諦めないことが生き続けることだから
感想、評価をいただきありがとうございます(*´∇`)
読んでくださる全ての方々へ感謝の祈りを捧げながら、本編第54話を投稿させていただきますー!
これからも皆様に楽しんでいただけると幸いです(*´∨`*)
前回のあらすじ
暗闇に怯える少女たち
川辺って歩きにくい
猪もオークも豚だろ豚!
<オーク>と対峙してわかったことがいくつかある。まずは俺の技術力。剣術のスキルも取得できないくらいにポンコツなのは当たり前だが、それでもまさかココまで刃が通らないとは正直思ってなかったってくらいに剣を振るのが下手らしい。ぶっちゃけ悔しい。いや、これって俺のせいか?ロングダガーはそこまで長くないし重くないからそれのせいってのも考えられる。うん、そっちかもしれない!
次に俺の『視覚強化』と『姿勢制御』。この2つは非常に優秀だ。大した機動力のない俺でもこのギリギリな状況で生き延びていられるくらいのサポート力があるらしい。<オーク>の攻撃を瞬時かどうかはわからんが的確に捉え脅威を知らせてくれるし、どんなムチャな避け方をしてもある程度は補正してくれるから転げまわることが全然ない!マジでホントにあざまーす!
そして、目の前のこの豚君は恐らく下級スキル『防御強化』を持ってるっぽいとのこと。これはカナデさん情報だ。先程この豚野郎の足を狩ろうとした時の手応えと纏ってる魔力の感じからそんな気がするのだそうだ。フワッとしたアドバイスありがとうございます。つまりはやはし俺の非力が根本原因じゃないってことが証明された訳だ!びっくりさせんなよこの豚野郎!
ではどうすればいいのか?答えは簡単。武器強化を発動すれば多分切れる。でもそれも多分としか言えない。だって『防御強化』したこの豚って木偶人形より固いっぽいんだもん。泣くよ?もしも強化したロングダガーでも決め手に欠けるようなら万事休すというか詰みだ。マジックポーションのクーリングタイムを待って魔法で焼き殺すか、何かしらの知略をもって倒すしか手がなくなってしまう。それはマズい。
繰り返し振り回される豚の腕を巧み(笑)に避け続けながら作戦を練る。これにしたってスキルの補正がなかったらできてない。取っててよかった『姿勢制御』。これ案外使えるわー。公○式でも教えるべき有能さ!人類全員に必須スキルだよこれ!これなかったら転んで殺されてる的な未来がよく見えるってかそれしか考えらんないもん!それくらいにいま俺は激しく動き回っている。しかしこれだけ激しく動いていると今度は魔法の構築がしづらくなってしまう。てかぶっちゃけムリぽ。どうにかしてこの豚と距離を取るか動きを封じなくては・・・。
《ゴキブリの如く避け続ける様は流石ですね。お似合いです、マスター。ですがこのままではじり貧です。豚野郎の体力は確実にマスターより上のようですし。》
「ゴキブリ!・・・とは!・・・ヒドい!・・・言いよう!・・・だな!うわぉっ!・・・人が・・・はっ!必死になって!・・・避け!・・・てるのに!!」
時に這いつくばり時に飛び回り、必死に避け続ける俺の雄姿に向かってなんたる暴言か!!いまは外套着てないからゴキみたいに黒くないぞ!うおっと!多面的に避けないとすぐに捕まってしまいそうなのでこの動きは必然なのだ!それなのにカナデさんってんば!カナデさんってばもう!もう!もう!!(オコ)
だが確かにカナデさんの言う通り、このままではいずれ俺の体力が尽きるだろう。いや、いずれっていうかそろそろヤバい気もする。ここは俺の明晰な頭脳を用いて一計を!ってなんでこのタイミングで起きるんだ?!イヤな予感しかしないぞおい!!
「た、大変じゃない!すぐに助けるわ!待ってなさい!!」
トラブルメーカーがいきなり叫びだした。いや、なんとかしたいならせめて黙って奇襲くらいやろうよマジで。なんで声高らかに宣言すんのさ?案の定、豚野郎はミリーに気付き警戒している様子だ。いや、得物が増えて喜んでるのかな?どちらにしてもいまがチャンスと言えばチャンスだ!
「あれ?なによこれ?!外套が絡まって起き上がれな・・・きゃあっ?!」
そういえばミノムシにしてたの忘れてたわ。そのまま大人しくしててくれたら最高なんだがきっとそんな願いも虚しく打ち砕かれることだろう。だって相手はミリーだもの。
「ミリー!お前怪我してること忘れるなよ!左腕まだ完治してないんだからな!!」
「そんなハズないわ!だってもう全然痛くないもの!それに、<オーク>はすべての女性の敵よ!絶対に倒してやるんだから!!待ってなさい!!」
やはり単細胞生物には何を言ってもムダだった。だが、いちおうまだ<オーク>は俺に対してヘイト値が高いハズだからミリーにはこのまま奇襲してもらうのが1番か?いやでもしかしいまそかり・・・アイツは静かに攻撃なんて真似でできそうにないぞ・・・。
それなら俺が更にヘイト値を稼ぐしかないかとさっきまでよりちょっとムリをして回避オンリーではなく攻撃も組み合わせてみる。が、これが非常に難しい!避けざまに攻撃を重ねるだけでも相当難易度が跳ね上がりますってマジで!なんせ相手は無手故に片手ずつの攻撃。なので左右交互に突き出される攻撃に大きな隙はできづらいのだ!
「それでも!回避壁くらいは!しないと!な!」
豚の攻撃を避けつつ腕へ攻撃を重ねていく。ほとんど切れてない気もするが、豚が更にオコで殺る気になってるっぽいから成功でいいだろ!俺が立派に壁役をこなしてる間にミリーは脱ミノムシを経て雑兵にクラスチェンジを果たしていたようで、ショートソードを構えて豚野郎へと突撃をぶちかます!
「喰らいなさい!バルムさん直伝の突撃よ!!・・・っっっつ!!!?」
全然ショートソードが刺さってない!?いやちょっとは刺さってんだろ?物理的にそうだろ?でもやっぱそんな気はしてたんだけどこの展開は最悪だ!口上だけはご立派なのに威力がさっぱりだった。ホントに残念なヤツだよお前は!刃がさっぱ通らなかったことで硬直しているミリーへと豚の腕が振るわれる!それは許さん!と豚野郎の目を狙ってロングダガーを突き入れる!
「ぷぎおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!」
「おぉ!目なら刺さった!」
流石に目は他に比べて柔らかかったらしくそこそこ刃が突き立ったが骨に阻まれてすぐに止まってしまった!豚が暴れる前にとミリーを抱えて離脱する・・・重っ!!ムリ!!引っ張りながら離脱だ離脱!あぁ、ロングダガーを置き去りにしてしまった・・・くそぅ。
あまりの激痛に耐えかねたのか、豚は叫びながらその場で暴れている。これはチャンスか?チャンスなのか?ピンチの次はチャンスがあるってヤツかもしれない!
「ミリー、そのショートソード貸せ。」
「う、うん・・・。」
ヤケに素直だな気持ち悪い。そんなに刃が通らなかったことがショックだったのか?でもいまはそんなのかまってらんないな。
「術式 魔力自動吸引 実行! 片手剣 へ 性質付与 貫通 強化」
焦っちゃダメだと思いつつもちょっと急ぎ足で術式を展開するが、これはちょっとマズいかも・・・剣が悲鳴をあげてるぽい。やはり魔法で強化するのって武器に相応の負荷がかかっていることがこんなタイミングで発覚してしまった。ちょっとヤバい。数分くらいなら耐えてくれるかもしれないが、下手したら数秒でへし折れるかも・・・。
「そうは言っても他に手はないしな。最小 武器強化開始」
ショートソードを強化して駆け出す。このまま豚野郎が痛い痛いって喚いてくれていれば最高だったんだが、近付いた途端に全力のオコ顔でこっちを見てきやがった。顔芸乙!!仕方ない・・・ガチバトルだな!
豚はその巨躯を生かして両腕の振り落としを選択してきた!万歳の姿勢から一気に両腕を叩き込むつもりのようだ!こんな質量受け止められるハズないけどダッキングで更に一歩前へ!!
「死ね豚野郎!!」
渾身の力を込めて豚の胸にショートソードごとぶつかっていく!ショートソードの刃先が豚の胸に当たるもかなり強い抵抗を受けるが豚の腕が勢いよく俺の背中を押してくれる!違う!背中をぶっ叩かれてる!しかも抱き込まれるような形になったと同時にぎゅうっと圧迫されつつもショートソードがそのまま深く刺さっていく!「ぐ、ぐるじい"!」半ばほどショートソードが入ったところでバキンッ!という音と共にショートソードが砕けてしまった。
「グゥウゥゥウゥ・・・・」
ショートソードは壊れてしまったが、豚の体内に残った刃の部分が心臓にまで達していたようだ。てか背中からちょっぴり刃先が出てるから達してるどころか結構刺さってたっぽい。ギリギリだった・・・いやマジで。
「豚の血が非常に気持ち悪いな。全身に浴びてしまった・・・血生臭い。」
一歩間違えば全殺しされるとこだっただけに勝利は喜びよりも安堵の気持ちが強いぷー。はふぅ~・・・マジつかりたー。でもまだ猪が生きてたハズだからあっちもトドメささなきゃだよなー。それはミリーに任せようかなーとか考えながらミリーを見てみると、まだ呆けてた。
「おいミリー、どうしたんごっ!!!」
背後に衝撃を感じた瞬間自分の身体が何かに強く打ち付けられたのを感じた!!またなんかあったの?!痛い痛い痛い!!身体が全部痛いんだけど!!?
《マスター!ご無事ですか?!》
「・・・うぅ。・・・ぐっはっ・・・。ぐえっ。ぐぅぅえっふ・・・。うぐぅ・・・もうムリ泣きそうだもん。」
地面に蹲り震える身体で周囲を確認すると、なんかさっきまで立ってた位置と全然違うとこにいることがわかった。なんだ?どうした?よくわからんがどうやら<オーク>の豚野郎に殴り飛ばされたらしい。らしいというのはカナデさんに聞いたからだけど、そもそもホントに殴って飛ばすってどうなのこれ?てかアイツ死んでたんじゃないのかよ・・・あー、いってぇ・・・。
「ちょちょちょっと!だだだだいじょーぶなの?!すごい勢いで木に当たってたけど?!」
「あぁ?あぁ・・・多分、な。それより豚は?」
「豚?え~っと、<オーク>のこと?アイツはアンタに攻撃したあとまたすぐに倒れちゃったわよ!どうやら最後の攻撃だったみたいね?多分だけど・・・。」
最後の1撃がこの威力って・・・マジかよ。元気な時の1撃だったら即死だな。殴られた背中も痛いがあちこちぶつけてもう全部痛い。超イヤな気持ちになってきた。めっさブルーだ。マジ早く帰りたいし泣きそうだよ。
「くそっ。殺したと思って油断したな。あーそれにお前のショートソードダメにしちゃったな。悪い。帰るまでテトの双剣片方使ってくれ。品はイイから不足はないハズだ。」
フラフラになりながら根性を振り絞って立ち上がったが、もう脚はガクガク腕はプルプルでどこぞのアル中よりヒドい状態だ。頭もうまく働かないし血を流し過ぎたのか?お腹に開いた穴がダメだったかな?イヤでもあれはテトにゃんのお口でついたものだからそんな風に言っちゃダメだな。きっと連戦で疲れてんだよ。うん。
あと1回でも寝ころんだら絶対に立ち上がれないなーとかどうでもいいことを考えながら猪のトドメと<オーク>含め3体の魔石を取り出した。ミリーが猪の肉が結構うまいとか言っていたが、この状況でよくそんな悠長なこと言えたもんだな?仕舞いには怒るぞ!と思いながらちょっとだけお肉をげっちゅーしておいた。あとで食べて血肉にしよう。
残りの死体も放置したいところだったが、ミリーが適当に解体してくれたのでマイダンジョンでばきゅっておいた。でもなんでかミリーが眼も口も鼻の穴までもガッツリ開きながら驚いてた。なんでかよくわかんなくて首を傾げていたらカナデさんが教えてくれたが、どうやらさっきまではタイミングよく寝てたり気絶してたりしたから見ていなかったらしい。嘘だろ?どんだけだよ。
でも説明が面倒だったので特に何か言うでもなく再び歩き始めるとすぐ感知スキルに反応があった。どうやらさっきまでウロチョロしてた<ピクシー・ゴブリン>ぽい。猪や豚の血の匂いに誘われてきたのかもしれないが、最悪な展開だ。なんせ数が多い。
「ミリー、<ピクシー・ゴブリン>だ。数は・・・まだわからんが少なくとも10以上わさわさしてる。お前どれくらい戦える?」
「嘘!?10体以上も!!?う、ううん、あ、あたしにかかればそれくらい全然余裕よ!いままでだって沢山のゴブをやっつけてきたのよ?そのあたしが、このあたしが!ゴブごときに負けるわけがないじゃない!」
「いや、正確な情報が欲しい。お前はいままで何体までなら同時に戦ったことがある?できればお前1人とゴブ数人って場合が聞きたい。」
「・・・ぃわ。」
「あー?」
「ないわ!ないわよそんなこと!だって!だってあたしはバルムさん達といつも一緒だったもの!1人でなんかモンスターと戦うことなんてほとんどないわよ!」
「そうか。それもまぁ当然と言えば当然だな。それならミリーには防衛を頼む。テトとニコが乗ってる荷車を守ってくれ。このまま全力で荷車を牽いて森を出るんだ。殿は俺がやる。」
「ちょ、ちょっと待ってよ!アンタ1人で戦うつもりなわけ?!そんなのムリに決まってるじゃない!バルムさんもゴブが多い時は逃げろって!」
「そう、だから逃げるんだ。お前が先に逃げてくれ。俺もあとから逃げる。それならいいだろ?」
「そんなのできないわ!あたしも残る!残って戦うわ!見殺しになんかできないもの!」
ゴンッ!
「いったぁい!!ちょっと!なにすんのよ?!」
「・・・なぁミリー。俺はお前に荷車を守ってくれって言ってるんだ。その意味がわからないのか?本気で怒るぞ?」
「だって!」
ゴンッ!!
「口ごたえすんな!さっさと行け!森を抜けた方が生存率が高い!早くいかないともっと殴るぞ!!ニコ!悪いがミリーと一緒に荷車を押してくれ!俺も後からすぐに行く!」
「ヤ!イヤよやめてよ!!?行けばいいんでしょ?いけばぁ!!もーーー!!」 「ん!ソウ!ぜったい!」
これだけやってようやく荷車を牽いてミリーが動き出した。でもその歩みは決して早くなさそうだな。となるととにかく足止めはしっかりしないと、だ。
「術式 魔力自動吸引 実行! 長両刃短剣 へ 性質付与 切断 強化」
手にしたロングダガー(回収済)を魔法で強化する・・・が、この魔術式のバキュームとマイダンジョンのバキュームがなんとなくかぶるから今度術式名称変更しよう。紛らわしいの嫌いだもの。
「最小 武器強化開始」
手作りライ○セーバーを作りだし、ゴブどもへと対峙する。その数はどんどん増えていて現在感知スキルの範囲内だけで21体。俺がいままで相手にした群れの中で1番多いし。あ、モンスター混合軍は別ね。しかもちょっと範囲が広いかもしれないな。端の方とか俺の存在に気付くのか怪しい。
そこでしっかりと囮役を務めるためにコイツらが好きそうな肉をばら撒いてみる。何がいいのかわからないので色々な動物の肉だったりモンスターの肉だったりだ。DPで適当に召喚したが思った以上のコストがかかりちょっと悲しくなった。今度ちゃんと自分達で食べるために召喚したいな・・・いやなんかイヤだな。どうやって調達してるのかわからん肉を食べたくはないな!
血肉の匂いに誘われてゴブ達がその包囲網?を狭めながらこちらへと突っ込んでくる。それを迎え撃つわけだが小さくすばしっこいゴブの集団はかなり厄介だ!できればワンキルを狙いたいので首や胸元を積極的に狙っていくものの、的が小さくてあてづらい!
しかし、当たってみればすぐに終わるようだった。小さくコンパクトに振り回したロングダガーが飛びかかろうとしてきたゴブの首を軽々と切り落とすことに成功したのだ。これなら大した力もいらずにコイツらを屠れる!続けざまに振る刃によってゴブたちは簡単に沈んでいったが、周囲を囲まれ一気に飛び掛かられる!この状況はマズい!
慌てふためきながら振り回した刃で前方3体は切れたが後ろと側面の敵は間に合わなかった!背中に2匹脚に1匹、更には左腕にまでとりつかれつつも後続がまだいる!くそ!ロングダガーが振りづらい!!まずは腕のヤツからとヘッドバッドをぶちかます!!ぶつけたおでこが超痛い!
「いってーなーーー!もう!!くそ死ねバカハゲ臭いんじゃボケ!!」
おでこが痛いと思ってたら俺のあんよにとりついてたゴブが噛み付いてきやがったのでロングダガーでさっくり殺す!ついでに俺の腕から剥がれ落ちたゴブを力いっぱい踏みつけ首の骨をへし折ってやるのも忘れない!ふんぬぅ!!
そうこうしてる内に更に3匹のゴブが駆け寄ってきているが、背中のゴブがくそうざす!コイツらもロングダガーで殺処分だ!ってまた囲まれた!?気付けば周りはゴブにまみれてゴブゴブ祭り真っ只中だったので即刻逃げの一手に決まりだ!って全然間に合わない!何匹ものゴブに集られあちこち噛まれてめっさ痛い!このまま喰われてなるものか!
「追走術式 範囲拡大 左腕 強化 開始!!!」
メキメキメキメキギュウウウウウウッッ!!!
腕が締め上げられて血管が破裂しそうだ!!?短期決戦以外の選択肢がまったくもって選べないぞ?!ゴブに抑え付けられて動かせなくなった腕をムリヤリ動かすために強化術式を腕にも広げたら自壊展開まっしぐらだった!一瞬でも早く解放されたいがためにがむしゃらに腕を振り回すがその勢いもスゴかった!右に振れば身体ごと右に持っていかれ、左に振れば勢い余って半回転!それでも効果は抜群だ!ゴブの抵抗をものともしないで本来の意味での八つ裂き血祭り!
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・わ・・・術式解除」
周囲のゴブを軒並み殺し尽くしてから術式を解除したが時すでに遅し。俺の左腕は内出血しまくりでドス黒く染まり所々出血してるし、あちこち噛まれてそこかしこも血塗れだ。もはやゴブの血か俺の血かの差もわかんない。あぁ、クラクラする。血が足りない。
《マスター。血止めを。急いでください。後続がまだ来ます。》
「カナデ・・・さんは、いつもムチャばっかり言うけど、優しい・・・ねぇ。」
血止めを使いたいのはやまやまだが、ちょっといまはムリかもしれない。だって、手が動かないし?ロングダガー握ったまま固まっちゃったよ。
《・・・マスター?》
「んむ~・・・。手がね。なんか動かないし、回復術を少し試してみようと思う。カナデさん、フォローよろ。」
《・・・はい、マスター。》
ゆっくりと歩きながら自己治癒力を高めていく。『HP回復強化(小)』へと残った魔力の総てを注いで自慢の美脚あんよを治す。転生してからムダ毛なんか全然ないキレイなあんよも今は怪我だらけ。けれど多少動かしやすくなったかな?って程度で回復も止まってしまった。当然ながら魔力枯渇だ。すでに全身の倦怠感も吐き気も痛みもぼんやりし始めているのに、それでもメチャクチャツラい。
後方から迫りくるゴブにだけ意識を集中してとにかくいまは森の外へと逃げる。ホンの少しのでっぱりやらなんやらに簡単に躓いてしまうほどに動かない脚で、ゆっくりでもなんでもいいからとにかく前へ!ただ前へ!諦めないことが生き続けることだから!
だが、こんなのんびり歩いてるもんだから当たり前ながらにゴブたちが追いつき襲い掛かってくる。一部の連中は落ちてる肉片にかじりついてるのに!なんでお前らはこっちにくるんだよ!!
初めに飛び掛かってきたゴブへロングダガーを突き出す。空中では避けられるハズもなくゴブへと刺さり命を奪う。次いで追いついてきたゴブがタックルをかましてくるのを死んだゴブを落とすことで軽くガード。3匹目まではまだ少し余裕があるな。2匹目を殺そうと左手を伸ばすがいつのまにかロングダガーを持っていなかった。
「あ?あれ?」
見ると1匹目の身体に刺さったままだった。これじゃゴブを殺せないじゃないか。噛まれるのはイヤだなーなんて考えてたら沢山のゴブが塊になって襲い掛かってくるのが見えた。これが最後に見る景色か。
「もっとこう可愛い娘とかに囲まれながら最後を迎えたかったな。」
「おおおおおらああああ!!!!」
怒声と共に現れた黒い影にゴブどもがまとめて弾き飛ばされた。まとまって動いていたゴブ塊は黒い影の更なる追撃により叩き潰され吹き飛ばされ、慌てふためき散り始めた。え?なになに急に?こんなタイミングで助けに来るなんてどんな主人公だよ!!
暴れ狂う黒い暴風はゴブたちが距離を開けたのを確認し、手にした大剣を地面へと突き刺しこちらへと振り向いてきた。
「おい、大丈夫か?」
優しく語りかけてくるその声は低く、荒々しさを湛えながらも聞き取りやすい。聞き取りやすいのは声が大きいからかな?こんなに近いのになんでそんなに声を大きくするのかは意味不明だが、少しばかり耳が遠くなってる俺にとってはむしろありがたかったりするかもしれない。
窮地に陥ったヒロインを颯爽と助ける戦士さん。もう俺が女なら絶対惚れてるね!吊り橋効果MAXってくらいにドキドキもんっすよ!俺が女ならだけどな!でもマジで助かったー!ありがとー王子様ー!
「ってブデノンじゃん??!」
よくよく見ると見覚えのあるその容姿!ブサイクでハゲでデブで息の臭い醜悪四天王を完備したブデノードことブデノンだ!その出会いはメタリカーナに初めて訪れた日にまで遡らなきゃならん程に過去!いや、まだそんなに時間は経ってなかったきもしないでもないけど、どこが王子様やねん!盗賊かなんかの面構えだろ!自重しろ!
「あぁ?誰がブデノンだ!!俺様はブデノード!助けてやったのに名前を間違えるとはふざけているのか貴様!!」
「おうっふ。たしかに。名前間違っちゃったのは申し訳ないな。ごめんよブデノードさん。あと、助けてくれてホントありがとー。マジ限界突破しまくってたからめっさ助かったわ。」
「おう!それでいいんだ!それにしても貴様、どこかで見た覚えがあるな?どこかで会ったことがあったか?んん?」
「あ~、数日前にギルドでちょっと?俺が冒険者登録する時に話したくらいだから覚えてなくてもムリないよ。」
「ギルド?登録?思い出せんな!ぶわははははは!許せ小娘!」
うわっ!こっち向いて笑うな!ツバが飛ぶ!てかこっち向いて話すな!息が臭い!
「いや、別にそんな小さいことはいいんだ。それよかそっちに俺の仲間が逃げてったハズなんだけど会ってない?見かけてない?」
「あぁ?仲間だと?そんなもんは知らんが他の小娘たちならほれ、俺様のパーティーが保護してやってるぞ!こんな森の中で手押し車を使うなど変わった小娘共だな!」
「ほれって言われても全然見えやしないって・・・。まぁでも、無事っていうならそれを信じるとしましょうかねぇ。・・・て、あら?」
よっこらしょっと立ち上がろうと腰を浮かせたが立ち上がれなくて腰からストンと落ちてしまった。んん?力が全然入らんな?どうしたことだ?
「なんか力が入らんな?」
「んん?どうした小娘?・・・よく見ると血に塗れているようだが、それはお前の血か?コイツらの血か?」
「血塗れ?」
言われて自身を確認すると、血に塗れてない所の方が少ないってくらいに血だらけだった。そうか、こんなに怪我してたのか。よくこれだけ保ったもんだな?案外この身体は丈夫なのかもしれん。
だが、ブデノンは大丈夫だとは思うけど以前の盗賊連中の件もあるし、テトにゃんたちの無事を確認しないとだな。最後の気合いを込めに込めて立ち上がった瞬間、俺の意識はプツリと切れた。
お読みいただきありがとうございます。
魔法職っぽい想君がガチで近接戦闘を繰り返していますが、どことなく蜂のようですね。
蝶のようには舞っていませんからかなり不格好なようですが・・・。
それにしても想君のダメージ量はいったいどれほどなんでしょうか?某ハザードシリーズのゾンビくらいにボロボロな気がしますが、大丈夫なの?
次回予告
懐かしいような懐かしくないような
ちょっと残念
あと少しってまだまだな気もするよ?




