しかし、どうやら誰がやったかはわからないがとある御仁という方が事を成してしまったらしい。とある御仁さんなんて知らないと考えていたらミレーが「ソウさんかも」とこぼしていた。
「それで、いちおう事実確認のタメに森の広域探索をすることになったから俺たちも行ってくるよ!巣は潰せても残党がいるかもしれないってゾンゼさんも言ってたし!」
「うん、それならしっかりと頑張ってくるのよ!あ、でもちゃんと先輩たちについていかないとダメですからね!東の森はたまに行方不明者が出るので有名なんだから!」
「わかってるよ!それじゃ行ってくる!」
――ドタドタドタドタッ!!
来た時と同様の音を立てながら走り去っていく彼らを見送る。広域探索なら先輩冒険者についていけば大きな危険はないハズだ。ふぅーっと胸をなでおろすとミレーが若干不機嫌そうにしていたのが気にかかる。
「ミレー先輩?」
「なんでもないわ。それより、そのとある御仁っていうのが気にかかるわね。御仁たちじゃなくて御仁。つまりは1人かそれに近い少人数だってことなんだと思うんだけど。」
「あ、それでさっきソウさんかもって思ったわけですね?」
「えぇ。でもいくらソウさんでも巣を駆除するってことはないわね。なにせ相手は50匹。ソウさんがどれだけ頑張ってもムリね。」
「そうですね。もしかしたら近隣の領地から来てくれた騎士の方々かもしれませんよ?たまに街道警備で近くまで来られますし、ちょっと力が入って森の中まで入っちゃったのかもしれません!」
「それもないわね。というより、近隣の騎士が東の森まで入ってきてたら違う意味で大問題よ。領域侵犯もいいところよ、ソレ。」
その後あーでもないこーでもないと議論を交わす2人。いい加減のどが渇いたとミレーが席を外してから時を置かずにソウがカウンターに現れた。
その際に冗談交じりで今朝の騒動の件で来たのかと問いかけたら、それも含むと言って大量の魔石と素材を押し付けられた。それなりに余裕を持って作られているカウンターが埋め尽くされている。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・しょ、少々お待ちください。」
そう言うのが限界だった。早くミレーに相談しなければ!数がおかしい!それにゴブの巣に関係ないものまで沢山ある!なんで?!どうして?!ソウさんは騎士団の人なの??!
「ミ、ミレーさん!ミレーさーん!!」
ドンドンドンドン扉を叩くが一向に扉が開く様子がない。
ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ!
「ミレーさん?!いるんですよね?!開けて!開けてください!お願いです!」
「ちょっと待ちなさい!落ち着いてよ!ここがどこだと思ってるのよ!そんなにすぐに開けれられるわけないでしょ!!」
「だって!だってソウさんが!ソウさんがあぁぁあ??!」
取り乱すリーフが落ち着くのにそれなりの時間を要したが、なんとか宥めてから扉を開けたミレー。
「いくらなんでもトイレに入る時に扉を開けようとするのはやめなさいな。物凄く怖かったわよ、アレ。」
「ご、ごめんなさいぃ・・・。」
シュンと肩を落とすリーフだがそれでも落ち着きがなくソワソワしていた。
「それで?ソウさんがどうかしたの?」
「そうなんです!とにかくすぐに!すぐ来てください!!」
グイグイと引っ張るリーフに身を任せて共にカウンターに行くがソウの姿はなかった。
「・・・リーフ?あなたまさか・・・。」
「ちゃんとお待ちくださいって言いましたよ?!」
他の職員に頼むなりなんなり方法があったでしょう?!とミレーの雷が落ちた。トイレから引きづり出された分もここで発散してしまおうと思ったのは内緒だ。
勢いよくリーフに説教をしていたが、横からソウに腕毛と呼ばれているジッダが近づいてきた。
「リーフのお嬢ちゃんに、ミレー嬢も一緒か。ちぃとこっちに来てくれ。」
ジッダに先導されて向かった先は買い取り用の資材置き場だった。
「これが今回あの黒髪のお嬢ちゃんが置いていったもんだ。」
「これって、その素材がそうなのかしら?」
「いやいや、この魔石とここからここまでの素材が全部だな。」
「・・・はいっ?」
リーフに眼を向けるとコクコクと高速で頷いている。
「・・・何がなんだかわからないけど、もしかして・・・?」
「そうらしいです。ソウさんは、ソレも含まれてるって言ってました。」
聞いていたゴブの数の倍ほどはありそうな魔石。ゴブとは関係ない多様な素材。どれもランクとしては高くないが群れると途端に脅威が上がるモンスターばかりだ。群れても怖くないモンスターの方が少ないが、いまはその希少なモンスターが含まれていてほしいとさえ考えていた。
「クズ魔石もモンスターの素材もいくらあっても困りはしねぇが、それにしたって呆れる量だな。普通のパーティー何日分だこりゃ?」
「遭遇する機会なんかもあるでしょうから並のパーディーなら10日前後でしょうね。それもDランクのパーティーでの話しですけど。」
素材の状態を見てみると、どう見ても10日ほど経っているようには見えなかった。むしろ中には剥ぎ取ったばかりに見える物さえある。
「いちおうお嬢ちゃんには割符を渡しておいたからな。明日には来るんじゃないか?」
ジッダがリーフに割符を渡す。彼はそのまま買い取り処理を始めるつもりのようだ。
「リーフ。私が受付に回るからあなたはジッダさんを手伝ってちょうだい。いいわね?」
「あ、はい。」
少し呆けたままのリーフを残して受付へと歩くミレーは自身の考えを大きく修正しようとしていた。少なくない戦力なんてとんでもない。大きな戦力を持った何者かがこの街にいるんだと。
「でも、エリザベート様はご存じなのかしら。場合によってはこの街だけじゃなくて領主様も・・・いえ、それは私が考えても仕方がないことね。」
ソウの扱いは自身の手には余る。ロゾリンに情報を回して手を引くべきだと強く思った。
「情報を再精査してからまとめて渡すことにしましょう。」
その日遅くまでミレーはギルドに残って作業をした。自身の伝手を最大限利用してソウの情報を集めながら。
―――次の日―――
朝早くにロゾリンさんに会うことができ、ソウの情報をまとめた資料を手渡すことができた。ここ最近は中々会えなかったのでこれで肩の荷が1つ降りた気がした。
「資料はしっかりと読ませてもらうよ。それと、あまり危ないようなら他の男性職員に振ってもいい。戦闘力を持った職員なら有事の際でも素早く反応できるだろうしね。」
「わかりました。恐らく今日またギルドへ来ると思いますので、その時の反応を見て決めようと思います。いまの所私たちに危害を加える素振りは一切見せていませんから。」
「・・・わかった。ただし、無理だけはしないように。いいね?」
「はい。」
サブギルドマスターに必要なことを伝えられたが昨日の疲れと今日の早起きで少々身体が怠い。ソウさんもこんなに早くに来ることはないだろうし朝ごはんでも食べて少しゆっくりしようかなと思ったのがよくなかったらしい。
朝食を食べてるところを見られた。急にリーフが扉を開けたのが原因だった。いつもしっかりノックをしろとアレほど言ってるのに全然覚えないし落ち着きがないのは変わらないわね!
そこからは予想もしてないことの連続だった。ソウさんがギルドで金策するのは借金返済の為。しかもご領主様の一族と面識があるようだし。モンスターの素材を簡単に燃やし尽くした魔法も凄いかった上に自身で魔法媒体まで作れると聞いた時にはもう考えるのを止めたいくらいに驚いた。
「結局ソウさんって何者なのかしらね。」
「ソウさんのこと全然知らないってことが今日わかりました!」
「そうね。思えばソウさんの情報を色々集めはしたけど、ソウさんの人となりは知らなかったわね。今回は反省することが多すぎるわ。」
ロゾリンさんにもしっかり話しを通さないと。危険がなさそうだって言わないとソウさんに迷惑がかかっちゃうかもしれないし。
「それに、モンスターの素材ゴミの破棄はすっごく助かります!あれって重いし臭いしで大変だったんですよねぇー。」
「それもあったわね。ちょっと予算管理課と相談してくるわ。これを機会にもっとソウさんと親睦を深められるといいわね。」
「はい!ソウさんと、あと妹さんたちとも仲良くなりたいです!」
安心した表情で返してくるリーフ。この子は初めからソウさんを疑ってなかったのに私が変な先入観を与えちゃったせいで遠慮してた部分もあるだろうし、悪いことしちゃったかな。
「できればあの子たちにもお姉ちゃんって言われたいですねぇ~・・・。」
(・・・いつもの病気が出てるわね。)
軽くトリップしているリーフを残して予算管理課へと足を向けるが、その足取りは昨日までと違って軽やかなものとなっていた。
時系列追うのが苦手なのですが、多分矛盾はしてないハズです!
間違ってたらごめんなさい。
あと、多分ミレー姉さん普段はもっとできる子なハズなんです。ソウ君が絡むとちょっとそんな感じなくなってる所あるかもですが、できる子なんです!
いつか彼女の優秀アピれるお話し書きたいです!




