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牛人間とガチのバトルと

感想、評価をいただきありがとうございます(*´∇`)

読んでくださる全ての方々へ感謝の祈りを捧げながら、本編第63話を投稿させていただきますー!

これからも皆様に楽しんでいただけると幸いです(*´∨`*)


前回のあらすじ

扉を壊して家屋に侵入

大量の人形

壊れたゴーレム

ビルダー用語出ちゃいました

29ノインネルツヴァウンツィッヒ・の弾よ在れ(バレティア)炎弾(フレイム・バレッタ) 変換(メタトロベート) 大炎槍グレテア・フレイム・ハスタ 性質付与レクシアン・エンクルムント 貫通(グラナーテペネトラート) 強化(クラトス)


闇を吸い込み形を成したかのような黒い長髪を持つ少年が声高らかに精霊へと告げる。

その呼び声に応じ、周囲の火精霊たちが色めき立ち燃え上がる。

少年の掲げた左手の先に力強い炎の弾が集い形を変え、少年の身の丈を大きく超える長大な赤い槍が顕現した。

長さはおおよそ4ミットほど。穂先を真っ直ぐモンスター、ミノタウロスへと向けて佇んでいる。


「ゴオオオオオオオオォォォォ!!!」


ミノタウロスの醜く歪んだ牛面から地鳴りのような鳴き声が響く。既に足元の魔法陣は解放されその身を押さえる枷はないようで、ドスンドスンと少年へと走り寄る。


「俺みたいな後衛職に準備する時間を与えるのは愚策もいいとこだろ。お前の敗因は出てきた時に決まってたよ。喰らって果てろ。投擲(グレネード・スローグ)!!」


少年が掲げあげた左手をミノタウロスへ向けて振り下ろすと、それに連動して巨大な炎の槍が勢いよく飛び出していく。


ブオォッ!


「ゴガアアアアァァァァ!!!」


対するミノタウロスは、その形ある炎を手にした大戦斧(グレートアックス)にて防ぐ構えだ。斧の面を構えて槍を受ける。


ギイイィィィン!!


激しい金属音が鳴り響く。


「バカが!斧なんかで俺の魔法が防げるわけないだろ!局所的になら魔導級に匹敵する威力を舐めるな・・・よ?」


ギギギギギギギギギギ!!


「えっ?あ、あれ?なんでなんで?俺の魔法がたかが斧なんかに防がれるハズがないのに?!・・・えっ?!魔法具?あの斧魔法具なの?!マジで?!!」


「ゴオ・・・オオオオガアアアアア!!」


均衡していた槍との競り合いを気合いの咆哮と共に弾き飛ばしたのはミノタウロスの方だった。


シュウゥゥゥゥゥ


見るとミノタウロスの抱えた巨大な戦斧からは白い煙が立ち上っていた。どうやらあのバカげた魔力の塊を防ぎ切ったらしい。素晴らしい魔導具だな。これをアレが用意できた理由がいまだにわからない。


「嘘・・・だろ?俺のほぼほぼ全力の魔法で押し切れないって悪夢なんですけど?!・・・あ、そうなの?ならまぁいい・・・のか?」


少年は独り言を繰り返し煮え切らない顔をしていたが、ミノタウロスが駆け出すと同時にその表情を引き締めた。


術式(コード) 冒険級火属性(アーベント・フレイム) 実行(ラン) 火の精霊()らよ 我が魔力(マナ)を糧に 槍斧を象り(ハルベルトスキーマ) 我が左腕ヤー・シニストラブラウド・を軸に(アッセ・)舞え(オベレク)


またも少年が詠唱・・・と思われる言葉を紡ぐと周囲の精霊が騒ぎ炎が巻き起こる。

その炎が少年の腕の周囲に集まり形を成し、今度は先ほどの槍ではなく槍に斧がつけられたような形状で落ち着いた。初めて見る武器の形だ。


性質付与レクシアン・エンクルムント 切断(アンピュイション) 貫通グラナーテペネトラート 強化(クラトス) 大炎撃(グレテア・ハルバード) 薙ぎ払え(スイーグスマッシュ)!!」


少年は叫び、ミノタウロスへ向けて駆け出す。双方共に走り寄ったためにその間の距離はすぐになくなった。


「でぇーーりゃーーー!!」


少年は左手を振りかざし、一気に振り下ろす。すると追従する炎の斧のようなものが大上段から叩き付けられる。どうやら彼の得物の方が長いようだ。

それを再度大斧を構えて防ぐミノタウロス。大型の接近戦型モンスターに対して一方的に攻める彼は中々の胆力だな。


ガギイィン!!


先程の槍との衝突よりも重々しい音が響く。少年は手を振り下ろす途中の恰好で止まっている様子から、あの炎の斧は手動の遠隔操作か?

対するミノタウロスはその膂力をもって対抗している。が、その手に持つ大斧が溶け始めた。


ズズッ・・・ギィンッ!


炎の斧を受けた大斧の柄が折れてしまった!先ほどは受け切っていたのになぜだ?刃の腹で受けなかったからか?そんな疑問を他所に少年はにやりと不敵に笑う。


「どっせーーーい!!」


振り切った勢いをそのままに右へ回転。それに付随する形で炎の斧が水平に薙がれる。

ミノタウロスは素早く斧、だったものを手放し迫りくる斧刃をガードする構えだ。右腕を立て左腕を添える防御の構え。


ガツンッ!


今度は金属同士の硬質な衝突音ではなく、重い石同士をぶつけたかのような音が鳴った。なんと・・・あの炎の斧を耐えるのか。

炎の斧はかなりの勢いでミノタウロスへとぶつかったが、その腕を半ばも切れていない。皮を裂き肉に届いたといったところだろうか。


「うそだろ?!なんで切れないんだよ!!」


「グゴオオオオオ!!」


再び拮抗状態へと陥った両者。その拮抗を破ったのは以外にも無手のミノタウロスだ。

ミノタウロスは少年へと前蹴りを放つ。しかし、少々距離が開き過ぎだ。難なくそれを後ろ跳びで躱す少年。しかしそれにつられて炎の斧も下がってしまいミノタウロスの腕を自由にしてしまう。

前蹴りで繰り出した足を引くことなく前傾に突っ込むミノタウロス。それを拒むかのように左手をミノタウロスへと向ける少年。それと同時に炎の斧も間に割り込んだが、なんとミノタウロスが左拳でそれを弾く。


「んなっ?!」


炎の斧が弾かれると少年もまた同様に弾かれていく。どうやら完全に動きが同調しているようだ。面白い術だな。

少年の態勢が崩れた隙をミノタウロスが見逃すハズもなく、負傷したままの右拳を叩き付ける。

完全に身体が流れた少年にはなすすべはない。と思ったが少年は横に流れた身体を素早く捻り仰向けになって拳を(かわ)す。

後衛職で体術の心得などないと思ったが、いやはやどうやらそうではなかったらしい。

2,3歩後ろへ跳んで態勢を整えた少年は「あっぶないなバカ!殺す気か?!」と叫んでいるが相手はモンスターだ。当然君を殺すつもりなんだと思うが、彼はどういうつもりで言っているのか。

その辺りの少年の考えはわからないものの、少年は殺る気十分らしく再度切りかかる。叩き落とし、切り上げ、時にミノタウロスの拳を炎の斧で受けたかと思えば受け流して槍で()く。

あの巨体を相手に肉弾戦?を繰り広げる彼は一体何者なのだろうか?一方ミノタウロスは表皮が軽く裂けたりする程度の怪我しか負っておらず、大してダメージを負った様子がない。


「はぁ、はぁ、はぁ・・・た、タフだなコイツ。」


「モオオオオォォ!!」


一転、今度はミノタウロスが連続で拳を繰り出す。打ち下ろし気味の拳は体格差からかなりの威力を持っているように見える。その拳を懸命に(さば)く少年。

ギィン!ギィン!と硬質な音が響き、明らかに少年が押されている。苦難に顔を歪め、玉の汗が(したた)る。明らかにパワー負けしているのを無理に流しているようだ。


「うぐぅ・・・このぉ・・・牛の!くせに!・・・調子に・・・乗るなーー!!!」


烈吼と共に大上段からの叩き付け攻撃を繰り出す少年。ミノタウロスは左腕でこれを受け止める。


大炎撃(グレテア・ハルバード) 出力全開(フルスロットル)!!」


炎の斧の赤い光が一層その輝きを増す。メリメリとミノタウロスの腕に食い込んでいくのが見える。


「・・・くううおおおおぉぉぉぉ!!!追加術式(カノン・コード)加速(アクセラエット)加速(アクセラエット)!・・・加速(アクセラエット)ォォォォ!!!」


ミノタウロスの腕に阻まれていた炎の斧が更に力強く光り輝いたかと思うと、精霊の活動が急激に活発になりついにはそのまま地面へと炎の斧が叩き付けられた。


ドオオォォン!


「ブモオオオオオオオオオオオォォォ!!!」


少年の炎の斧がミノタウロスの左肘から先を切り落とし、地面を抉る。それとほぼ同時に少年が宙を舞う。


「ぐぼっがはひゅう??!」


切り落とされたのとは反対の、右の拳を振り抜いた態勢のミノタウロス。その拳の餌食となった少年は10ミットほど錐揉(きりも)み状態で吹っ飛び3回地面で跳ねたのち壁へと打ち付けられた。

いくら彼が軽いといってもあの飛び方は異常だ。助かる未来が見えない。


「ソ、ソウーーーーー!!!」


「な?!だ、だいじょうぶなの?!ねぇ!ここからだと良く見えないんだけど!?」


「ソウが牛のモンスターに殴られちゃったの!危ないの!」


猫の獣人だと思われる黒髪の少女が言うなり駆け出す。

隣にいた赤い髪の少女は驚いた顔を向けたがその時にはすでに猫獣人の少女はその場にいなかった。

素早くミノタウロスへと接近する少女は両手に剣を構え、一気に肉薄する。


「オオオオ!」


右の拳を振り回すミノタウロス。その拳を軽やかなステップで避ける少女。

猫耳の少女は避けながらもミノタウロスの背後へと移動し双剣を叩き付ける。

だが、強靭な皮を持つミノタウロスを気付つけることができず即座に後方へと飛ぶ。

先程まで少女がいた場所にミノタウロスが腕を振るうが捕らえることができずに空を切る。どうやら少女の速度に対応できていないようだ。


「ミリー!ソウにポーションを!早くなの!」


少女は叫びながらミノタウロスの攻撃を避け続ける。時に腕を切り付け、時に足を狙うがダメージを与えるには至っていないようだ。


「な、アンタ危ないわよ!早く引きなさい!あたしが代わりに」

「ウチはへーき!早くソウを!助けてほしいの!」


「もーー・・・!んぐぬぅぅぅ・・・なんであたしがサポートの方に回らないといけないのよ!あたしが戦うって言ってるのに!」


「ん!ニコやる!」


赤い髪の少女が葛藤している間に(かたわ)らにいた少女が駆け出す。その手には緑色の薬瓶を抱えて。

あれは・・・ポーションか?しかしあのミノタウロスに殴り飛ばされた少年はもはや息をしていないだろう。駆けつけたところでムダになるのは目に見えている。

それでも懸命に走る白髪の少女。魔法陣の光によって多少は明るく見えるが、この薄暗い中を転びもせずによくもまぁ走るものだと感心する。


「ゴオオガアアアアア!」


ミノタウロスの方はいまだ猫獣人の少女を捕らえられていないようだ。しかし、少女とミノタウロスの距離が近づいているように見える。

少女の体力の問題か、ミノタウロスが少女の速度に慣れたかのどちらかだろう。いや、その両方かもしれない。

繰り出されるミノタウロスの攻撃を大きな動作で避ける少女は体力の消耗が激しいのだろう。既に息は上がり先ほどまでより足に力がない。さほど経たずに捕まるだろう。


「んー・・・ソウ!」


懸命にポーションの封を切り少年に中身を振りかける白い髪の少女。だが、やはり予想した通り反応がほとんどない。ポーション独特の緑の光が舞っていないのだ。

いや、予想よりも遥かに少ない光の量を見るに、あのポーション自体あまり品がよくなかったのかもしれないな。どちらにしても少年はもうダメだな。


「ニコ!ソウは?!だいじょうぶ・・・なの?!」


ミノタウロスの猛攻を避けながら猫獣人の少女は声をあげる。残念ながらその返事は決まっているな。

彼女らの心の支柱はあの少年だったようだ。少年が死んだことを聞いたらその場で戦意をなくすかもしれない。


「ん!へーき!」


?おかしいな?少年はもう死んでいるハズなんだが・・・。あぁ、幼い彼女にはまだそれがわからないのか。無知とは辛いモノだな。


「よかったの!」


花が咲くが如く華やいだ笑顔を魅せる猫獣人の少女。幼い子供の言葉を真に受けてしまったようだ。


「バルムさん直伝!肝臓打ち(レバーブロー)ーーー!!」


ドゴンッ!


「ゴオアァ!」


いつの間にかミノタウロスの背後へと接近していた赤髪の少女が叫びながら飛び掛かっていた。

その両手に強い魔力の波動を感じる・・・『魔硬』持ちか?鈍器で叩き付けるような音がしたぞ。大したものだ。


「か、かったぁい!?なによこれー!」


「ブフゥ!ブモオオオオォォ!!」


だが、その1撃も効かないか。やはりあの変態が(かなめ)として用意しただけあって恐ろしく頑丈だな。

囲まれたとみて腕を振り回すミノタウロス。その正面に立ち攻撃を繰り返す猫耳の獣人が最前衛で、ミノタウロスの後方をキープする赤い髪の少女が討伐役といったところなんだろう。

だがこの攻防は先ほどの少年ほど保ちそうにないな。


「・・・いってててててて・・・。」


・・・は?


「あー・・・マジでいてぇ。ニコ、ありがとな。危ないからちょっと下がってな。」


「ん!」


「テト!悪い!もう大丈夫だ!ってんぐぅ~~~~??!いってぇ!また骨やったか?!くそ!すぐにソイツを殺す!下がってくれ!」


「わかったの!」


満面の笑顔を咲かせた猫獣人の少女がミノタウロスの攻撃の合間を縫って距離を開ける。


「おいこらミリー!お前『魔硬』禁止だって言ったよな!なんで使ってるんだよ!」


「だ、だって!アンタがやられちゃったしテトだけにしておけないじゃない!」


「俺はやられてない!いいから下がれ!テトが撤退できないだろ!」


猫獣人の少女が距離を取ったのはそのタメか。赤い髪の少女はすぐに駆け出しミノタウロスから距離をとった。

白い髪の少女も同様に拙い足さばきで駆け出していき、赤い髪の少女と合流を目指すようだ。

自分以外の者が十分な距離を取れたと判断したであろう猫耳の獣人少女がミノタウロスへと駆け迫る。

迎え撃とうとするミノタウロスの拳を撫で切りにしながら駆け抜ける。彼女も離脱するようだ。

ミノタウロスは急に目の前からいなくなった少女をキョロキョロと探すが、その頭に石が()たり飛んできた方向へと意識を向ける。


「おいこら牛野郎!随分と暴れてくれたなこの駄肉め!なんで草食動物と人間のハーフが食人鬼(ハンニバル)なんだと小一時間ほど問い詰めて説教したい気持ちで胸がいっぱいだが、それ以上に俺は怒っている!オコなのだ!わかるかこのバカ!牛男!!」


「ゴ・・・ゴオオオオォォォォォ!!!」


ミノタウロスは少年の口上に耳を傾けることなく走り寄る。当然だ。あのモンスターは人に近い形はしているが知能なんてないただの猛獣だ。話しを聞くわけがない。


「わかってないようだな!わからないなら教えてやる!」


少年はそれでも意に介さず口上を続ける。頭でも打ったのだろうか?この状況で何がしたいのだ?


「それはな・・・お前が生涯洗ったことがないであろうその汚い(バッチィ)手で俺の愛妹(テト)に触れようとしていたからだ!そんなことが許されるか?否!断じて否である!!」


その理屈はどうなのだろか?汚さよりも危険を訴えた方がいいと思うのだが・・・。


「よって汝は死刑である!(じじー)(笑)が許してもこの俺が絶対に貴様を許さん!悔いて死ね!足掻いて果てろ!」


少年・・・いま神と言った部分辺りが二重音声(かさなって)でじじーと聞こえたが、聞き間違いだろうか?


術式(コード) 冒険級火属性(アーベント・フレイム) 実行(ラン) 火の精霊()らよ 我が魔力(マナ)を糧に炎を(かたど)れ 我が敵を(ヤー・イニミークス)焼き尽くす業火よ(ヘルベレーネ)


不敵に笑う少年がミノタウロスを指差す。そこに向かって歪な炎の塊がゆっくりと近づいていく。


奴の周囲の空を喰らえキスラロート・アッシェン 燃え上がり焼き尽くす(オーベン・トー・)輪舞曲を(フレイムロンド)!!!」


少年が詠唱を終えた瞬間、炎の塊がぶわっと拡がりミノタウロスを包み込む。初めは全体を炎が覆っていたがすぐに首から上だけに集約し、ゴウゴウと燃え続ける。

しかし、『炎耐性』持ちのミノタウロスを焼き尽くすことは不可能だろう。現に体皮が燃える様子はない。

それどころか薄っすらと赤い被膜がミノタウロスを包み込んでいる。あれは魔法抵抗の証しだろう。

それでも鬱陶しそうに腕で炎を振り払おうとするミノタウロス。炎が()かずとも視界が遮られるらしい。少年はこれを狙っていたのだろうか?


「あー・・・いててて。おーい!もう終わったぞー!みんな集合ー!」


「ソウ!無事でよかったの!」


「あんた・・・思ったより頑丈ね?もうダメかと思ったわよあの飛び方。」


「ん。ソウ、いたい、ない?」


「ありがとうニコ。大丈夫だよ。インパクト(衝突)の瞬間に自分で跳んで力を受け流したし。それでもメチャクチャ痛かったけど・・・。」


言いながら白髪の少女と猫獣人の少女の頭を撫でる少年。赤い髪の少女は(せわ)しくチラチラと少年を見るが、少年はそれを特に気にしていないようだ。いつものことなのだろうか?


「それにしてもアイツが『炎耐性』持ってたのは意外だったな。牛が炎に強いってなんの冗談だよ?焼肉できないじゃんね?」


「それであんたの非常識な魔法と渡り合えてたってわけね?それにしてもミノタウロスを倒しちゃうなんて・・・アレ、まだ動いてるけど倒したのよね?」


「あぁ、大丈夫だよ。もうすぐ息絶えるから。」


「ブモオオォォ・・・。ブモオオォ・・・。」


「だ、だんだんと元気がなくなっていってるわね・・・。」


「炎が効いてないのにどうやって倒せたの?」


「ん?あーそうだなー。ちゃんと説明してあげた方がいいなこれ。でもちょっと待ってねー。」


思案顔になり周囲を見渡す少年。いったいなにを探しているんだ?


「・・・あ、見つけた?カナデさんは流石だなぁ。」


見付けた?何をだ?少年の視線の先は・・・後ろの壁か?


「いやいや!なんでそんなお約束な反応するのさ?お前だよお前。さっきからずっと俺らのこと見てただろ?誰だよお前?」


なっ?!わ、我を知覚できるモノがこの世にいるのか?いやしかし・・・まさか?

そう思いゆっくりと右へ左へと移動してみるが、少年の視線は我を捉えて離さない。こんなに見られたのはこの世界に生まれ出でて初めてだ。



――――――――――――――――――――――――――――――



遡ることミノタウロス(牛面)戦直前。俺とカナデさんはこの部屋に入った瞬間に違和感を覚えていた。


(なんか不自然な魔力の流れがあるぽいね。)


《はい、マスター。どうやら標的は目の前の牛以外にも何かしら控えているようです。》


(んー、でもなんか稀薄というかふわふわっとしてて、あんまり脅威とかなさそうな感じ?)


《現状はその認識で問題ないかと。霊体系の魔物の波動に近いですが正体は不明です。》


(それなら牛を絞めてから考えるか。牛人間くらいならすぐに倒せると思うし。)


《単体ランクがCオーバーの個体ですので油断は禁物です。マスターは一芸しかないのですから尚更ですね。》


(そんなことないよ!?俺ほら『姿勢制御』と『視覚強化』があるから近接もいけちゃう万能タイプだよ!)


《・・・ふっw》


(鼻で笑わないでよ!!地味に効くんだから!!)



――――――――――――――――――――――――――――――



なんてやり取りをしていたくらい前からコイツの存在には気付いていた。思い出したらちょっと悲しくなったのは内緒だ。


「それで、お前は何者なんだ?ここにいるってことはこのダンジョンの・・・いや、元ダンジョンの関係者か何かか?」


ちょっと強めに問いかけると段々とそいつは存在感を増してきた。どうやら気合いを入れてるようだな。


「・・・れは、・・・住ま・・・。な・・・あり・・・。」


「はぁーーー???何言ってるか全然わかんないんですけど?何が言いたいの?もっとハキハキ喋ってよ!」


ちゃんと話しをしてほしい。俺は至極当然でどこもおかしくない純然たる事実をお伝えしたのだが、何故かそいつはプンプンし始めたような雰囲気を醸し出してきた。怖いんですけど?


「普通にしてるのになぜか怒られるこの理不尽に憤りを禁じ得ない。」


「ソ、ソウ?誰と話してるの?」


「ん?いや、誰かは俺もわかんないんだけど、その辺りにふわっとした感じのヤツが1人?1匹?とにかくなんかいるんだよ。でもちゃんと喋ってくんなくってさー。ご不満だよマジで。」


「ちょ・・・ちょっと!やややめなさいよ!お、お、驚かそうっていいいってもあたしには通じないんだからね!平気なんだからね!?」


「ミリーの心配はしてないよ。特に気にもならないし。テトは何か感じない?」


「なんでよ?!」とかなんとか騒ぐミリーは安定の放置プレーしてテトにゃんの野性的勘に聞いてみる。


「その辺・・・なの?うぅ~・・・なんとなくだけど、ゾワゾワする気がするの。ちょっと、イヤ・・・かもなの。」


「あははははは!お前嫌われてやんの!マジ受けるー!!っていたたたたたた!!あーもう!笑うと痛いなコンチクショウ!!」


笑ったり動いたりする度に肋骨やらわき腹やらがビキビキギシギシと痛んで仕方がない。あのくそ牛め・・・次はもっと苦しむ方法で殺してやらんと気が済まないな。


ドサッ


ちょうど牛への恨み言を考えてたら牛が倒れる音が響いた。ビクンビクンと痙攣してるからもう少しかかるかも?思った以上にタフな牛だ。


「あと少しで終わるからあのまま放置しよう。危ないから近付かないようにね。」


最早もがくだけの力も残っていないような牛野郎だが近付くのは危険だ。牛なんてみんなバカだから脳味噌ダメになってもしばらくは安心できないし。安全マージンはしっかりとるべきだと思う。


「そんで、そこのそいつがナニモノかは知らんけどこの元ダンジョンのことを知ってるなら話しくらいは聞きたいなって思うんだよね。」


《存在が不安定すぎて姿形も出せないようですし、会話は困難かと。強いて挙げるなら眷属化がお手軽かと。》


「あー、あったねそういえばそんな機能。真っ黒謎助含め完全に失念してたわー。」


そうと決まれば早速やってみよう。できることならゲロマズマジックポーションに頼りたい気持ちでいっぱいだが、さっきポーション使っちゃったからいまはやめておいた方が良さげだろうな。怖いし。

HP用とMP用で競合しない仕様なのか今度他の生物使って確認してみなきゃなー。てか俺みたいにポーションの魔力制御して摂取したら平気とかってパターンはないんだろうか?色々と実験してみるのも面白そうだ。


「いちおうこっちの言葉は聞こえてるし理解できてるって認識で話しを進めてみよう。えーっと、名前がわからないから不便極まりないが、そこのふわっとしてるの、ちょっと話しがある。」


先程絞り出すようなか細い声が聞こえてきた方向へ話しかけるが、(はた)からみたら虚空に語りかける痛い人か怖い人だ。足元に人形でもおけばまだ対外的にはマシなのだろうか?


「・・・・でい・・・。」


またもや何かを言ってるようだが全然聞き取れない。俺のヒアリング能力の問題じゃないと思うんだ。カナデさんでも拾えないって言ってるし。


「返事は・・・特にいいや。どうせ聞こえないし。それで話しってのは俺の眷属やらないかって話しなんだ。多分俺の眷属になれば多少は強化されるハズだぞ?どうだ?」


一息に要件を伝えると、それなりにまとまっていた気配がグニグニゴニョゴニョとウゴって薄くなったり濃くなったりと明滅を繰り返すかのような挙動を取り始めた。

悩んでるのかな?変な悩み方だなーなんて考えつつメニューを開く。眷属化のメニューをおさらいしてみるが、今回も任意同意かな?意思の疎通ができないと契約とかムリくさいし。


「わ・・・て・・・・いく。」


なんて言ってるかは全然わかんないけどとりま任意同意の項目をポチってみる。


ギュワン


すると知らない内に同意を得られていたらしく少しだけ懐かしい魔法円が飛び出してきた。その魔法円の光がそこのソイツを捕まえたような雰囲気を感じてなんとなくうまくいってるような気がする今日この頃。

あとは自動でオートで手放しだもんとのほほんとした気分でただただ眩しい光りを見つめる退屈なお時間が過ぎ去っていく。やっぱり対象が見えてないと感動とかあんまないな。

実感もないんだからせめて知覚できるなにかが欲しいと思ってしまうのは俺がこのミロワールドにまだ何かを期待しているからなのだろうか?答えはわかりそうにない。


《対象者の同意を確認できました。対象の眷属化を開始いたします。主たる契約対象を選択してください》


久々?のカナデさんのような合成音声が響く。これをカナデさんっぽいっていうとカナデさんが怒るから言わないけど、やっぱり声はカナデさんっぽい。

・・・ゾワッとした。どうやらカナデさんに心中を読まれていたっぽい。そんな冷たい眼?で俺を見ないでいただきたい。そろそろ洒落にならないレベルで気持ちよくなりそうで怖いんだよ。


「住処が必要かどうかわからんが、このマイダンジョンに住めそうか?住めそうならこれを住処にしてくれ。食事は魔力なら吸っていいぞ?仮にもこれは現役のダンジョンだからな!」


なんの根拠もない粋がった自身に見えるかもしれないが実際俺のマイダンジョンの魔力濃度はバカにできない。最近なんとなくその魔力保有量が上がってる気がするんだよ。俺自身と何かしら関わりがあるのだろうか?

そのように俺が何を思おうが関係なく契約の儀式は進む。例によっていくつかの選択肢をスルーしたり必要ないと突っぱねたりしてる内に契約が完了した。俺の足元を照らしていた魔法陣も光りを失っていた。


「ま・・・眩しかった・・・。」


「おぉ、成功したな!ちゃんとさっきより見やすいぞ!」


先ほどまでふわっとした何とも形容し難いモノが形を成し、俺たちの前に現れた。


ただし全裸で。

お読みいただきありがとうございます。

強くて逞しいムキムキの牛。

バッキンバッキンの筋肉を誇る牛。

見た目だけでもかなり凶悪だなと常々思うモンスターですね!

衣類の描写がありませんが、どうなってるのかは貴方の想像力次第です!


次回予告

新キャラ登場

たまにしか使わない機能

初めてとみせかけて実は2回目!

サイリウ○は登録商標っぽいので避けました

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