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ブレイブストーリー その1

今回はサイドストーリーである異世界勇者物語第1話です。

短めにトントン進めていきたいと思っています。

この世界に来てから既に1年になる。元々はただの高校生だった俺達も、いまではすっかりこの国の人間だ。

街を歩けば黄色い声や野太い声での声援を受け、城に帰れば専属のメイドや執事たちのようなお世話係に囲まれる生活。初めはどうかと思ったがいまでは日本にいた頃よりも過ごしやすいこっちの環境にすっかり慣れちまった。


「もう帰りたいとも思えねぇ。お前らもそうだろ?いまさら帰りたいだなんて思うか?」


「いや、全然そんなこと思わないよ!僕としてはこっちの世界の方が肌に合ってるしね!」


「俺はどっちでもいいが、面倒なことが少ないこっちは気に入ってるぜ。勉強もしなくていいしな。」


「私は元々あちらに未練がありませんでしたから。それに、あちらにはない魔法に対しては興味が尽きませんしね。」


それぞれに返事を返してくる俺のパーティーメンバーたち。


「やっぱお前らもそうか!そうだよな!なんで姫さんは改めてそんなこと聞くんだ?」


「素敵なお返事、ありがとうございます勇者様方。皆様が我が国へ来られてから今日でちょうど一巡りの時が経ちましたので、改めてお考えをきかせていただければと思った次第にございます。」


「そんなことかよ。こんだけよくしてもらってんだ。そうそう帰りたいだなんて思うわけねぇって。」


「それは何よりです、アーガード様。ときに皆様方、鍛錬の方はいかがでしょうか?」


「あぁ、だいぶいい感じだぜ?昨日も騎士団長のマスクルさんに褒められたしな。もう教えることはほとんどねぇってよ。」


「そうそう!僕も副団長のシュネーリさんに褒められたよ!僕くらい速ければどんな敵とだって戦えるだろうって!」


「ローもウーもかなり褒められてただろ?」


「あぁ、俺も副団長のシルトさんに十分な盾捌きができるようになったって言われてたわ。あんま守ってばっかなのは性にあわねぇんだけどな。」


「私もそうですね。宮廷魔術師のケントニス氏が自身と同等の高みにきていると評してくれましたし。」


「そうですか。私も報告を受けておりますが、皆様方のご上達ぶりには驚かされるばかりでございます。既に皆様方はこの国のトップクラスの実力を身につけられたということですもの。」


口元で両手を合わせてニコニコと笑うこのお姫さんは、この国の国王様の1番上の子供らしい。名前はディザイア=オーバル=リヒトレグヌス。『聖なる光の降る国(リヒトレグヌス)』の第一王位継承者だ。そして、俺たち4人を召喚した張本人でもある。

この世界に来て初めての記憶はこのお姫さんから始まってる。薄暗くてロクに周りも見えねぇ部屋の中で、このお姫さんだけがはっきりとよく見えたのを覚えている。あとになってあそこは石壁に囲まれた部屋だったってわかったってくらいにこのお姫さん以外は見えてなかった。

その薄暗い部屋の中でお姫さんは俺たちに向かってこういったんだ。


―――――――――――――――――――――――――――――――


「皆様、突然のお呼び出し誠に申し訳ございません。私はこの国、『聖なる光の降る国(リヒトレグヌス)』の第一王位継承者ディザイア=オーバル=リヒトレグヌスと申します。

早速ではございますが、皆様に1つだけお願いがあってこうしてご挨拶をさせていただいておりますことをご理解いただければと思います。」


「お願い・・・だ?ふざけんな!どこだここは?!なんだそんな国?わけのわかんねぇこと言うんじゃねぇよ!!」


「・・・お気持ちはわかります。突然こんなことを言われましても困惑されるのが当然かと。ですので、私のお願いを言わせていただく前にこの国の状況をご説明させていただきたいと思うのですが、よろしいでしょうか?」


状況がまったくわからないんじゃ話しにならないってことで、俺たち4人はその話しを聞くことにした。その話しによると、近く人類の敵となる魔王が現れ破壊の限りを尽くすだろうということ。それと、その魔王の影響によって近隣の国々が戦争を起こすだろうということ。

どっちも意味がわからねぇって思ったね。魔王?戦争?そんなもんどっちも俺には関係ねぇし、馴染みもねぇ。どころか冗談にしか聞こえなかった。


「ふざけんじゃねぇぞてめぇ!何が魔王だ戦争だ!冗談いう為にわざわざ俺を呼び出したのか?ざけんな!とっとと帰らせろゴラァ!」


「・・・やはり、信じていただくのは難しいようですね。ではまずこちらをご覧ください。」


光よここに在れ(リヒト・エッセ)


お姫さんが手に持った杖を持ち上げて何かを呟いたと思ったら急に光の玉が現れやがった。しかも眩しいヤツだ!


「うおっ?!ま、まぶしっ!なんだコレ?!おい!やめろ!なにすんだコラ!」


他の3人の野郎共も口々に眩しさに不満の声をあげた。その数秒後にゆっくりと元の暗さを取り戻してようやくまともにお姫さんが見える様になった。


「いまのが魔法です。言い伝えによれば、皆様方の世界には魔法がないのだとか。これで少しは信じていただけますでしょうか?」


突然魔法だなんだといわれてもそんなもん俺にはわかるわけもなかった。トリックか?映像か?いや、目の前でやってたんだ。手品かもしれねぇけど映像はねぇか。


「私は小さな魔法しか扱うことができませんが、彼の魔王は一夜にして国を滅ぼす程の大きな魔法を扱うと聞き及んでいます。私たちだけではその脅威に対してなすすべがないのです。

ですが、異世界から来られた皆様方は違います。この世界の唯一の神であらせられる全知神様のご加護を色濃くその身に宿している皆様方ならば、彼の魔王にも対抗出来得るお力を身につけることが可能なのです!」


「次から次へと言われても全然わかんねぇな。その言いぶりだと、俺、いや、俺たちは訓練すればすげぇ魔法を使えたりして、その・・・魔王とやらを倒せるってことなのか?」


「その通りでございます!」


「はぁ~なんなんだよこれは?おいお前ら。お前らはどうすんだ?」


「はいはーい!僕はやりたいでーす!なんか勇者様みたいで憧れるじゃん?なんか楽しそうじゃん?」


「俺は別にどっちでも。ここで生きていくのに必要ならやるし、必要ないならどうでもいい。」


「そうですね。私はあちらに興味魅かれるものありませんでしたし、魔法というものは面白そうです。私も扱えるのであれば是非とも。」


「あっさり決めやがんな?それでいいのか?」


「だってだってー、魔法なんて面白そうじゃん!ゲームみたいで楽しそうだよ!」


「帰れるかわかんねぇしな。やれることくらいはやって、ダメなら諦めんよ。」


「ちなみに貴方はどうされるんですか?えっと・・・?」


「名前か?あぁ、そういや名乗ってなかったな。俺の名前は・・・名前・・・は?」


「なになにどしたの?名前って名前のこと?・・・あれ?そういえば僕ってなんて名前だったっけ?思い出せないや!あはははは!」


「どうやら俺もそうらしいな。別に名前なんてなくても不便はねぇけどよ。」


「軽いなお前ら?!いや、名前がねぇってどういうこった?・・・あ、ケータイ!ケータイに名前あるだろ!ケータイどこだ?!」


「所持品は何もないようですね。私もスマートフォンを探してみましたがありませんでした。それに生徒手帳も。」


「あ、ホントだー!マジでー?てことはゲームできないってことじゃん!じゃーやっぱり魔王倒すゲームしなきゃだよ!暇じゃん暇ー!」


「学ランの裏地に入れた名前もなくなってやがるな。こりゃ探すのは諦めた方がよさそうだぜ。」


「はぁ・・・なんか慌てた俺がバカみたいじゃねぇか。ないならないでしゃーないってな。」


どうやら俺たちは記憶が怪しいらしい。これがここに呼び出された影響なのか?考えたってわかるわけねぇしグダグダいっても仕方ねぇか。


「お姫さん。あんたに協力したら俺たちはそれなりの扱いをしてもらえるんだろうな?」


「もちろんです!」


―――――――――――――――――――――――――――――――


あれから俺たちはそれぞれに合った訓練をし、この世界のことを学び、この城この街この国にいる人らのことを知った。日本ほど平和で豊じゃないが、日本以上に愛国心ってヤツに溢れていた。悪かない国だ。


「そうしましたら、これからのことをもっと具体的に皆様へお伝えしていかなければいけませんね。会議室へご同行願えますか?」


お姫さんはそういって俺たちを普段は絶対に入ることのできないエリアの特別塔まで連れてきてくれた。どうやら用があるのはここの最上階らしいな。


「ここには我が国の最高意思決定が行われる特別会議室、通称『祈り奉る小部屋プリエル・コントゥール』がございます。」


カツーン カツーン とお姫さんの足音だけがヤケに響く長い階段を登っていく。


「最高意思決定、ですか?それは国王様がお決めになられるのでは?」


「いいえ、ウーガード様。我が国は王政を採ってはいますが、同時に宗教国家でもあります。ですので、最高意思とは全知神様の御意志を指します。」


「全知神様の?」


「えぇ、全知神様です。こちらの会議室は少々特殊な造りをしておりまして、教会の秘儀を惜しみなく注ぎ霊格を高め存在を押し上げ中の会議の全容を常に全知神様が見守っていてくださることが可能な場へと整えられているのですこれは以上はないというほどに素晴らしい会議室なのですなぜならば私たちをいつも見守ってくださっている全知神様が余すことなく細部まで我々の仔細をつぶさに御覧になれる場が整っているということですのでそもそも私たちと全知神様とはそもそもの霊格がかけ離れ過ぎているために次元そのものが解離し大いなる御力を御持ちの全知神様でさえ・・・・・・・・・。」


「そ、そうですか。ご説明ありがとうございます。」


「いいえ。あまりに拙い説明となってしまって申し訳ございませんわ。それではどうぞこちらへ。」


いつもと違ってちょっと興奮気味のお姫さんには流石に引いちまったが、ここは宗教国家だからな。今更どうこうってこともねぇか。ウーのヤツは面食らっちまったみたいだけどな。

辿り着いた最上階にある会議室の中は思ったよりも普通だった。もっとごちゃごちゃしてるもんかと思ったんだが、普通に高級そうな会議室って感じだ。他に見たことがねぇからなんともいえねぇが。

円上の机にがっしりとした椅子。そういえば窓がねぇな?なのに明るいってのはどういうこった?壁に松明や蝋燭みたいなもんもねぇし、魔法具の明かりも特に見当たらねぇ。天井か?部屋の中央付近の天井が大きく窪んでいやがるし、もしかしたらあそこが明かり取りの窓になってるのか?日本みたいに蛍光灯があるわけでもねぇしそんな感じだろ・・・う?


「な、なんだありゃあ?!?」


「あらあらうふふふっ。もう気付かれてしまったのですか?アーガード様。そちらは最後にご説明させていただこうと思っていたのですが、見つかってしまっては仕方ないですね。」


「な、説明って・・・お姫さんこれ・・・いや、コイツは・・・?」


「えぇ、仰りたいことは重々承知しております、アーガード様。コレは全知神様への信仰を形にするべくこちらへ設置(・・)されているモノ(・・)でして、これによって世界で最も全知神様をお近くに感じることができるようになるというのも中々どうして皮肉を感じざるを得ないのですが必要なモノですのでご記憶くださいませ。」


俺に続いて上を見上げた仲間たちも全員たちまち絶句しちまった。あの普段はうるさいお喋りなフーガードのヤツまで何もいえねぇんじゃそれも仕方がねぇことだろう。なんせ、そこにアルのは・・・


「これこそが我が『聖なる光の降る国(リヒトレグヌス)』の最上の祈り部屋、『祈り奉る小部屋プリエル・コントゥール』の真骨頂でございます。勇者様方!」


日本のオタク文化では見慣れた長い耳を持つ種族。この世界に来て初めて見る複数のエルフの頭が、一際豪奢なシャンデリアへと飾られていた。

4人の勇者とお姫様。

王道ファンタジーになるのかどうかは今後の彼らの頑張り次第です!

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