意外な襲撃者 これがホントの落とし穴
感想、評価をいただきありがとうございます(*´∇`)
読んでくださる全ての方々へ感謝の祈りを捧げながら、本編第50話を投稿させていただきますー!
先日言っていた例のアレですが、簡単な人物設定等々を今後載せる予定ですのでご興味お持ちの方がいらっしゃいましたらご一読いただければと思いますm(_ _)m
これからも皆様が楽しんでいっていただけると幸いです(*´∨`*)
※01/18 09:22
テトちゃんのお母さんの種族が間違っていたため訂正いたしました。
「狼獣人」→「猫獣人」
有り得ない間違いで義母になってしまってました・・・ごめんなさい!ご指摘ありがとうございます!!
前回のあらすじ
お風呂夢想
謎い物体焼却
デクッポイド現る
ニコ襲われる
ウチの名前はテトラリア。猫獣人のお母さんと人族のお父さんの間に生まれた半獣人なの。お母さんはティートゥー、お父さんはライア。だからウチは2人の子供でテトラリア。ウチが育った村は豊かじゃなかったけどみんなで支え合って助け合って生きてたから、すっごく平和な村だったの。本当に貧しかったけど・・・。
それでもいつも大人たちは言ってたの。獣人は人族の国、『城砦鉄壁国(アイロニア、クラッド)』ではよくない扱いを受けるし、逆に獣人の国、『深き森の囲う国』に人族が行くとすぐに追い出されちゃうんだって言うの。だから仲良くできないような悲しい人たちとは距離を置くために大きな街から離れた山の麓にこの村を作ったんだって。
この村の名前はアスタ。『希望の光集う場所』っていう意味の古い言葉からつけられたんだよって村で1番長生きのおじいちゃんに聞いたことがあるの。その希望の村で生まれ育ったんだから、どんな時でも希望を捨てちゃいけないよっていうのもいつも一緒に教えてもらってたの。
ウチはお父さんとお母さんが好き。この村が好き。一緒に育ったみんなが好き。アスタの村のみんなが大好き。冬はとても寒くて食べられるものもすごく減っちゃうけど、いつも農業のお手伝いをしなくちゃいけないから大変だし近くにいる小さい子供たちの面倒も見なくちゃだけど、ウチはこの村に生まれてホントによかった。大好きが沢山あるの。
ウチは半獣人。獣人の国に行っても人族の国に行っても受け入れてもらうのはすっごく大変で、すっごく難しいって言われたけどウチはこの村にずっといるからそんなのは全然平気なの。お母さんからはちょっと周りのみんなより身体の成長が遅いみたいって言われてるけど、お父さんはそれくらいが人族的には普通だって言ってくれてるし、それもきっと大丈夫なの。
ウチはこのアスタの村で生まれ育ってもう12歳になるの。獣人の血が入ってる人は12歳で1人前って言われてて、ウチ以外の友達は純潔の人族の子を除くとみんな身体が大きくて見た目は大人と変わらなくなっていた。この村では獣人の証しの八重歯がなくても誰にも何も言われないけど、身体の成長が遅いのは少しだけからかわれたりしたの。ホントにちょっとだけだけど。具体的にはグレハムっていう名前の、大人の見た目になったみんなの中でも1番背の大きな男の子にだけからかわれてたの。いつか背も追い越して見返してやるって決めたの。だけどそれは多分もうできないの。
もうすぐ寒くなり始めるからって、村全体で冬支度を始めようとしていた頃にアイツらはやってきた。いつも村の周りを警戒してる大人たちが慌ただしく走って帰ってくるから何かあったのかなって思ってたら、すぐに村の戦士以外は村長の家へ避難するようにって言われた。ウチも、他のみんなもすぐに村長の家に集まろうとして駆け出したけどそれでももう遅かったの。村の周りを見たこともないような沢山の人に囲まれていた。大人たちはみんな武器を持ったり農作業用の道具を持ったりして戦った。でも、立派な鎧を着込んだアイツらは簡単に大人たちを抑え込んでしまったの。
ウチのお母さんは元冒険者。ウチのお父さんは元町の警備兵。2人共戦える大人だからきっとどこかで戦ってたと思うけど、ウチはそれを見る前に鎧を着込んだ人たちに捕まってしまった。グレハムも抵抗しようとしたけど殴られて気を失ってしまったの。ウチは頑張って抵抗しても逃げられなくて、鉄の錠をつけられて檻に投げ込まれてしまったの。檻の中らからは外が見えなかったからウチが知ってるのはここまで。
それから数日かけて檻ごと移動させられて、食事もロクにもらえなかったの。抵抗した時にあちこちぶつけたのか怪我もしてて痛くて怖くてあまり眠れなかったのを覚えてるの。他にも一緒に捕まった村の人たちがいたけど、停車する度にその数もどんどん減っていったの。そして、とうとうウチも檻から出されて見たこともないおっきな街の、おっきなお屋敷?の中へと連れて行かれちゃったの。傷も痛いし、お腹も減ったし、全然眠れなかったしでヘトヘトだったけど、最後の力を振り絞って頑張って抵抗したけどそれでもダメだったの。
そして、新しい檻に入れられてすぐにソウと出会ったの。その時はどんな人かなんて全然知らなくて、顔にヒドい火傷もしてたしなんだか怒ってるみたいな雰囲気だったから怖くて拒絶してたのにあっさりと不思議な魔法?をかけられちゃったの。後で聞いたら奴隷契約の魔法っていうらしくて、それをしたからいまは一緒に住むことができるらしいの。その時につけられた首輪は、ソウに強く抵抗すると絞まっちゃうみたいであの時はすっごく苦しかったの。もうアレはイヤなの。
ソウとの生活は驚くことが沢山あったの。ご飯は美味しいしお服も買って貰っちゃったし暖かいお布団で寝られるし、貴重な回復ポーションを貰ったりモンスターを沢山倒したり・・・ウチが檻の中で想像してた生活とは全然違ったの。お屋敷?の中で泣いてた女の人たちがこれから色々ヒドいことをされるって言っていたのが聞こえてきてたから、きっとソウだけ特別だったんだと思うの。他の人のところでは多分奴隷はヒドい扱いを受けるんだと思うの。
ソウとの生活はまだ数日。だけど一昨日の夜はソウが急に大きな怪我を負って帰ってきたの。片方しかない大事な手。いつもウチやニコを守ってくれる大切な手は、骨が飛び出るほどの大怪我だった。それにお顔もほっぺたがぱっくり割れちゃって痛そうだったし、鼻血も噴き出して倒れちゃうからホントに心配したの。ソウが大怪我した時にウチが傍にいられなかったのもすっごくイヤだった。まだ、何にも力はないけどいつかはソウを守れるように・・・ううん、ソウと一緒に戦えるようになりたいってこの時初めて思ったの。
次の日、マーグルお婆さんの家に行ってソウの左手の治療もした。あれは治療って言っていいのか全然わかんないくらいに乱暴な治療だった。まさかあんな方法で治療するとは思ってなくて、胸がぎゅって苦しくなっちゃったけどソウはもっとツラい思いをしてたんだと思う。ウチには想像もできないくらいの痛さに耐えて治療してた。それくらいしかわからなかったけど、きっと本当にツラい治療だったと思うの。でも、その甲斐あってソウのお手ても治って、すぐに怒鳴る怖いおじさんとモンスターを倒して、やっと安心できるようになったの。
けど、まだやっぱり不安だったから今朝はソウと一緒に寝ちゃった。前はよくお母さんと一緒に寝てたことを思い出して少しだけ寂しくなっちゃったけど、きっとお母さんは強いからいまもお父さんと一緒にいるって信じてるの。もうウチの知ってるアスタの村はなくなっちゃったと思うけど、村のみんなにいつか会えるといいなって思うの。ちなみに今日の予定は昨日の続きでポーションの材料探しらしいの。ウチは材料を集める作業が好き。ニコも小さいのにしっかりとお手伝いしてくれるし、お外はモンスターがいるけどソウが全部やっつけてくれるから心配もないの。
だけど、今日はあのミリーさんって人が一緒なの。ソウを傷つけた人。ソウにヒドいことした人。でもあんまり悪びれた感じがしなくて、反省もしてなさそうなの。ウチは苦手な人。ソウも一緒に行動したくないみたいなんだけど、バルムさん?って人から頼まれてるからあんまり強く断れないんだって。ソウはお人好しすぎるの。けど、そういうところも好きなの。お母さんも怒りっぽいけど、周りのみんなからは面倒見がいいとかお人好しとかってよく言われてたの。ソウは見た目とかは全然違うけど、ちょっとお母さんに似てるの。だからお姉ちゃんみたいって実は思ってるの。
そして、ポーションの材料を集めていた時に森の中から悲鳴が聞こえてきたの。それを聞いたソウは慎重に行動しようとしたのに、あのミリーって人はすぐに駆け出していっちゃったの。いちおうソウが預かってる人って言ってたから追いかけて、モンスターに襲われてる人と一緒に助けたのに、またすぐに森の奥へと走っていっちゃったの。何を考えてるのかよくわからない不思議な人。きっと悪い人じゃないと思うけど、危ない人。ウチも森の中は危ないからってソウに止められちゃったけど、言われてみたら確かにそうなの。ここはモンスターが沢山いる場所。森の中。気をつけないとなの。
ソウを見倣ってモンスターにトドメを刺して回ったの。初めてだけど村では動物を捌くこともあったから多分上手にできたと思うの。ただ、モンスターの血の匂いを嗅ぐと少しだけ頭がぽーっとしちゃうから気をつけないといけないってことがわかったの。動物の血を嗅いだ時はそんなことなかったのに?それからすぐに沢山のモンスターの群れと遭遇したの。お母さんが冒険者として旅をしていた時のお話しにも、お父さんが町で警備兵をしてた時に旅の人から聞いたっていうお話しの中にもこんなに沢山のモンスターに1度に襲われちゃうお話しはなかったの。
そんな数えきれないくらいに沢山のモンスターをソウは次々と倒していく。ソウはこの間自分は弱いって言ってたけどそんなことはないの!絶対に嘘なの!だって、こんなに沢山のモンスターを倒せる人なんてきっとソウくらいなの!アスタ村の村長さんも魔法が使えるって聞いたことあるけど、1度だけ魔法を放つと疲れて暫く動けないってお話しだったの。だからきっとソウみたいに沢山のモンスターは倒せないと思うの。だけど、ソウの周りを飛び回っていた炎の塊がどんどん減っちゃってソウの様子にも焦りが見え始めたの。そして、最後の炎の塊を打ち出したあとに猪のモンスターとソウが持ってた武器で攻撃したけど倒しきれなかった。
見るとソウは武器もなくて炎の塊もなくて無防備な状態だったの。だからウチはすぐに木を飛び降りた!こんな猪なんかにソウをやられちゃうわけにはいかないの!飛び降りた勢いそのままに双剣を突き立てたけど全然猪は元気だった。暴れる猪に振り落とされて地面に叩き付けられてもうダメ!って思ったけど、すぐにソウがモンスターを倒してくれたの。やっぱりソウは凄いの!魔法を使わなくてもモンスターを倒しちゃったの!それからソウと一緒にモンスターにトドメを刺すの。また次のモンスターが来る前にトドメを刺しておかないと危ないんだって。ウチは張り切ってモンスターにトドメを刺して回った。だって、ソウのお手伝いできる機会ってあんまりないんだもの。
お手伝いできるのは好き。ソウの役に立てるのが好き。お母さんやお父さんのお手伝いをしてた時の気持ちにちょっと似てるかな?なんて考えながらモンスターにトドメを刺していたら倒れてた猪のモンスターと眼があった。マズいの!あの眼はまだ生きてる眼なの!すぐにソウを呼ばなきゃ!って思った時にはもう猪は目の前に迫ってきていた。
「・・・えっ?」
すごい勢いで猪が体当たりをしてくる。その猪のモンスターには角が生えてた。ウチのお腹に刺さってる。刺さってるの。刺さってる・・・熱い!熱い熱い熱い熱い熱い!!い、痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!やだ!痛い!熱い!助けて!お母さん!お父さん!!ソウお姉ちゃん!!!!
どうしようもないくらいに痛くて熱くて苦しくてツラかった。すっごく長い時間に感じたソレは、ソウがすぐに治してくれた。痛みが和らいできた時に見えた必死な表情のソウ。全力で守ってくれるソウ。暖かい光のようなモノが身体に流れ込んでくるのを感じる。傷が塞がってきて初めてちゃんと息できてなかったってこともわかった。1度大きく息を吸ったらそこでウチの意識は途絶えた。
暗い昏いくらい闇。何も見えないクライ闇。闇の中にウチはいる。他に誰もいない。何も聞こえない。ココが広いのか狭いのかもわからない。息が苦しい。さっきはちゃんと息ができたのに・・・いまはすごく息苦しい。少し前に感じていたハズのソウの光も、いまではとても遠く遥か前のできごとのように思える。思える?ずっとずっと昔だったのかもしれない。ずっと昔だった?昔にあった?ちゃんとあった?わからない。わからない。わからない。わからない・・・。
暗くて不安で昏くて怖くてくらくて苦しくてクラクテサミシイ・・・ソウはどこ?ウチはどこにいるの?お母さん?お父さん?みんなどこ?どこにいるの?どこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこドコどこドコドコどこドコ・・・どこにいるの?
「息ができないの。」
呟く。いつの間にか膝を抱えていたウチの周りが急激に広がっていく。赤く広がる。紅く染め行く。朱に塗りつぶされていく。ここが広いのか狭いのかわからない。呼吸が勝手に早くなっていく。怖い恐いコワイこわい怖い恐いコワイこわい怖い恐いコワイこわい怖い恐いコワイこわい!!誰か!誰かいないの?!お母さん!お父さん!誰か!!誰かいないの??!!
不安で堪らなくて、不安が恐ろしくて、不安に押し潰されていく。視界が歪む眼が眩む。ウチの身体もアカく染まっていく・・・。真っ赤に染まったウチの身体。ウチの思う通りには動かない。真っ赤になったウチの世界。緋色以外は何も見えない。ソウ・・・ソウ・・・ソウ・・・ソウ!助けて・・・ソウ。ウチ・・・独りはイヤなの。
「ゼンブマッカニコワセバヘーキ。」
ウチだけど、ウチのじゃない声が響く。
「ア、アアア、アアア"ア"ア"ア"ア"ア"アアアアア!!!!」
薄ぼんやりとした視界。赤く染まった世界が見える。ここはどこ?これはナニ?どうして勝手に身体が動くの?どうして?どうして?どうして?どうして!!!勝手に動く身体が跳ね起きて飛び出した!
―――――――――――――――――――――――――――
「ニコっ!!テト?!!」
激しい咆哮につられて振り向くと、テトがニコに襲い掛かっていた。急に激しい百合展開?!いや違う!あれはニコが物理的に襲われてるのか!なんでだ?テトがニコを襲う理由なんかないハズなんだが?ってそんなこと考えてる場合と違う!すぐ助けなきゃ!!
一瞬思考が止まってしまったがとにもかくにもまずダッシュ!地面へと突き飛ばされたニコを下敷きに、テトが覆い被さるようにして押さえつけている。これはなんていうかアレだ!危険な感じが危ない気がする!
「グルルルルルルルルルルゥゥ!」
なんとテトにゃんが唸っている!ナンゾコレ?!訳も分からんがとりま捕まえようと低空タックル!不意をついたことにより完璧に決まったソレは、俺とテトにゃんを仲良く地面へゴロゴロと転がすことに成功した。
「ニコ!平気?!」
「ん・・・んっ!」
平気そうだよかった!ならテトにゃんは大丈夫・・・か?
「いいいいいいぃぃぃぃぃっっっ!!!てええええぇぇぇぇぇぇっっっ????!!!!テテテテテテトさん?!噛まないで?!噛まれるとマジで痛いんですけどおぉぉ??!」
テトにゃんの丈夫な犬歯が左横腹にめっさ食い込んでて痛い!痛い!超いったい!!
「痛い!痛いよ!マジやめて?!お肉取れちゃうからあぁぁぁぁ!!!」
テトにゃんに懇願するもまったく聞く耳を持ってくれていないご様子だ?!何故かはわからんがテトにゃんがご乱心ナリ!!もうやめて!俺は食べても美味しくないよ!?抵抗しても全然解放していただけない!押しても引いてもビクともしない!
あぁ!美少女に密着されてるのに全然さっぱ楽しくないし夢心地なんて微塵もない!くっそ!くうぅ!もうムリ!我慢でーきなーい!!ちょっと全力出してみないとダメだコレ!!
「うぐぅ・・・ぃ痛い!あぁもう!この手だけは使いたくなかったがやむを得ない!」
幸運にもすぐ近くに荷車へ積んでおいた布袋が落ちていたのでゴソゴソと中をまさぐる。取り出したるは当然・・・コイツだ!!
「喰らえ!というか嗅ぐんだテトにゃん!ゴブの魔石はくーさいぞー!!!」
「ぎゃふんっ!!」
ぎゃふんなんてリアルで初めて聞いたぞ?!歳若い乙女のセリフじゃないな!あとで教えてあげないと!て違うわ!ようやく離してくれた!流石は異臭の王!ゴブ様万歳!臭いに鼻とか痺れそうだし憧れることはないがな!マジで!テトにゃんが離れた隙に背後へと回り込んでお腹へと手を回す!そんでもって地面へと転がり込んでテトにゃんを仰向けにすることに成功だー!
「こ、この状況なら手足も踏ん張れまいて!ふーははははー!我の完全勝利ナリー!さぁテトよ!無駄な抵抗はおよしになって!」
《マスター、口調が入り乱れていて気味が悪いです。それに、あまりこの状態を長く続けるのはおススメできません。》
「わかってますのことよ!カナデさん!テトの首輪がまずいんでしょ?!」
《・・・マスターの腹部の出血のことを言おうとしたのですが、確かにそちらも拙いですね。》
だってさっきからテトにゃんの首からギチギチギチギチとヤバい音が鳴ってんだもん!これ【隷属の首輪】の絞まる音でしょ?!なんでこんなにヤバめに絞まってんだよコレ!?首輪が絞まって苦しいのか、先程から拘束している俺の腕ではなく首をガリガリと引っ掻いてしまっているテトにゃん。そんなに掻いたら怪我しちゃうよ!やめなよマジで!
「テト!首掻くの禁止!」
俺が叫ぶのとほぼ同時に【隷属の首輪】が更にキュッと絞まりテトにゃんが気を失ってしまった。かなり強めに禁止の意思を込めたからか、首輪の効力も一気に増大したっぽい。だ、だいじょうぶかな?テトにゃん?
「もう絞まるの終わり!気を失ったら以降はノーカンだ!ノーカン!」
もう1度強い意志を込めて【隷属の首輪】へと向けて指示を飛ばすと、すぐにヒュッと緩みいつもの状態へと戻ったご様子だ。これいったいどんな仕組みでこうなってるんだ?謎は深まるばかりだな。
「でも、いちおうこれで一段落かな?まったく、テトも寝惚けるにしたってこんな過激なのはやめてくれよなー。ハートがついちゃったじゃんね。」
《マスター、悠長なことを言っていられるほど浅い傷ではなさそうです。出血量もそうですが、犬歯が筋膜にまで達していますので早目に止血を施さないといけません。》
「んむ~、でもなぁ~。ポーションのクーリングタイムも過ぎてないし、ロクな道具もないから止血だって難しいよ?それにポーションは魔力回復用の方を使わないとモンスターに襲われる未来しか見えないし?てかデクッポイドが現にいるし。」
《それなら今し方大量入手したDPを使って治療道具を入手するか、止血薬を入手するのがいいでしょう。止血薬ならポーションのクーリングタイムとも干渉しませんし、手軽なのでこちらをおススメします。》
「じゃ、それでいくか。メニューオープンっと。」
すぐさま止血剤をDP変換でゲッチューしてお腹に塗り塗り。全然痛みは引かないし、治りもしないけどなんか血も止まったからコレでいっか。さっさとテトにゃんとニコを荷車に載せて戦闘の続きをしないとだし!元気出して頑張るんだもん!
「ニコ!こっち来て!もうテトは大丈夫だと思うから。ちょっと一緒に荷車に載せよう!」
「・・・んっ!」
ニコと共にテトにゃんを荷車に積み直しデクッポイドと三度対峙!幸いコイツらの移動が遅かったお陰で不意打ちをされることはなかったが流石にもう荷車の眼と鼻の先まで近付かれてしまった。もはや後には退けぬ!
対峙した木偶人形は先ほどと同じく4体。あれ?れれれ?れれれのれ~?なんか増えてね?何が同じか!オコプンすんぞコラ!という憤りを隠すことなく彼らへぶつける為いざ出陣!面倒だから番号振り直しで左から1~4としまずは4へと突進ナリ~!
接敵して逆袈裟切り上げで木偶の左足を太ももから斬り落とす!すぐさまカウンターを裂けてバックステップするも今度は腕による攻撃が来なかった!4号は足を斬られて倒れ込みそのまま動く様子もなくなった。これなら勝つる!ヤツらの弱点見つけたり!
弱点がわかればこっちの物だと俄然テンションもやる気も上がってくる。ヒャッハーしながら3号と2号を斬り伏せ、調子に乗って1号に殴られたけどお返し!とばかりにヤツの足を奪ってやった。これにて一件落着かな?てか最後の1撃めっちゃ痛かった。1号の右フックが顔面にモロヒットしちゃったのはご愛嬌だ。
「なんかまだまだ生えてくるな。ひーふーみーの、たこかいなっと。」
《どんな数え方ですか?適当に数えるのはやめてください、マスター。》
「いや、カナデさんが数えてくれるかなーって?俺のは雰囲気出しただけだから気にしないでよ。うん。」
《・・・やはり真剣な時にふざけるのはマスターの得手ですか。現在木偶人形が前方に13体。後方に4体。また、砂人形が後方に3体生えましたね。》
「ここに来て砂人形もかよ。これマジやばいな。魔力自動吸引の維持もそろそろ限界なんですけどー。」
武器強化の術式を発動させるための魔力を集める術式である魔力自動吸引は、燃費としてはとてもいいのだが1点だけ問題がある。それは、
「周囲の魔力を吸いつくしたら維持できなくなって消えちゃうってのが現段階での課題だな。これさえなければ汎用性バッチリなんだが。」
《それができるようになってしまったら、それこそチートです。マスター。》
「それもそうだが、永久機関っていうのはいつの時代も男のロマンなんだよ。ロマンなくして男は語れないモノさ・・・。ふっ。」
《うわっ、キモ。》
「短すぎる言葉がむしろ鋭さを増して俺の精神を削りにきやがるぜ・・・ぐふぅ。」
などとふざけ合ってる時間ももはやなく、俺はデクッポイドとの抗争へと気持ちを切り替えて戦う。倒せども倒せども俺の生活はよくならない。この矛盾した構図はまさに社会の縮図だとでもいうのだろうか?貧乏暇なしとはよくいったものだとキコリ作業へと没頭する。
悩む頭を停止させ、ただただデクッポイドを屠る機械と化した俺。ただ左足を斬り落とす簡単なお仕事です。って全然簡単じゃないっつーの!こちとら命がけだよ!痛いんだよ!穴の開いたお腹がさっきから痙攣しっぱなしだよ!カナデさんが生体コントロールしてくれてなかったら動けてもいないよ!
「これで7体・・・目!!っと。」
慣れない剣技?でデクッポイドを倒すことしばし。やっと前方の半数をやっつけることができたけどここにきて更なる異変が俺を襲う。そう、傷口が開いたのだー・・・orz。
「うぐぅ。どっぷどっぷと俺の血が出ていっちゃう・・・。やめれ~帰ってきて~・・・OTZ。」
《1度体外に出た血液が自力で帰ってくるというのは間違いなく怪談ですね、マスター。しかも雑菌とゴミが大量にブレンドされてしまっていると思いますので、再度体内に取り込むのは如何なものかと。》
「いや、わかってるんだけどね。やっぱ血液操る系って憧れるじゃん?恰好いいし・・・。」
雑談しながら再度止血剤を塗り塗り。これ大丈夫かな?まだ効果あるかな?と恐る恐る塗ってみるとなんとか出血が止まってくれた。だがさっきより確実に効き目が弱い。これはもしかするとこの止血剤がカバーできる怪我にはある程度の限度があるのかもしれない。どんな成分かしらんけど謎いアイテムなんだからもっと頑張ってくれといいたい。
《所詮はDP15Pの品です。ポーションが使用できない間の繋ぎ程度で考えてください。できるだけ大きなアクションは避け、身体を捻ったりしないよう心掛けてください。》
「それこそムリってもんでしょ・・・。現状俺のほぼほぼ全力の攻撃でなんとか足を切断してるんだから、加減したりしたら1回で斬り落とせなくなっちゃうよ。」
これでも7体は連続でワンキルしてるんだからむしろ褒めていただきたいくらいなのに、カナデさんたらもっと上のことを要求してくる。どんだけ向上心が強いのか。意識高い系女子か?満身創痍な俺に求められても正直困るんだが・・・。
その後も奮戦し、なんだかんだといってる間に木偶人形は全部倒し終えた。まだまだお手ては地面から生えてきてるけどそれはちょっと放置しよう。それより問題なのはこの砂製人形スナッポイドの対処がヤバい。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。か、カナデさん、魔力の高いとことか、わかったり、する?俺的には、はぁ、もう完全お手上げなんだけど。」
《奇遇ですね、マスター。カナデにもわかりかねます。木と違い不定型なせいか全身を魔力でコーティングして形を保っているようで、部分的に魔力が高まっている部分を探し出すことが困難です。》
ハァハァしながらカナデさんに聞いてみたところ、ここにきてワンキル伝説終了のお知らせが鳴り響いた。ついでに俺の脆く儚く繊細な精神的HPが尽きようとしているのを感じる。つまりは心折れそう。もう寝たい!!
しかしながら砂の人形に不審な点がないでもない。これがもしかしたら弱点かもしれないが、いやでもそんなまさかと俺の中の常識が囁いてくる。でも気になる。めっちゃ気になっちゃう。
「気のせいかもしれないし、勘違いかもしれない。でもでも、これだけは言わずにはいられないんだけどもしかしてだけどもしかしたらなんだけど、アイツら・・・移動してなくね?」
《そうですね。正確にはほぼ移動していない、になると思います。地面から這い出た地点から1m程度は進んでいるみたいですので、このままじっくり待っていれば数時間後にはマスターと接敵することになるでしょう。》
「それは朗報だな。マジこれ以上の戦闘はムリだし。何体木偶人形倒したんだって話しだし。途中期間限定増量キャンペーンが如く増えてたもん。お陰で6発も殴られたし。魔力回復したら焼き払いたい。マジで。」
とりま喫緊の脅威がなくなったと思う。だからきっと本当の脅威はこれからなんだろうな~。この流れとこの展開だとこのまま終わる方がおかしいもん。
これはアレか?倒したと思った木偶人形が復活する流れか?でもそうはさせないぞ!っと背嚢で残骸をばきゅっておくのも忘れない。無数に転がる腕や足、たまに胴体や頭も粗方吸収してから荷車組へと合流を果たす。
「なんか左脚がばきゅれないと思ったら甲に魔石が埋まってたか。これが動力でこれが入ってる間はまだ生きてる扱いってことなのかな?だからばきゅれないと。」
《どうやらそのようです、マスター。魔石を取り出せば残った足が取り込めるので間違いないかと。また、今回戦った相手は元冒険者も木偶人形のどちらも召喚可能モンスターの一覧に追加されていないところを見ると真っ当なモンスターではないということがわかります。》
「ていうと、何かしらのイレギュラーな存在ってことか。まぁ、これがこの世界のセオリーってなるとちょっと引いちゃうからむしろそれでいいんですけどね。できたとしても召喚もしたくないし。」
現状周囲に腕も生えてないし這い出てきた木偶人形もいないが、腕に囲まれてる状況に変わりはないからどうにかしたいとは思うもののここから力技での突破は難しそうだ。また荷車の車輪掴まれて止まっちゃうのが目に見えているし。
「ニコ、怪我とかないか?荷車から落ちた時や木偶人形に脚掴まれてたりしたでしょ?とにかく少しでも怪我してたら言ってほしいな。すぐ治せるんだし。」
「ん。へーき。ソウは?」
「ならよかった。俺もへーきだよ。汗だくの泥だらけでそれがイヤでイヤで仕方ないけどね!あと、殴られた恨みは絶対に忘れない!絶対だ!!」
決意を言葉に、誓いを胸に俺はそう言い放った。こんだけボコボコ殴られたのは初めてってくらいにボコられたので何があっても許す気はなくなってしまった。後悔する知能すらなさそうな無脳どもだが、それでもこの世界に存在したことを後悔するくらいには叩き潰すことが既に俺の中では決定してしまっている。
目には目をなんてことは言う気はサラサラない。やられたらやられた以上にやり返すのが俺の信条だし!執拗にしつこくねちねちとやり返してやりたい気持ちでいっぱいだ!早く魔力回復ポーションが飲みたい!コイツらを屠るタメならDPだって惜しくない!!
迸る激情を抱いたままにテトにゃんとミリーの様子を伺う。テトにゃんは呼吸もすっかり落ち着いていまは平気そうだ。ミリーは・・・なんか熱上がってきてる?ハァハァ言ってるし汗もすごいな。めちゃめちゃ苦しそうだけどこれ骨折が原因なの?それとも血をいくらか失ったからか?いや、後者だと体温下がるんだっけ?よくわからんな。
「ってヤバ!武器強化が維持限界だ!?」
ブブブブウウウ・・・ウウゥ・・・ゥン
騙し騙しというか、なんとかムリヤリ維持してきた術式がついに壊れてしまった。俺の自然回復分の魔力も注いだりしてたんだがそれももう限界を超えてしまったために魔力不足の動作不良だ。どうすることもできないなー。
《・・・マスター。近くの砂腕が這い出そうです。数は1体だけのようですので、荷車を牽き距離を取りましょう。》
「うぐぅ。このタイミングかよ。狙ってるみたいにタイミング悪いヤツだなぁー。でも砂のヤツは特にヤバい。剣では多分倒せない系のムリゲーだと思うからちょっと距離を取るとしますか。」
言いながら荷車を飛び降り、よっこらっせっと動き出す。相変わらずクソ重たいが、子供3人とはいえ全員女の娘なのであまり文句を言うのも憚られると無言を貫く俺紳士。車輪がギィギィ音を立てながら回転しだし、勢いがついてきたなと思った10歩目で地面がなくなった。
ボコンッ
「はっ?」
《これは。》
「んっ?」
地面が陥没しぽっかりと口を開いたと思った次の瞬間には色々キュッてなっちゃう浮遊感を感じて落ちていくだけだった。
お読みいただきありがとうございます。
じり貧の状態でも女の娘たちを守る想君、素敵ですね!口も態度も悪いけど、見た目はお姫様な王子様(笑)の頑張りどころです!
って穴に落ちるとかなんでですか?!家路は下じゃないですよー!!
次回予告
地面の下は
これも1つの戦い方
ニコの異変




