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お礼をしながら回るから、お礼参りと言いたいところ

感想、評価をいただきありがとうございます(*´∇`)

読んでくださる全ての方々へ感謝の祈りを捧げながら、本編第56話を投稿させていただきますー!

これからも皆様に楽しんでいただけると幸いです(*´∨`*)


前回のあらすじ

カナデさん・ザ・ワールド!

陽だまりのような匂いを堪能

内臓機能をいじられるってそれどこの改造人間(バッタ)

カナデさんが俺の身体を色々といじくり回した結果、晴れて膀胱炎デビューと相成ってしまったがそのデビュー戦は本気でツラかった。わかる人にだけわかっていただければ俺的には十分なのであえて多くは語らないが、本気で痛くて本気で苦しんだことだけは言っておこうと思う。皆様も膀胱炎には重々お気をつけいただきたい。

それでもやっと終わった静かなる戦いの事を思い出すと安堵の息が漏れ胸を撫で下ろす。撫で下ろした手がなんだか曲線を描いたみたいな気がして自分の胸元を見てみると特に変化を感じることもなくいつも通りの普通の胸板だ。気のせいかな?


《ちなみにですが、マスターの場合は通常の数倍の濃度の要らないもの(毒素)が溜め込まれていたので痛みも通常の数倍になります。》


ぐふぅっ・・・できれば知りたくない事実を突きつけられてしまった。なぜ黙っていてはくれないのだろうか。知らないままだったら他の膀胱炎経験者の方々と分かり合えていたものを!やはしカナデさんは楽しんでやっているようにしか思えないっすよぅorz。


《今後再び同じようなことを繰り返さないようにご注意いただきたく言っています。今回はイレギュラーが重なりましたが、途中選べる選択肢は多くあったハズですので。》


「・・・それはテトやニコ、もしくはミリーを見捨てたらよかったって言いたいのか?」


《少なくとも選べる機会はあったかと。》


「論外だな。俺は自分が守ると決めたモノは何がなんでも守ることに決めてるもん。前世でやってたゲームじゃないからやり直しはきかないし、妥協はしないよ。」


《それでしたらせめて次善案も考えてください。ミリーが駆け出した際に呼び止めるのではなく、足を撃ち抜いてでも止める選択肢はあったハズです。》


「怖すぎるんですけど・・・マジ引くんですけど・・・カナデさんサイ○パスなんじゃない?あのタイミングでモンスター村へと突っ込む予想なんかできなかったんだし、「たられば」とか「あるべき論」とかは難しいんじゃない?」


俺の至極真っ当な反論に対してもカナデさんは首を縦には振らなかった。そもそも物理的に首はないけど意味合い的な方でもダメだった。とにかくまたこんなことがあったら困るので、次からは殴ってでも止めるようにとの約束をさせられてしまった。いやはや、女の娘を叩く趣味はないんだけどなー。それだったら鼻男や空気君を撃ち抜いた方が全然気が楽だもの。普通はまずそっちの案が出てくると思うんだ。やっぱりカナデさんたらサイコ系だよね。考え方が。


「「ソウ(なの)!!」」


悩みながらフラフラと寝室に帰ってみたら美幼女&美少女によるロケットダイブアタックに襲われる!ランチャー部隊による飽和攻撃が俺を襲う!ほぼ同時に炸裂した砲弾の衝撃によって若干宙を舞う俺ってウエイト(体重)軽すぎない?!


ゴッ! 「ふぎゅっ!」


愛妹たちを抱き止めながら押し倒されるという貴重な体験と共に背中と後頭部を強打!やめて!頭が悪くなっちゃうよ!


「あいてててててて・・・うぐぅ。テト、ニコ、おはよー。怪我はない?大丈夫?」


「うぅ~!ソウ!ソウ!ソウソウソウソウソウなの!ソウなの!!」「んー!!ソウ!・・・ソウ!」


二重音声(ステレオ)で響く2人の大音量が耳に痛いが、それも天使たちの美声(エンジェルボイス)だと思えば喜びしかあるはずがない。

かたやゴロゴログリグリと頭や顔を押し付けてくるテトにゃん。かたやぎゅうぎゅうとちからいっぱいくっついてくるニコ。あぁ、美少女畑に行くことはできなかったが桃源郷はここにあったんだ!ありがとう!グラッチィエ!スパシーバ!ダンケシェーン!

ぐすんぐすんズルズルと泣きまくりの2人の熱い包容が終わるまでに10分近くの時間を要したが、そんなに早く離れなくていいんだよ?と言ってあげたい。具体的に言えば物足りない。もっとだ!もっと熱くなれよでお馴染みの某テニスプレーヤーのしゅうぞ○さんを見倣(みなら)って俺も熱くプッシュしまくればいいのだろうか?延長料金はどこで払えばいいですか?


「あんまり泣いてたらせっかくの可愛くも愛らしいお顔が台無し・・・にはならないな。どんな時でも可愛いから最強だな!いやいや、とりま鼻は拭いておこうね。あとでカピカピになっちゃうし。」


近場に丁度いい布が置いてあったからそれを使って2人の鼻水や涎や涙(天使のしずく)を拭いてあげたが、よくよく見てみたら俺の服だった。うん、特に問題は見当たらなかったからスルーしよう。


「ソ、ソウ・・・こえ(コレ)・・・お、おひゃ、いへ・・・いへへみひゃぉ・・・。」


まだぐずついちゃってるテトにゃんが一生懸命伝えようとしてくれているのは多分「お茶淹れてみたの」ってことだろう。感謝と労いを込めて返事とナデナデを返し、一口啜(すす)るとホッと一息が自然と出ちゃうくらいに優しい味と香りだった。うん、無味無臭だ。きっと大量のお湯に少量の茶葉を浮かせたんだろう。テトにゃんのご実家ではお茶の習慣がなかったのかな。


「ありがとうテト。美味しいよ。」


お茶を淹れてくれたテトにゃんに重ねてお礼を言うと、「えへへ~」と顔をくしゃくしゃにして喜んでいたというか、泣きながら笑うという器用な表情をご披露してくれた。なんで俺は地球の物品を召喚できない身の上なのだろうか?もし地球の物品の召喚が叶うのならば、この世界の魔王でもなんでも(みなごろし)にしてDPへと換え、ムリヤリにでも地球最高のカメラを入手するのに。絶対記憶能力のスキルでもなんでもいいから永久保存ができるのならばすぐに欲しい。それくらいに愛おしい表情であることは間違いない。


「俺はテト()の為ならば魔王どころかこの世界を滅ぼせるかもしれない。」


《マスター、思考が外部へダダ漏れています。発言が病んでいますのでご自重ください。》


口にした覚えのないセリフを思わず放ってしまっていたらしい。でも全然恥ずかしくない。だって本心だもん。そもそもテトにゃんがこんなに泣いてるのも、不安な気持ちにさせちゃったのも全てはこの世界に邪魔な存在(モノ)が溢れているからだと思うんだ。

モンスターだったり盗賊だったり、時にはミリーだったり頭の悪い冒険者(ミリー)だったり。つまりはそういう連中を(ことごと)(すべから)く、一切合財(いっさいがっさい)情け容赦なく滅ぼせば平穏が訪れるのならそれを実行するのも(やぶさ)かではない気持ちでいっぱいだ。

この世界をテトにゃんとニコに優しいモノだけにしたい。未来の猫型ロボットを捕まえて独裁スイッ○を奪い取り、要らない存在をすべて消すのが妥当だろうか?それともオレンジのガラス玉みたいな神器を7つ集めて神龍へ願い奉る方が早いか?すぐには答えを出せそうにない難問である。

悩みながらもお茶を啜ったり抱きついてくるニコの頭を撫で回したり、テトにゃんの鼻水を拭いてあげたりと忙しい時間を過ごしていたがそれも長くは続かずに傍らにいた老婆の妨害により素敵時間は断ち切られてしまった。大した用事じゃなかったら怒るぞマジで!


「いつまでもグダグダと騒いでるんじゃないさね。いい加減朝食にでもおしよ。まったく。それにね、アンタを助けてくれた連中にも挨拶くらい行ったらどうなんだい?」


「あー言われて思い出したけど、そういえばお腹減ってたんだったっけ。テトとニコは?それに助けてくれた連中って?デブノン?」


「一気にあーだこーだというもんじゃないよ。それに助けてくれたのはブデノードの小僧っ子だろ?誰だい?ブデノンてのは。」


「なんだ、やっぱりブデノンであってるじゃん。もうすでにおぼろげな記憶になっちゃってるけど、彼に助けられたのはなんとなく覚えてるよ。その後は全然覚えてないけど。そっちはギルドに行けば会えるかな?朝食がてらに色々回ってみようかなー。」


現状の確認をとマーグル婆さんとテトにゃんから適当に聞いてみたが、特筆すべき情報は特になかった。

・あの後ブデノンに連れられて街まで戻った。荷車は2台とも運ばれてきたらしい。現在路駐中。

・マーグル婆さんの家で治療を受ける。この時点でかなりの瀕死。あちこちから出血してたし腕なんかヤバかったらしい。

・テトにゃん、ニコ、ミリーの3人娘がポーションの材料を大量に提供。マーグル婆さんの魔力を搾りつくす勢いで下級ポーションを作成。

・完成した下級ポーションを使って俺の怪我を治療。ミリーの怪我もついでに完治。マーグル婆さんの魔力と聞いて若干顔をしかめてしまったが仕方ないことだと思う。

・宿の部屋はミリーが何故か使っているらしく、料金の追加分はマーグル婆さんが支払っているらしい。謎ぃ。

・ブデノン達が帰還後改めて森の調査隊が放たれ、<ピクシー・ゴブリン>の集落が発見されたらしい。規模的には50匹くらい?ゴッキーのようだ。

・討伐隊は明日出発する予定。


「めぼしい情報はこんなもんか。ついでにポーションいくつ作ったの?」


「21本さね。アンタと違って1度に大量のポーションを練り上げる魔力量はないからね。私にはこれが限界量さね。」


「ふ~ん?魔力量とかなんとかそこんとこはよくわかんないけど、ムリしてへばったりしないでね?俺が意識ない時はマーグル婆さんが愛妹たちの面倒見てくれないと困るんだからさ。」


「なんで私がこの子らの面倒を見る前提になってるんだい?そんなの任された覚えはないけどね!」


「いや、未来のない老体が未来ある子供たちの面倒を見るのは当然でしょ?変なこと言ってないで健康管理は気をつけてね。これから朝食に出掛けるけど何か買ってこようか?」


「なんで食事のあともさも当然かのようにあたしの家(ここ)に来ようとしてるんだい!8日もここに居座っておきながらまぁだここに居続ける気かい!」


「えっ?ヤダよ。今日はちゃんと宿で寝るよ。あ、治療と寝床の提供ありがとね。愛妹のお世話もさんきゅ!むしろ癒されただろ?役得だな!ちなみにここに来る理由は簡単だ!もっとポーション作っておきたいからに決まってる!」


ちゃんと俺がおねんねしてる間のお礼も言ったしこれからの予定もちゃんと話したのに何故かばーさんがキレだしたのですぐに逃げ出した。いったい何が不満だと言うのだろうか?老婆の考えることはいまいちわからなくて困るぷー。


「それにしても、沢山泣いたせいでちょっと目の周りが赤くなっちゃってるなー。テトもニコもあとでちゃんと目の周り冷やそうね?それまで眼をこすったりしたらダメだよ?」


「うぅ~わかったのー。」「んー。」


ちなみにこれは余談だが、先程の情報の中で俺はマーグル婆さんにディスられていた。その内容というのも俺がボロボロで帰ってきたのに下級ポーションをかけるだけでみるみる回復していったことに対するものと、粗相がなかったことに対してだった。

曰く、「あれだけの重症がポーション3本で回復していく様は見ていて気持ちが悪かった」だの、「尿瓶やらなんやらの用意がないから漏らしたあとに片付けようと思ったが一向に粗相する様子がなくて気持ちが悪かった」だのという内容だった。気持ち悪い人に気持ち悪いって言われた俺の気持ちをどうか(おもんばか)ってほしいものである。

なんでも帰宅時に1本と次の日の朝と夜に1本ずつポーションを使ってそれだけでほぼほぼ完治したとのことだ。黒くっていうかグロく変色した俺の腕が治っていく様子は筆舌に尽くし難い程に奇妙でキモかったらしい。ほっとけし。

それは恐らくカナデさんが俺のスキルに干渉して『吸収強化』と『HP回復強化(小)』でも使った結果なんだろうと思う。もしかしたら『魔力操作』も使ったかもしれないがその辺は覚えてないので知らないし、カナデさんにも聞くだけ野暮ってもんだろう。黙って治療してくれたってことはきっとそういうことだもの。

そして、粗相に関してはカナデさんから既にことの顛末を聞き、その後遺症も十二分に堪能したのでこれ以上はそっとしておいてもらいたい。まったく、ちゃんと全部に理由があるのに気持ち悪い気持ち悪いと人聞きの悪いことばかり言いよってからに。今度1回しっかりとOHANASHIが必要かもしれんな、あのばーさんとは!

ついでの補足事項といえばポーションを5本ほどくすねてきたことかな。元々テトにゃんたちが材料集めてきたんだからいいよね?別に。まだまだ材料残ってるっぽいし、あとでまた追加で作ればいいし。

道中そんなことを考えながらもすぐに大将の宿屋へと到着したので愛妹たちには井戸で顔を洗って少し冷やしてくるように言い、俺はミリーが泊まっているという俺達が借りていた部屋へと進んでいく。この階段を上るのはあまり久しぶりじゃないハズなのになんだか久しぶりな感じがしてしまう。気分的には1ヶ月ぶりくらいに感じるな。


「おーいミリー。俺だーおれおれー。起きてるかー?これから朝飯食べようかと思うんだけど、お前もまだなら一緒に食うかー?」


なんとかかんとか詐欺とでも言われそうなフレーズだなとは言ってから気が付いたが、別に反省はしていない。こっちの世界ではそもそもそれ系統の詐欺は成立しなさそうだしな。電話ないし。


「・・・えぅ~。えっ?ご飯!?食べるわ!すぐに行く!・・・ってその声はソウ?起きれたの?!」


ドタバタずっこんばったんと五月蠅い音が鳴り響くが、初めの声は完全寝起きだったな。またご飯の呼びかけで起きたのか。食いしん坊タヌキ娘キャラ確定だな。


「あぁ、ついさっきなー。行くなら準備して下の食堂まで」「ソウ!!」


バンッと勢いよく開け放たれた扉が危うく俺の可愛いお鼻に直撃するところだった!マジ危ない!


「おいミリー!いまめっさ当たりそうになったぞ!俺のお鼻に当たったらどうする・・・ん、だーよ?」


一瞬にして膨れ上がったミリーに対するヘイト値が急速にしぼんでいく。というかもはや眼が釘付けでそれどころではない状態になってしまった。いま俺はミリーから眼が離せない。いや、正確にはミリーからじゃないんだけども、とにかく眼が離せなかった。


「なぁミリー。お前なんでそんな恰好して出てくるんだよ?」


「えっ?そんな格好って・・・別に変な格好なんてしてないじゃない?裸って訳でもないんだし、問題ないじゃない?」


(ほう)けた表情でコテンとこちらを見つめるミリー。んー、何がどうとは言えないけれどAとBの中間くらいだと思われるとだけ言っておこう。ついでに今日も薄いピンク色だ。もしかしたらミリーの好みなのかもしれない。あ、あとこの世界にはもしかしたらブラジャー的なモノは一般的に普及していない可能性も高くなった。まだサンプル数が少なすぎてなんとも言えないが、ミリーの薄いトップスの下にはその存在が確認できないからきっとそうだろうと思う。

ついでに言ってミリーのお腹はまだ少しぽっこりしていて脱キューピー宣言はまだとみた。もしかして15歳って数えで15歳なのか?だとすると俺が思ってたよりも実年齢がちょっと低いのかもしれない。もし俺の予想が正しければこの幼児体型と第二次性徴の中間くらいっていうのはしっくりくるものがあるというか、納得せざるを得ないというかそんな感じだ。うん。


「年頃の乙女?お前のことを乙女と言っていいのかわからんが・・・とにかくいまは乙女としておこう。その乙女がだな、そんなあられもない格好で外に飛び出してくるんじゃありません。ここはいちおう女性優先の宿だけど、俺みたいな男がいないって訳じゃないんだし。」


「また言ってるの?あんたが女の子だってことくらいあたしにもわかってるからいーわよそんな警戒しなくったって。」


「警戒じゃない単なる事実だ。それに、もし仮に俺が女だとしても言った通りここは宿屋だ。こういった場でしていい格好かどうかくらいわかるだろ?」


「変なこと言うのね、ソウって?別に男の人がいたって問題ないじゃない?あたしは確かに魅力的かもしれないけど、まだまだバルムさんみたいに大人の女性って言えるほどじゃないもの。男の人に見られたからって問題なんかないわよ。」


やはしミリーはバカだった。どこがどう問題無いのか小一時間くらい問い詰めてやりたい衝動に駆られるが、そんなことをしても多分この残念(バカ)頭では理解が及ばないことであろう。ホントになんでこうも頭だけが残念なのかな。


「見た目はそれなりに可愛いのに。」


「かわっ?!かかかかかわいくなんてないですわのことですわよ!!ななな、何を言っているのかはわからないわ?!」


顔を真っ赤にして狼狽(うろた)えるミリー。んむ~?なんか思ってたことがまたもや口から飛び出してしまったが、それにしたって慌て過ぎだと思う今日この頃。この世界の美醜感覚は俺と違うのかな?普通に言われてもおかしくない程度の顔立ちはしてるのに。それとも性格とか普段の生活態度とかがあまりにも残念なせいでそういうことを人から言われるタイミングがなかっただけか?

朝っぱらからタヌキ娘の際どい格好を拝み英気を養うことができたので次は腹ごしらえだと食堂へと移動する。ミリーの用意を待っている間に愛妹たちとも合流できたので現在4人のグループ行動だ。こいつにはその内、小さい娘や少し若すぎるミリーくらいの年齢層じゃないとイヤだと言っているタイプの人間がいることを教えてやらないとな。ちょっといまのままじゃ危なすぎるよ。


「大将おっひさー。なんか久々だね?元気してたー?」


「あんたか。こっちは変わらずやってるが、大変だったのはそっちの方じゃないのか?テティのヤツが心配してたぞ。」


「え~冷たくない?てか心配してくれてたのって大将でしょ?テティちゃんにはあまり詳しい内容は伝えていないとみた!」


「・・・そんなことより今日はどうした?なにか用事があったんじゃないのか?」


「あ、はぐらかされた。まぁいいや。とりま朝食をお願いしてもいい?お腹空いちゃってさーいまにもお腹と背中がくっつきそうなんだよね~。」


「変わった表現だな。だがわかった。ちょっと待ってろ。」


言うなり大将は厨房へと引っ込んでしまった。洗い物をしてる自称看板娘(おばちゃん)もそんなに珍しがってないところを見ると、俺の情報は大将で止まってると見て間違いないだろう。その後朝食を賑やかに終え大将一家に挨拶をしてから宿を出たんだけど、ミリーが俺の2倍近くの量を食べてたことを追記しておきたい。食いしん坊キャラでファイナルアンサーだな。


「次は・・・あんまり気ノリしないけどギルドかなー。」


「なんでギルドはあんまりなのよ?」


「んー、あそこは行くと色々と小うるさいお姉さん方がいるからちょっと面倒なんだよ。サブマスの1人も嫌いだし。」


「そうなの?でもちゃんとギルドにモンスターの討伐報告したりしなきゃなんでしょ?バルムさんがいつもしてたし。」


「いやまぁそう言われればそうなんだけどねー。」


煮え切らない思いを抱えながらギルドの中へと入っていくが、軽く見まわしたところでブデノンが見当たらないことが判明。同時に済ませたい用事が微妙になって更に面倒な気持ちになってきたが、受付に聞いたら教えてくれるかもしれないと一縷(いちる)の望みを賭けて列へと並ぶ。


「リーフさんお久しぶりー。」


「あ、ソウさん!お久しぶりです!」


「元気いいねぇ~リーフさん。何かいいことでもあったのかい?」


「いえ、ブデノードさん達にソウさんがヒドい怪我を負ったと聞いていたので・・・見たところ大きなお怪我もなさそうでよかったなぁって。」


「あらら、それはご心配お掛けして申し訳ない。いまは見ての通り元気ハツラツなので問題ないよ!ちょっと大げさに報告いってたのかな?ブデノードさんは大げさだなぁ。」


サラッとブデノンのせいにしてみたがリーフさんは特に疑うこともなく納得してくれたようだ。うん、この人ちょっと信じ(やす)すぎる気がするけど大丈夫なんだろうかと不安になるが、きっとミレーさんがうまいことフォローしてくれているんだろうと深く考えるのを止めておく。


「ちなみにブデノードさんは今日いないのかな?助けてくれたお礼を言いたかったんだけど。あ、もし助けてもらった場合の作法とかあればついでに教えてほしいんだけど?」


「ブデノードさんならもう少ししたら会議室から出てくると思いますよ。例の件でブデノードさんのチームの方に情報の整理をお願いしていますので。」


例の件って言われてもいまいちピンとこないんだけど?また何かブデノンがやらかしたのかなぁと疑っていたがどうやら違ったらしい。


《恐らくは<ピクシー・ゴブリン>の集落というか、巣の件でしょう。彼らがマスターのピンチに表れたのは調査の為に森を訪れていた際に、たまたまミリー達を見つけたのが起因のようですので。》


(ということは、あの時急いでミリーを逃がしたのがよかったのか。心を鬼にしてミリーの頭をドツキ回したのは正解だったようだな。)


「それと、モンスターに襲われていたところをフォローしてもらった際は通例として、同モンスターの討伐報酬代金相当を渡すケースが多いようですね。つまりはその場で臨時依頼を出して助けてもらったという体裁にする、といった感じでしょうか。」


「そこは多少の割り増し料金とかにはしないんだ?」


「えぇ、緊急クエストでは通常は割り増し料金にしますが、あくまでも基本は互助の精神ですので上乗せはしないようにしているんです。逆に上乗せをしてしまうと相手に失礼になってしまうのでお気を付けください。」


それでも単純に冒険者を助けるだけで通常の2倍の報酬が貰えるんだから十分といえば十分なメリットか。てかブデノンてばどれくらいのゴブをやっつけたんだ?それがわからなと相場の計算ができないな。


「あの時は確か、20匹くらいのゴブに囲まれていた気がするんだけどブデノードさんからの報告では何匹って扱いになってるの?」


「20匹・・・ですか?いえ、ブデノードさんからは10匹くらいの集団だったと。ただ、既に倒されていたゴブはそれ以上の数だったとの報告が入っていますので、ソウさんが仰っているのはその倒れていたゴブの方と見ていいかと思われます。」


あれ?そうだっけ?そういえば初めの集団は全部殺してたっけ?いや、まだいたような?なんかその辺の記憶があやふやだな。カナデさんも俺の身体の生命維持に手一杯であんまりちゃんと見てなかったって言うし、謎のまま終わっちゃう迷宮入りの事件で確定のようだ。


「まぁ、実際はどうかはわかんないけどゴブ10匹分くらいのお礼が妥当ってことでいいのかな?」


「そうですね。救出に手を取られてしまって魔石も取れなかったとのことですので、申告数で判断する他なさそうですね~。」


「つまりは大銅貨10枚分くらいが妥当な金額だと。税金とかはこれにはかかんないんでしょ?実際に魔石はないし正式な依頼(クエスト)でもないんだし。」


「はい、そうなります。」


「んむ~、でもさ魔石の回収できなかったならその分くらいは上乗せしても嫌味じゃないかな?」


「はい、今回の場合はソウさんたちの安全確保のために引き返すことになってしまいましたので、それくらいの上乗せは問題ないでしょう。」


ついでにブデノンたちは俺らを搬送してくれたあとにそのまま当初の予定である調査依頼を済ませているため、そっちの補填は考えなくていいとのこと。そこら辺は彼らもプロなので損得勘定はちゃんとした上で行動しているから移動やらなんやら(そこ)までをお礼の範囲に含めるのは失礼とのこと。なんか格好いいな。

彼らへのお礼の金額が決まって一安心といったところでブデノン達が会議室からゾロゾロとおいでなすった。タイミングが良すぎてなんとなくご都合展開な気もしたが、それなりにリーフさんと話し込んでたからそのせいかと孤独に納得する。ブデノンとの遭遇が運命とか思いたくないし。とりまブデノンとそのチームの方々に挨拶とお礼の一声をかけてからお礼の銀貨を手渡すことにした。その際ブデノンと交渉したら時間かかりそうだったので交渉は頭脳労働担当っぽい人としたからスムーズにことが進んで何よりだったって部分を強調しておきたい。きっとブデノンに言ってもムリっぽいし。


「それにしてもあの大怪我がこうも見事に治るとは・・・なにか特別な手当でもされたのでは?」


「いやいや、大怪我っていうのがそもそも大袈裟だっただけだよ。ほとんどがゴブの返り血だったし、軟膏塗って良く寝てたら見ての通りのツルスベツヤ肌の復活だよ。元々怪我の治りも早い性質(たち)だしね。」


頭脳労働担当の人はトメズというらしく、彼はしきりに俺の快復具合を気にしてくる。多分ポーションの存在を疑っているんだろうけどそこら辺は軟膏と体質ってことで押し通すことに決めた。ブデノン的にはあまり興味のない会話らしく、大きなあくびをしながら頭をボリボリとかいていた。なんとなくフケとか飛びそうだからやめてほしいんですけど。


「そういえば、コレは大きな声(オフ)では言えない(レコ)情報を1つ。明日、(くだん)のゴブの巣を狩ることに決まったようで。貴女は参加されるので?」


「そうなんだ?でも残念ながら参加はできないよ。だって俺Fランクだし。」


「・・・あれだけの戦闘力がありながら?」


「あれだけってどれだけ?何を指してるか知らないけど、荒事は得意じゃないから街の中からみんなの無事を祈っておくよ。」


微妙な言葉使いのトメズ氏。多分敬語禁止令のせいで話しにくいんだと思う。要所要所危な気だし。よくそれでブデノンと一緒にいれるなぁなんて思ってたけど、そもそもブデノンは話しを聞いていなかった。そんなに人の話しを聞かないタイプなのなら初対面の時もスルーしてくれればよかったのにと思ってしまうのも仕方のないことだろう。

必要なやり取りも終えすぐに解散。特に新しい情報はなかったな。討伐隊の件はマーグル婆さんに聞いてたし。裏情報ぽい雰囲気出してたけど近所の老婆が知ってる話しだったのはなんか残念だな。

それからは森へと行くための準備を屋台やらなんやらで済ませていざ出発!となったらミリーから待ったがかかった。そういえばなんでいるんだろう?いまさらだから別にいいけどさ。


「ちょっと待ちなさいよ!あたし丸腰で行くわけ??!」


「あ、すっかり忘れてた。そういえばお前のショートソード壊しちゃってたんだっけ?なら代わりにこれあげるから使ってよ。ほとんど使ってないからほぼ新品だよ。」


「これって・・・もしかして鋼鉄製のショートソード?」


「よくわかったな?いちおう買ったけど特に使ってなかったからミリーが使ってよ。多分この間のショートソードと見劣りはしないくらいの性能はあると思うから。」


「見劣りどころか、あたしの持ってた安物のショートソードと違ってかなりの品じゃない!こ、こんなの貰えないわよ!」


「そんなに言うほどのもんじゃないだろ?確か銀貨10枚ちょっとくらいだし。」


「ぎ、銀貨10枚・・・。」


ゴクリ・・・とでも聞こえてきそうなほどに手元のショートソードを凝視するミリー。別にそこまで大金って訳でもないだろうに?


《マスター。そもそものマスターの認識がズレていることを自覚してください。》


(ズレって?別に銀貨10枚くらいだったらゴブを50匹以上殺して回ればすぐに稼げる額じゃん?)


《・・・通常は50匹のゴブを1度に退治することは困難ですし、そもそも刃物は消耗品です。いま手渡したショートソードくらいの品では余程うまく立ち回らないと目標金額を稼ぐ前にダメになるでしょう。》


(あ、そういえば耐久性とか全然考えたことなかったかも・・・。ゴブだって簡単に切れるけど骨とか硬いし、刃こぼれや場合によっては折れたり曲がったりだってこともあるもんね。失念しておりました。)


なんか異世界ファンタジーだからってゲームの世界と同様に考えてる部分がまだまだあったことに驚いた。基本的に、ゲームや小説の世界なら剣は折れたり曲がったりを考えない。たまに耐久度とかを示す値を設定してるものも見受けるが、普通に剣と剣をぶつけあったからって欠けたりなんだりっていうのまで考えてはいないだろう。考えてたらキリがないし。

そう考えると銀貨10枚はちょっとこの辺では考えられないくらいに高価な品なのかもしれない。ザコ狩りには向いてないし、大物を狩ろうと考えれば剣よりも槍とか斧とかの方がまだ扱いやすいだろう。そういう意味での認識のズレか。んむ~、でもそんなことまで考えても仕方ないし、俺には魔法もあるからお金関係はあんま気にしない方向でいっか。足りなければギルドにいってもらえばいいだけだし。うん。


「ミリー、剣は消耗品だ。それは使い潰しても全然構わないから気楽に使ってくれ。金よりもまず命。お前の身の安全の方が遥かに大切だ。」


「ふぁっ?!わわ、わかってるわよ!あ、あたしだって冒険者だもん!時には荷物全部捨ててでも身の安全を優先する必要があることもわかってるわ!ちょっと驚いただけよ!」


カナデさんのご指摘を含めて考えてみると、ミリーが以前持っていたショートソードが脆かったのもその辺が理由だろう。安物を使って使い捨てるスタイルが『城砦の矛』のスタイルなんだろう。そっちの方がメンテも楽だし理に適ってるし。でもあんまり安物の数打ちの品を使うと強化(クラトス)術式(コード)に耐えられないから我が家では使えない戦法だな。

ミリーがはぁとかほぉとか言ってるのを尻目に街の門番さんと挨拶を交わす。今日の門兵さんはいつかの気の良いおっさんだったので爽やかなやり取りモードで2、3言葉を交わすだけで終わった。やはし彼とのやり取りが楽でいいな。もうずっと門に立っててくれないかな?そうしたら俺が楽でいられるのに。

いつもの街道をいつものようにテクテクと進み、目印の大岩を迂回して前回ゴブにやられたポイントを目指す。勿論場所は知らないのでカナデさん任せのナビタ○ムだ。道中ポーションの材料をむしったり、双剣や杖の使い方をカナデさんがアドバイスしたりとそれなりに忙しい移動時間になったりした。

どうやら俺が惰眠を貪っていた間はミリーが2人に体術だったり剣の扱いだったりを教えていたようだが、意味はなさそうだった。だってミリーってば剣の扱いもへたっぴだし、体術って言ってもケンカの延長・・・どころかまんまケンカくらいのレベルしかないんだもん。テトにゃんに聞いてみても、「こう、ビュッて感じでシュバッってするといいって聞いたの。」とか言ってるから絶望しかない。

ニコに至っては会話が成立しなかったので相当居心地が悪かったんじゃないだろうか?と思い聞いてみたら、「ん。テト、て、つないでくれた。さみしい、ない。へーき。」なんて予想外のお返事が来て涙腺が爆発しそうになってしまったが懸命に我慢して頭をグリグリしたりぎゅっと抱きしめたりしてみた。ニコにはもっと愛情を注いであげないといけないな!このあとテトにゃんのこともめちゃめちゃ褒め倒してイチャイチャがパラダイスしたった。


「こうして歩いてきてみるとそこそこ遠くまできてたんだなー。もう少し奥の方があの時の小川になるのかな?」


《はい、マスター。それと、ゴブの集団はマスターの現在の立ち位置から向かって左側から多く出てきていたと思われます。》


「そかそか。じゃあ、迷うことなくそっち一択だな。」


3人娘を引き連れて、俺はゴブの集団を目指して突き進むことにした。

お読みいただきありがとうございます。

想君が怪我慣れし過ぎてて回復速度が異常に上がっていますね。普通にドン引きです。このままだとギャグ漫画並に次のコマで復活してる!なんて展開も訪れるかも・・・ってそれは流石にないですね。怖すぎますから!

あと、蛇足ですがミリーちゃんはパジャマを着ない派らしいです。ツキシロ家とはちょっと違いますね。


次回予告

発見動物(ゴブリン)の森

ついでのついで

迫りくる恐怖

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