表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/104

大きいけれど安心設計 キャラブレ注意報あり

感想、評価をいただきありがとうございます(*´∇`)

読んでくださる全ての方々へ感謝の祈りを捧げながら、本編第64話を投稿させていただきますー!

これからも皆様に楽しんでいただけると幸いです(*´∨`*)


前回のあらすじ

牛人間とガチバトル

意外なことにテトにゃんガンバる!

火に耐性?空気を燃やせばいいじゃない

俺の眼の前には不自然に宙に舞う・・・というか空中に浮いてる少女がいる。ピンクのツインテに太めのまゆ毛。小さな顔に首尾よく配置された各パーツ。そのどれもが造り上げられた人形のように整っていて瞳なんか青い宝石のようだ。

小さな唇はホンのわずかにぷっくりしつつも少しだけツンとして、薄く(べに)をひいたかのようでもある。首なんか折れそうなくらいに細いしデコルテラインも陶器のように滑らかである。そこから下の描写は普通ならNGだと思うが今回だけは許されるだろう。


「すっぽんぽんでも全年齢対象か。それなら問題ないな。」


そう、全裸でも問題ないのだ。何故なら目の前に浮いてるコイツは局部とかそういった部分が一切ないからである。

胸の膨らみは無駄に張り出しているが全て白一色だし、へその下も同じだ。なんの問題もない。いや、あんまりジロジロ見るのは外聞的によくないかもしれないけど。うん。


「さ、これで多分話せるだろ?お前はいったい何物なんだ?」


「物だなんて言わないで欲しいものだ。我を物扱いとは礼儀を知らない人間だな。」


「お前のその尊大な態度の方こそ礼儀知らずだよ。」


「そうか?まぁいいだろう。我はベル。このダンジョンに封じられし偉大なる淑女、アンナベルである。」


「封じられてたの?閉じ込められてただけじゃなくて?」


「なっ、なぜそれを?!」


「いや、適当に言っただけだけど。」


「くぅっ・・・騙したな!ゆ、許さないんだぞ!?」


目の前に浮かぶ謎ぃ物体X、もとい自称アンナベルとやらが豊かな胸元を突きだしながら怒っている。うん、多分怒ってるんだよな?どうにも表情がないし態度もおかしいからわかりづらい。


「これじゃ(らち)があかんな。なんでお前は、アンナベルはここに閉じ込められてたんだ?」


「ぬ?我がここにいる理由か?そうであるな。話せば長くなることではあるが、いいもんね!話してやろうではないか!」


色々と面倒くさいアンナベルの話しを要約すると、

イーザウに召喚された→

でも姿を知覚されることがなく放置されていた→

暇なのでそこら辺を漂っていたらミノタウロスごとボス部屋に閉じ込められたと。実にバカにしたくなるアホである。


「なんでそんなアホなことになってるのか知らんけど、ここのボスは倒したからお前は自由だろ?これからどうしたいんだ?」


「どうするもなにも、先程お前と契約を結んだだろう?我はついていくぞ!」


「マジで?特に要らないんだけどなぁ・・・俺、人形遊びする趣味ないし。」


「なっ?!こ、この我を人形などと一緒にするでない!我はアンナベルだぞ!!?」


「いや、でもどう見てもお前の造詣がマネキンぽいというかドール系なんだもん。少なくとも人間じゃないんだもん。」


そうなのだ。このアンナベルとかいうのは「人形のような」ではなく「人形そのもの」だったのである。故に全年齢対象。大切な部分を作り込まなかったからマッパでも大丈夫な安心設計なのだ。

ちなみにテトにゃんたちにもちゃんと見える状態になっているかというと、ほとんど見えないらしい。そのことをアンナベルに告げると、


「き、気合いが足りないんだな?!それならがんばるから!待って!待ってね!こう・・・ふん!いや違うか?・・・んー、こうか?うおおおぉぉぉ!ふんぬらばっ!」


非常に残念な掛け声と共にピンクのツインテ少女が踏ん張り出す。出すと言ってるがコレは始めるの意味で出してるわけではない。ホントだよ?


「あ、なんだかぼんやり見えてきたの!」


「えっ?!なんで裸なの??!」


「んー?」


ニコは立ち位置的に少女のケツしか見えていないことだろう。はしたないからやめなさい。穴はないから菊はないけどさ。

そんな制止も必要ないくらいの短時間でアンナベルは気合いを出しきってしまったらしく、また見えなくなってしまったらしい。でも声は聞こえるんだって。変な感じ。


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・。ど、どうよ?」


「残念なことこの上ないからしばらくソレ禁止な。もう少し魔力的なもの溜め込んでからの方がよく(姿が)出るんじゃないのか?」


「そ、そうね。すっごく疲れるし、当分しないでおこう。次こそはちゃんとこう・・・ひねり出すぞ!」


「出す出す出すって見た目年頃の乙女が言うもんじゃないな。それにしても、なんか話し方が安定してなくない?」


「仕方ないだろう?我は生まれ出でてより会話というものをしたことがないのだ!多分な!話し方のベースはイーザウだぞ?」


「は?なんで多分なん?」


「うむ!実はな・・・話せば長くなるんだが、我はここに来る以前の記憶がないのだよ!」


「全然長くないな。いっそ簡潔すぎてビビるわ。んむ~、でもそれはそれで困るっていうか?てかイーザウ?なんか引っかかるな・・・なんだったっけ・・・?」


先程からなんとなく頭の片隅に引っかかることがあったが思い出せそうにないので思考を先に進めようとアンナベルに記憶がどの程度残っているのか聞いてみた。


「我は自身の名前と、言葉くらいしか記憶にない!イーザウの言葉が初めから理解できていたんだから言葉はわかる!完璧ね!」


「ほとんどアーパーってことか。どこかのタヌキ娘と同様に扱うべきか?いや、アンナベルは危害も加えないから普通にしてていいのか。」


「アーパー?とやらはよくわからんが、折角得た話し相手だ!仲良くしてほしいな!ねっ!」


ぼっちをこじらせるどころか自身の人生をすべてぼっちに捧げた真正ぼっちちゃんは距離感が不思議な寂しがりキャラのようだ。

表情が乏しいのはその辺が理由か?表情筋とかって誰にも表情を見られることがなければ必要ない機能だもんな。そりゃ枯れるか。


「仲良くなってほしいと言われたら仕方がない。俺はソウ。この愛妹たちの兄だ。」


「やったー!嬉しいぞ!我はアンナベル!ソウよ!これからよろしく頼むのだ!」


「こっちこそよろしくね。んで、こっちの猫耳の可愛さ爆発してる娘がテトラリア。」


「アンナベル・・・ちゃん?ウチはテトラリア。テトって呼んでほしいの。よろしくなのー!」


「テトちゃんだな!任せるがよい!」


「そんで、こっちの白くてサラサラした髪を持ってる娘がニコ。可愛さがとどまることを知らない末の妹だ。」


「ん。ニコはニコ。よろし、く。」


「うむ!ソナタはニコだな!覚えたぞ!我はアンナベルである!よろしく頼むね!」


「あと、アンナベルと同じで姿は見えないけどいつもサポートしてくれる素敵で理想の女性で、カナデさんって人がいるから知っておいてね。」


「我と同じ?ではこの辺のどこかにはいるってーことでいいんすか?」


「いや、ちょっと離れた所にいるからここにはいないんだ。でも俺のスキルで念話みたいなのがあって、それでいつもやりとりしてるんだ。」


「そうであるか!では、そのカナデとやらにもよろしく伝えておいてほしい!」


「わかった。」


《息をするように嘘を述べるマスターは流石ですね。アンナベルの裸体から眼をそらすことがないというのもいっそ清々しくて称賛したいくらいです。》


「うぐぅ・・・それは言わないお約束よ?それに全年齢対象だからその辺はセーフなのでスルー推奨でお願いしますごめんなさい。」


《しかし安心しました。マスターは幼女にしか興味のない変態紳士なのかと思っていましたから。》


「どこぞのキャロルさんと一緒にすんなし。俺は至って正常ですしおすし。」


「?誰と話しておるんじゃ?」


「あぁ、いまカナデさんと話してたんだ。ごめんな。カナデさんもよろしくってさ。」


「そうだったのか!急に話し始めるから何かと思ったぞ!それが念話なのね?」


「そういうこと。・・・ミリーも紹介いる?」


「ちょっと!なんであたしだけ扱いが雑なのよ?!その子、べ、別にお化けとかファントム系のモンスターとかってわけじゃないんでしょ??」


「むむむ・・・そう聞かれると困るのー。我、自身のこと覚えておらんからなぁ?」


「些細なことだが知っておいた方がいいのか?ちょっとメニュー項目で調べたりできるか確認してみるか。」


カナデさんと相談しながら項目を探してみると、普通に眷属一覧みたいなものがあった。いままで知らなかったんですけど・・・。


Name:アンナベル

Level:-

edge:48歳

種族 :ビスク・マ・ペティア

職業:自宅警備員

スキル:なし

魔法スキル:なし

種族特性:『影薄潜伏』、『人型同期』

祝福:なし


・・・思った以上に年上だった。気にすることじゃないんだろうけどなんとなくショックを受ける。しかも折角種族が見れたのに知らない種族で意味ぷーだった。


「種族はビスク・マ・ペティアっていうらしい。聞いたことないな。カナデさんは知ってる?」


《マスターの認識に合わせると付喪神(つくもがみ)に近い種族ですね。人形に魂が宿り意思を持ち、なんらかの原因で幽霊化。さらにはそれが魔物化することにより誕生するといわれているいわゆるレア種です。》


「随分と特殊な生い立ちだな。数が凄く少なさそう。」


《自然発生となると極端に少ないと思われます。》


「ですよねー。んーっと、一応はモンスターの類らしいぞ。種族的には人形がベースになってるっぽいけどいまも人形かと聞かれると非常に微妙といわざるを得ない特殊な個体だ。」


「???よ、よくわからないんだけど?」


「まぁ、普通にちょっとレアなモンスター程度に思うといい感じっぽい。だから気にするな。」


「よくわかんないけど、モンスターっていうことだけはわかったわ!なら別に気にすることないわね!」


ミリーが導き出した答えが理解できない。ファントム系怖がってたんだよな?それって同じようにモンスターなんだけど何が違くて何がダメなのだろうか。理解できる日が来るような気がしない。


「ビスク・マ・ペティア・・・それが我の種族なのか?やはり聞いてもわからんな?」


「俺にもわからなんが別にいいだろ?俺だって人間じゃないし。」


「「そうなの?!」」


「なんでミリーまで反応すんだよ?前に話しただろ?・・・いや、話したっけ?」


ここまで力強く聞き返されると話してないような気になってしまったが実際どうだったっけ?けどまぁ言っちゃったし仕方ないか。コイツもタヌキだし同じ人外みたいなもんだろ。うん。

深く考えることもなく俺の種族をバラしてみた。返ってきた反応は当然ながら微妙。人間っぽい何かとしか説明しようがないし、モンスターではないと個人的に思ってるからそれもまた止む無しだと思うことにしている。この2人にはどれだけ言葉を尽くして説明してもダメそうな予感しかしないし別にいいだろう。

一通り自己紹介が終わったのでアンナベルに出口はどこか聞いてみた。


「出口はあっちだ。たまにイーザウがあそこから出て荷物を抱えて帰ってきていたぞ。」


アンナベルが指差したのは先ほどまでミノタウロスが鎮座していた場所の後方だ。特に扉とかは見えなかったハズだがいまはガッツリ開いている。いつの間に開いたんだよ。

そこでもしやと思ってミノタウロスを見てみると、口やら何やらから色々と撒き散らしながら息絶えていた。やはり窒息死は見ていて気分がいいものじゃないな。今回のような緊急事態以外は控えようと心のメモ帳に薄くメモっておく。きっとまた繰り返すことだろう。

解体作業は俺のライト○ーバーでチャチャッと済ませ、皮と魔石と一部のお肉をテイクアウトすることにした。本場の良い方にするとトゥーゴーっていうらしい。テイクアウェイでもいいらしいよ?

ちなみにこの肉を俺たちで食うことはない。だって半分人間とか食欲なくすし。マーグルさんにでもあげようと思っている。きっと彼女なら美味しく召し上がることだろう。

要らない部位をばきゅり、故牛の持っていた斧もばきゅる。なんか魔法具だったらしいけど壊しちゃったから吸引して問題ないよね?使わないし。

ちなみにこの斧は火属性の付与がされていた上に、潤沢な魔力があったために一時的に出力が強化されていたらしい。なので初撃の打ち合い時に溜め込んだ魔力を全て費やして拮抗していたらしいが2撃目は耐えられなかったとはカナデさんの分析結果だ。あの斧は実にウザかった。


「そういえば、お前は何かに乗り移ったりできるのか?」


「乗り移る?なんだそれは?」


聞くだけムダなようだ。もしかしたら幽霊的な存在みたいだし仮初の肉体でもあれば普通に活動できるかと思ったが全ては検証してみないとわからないことだらけらしい。『人型同期』はこれじゃないのか。

記憶もないって言うから謎の塊でしかないコイツはいったいなんなんだろうか?種族的にはなんとなくわかったが、裸の理由もキャラが安定しないのもワケワカメで疑問が尽きぬ。

1番腑に落ちないのは俺のステータス表記がないのになぜ眷属だけ表示されるかってことだ。スキルとかだけでも表記しようぜ?それとも眷属化できるモンスターだけの特典なのだろうか?


《ところでマスター。眷属契約は魔物以外も契約が可能ですが?》


サラリととんでも発言をしてくるカナデさん。やだーそれって重要事項じゃないですかー?マジで―?ヒデブー?

猛烈にオコしたい気持ちを必死になって抑え込み、カナデさんに優しく問いかける俺氏。


(おんどりゃ(あなた)そげんこつば(そのようなことを)マジで(真剣に)いっとんのけ(仰っておいでですか)?!おぉ(どうなのでしょうか)??!)


《はい、マスター。しっかりとマニュアルの情報が脳内にあるのですから、もっと有効活用を心掛けた方がよろしいかと。》


微妙に怒られた。いやだって・・・あのマニュアルって量がハンパなくて呑み込めないっつーか読み込めないっつーかで・・・言い訳ですね。はいすいません頑張ります。

相変わらず眷属化はよくわからないことが多いから、今度マニュアル復習しておこうそうしよう。べ、別に怒られたからじゃないし?必要だからだし?


「じゃ、帰るか。もう疲れたし布団でちゃんと寝たいもん。」


この提案に異を唱える者はいなかったが、唱えた物がいやがった。いや、正確には唱えてはいないが・・・。


バチンッ


「きゃっ!痛い!な、なんでー?!なんで我はここから出られないのー??」


アンナベルがボス部屋から出ることができなかったのである。別に置いていっても不都合はないが原因が気になるので少し調べることにした。

魔力の流れや周囲の魔術的な仕掛け、その他諸々を俺とカナデさんで分析していく。すると、どうやらこのボス部屋の魔力の集束先がアンナベルに変更されていることが原因であることが判明した。

ついさっきまではミノタウロスに尽くしていたボス部屋がすぐさま違うモンスターであるアンナベルに鞍替えしたのだ。節操のない部屋である。

しかもその集束先に指定されてるせいで一定の範囲内に活動領域が限定されているっぽい。その機能必要だったのかな?


「その割にお前に流れ込む魔力が少ないのな?」


「元々この部屋の中に集まる魔力は少ないぞ!確かイーザウが理論値の1/10しか集まらないってぼやいてたのだ!」


「マジか。それって完全に欠陥品じゃね?でもそれを加味してもなお少ない。なんか理由があるのかなーっと。」


言いながらミノタウロスのお立ち台こと魔法陣を調べてみると、結構間違ってる部分が散見された。でも直すのも大変だからまた次の機会にしようと頭を切り替える。

ミノタウロス用に変換したつもりだったんだろうけど、ここの線とこっちの図式がずれてるせいでムダが多いし意味も変わっちゃって・・・ってキリがないから今度だ今度。


「じゃあ、アンナベルの住処を一時的にここにしよう。今度色々手直しするからそれで勘弁してくれ。」


「ホントかしら?そんなことできるのかよ?来てくれないとイヤなんだけど!」


「ブレっブレで話しにくいことこの上ないな。だが、質問の答えは是だ。まずはここを俺の支配下に置こう。」


折角の元ダンジョンなのでここを美味しくいただくことに決めた。居抜き物件万歳である。まずはこの部屋だけでいいやとダンジョン化を実行させることにいたしましょうそうしましょう。


「メニューオープン。迷宮創造(ダンジョンクリエイト)開始(スタート)。対象はこの部屋全部。基点は故牛の魔石でいっか。俺との同期は要らないし設定も省エネモードで即実行っと。」


実行キーを押した途端、床一面に金色に輝く巨大な魔法陣が出現した。


「ななななにこれ?!」


「ふわぁーキレ―なのー。」


ミリーは驚き慌てふためいているがテトにゃんはうっとりしてる。光るの好きなのかな?ちなみにニコは半ば夢の中でコクコクと船を漕ぐのにお忙しいから無反応だ。


「―――――――・・・???」


アンナベルは驚きのあまり口をパクパクしてる。鯉並にゆっくりパクパクしてるけど表情はやっぱり乏しいな。コミュニケーション不足か?それとも人形だからか?よくわからんな。

光り輝く魔法陣の中心部に魔石を投げる。魔石の認識が正常に完了したとの音声が返ってきたからあとは俺にできることはほぼほぼない


「ぎにゅうううぅぅぅぅぅ!!!!?」


「ソウ?!どうしたの??!」


「ああああああああぁぁぁぁぁあ!!!」


やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい!!!これ魔力吸われてる!吸われてるよ!!背嚢(リュック)ダンジョン創った時はこんなことなかったのにいまメチャクチャ吸い込まれてるよ!そんなに残ってないのに!?


「テテテテテテテテトぉぉ!!まま、魔石の袋・・・投げて!!」


「わかったの!」


テトから受け取った魔石袋から適当に一掴み分の魔石を出して魔法陣の中心に投げ入れる!種類がゴチャゴチャだけどきっと平気なハズ!てか平気であってくれ!

中心部の三重に輝く円の内部に魔石が届くと、すぐに光に包まれてシュッと消える。悪夢のような光景だ。俺の魔力吸い上げ作業は中断されたが、なんとなくイヤな予感がする・・・まだ・・・食い足りない?足りないの?

酷い倦怠感と吐き気を我慢しながら再度魔石を投げてみる。シュッと消える。また投げる。シュッと消える。そのわんこ蕎麦状態にゾッとするがこうなったらもうやめられないやまらない。唐突に絶対に負けられない戦いが開催されてしまった。

それからも必死になって魔石を投げるお仕事を繰り返していたが、大体100体分の魔石を放り投げた頃には魔法陣が落ち着き辺りが暗くなってくれた。手持ちの分で足りてくれてホントによかった・・・。


「どうにかコレで足りたっぽい・・・けど、マジでコレキッツいなー。」


暗くなるっていうか真っ暗だ。先ほどまでミノタウロスのお立ち台魔法陣のお陰で薄暗い程度だったが、いまはその輝きも失われている。

代わりにいまの光源は部屋の中央にあるまあるい赤い玉が淡い光りを放っているだけだ。大きさはハンドボールくらいで少し浮いている。浮くってすごくね?

魔石が全部混ざり合ってこれが形成されたんだと思うが、なんでダンジョンコアができてるんだ?背嚢(リュック)と同じ設定で創ったハズなんだが・・・?


《マスター。迷宮創造をする際はもっと慎重に行ってください。》


「したよ?ちゃんと項目確認して省エネにしたし、同期も切ったじゃん!!」


《はい、マスター。その点の設定は問題ありませんでしたが、領域を掌握してから実行しましたか?》


「・・・あ。」


《領域の掌握をしなかったために初期設定としての掌握が必要となりました。ですが、領域の掌握にはマスターが任意で行うか迷宮核の補助がないとできません。》


「それで勝手にダンジョンコアができたし、部屋全体の掌握のために俺の魔力を吸われまくったのか・・・。」


背嚢(リュック)ダンジョンを作成するときは単純に俺の魔力で袋の中を満たしてから実行したからよかったが、この部屋の中は俺の魔力で満たされていなかった。

その違いが先ほどのショッキングな出来事を生み出してしまったのか。ムリヤリ魔力を吸われるのってあんな辛いのな。止める間もなく危ないことをしないようにとカナデさんの小言も凄いしもうやだよこんなの。


「にしても、こんなに大きなダンジョンコア必要だったのか?この部屋は確かに広いけど、権能つけてないんだから必要ないと思うんだが?」


《迷宮核の大きさは、ベースにした魔石の質が高かったこととマスターが投げ入れた魔石が多すぎたのが原因ですね。》


「だって魔石投げないともっと吸われそうな気がしたんだもん!怖かったんだもん!」


カナデさんに詳しく聞いてみると、ベースの魔石的にはまだまだ魔力を入れ込む容量があったので、俺はその空き容量を感じ取って恐怖してしまっていたらしい。別に俺の魔力はあれ以上求めていなかったらしい。自意識過剰もいいところだったっぽい。

でも折角できちゃったからにはコレについても色々と調べてみたい。初めての経験だし、わからないことはマニュアル読むよりやってみて調べる方が好きなんだもん。

早速メニューとにらめっこしながら作業を開始しようとしたらミリーに止められた。どうやらこの暗さだと怖いらしい。乙女か?・・・いや乙女かそういえば。


「予定外にコアができちゃったけど、ここに来るヤツなんかいないだろうからこのままでいっか。アンナベルの住処の移動だけしておこう。」


メニューを操作してアンナベルをダンジョンの住人に設定してみる。問題なくここを自宅と認識したようだ。せいぜい立派な警備員になってくれることを祈るばかりである。

それにしてもこの世界の職業事情に自宅警備員があるとは恐れ(おのの)く他にない。時空も次元も超えて顕現されたニート神様でもいるのだろうか?業が深そうだ。


「そういえばこのダンジョンの名前ってどうしようか?」


「我のダンジョンなのだから、『アンナベルの家』がいいぞ!」


「なんで家やねん?お前が移動できるようになるまでの仮住まいだぞ?」


「ぬ?それもそうか?」


「・・・ってそういえばさっきから引っかかってたのはこれか。ここの前のダンジョンって『出会い乞い願う(アンナベルンの)館』じゃん。お前のことか?」


「そうなのか?我はイーザウとは交流はなかったからわからんな。だがそういえば、会いたいとかなんとかいいながら我の名前を呟いてるのをみたことがあるような気が?」


「気ってなんだよ。覚えてないのか?」


「んー・・・どうにも記憶がおぼろげだな。我はこうしてますたー?に眷属化してもらうまではもっと不安定な存在だったからね。時には消えかけていた時もあった気もするもん。」


「そういうことか。ここってミノタウロスの餌用に周辺魔力をこの部屋に集めてたっぽいからそこそこの魔力濃度はあったわけだ。でも逆にイーザウの行動範囲は魔力が薄かったと。魔力が薄い所だと存在が更に薄くなったりもしてたのかもな。」


「そうかもしれないし、そうでないかもしれないし?よくわからないの。」


「まぁいいや。この部屋は掌握したし、少し経てばミノタウロスのお立ち台にまた魔力が集まってくるだろ。それをお前がしっかりと吸収できれば存在維持に問題ない量の魔力は確保できそうだし。」


ホントはゆっくり休憩してから帰りたかったが、ミリーがウルサイしニコがガン寝しそうだしで諦めて家路を急ぐ。名前とかは今度でいいや。部屋の入り口閉まったままだしコアもこのままでいいや。疲れたし。

明かりはMP残量的に魔法が使えないから、むしり取りまくった清流光の苔草(ノーブライト)だ。これをポーションの空き瓶に入れて使うとペンライトみたいでテンションが上がる。前世で行ったライブを思い出しちゃうね。暗いけどまぁなんとかなるだろう。


「ちょ・・・ちょっとぉ。嘘でしょ?そんな明かりしかないの?く、暗くて足元とかがちゃんと見えないんじゃないの?」


・・・ミリーがやかましいのでDP(ダンジョンポイント)を使ってポーションの空き瓶を補充する。これって案外DP高いんだけどなぁと思いながら自作ペンライトを作成した俺って優しくない?ってカナデさんに聞いてみたら《それだけDPを使うのならランタンでも召喚したらよかったのに》と言われてしまった。優しさというものは分かりにくいのかもしれないと思った。

開け放たれていた扉を潜り、防犯のために戸締りを忘れない。進む先は暫く土の洞窟だったが突き当りは石の階段だった。造りはしっかりしているもののバカみたいに急だった。ほぼ垂直。老若男女に優しくない設計だからバリアフリーレスとでも言うべきか?いっそただ単にバリア?言い方がよくわからんが住み辛そうだ。


「ここからは俺がニコを背負うから、俺の持ってる分の明かりはテトにお願いしていいかな?階段キツい?」


「へーきなの!任せてなの!」


いいお返事をもらえたのでえっちらおっちら壁みたいな階段を登る。階段は高さ4m分くらいあってその先はまた洞窟が続くようだな。


「んっしょ。」


俺とニコのあとにテトにゃんが上がってきた。小さなお口に試験管にしか見えないポーション瓶をくわえながらのご登場に動揺を隠しきれない。

・・・試験管をくわえた猫耳獣人少女、か。あり・・・か?賛否両論だろうが俺的にはアリだな。うん。


「はいなの。」


差し出されたポーション瓶を受け取る。ふむ。今後テトにゃんには色々と教えないとダメそうだな。俺みたいな完璧紳士なら取り乱したりしないし変な気を起こすことなどありはしないのだが、一般人では耐えることなどまず不可能だろうと思ってしまう破壊力がこの手元の瓶にはあったりする。

なんせこの手元にある試験管のようなものはテトにゃんがくわえていたわけでそれすなわちいろいろついてるしかんせつちゅー「ねぇちょっとー!素材持ったままじゃ登るの大変なんだけどー!?」


階下でミリーが騒ぎ立ててくるが、上で受け取るとかできないんだから大人しく登ってくればいいのにと思ってしまう。アレ?いま何か考えてなかったっけ?んー?一瞬思考が飛んでたのかもしれない。危ない危ない気をつけなくちゃ。

仕方がないのでミリーに持たせた素材を半分こして再度階段を登っていく。先ほどニコを背負ったまま登るのよりもこっちの方が倍ツラい。いや、ツラさが3倍濃縮されてるかもしれない。だってニコと違って可愛げもなくていい匂いもしなくてなんかぐちょぐちょしててイヤな感じなんだもん。同じ気持ちでいられるわけがないですよ。

タヌキの回収も終わったのでぞろぞろと歩みを進めていく。そろそろ土の中を歩くのに飽きてきた頃に現れたのは石の扉だった。スライド方式の引き戸だ。ここを通過した先は石造りの小部屋?のようだった。途中にモンスターがいるかもとか思ったがなんにもいなかったのは拍子抜けだ。


「天井は暗くてよく見えないな。木・・・なのかな?あっちに階段あるみたいだからいってみよう。」


「・・・あんたこんなに暗いのによく見えるわね?あ、ちょっとテト!急に進まないでって言ってるでしょ?!離れると暗いのよ!」


「ごめんなのー。」


威勢がいいのに暗闇が怖い。頭が悪いのに仕切りたがるし何かと指摘するとすぐキレる。このタヌキ娘は心から面倒に思う。

次はポーションの空き瓶もう少しキープしておこう。今回ムダにポーション作りすぎたわ。クーリングタイム的にこんな大量にいらんもんなー。勢いに任せて色々適当にやりすぎたよ。

反省しながらギシギシ危な気な音を響かせる階段を登り天井を押していく。そんなに重さを感じないまま開いた先にはボロボロの家だったものが見えた。見えたというかその中にいるな。あのダンジョンはこの家の地下室と繋がっていたのか。


「屋根がほとんどないな。風雨で朽ち果てたか。」


夜空に光る星と月の光が足元を照らしてくれる。お陰でさっきまでより周囲を見渡しやすいな。


「って完全に夜じゃん?!」


「洞窟の中より暗くないけど、あんまり遠くは見えないのー。」


「ここここここって・・・ここって廃村・・・?夜に廃村にいるなんて・・・は、早く帰りましょう!それがいいわ!」


なんだかタヌキっていうよりもっと小さい動物に見えてきた。凶悪なのになんでだろう?

お読みいただきありがとうございます。

久々の新キャラは人外でした!ピンク髪だけど48歳・・・こ、これは需要があるのだろうかと戦慄せざるを得ないです。

しかも!ついに想君が真っ当なダンジョンを作成した!とみせかけて居抜きの手抜きで更に放置!それでいいのかダンジョンマスター?!


次回予告

光りの国

新キャラ続々

嫌いだな

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ