肉の塊 木の塊 砂の塊
感想、評価をいただきありがとうございます(*´∇`)
そして、更新が少し滞ってしまいごめんなさい。週に2回は更新すると言っておきながら今週初投稿がなんと土曜日・・・ダメすぎます!
いえ、サボってたのとは違うんです!単純に風邪引いてましたごめんなさい!
前回予防に気を付けましょーとか言ってたのにさらっと風邪引いてました!ゲホゲホガホガホと周囲の方々に迷惑をかけてしまい、本当に申し訳なく思っております。
インフルじゃないのかって?えぇ、違います!だって検査してないもの!あ、熱っぽさも節々の痛さもないですよ!だから違うったら違うんです!
皆々様もどうかお気をつけくださいましm(_ _)m
読んでくださる全ての方々へ感謝の祈りを捧げながら、本編第49話を投稿させていただきますー!
これからも皆様が楽しんでいっていただけると幸いです(*´∨`*)
前回のあらすじ
ミリーの頭は鈍器だった
武器強化を自力で実現、俺スゲくない??
ぐっちゃんぐっちゃんのびたんびたん
ぐちゅぐちゅでぐっちゃぐちゃな謎い物体がびったんびったんと跳ね回っている。ゴブやらなんやらでグロ耐性が多少ついたと自負していたさっきまでの自分を嘲笑いたい気持ちでいっぱいだ。お前はまだ本当のグロを知らないんだな、と。てか知りたくなかったマジグロい。
「早く帰って風呂入って寝たい。」
《マスター、現実逃避はあまりオススメできません。マスターは生まれてこの方入浴したことないですよね?》
「ちょっと待って!その言い方だとなんか汚いみたいな印象受けるから!ちゃんと身体拭いたりはしてるし!キレイにはしてるからね!?」
たまたまいま泊まってる宿にお風呂がないから異世界お風呂デビューは先送りにしてるけど、ちゃんと機会があれば入るつもりだし!俺のお風呂好き舐めんなし!なんせ前世はコトあるごとにお風呂入ってたぐらいだし!思えばそれのせいで溺死したんだっけか?うん、となるとお風呂場で死ぬぐらいお風呂が好きだったって言っても過言ではないかもしれない!今度からそう言おう!そうしよう!
「いま決めた!帰ったらお風呂入ろう!銭湯みたいなのになるのかサウナで垢擦り的なものになるのか知らないけど、いい加減お風呂入りたくなった!絶対入る!」
《その為にはクリアしなければならない条件がいくつかありますね。1つは生きて帰ること、1つはなるべく大きな怪我をしないで帰ること、そして1つは》
「みんなを連れて帰ることでしょ?見捨てる選択肢は初めからないからね!」
《いいえ、マスター。女湯に入るのならしっかりと性別を変えておく必要があることと言いたかったのですが。》
「それはないから!俺が折角なけなしの精神力で自制したのになんでそこんとこ蒸し返すのさ?!絶対ヤダかんね!俺はあくまで男で在り続けたいんだ!」
カナデさんが俺の精神に揺さぶりをかけてくるが、冷静にして沈着な我が鋼の精神には一切響かない。しっかりと現在の姿を記憶してから『セルフカスタマイズ』すれば大丈夫かもしれないとか、微塵も思ってないことからもわかるように全然誘惑に心引かれたりなんかしたりしない。し、しないからね?!
「なんかここのところ訳のわかんないモンスター観察する時にカナデさんが悪ふざけすることが多い気がする。ただ観察するってのが暇なの?物足りないの?」
《いいえ、マスター。こういった場面で真面目に行動を起こすと決まって些細なミスをするというのがセオリーですので、それを避けているだけです。》
「いや、フラグ折るにしても他にやりようがいくらでもあるでしょうに・・・おふざけしたいだけにしか感じないよ。マジで。」
カナデさんがもっともらしいことを言っているので恐らくそれは嘘だろう。何気にまだ付き合いが1月も経っていないが、内心を暴露しまくって共に生活してるから付き合いの長さ以上にわかり合えてるような気もするし。故に今回はあの肉の塊が気持ち悪すぎるから俺の気持ちを察して話題や意識を反らしてくれているに違いない。
いつも俺をディスって遊ぶカナデさんだが、そういうところは優しいって知ってるんだからね。さっきから空耳だと思うけど、どうせ女性扱いされてるからとか、いい加減面倒とか、娘の子育てには父親よりも母親が大事とかって謎な台詞が聞こえてくるのはきっと気のせいだ。小鳥のさえずりかな?草葉の揺れる音かな?まったく、異世界の物音は不思議な音色を奏でちゃうもんだな!
「さ、さぁて!いい加減アレ倒しちゃおうか!千切れ飛んだ肉片とかも概ね集合したみたいだし?待ってた甲斐はありそうだ!」
そうなのだ。何故にこんなにも悠長にカナデさんとしゃべくり○○7してたかというと、先程から元冒険者だった死体2人組が頑張って1つになろうとし過ぎて圧力高まりまくった影響で弾けちゃった肉片たちが再び集まるのを待っていたのである。
何を言ってるのか何が起こっているのかそれは俺にもよくわかってないが、つまりは残りの『炎弾』数が心許ないので極力集まっていただいたところを一網打尽にしたかったからに他ならない。剣で刺したり足で踏んだりして活動を停止させられればいいが、うっかり俺まで仲間に入れられたりしたらたまったもんじゃないし。
「3つの弾よ在れ!炎弾 変換 炎槍 性質付与 貫通 業火 強化」
今回も俺的流行最先端の『炎槍』という名の尖端を準備する。必要な性質はぶっ刺して燃え上がることなので、業火を付与して炎上性質をプラスワンしてみた。木枯らしに吹かれる焚火の如く燃え上がってくれることを願うばかりだ。
「落ち葉焚きと違って焼き芋を作る気には一切なれやしないが、よく燃えてくれるとうーれしーいなっと! 投擲!」
前回の豚野郎と違い、若干距離が開いてるのでしっかりと狙いをつけ『炎槍』を投げ放つ。ゴゥッと唸り鳴きながらぐちょびったんへと真っ直ぐ飛んでいき、なんの捻りもなくただドチュッっとぶっ刺さる。
「ピギョロロロロロロロロロオオォォォォォ」
「鳴き声まできしょいな!!てか口もぐちょぐちょなのにどこから声出てるんだよ!」
どんな時でもキモさの提供を忘れることのない謎物体のチャレンジ精神に感服するも、『炎槍』が炎をわんさか放出し始めたのを皮切りに鳴き声が一気に萎んでいく。中から焼いてるから酸素やらなんやらの空気が消費されるのが早いのかな?
チャリリリン
「んん?なんか黒いガラスみたいなモノが謎物体から落ちたぞ?」
『視覚強化』頼みで落ちた物体を確認してみたところ、どうやらそれは魔石のようだった。しかも何故かわからないけど複数あるみたいだ。
「なんでだ?普通は1体のモンスターからは魔石は1つのハズでしょ?いちおう原料になった元冒険者は2人いたんだから、2つまでなら納得もいくけどそれ以上に出てきたってのはどういうことだ?」
《・・・現時点ではわかりかねます。原因の究明も可能かどうか、現在ある情報だけでは不確定です。》
どうやらカナデさんにも不可解な現象らしい。急激なモンスター化といい、複数の魔石が出てきたことといい、なんか今回のコレは面倒事のスメルがしてきたな。是非とも放置して関わらない方向で行きたいと思う。
全然理由はわからないままに魔石を奪われたぐちょびったんは魔法抵抗がガクッと下がったのか、先程までより目に見えて炎に侵されていっているように見える。やはり魔石が入ってると一味違うもんらしい。
てかもしかしたら『炎槍』が運よく魔石の近くに刺さっていなかったら燃やし尽くせていなかったかもしれない。そこんとこ全然考慮してなかった事実に我ながらびっくりしちゃう。ドジっ娘属性とかついてないハズなんだけどなぁ。
「その辺の判断が上手にできてない理由は、この疲れ切った倦怠感が理由に違いない。というかそのせいにしたい。変な属性が俺についたらヤだもん。」
《しかしながら接近することも憚られる相手でしたので、一概に誤った判断だったともいえないでしょう。仮に焼き尽くせなかったとしても、『炎槍』が刺さり炎上したあとでしたら逃亡も叶ったかもしれません。》
珍しくカナデさんがフォローを入れてくれる。むむむ・・・もしかしたら助言をしていなかったから的な打算があるのかもしれないと疑ってかかってしまう。俺の心が徐々に汚れていっているのを感じる。けどまぁ疑うのはよくないから、きっとカナデさんは優しさからフォローをしてくれているんだと信じよう。そうすれば誰も傷つかないし、誰も傷付けたりしないもんね。優しい平和な世界だよ。うん。
《ですので、カナデはしっかりと先々のことを考えた上で行動をしているのです。考えなしにポンポン突っ込むマスターと一緒にしないでください。無能がうつります。》
「ぐぶふぅっ!!あまりにも尖りすぎだよカナデさん!刺さってる!刺さってるから!カナデさんの鋭く尖ったナニかが俺の心をメッタ刺しだよ?!そこまでいうことないじゃん!さっきまでの優しはどうしたのさ!!」
《先程の発言ですか?あぁ、それはカナデがカナデ自身を擁護する発言をしたまでですので、マスターの評価判定には特に影響がございません。》
裏切るどころか初めから味方ですらなかったカナデさんだった。案内役って身近で口撃してくる人のこと言うんだっけ・・・?
カナデさんが俺のことをいじめている間も景気よく燃え続けたキャンプファイヤーの様な肉の塊はあっという間に灰になって崩れた。途中、ウゴウゴしながら魔石を拾おうと触手?を伸ばしてたけど、あれ拾ったらまた再生とかしてたのかな?そう考えると更にキモくなるからやめておいた方がよさそうだ。俺の繊細な精神が保たないかもしれないし。
「うぐぅ。それにしてもダルいな。またMP枯渇しちゃったかも・・・。それともキモいの見たし、なんか肉が焼けた匂いが臭いからそれのせいかな?どちらにしても気分が悪いから早くまともに休める場所に行きたいよ。」
愚痴をこぼしつつもしっかりと背嚢式ダンジョン【DP生産貯金箱・吸引式】に謎キモ生物の灰をばきゅらせる。キュゴー。こんな得体のしれないモノを吸い込んでいいものかとちょっとだけ悩んだが、そもそもモンスターとかわけのわかんないモノばっかりだから別にいっかと思えるのが不思議。不思議でもないか?
灰も吸い込み魔石もげっちゅーしたのはいいが、やはり魔石は2個じゃなかった。てか7個もあった。
「これって、コイツらが冒険者してる時に倒したモンスターのかな?それとも今回の変態行為(肉塊合体のこと)と関係があるのかな?なんだか知りたいような知らない方がいいような微妙な感じだけど、知っておかないと後々後悔するっていうセオリーも存在するし、できれば知っておきたい・・・かな。うん。」
俺の中ではかなりの葛藤と進まない会議があったが、いちおうちょっとだけ知っておこうかなって思う気持ちの方が勝っているようだ。自分でもちょっとびっくりだけど、やはり知的生命体たる我は知識欲が貪欲なのだろう。知りたいと願うこの純粋な気持ちは俺が人である証拠でもあるのかもしれない。
《流石はマスターです。パパラッチ根性ですか?なかなかにゲスいですね。貪欲に他人の財政状況を知りたがる。ソコニシビレルアコガレルー。》
「財政状況なんか気にしてないから!!」
相も変わらず前世ネタで遊んでくるカナデさんだ。それにしたってそんな棒読みはなくないか?そのセリフはもっとこうちゃんと感情を込めてそれこそ相手を崇拝するような・・・って
「ネタでも敬ったりしないってどういうこと?!どんだけ俺の評価が低いわけ??!」
《ちっ・・・気付いてしまいましたか、マスター。よくもそれだけ小さい所に気が付くものです。重箱の隅をつつくのがご趣味と言っていただけのことはありますね。》
「舌打ちと言ったことのない趣味の話し。いったいどこにツッコミを入れればいいのか頭が混乱してるからわかんないぷー。」
《残念です、マスター。正解は「このような異常事態に何をふざけているのか」とツッコミを入れるべきですね。まだまだ精進が足りていません。》
どうやらそういうことらしい。いったいどないせいっちゅーのか甚だ疑問である。そんな冷静な返しをするくらいなら初めからふざけないで欲しいと願う俺はワガママですか?
やり場もなく行く当てもない怒りと疲労を抱えながらMP枯渇の倦怠感と戦う俺をどうか誰か慰めたり褒めたりしてほしい。きっと俺は褒められて伸びるタイプだと思うし。きっとそうだと思う。
それなのにカナデさんったらいっつも酷い扱いしてくるし褒めてくれてたのも最初の内だけ。あれ?最初の内は褒めてくれてたよね?あれあれ?どうだったっけ?思い出せないかもしれない。痴呆か?
俺が自身の記憶を懸命に手繰り寄せつつも荷車まで戻ろうとしていたら、今度は地面が所々ボコボコと動き始めた。いやいや、その演出はゾンビとかスケルトンの出現フラグっしょ?ここら辺にあったモンスターの死体は全部マイダンジョンが美味しくいただいちゃってるんだけど?
「カナデさん、この辺ってアンデット系出現したりするの?」
《いいえ、マスター。ここ、東の森で出現するのは亜人タイプと獣タイプばかりのハズです。また、通常は魔物の死体が死霊化するにも相応の時間と条件が必要です。》
「時間はわかるけど条件って?」
《基本的な条件は、大気中、もしくは土中に含まれる魔力が一定量以上あること。それと闇の精霊の活動が活発であることです。》
「多分だけど、その条件ってどっちも満たしてないよね?ここ。」
《はい、マスター。仰る通りどちらの条件も満たされていません。ですので、ここで死霊系の魔物が急に発生するというのはあまりにもイレギュラーすぎます。マスターはこういったイレギュラーを引き寄せる特異体質か何かですか?》
「少なくともそこまで因果律さんに嫌われたり好かれたりしてるって覚えはないな。ちょっと運はない方だったと思うけど、それだってまだ笑って済ませる範囲のハズだし。うん。」
少なくとも賭け事なんかは勝率無視して敗けこせる自信はあるが、それだって通常は起こりえない事象を引き起こす程の異常事態ではないだろう。となると偶々(たまたま)こういった場面に出くわしたのか、もしくは普通にここでこういったイベントが起こる条件を何かしらで満たしてしまったと考えるのが妥当だろう。
そう考えると後者がマジ怪しい。ここで大量のモンスターを倒したし、冒険者だって2人死んでいる。この辺りはちょっとだけかもしれないけど少しばかり特殊な条件といえなくもないからだ。
「この手のイベントが起こる条件・・・か。それを考えてる時間って残ってるかな?」
《まずもって難しいでしょう。早速元気な個体が出てきたようです。》
さっきのぐちょびったんを葬った場所とはまた違い、地面が黒く変色した場所がボコボコしてる。
ボココココッ
「ほら腕生えた!地面から腕が生えましてよ!奥様!ご覧になって?アンデットが這い出てくる鉄板演出ですのことよ!」
自分でも意味も訳もわからないが、興奮のあまり口調が若干変わってしまうほどにアンデット感溢れる演出だった。非常にアンデットアンデットしていると言わざるを得ないだろう。
地面から伸びた腕たちがわらわらと天・・・というか森の木々へと伸び、グラグラと頼りなさげに揺れている。これが麦や稲なら気楽にぼけら~っと見ていられるんだが、どうみても腕なわけで。そろそろ風に乗って腐臭が漂ってくるかもしれないが、マスクもボンベもない俺はこの窮地をどうやってやり過ごせばいいのだろうか?絶対臭いよね。
てかいま意識あるのって俺とニコだけだけど、もしテトにゃんが起きてたら臭さで気絶しちゃうかもしれないレベルのイヤな匂いが漂うんじゃなかろうかといまから戦々恐々である。
「ニコ、アンデットが大量に出てくるっぽいから臭そうだ。急いで逃げよう!」
「ん!いく!」
MP枯渇状態の俺と攻撃力皆無のニコのコンビじゃゾンビとかスケルトンとかを相手にしていられるわけがない。よって、ここは全力で逃げようと荷車を牽くがビクともしない!
「えっ?嘘なんで?!ミリー太った?置いてくか??!」
《気絶している人間がそうそう簡単に太るとは思えません。車輪を既に掴まれているようです、マスター。》
「っ!!?ここは黒いシミの外なのに?!なんでだ!あいつらモンスターの血肉が原料なんじゃないのか?!」
通常アンデット化には死体か骨が必要だ。なので、もしかしたら血肉からもアンデットが発生するかもと思い荷車は戦闘を行った場所から少し離して停めてあったのだが何故か車輪をホールドされているらしい。
「それならそいつだけでも速攻片付けよう!」
邪魔なモノなら斬って捨ててしまえばいいと車輪側へと歩みよりロングダガーを地面に生える腕へと突き刺そうと構える。
「・・・ってこれはゾンビじゃない?」
改めて間近に地面から生える腕を見てみると全然腐った感じがしていなかった。それどころか、生き物なのかも疑わしい見た目に驚いた。
「砂の塊の腕と、木でできた腕?」
荷車の周りには3本の腕が生えており、進行方向向かって右側の腕2本が砂で、向かって左が木でできた腕だった。その謎の腕がそれぞれ手近な車輪をがっちり掴んで離そうとしない。訳は分からないがしなきゃいけないことははっきりしているのでとりま蹴っ飛ばしてみる。
ゴッ
「~~~~~~~っっっ!!!」
木でできた腕を蹴ると痛いということがわかった。いや、すっごく痛いってことがよぉくわかった。もうできればやりたくはない。だがしかし、木がダメなら次は砂かと反対側の腕も蹴り飛ばしてみた。
ザッ
こちらは特に痛くはないが手応えも全くといっていいほどになかった。それもそうか。表面しか削れなかったし、糠に釘を体現したような状況だもんな。砂に蹴りとか効くわけがない。当然である。
「・・・マジぃな。これどうしたらいいんだ?俺の蹴りが効かないってなると、あとはロングダガーちゃんくらいしかないけど・・・刃物って砂とか木に対して役に立ちそうなビジョンが持てない。マジでどうにもムリ臭い。」
それもそのはず。何を隠そう刃物というものは、本来ある程度軟らかいモノを切るものだったりするのだ。中でも繊維の弱い物質を断ち切るのが得意だったりする。細かい鉱石の集まりである砂や、固くて丈夫な繊維がウリの木を切断するための物ではないのである。
特に武器として作られた刃物なんかは、動物なんかを切ることに焦点を充てているので砂なんか切れば刃がボロボロになるし、木なんか切ろうとしたら途中で刃が食い込むだけで止まってしまうだろう。
「んっ?!」
ニコが突然大きな声を出してきたのでそちらを振り向くと、ニコの右脚をがっちり木の腕が捕らえていた。なにしてんだお前!ロリコンか!!
木の腕はニコの白く、細く、儚げな頼りないがシミ1つないキレイな右脚の足首辺りをガチッと掴んでいた。けしからん!いったい誰に断って幼女の脚を堪能しているのか!!
「術式 魔力自動吸引 実行! 長両刃短剣 へ 性質付与 切断 強化」
うぐぅっおえぇっ!魔力枯渇状態なせいでコードを組み上げるだけで吐き気がする!頭痛がする!めまいまでしてきてクラクラする!!いくら自動吸引式でも構築と発動の魔力は俺持ちなのだ。ヤバいツラい!!
「ぐぅっ・・・ま、間に合え! 最小 武器強化開始!!」
それでもムリクリ魔力自動吸引を発動しロングダガーを強化する!そのまま倒れ込みそうになる勢いに身を任せて地面を転がり這う這うの体でニコの足元スカートの下へと辿り着く。間違ってニコに当てたりしないよう慎重にロングダガーを振るうと、スパッと木の腕を切り落とすことに成功した。
「よ、よかった。なんとか・・・切れるみたい、だな。うえええぇ・・・。」
は、吐きそうだ。マジックポーションのクーリングタイムが過ぎたら速攻使いたい!有り得ないくらいに気持ち悪くてもうマジ最悪だよ!!
「ん・・・。ソウ、ありがと。」
「うぐぅ。ニコを、守るのは当然っしょ・・・。ただ、ちょっと手を貸してくれない?お、起き上がれ・・・なくて。」
ニコに手というか肩を貸してもらってなんとか起き上がり荷車の心を掴んで離さない、もとい車輪を掴んで離さない他の腕も切り落としてみた。どうやら問題なく切れるみたいだ。だが、木の方はともかくと砂の方は注意が必要だ。いまは術式が安定してるからいいけど、少しでも術式がブレたりしたら刃が全部やられそうな感じがする。スパッじゃなくてザリッて感じの手応えだったし。
「な、なんとか対処はできそうだな。このまま離脱しよう。これ以上の継戦はムリっぽいわー。」
クタクタでむしろこっちがゾンビのような緩慢な動きになりつつ荷車を牽こうとしていると、一際大きなボコンッという音が響いた。イヤだなぁ~イヤだなぁ~と思いながら恐る恐る振り返ってみると、なんとそこにはマネキンのような木の人形が佇んでいたんです。
「も、もしかして、ここら一帯に生えてる腕って・・・全部、コイツ系な感じだったりするの?」
《マスターの感知系スキルから得られる情報によれば、全てではなさそうですね。せいぜい3割から4割くらいが該当のマネキンのような姿形のようです。》
「それって感知範囲内はって注意書き入るヤツでしょ?ムリなんですけど・・・。」
現在そこら辺から生えてる腕の数は50だか100だかそんなもんだ。数えるのが億劫で数えていないが異論は認めない。何故なら俺は疲れているからだ!そして、その数も知れないコイツらの内最大4割もがああしてマネキン形態になって現れる可能性があるという。どうなってんの?
それなら全部が生えてくる前に倒せるだけ倒した方がいいかもしれないな・・・。特に腕は切り落としておきたい。そうすれば脅威もかなり減るだろ?多分。とりま初マネキン形態で現れたデクッポイドと対峙してみることに決めた。ニコには荷車の上に居てもらい、周囲を警戒してもらう役目を言い渡すのも忘れない。
ゆっくりと木偶人形へと近づきつつ、手近な腕はスパスパと切り裂き魔。これにしたって結構な重労働だなおい。地面から腕が生えてるからその付け根付近を切ろうとわざわざしゃがんでダガーを振るっている。それに、スパスパ言ってるけどなんの抵抗も感じないわけじゃない。重いんだよ!
幸いなことに目標物の動きは鈍く、バイオなハザードに出てくるゾンビ並にもたもたしてくれている。その隙?にそれなりの数の腕を斬り落とすことに成功したが、そもそもこれ腕斬り落として意味あるのか?あとでくっついたりしないことを祈る・・・が、俺には祈るべき神がいないことを忘れていた。ならば身近な天使に祈っておくか。テトにゃん!ニコ!我に力を!七難八苦は要りません!!
不思議なことに天使に祈りを捧げていたらちょっとだけ気持ち悪いのが治ってきた気がする。体調も少しずつ治ってきてるかもしれない?
「若干元気が出てきたし、このままコイツら狩りつくせるかも!」
既に10組以上の腕を切断してみたが、まだまだ残りはその5倍以上はありそうだ。つまりは暫定100本くらい。このまま地面から生えてるモードを継続してくれたらなんとでもできそうだが、そこまで世の中甘くないと思われたところでデクッポイドと相対する。
身長的には俺と大差ない160cm中頃程度。細身で手足が長くひょろっとした印象を受けるがデッサン人形と違ってフォルムが整ってないしいまは泥だらけな上に血で薄汚れていてかなり不気味だ。それに顔がないからなにを考えているのか全然さっぱわからんな。
「まずは先制攻撃、いっきまーす!」
相手には耳もないので声を出しても大丈夫だろうと思いながらに攻撃を仕掛ける。左手に順手持ちしたロングダガーを外側から水平に薙ぎ、木偶人形の右腕・右胸を裂き人体なら食道の辺りで止まってしまった。
「うげっ!他の腕共よりも大分固い!刃が食い込んじゃったじゃん!!って引っ張られ?!」
食い込んだ刃をそのままに木偶にロングダガーが引かれていく!手持ちの武器を取られちゃマズい!ここは全力で耐え
「ごぼっふ!」
腹に衝撃が走る!苦しい!苦しい?!痛い痛い痛い痛い!!木偶の左腕が俺の腹部にメリ込んでる!!
「ぐひぅっ。ああっ!!!」
痛いのを我慢して食い込んだ刃を全力で押し込む!力を込めるとメチャクチャ痛い!けど我慢だ我慢!このまま押し切れ!!
全体重をかけてロングダガーを押し込んでいく!メキメキと音を立てつつ抵抗していた木偶の身体が一気にパカッと割れて裂けた。
スカンッ
裂けた勢いでそのまま木偶の左腕まで切り落としたものの、勢いがついてたせいで諸共倒れ込んでしまう。あ、全然踏ん張れない。コレダメぽ。
「いっててててぇ~・・・。」
普通に地面に倒れ込むの以上に痛かった。木偶の身体が木でできてるせいだ。腹は殴るし身体は固いしで・・・コイツめ、どんだけ俺に迷惑かければ気が済むのか!憤慨やる方なしとはこのことか!!
「いくらなんでも胴体が半分になれば死ぬだろ?てか元々コイツは生物なのか?モンスターなのか?それすらわからんな。」
《マスター!のんびりしている暇はなさそうです!》
「・・・マジかよ。」
周りを見ると3体のデクッポイドが出待ちしているかのように佇んでいた。なんで待ってるの?趣味なの?バカなの?それとも正規の悪役なのかしら?などと俺の頭を混乱させるのに十分な状況を上手に作り上げていたりする。
しかしながらこちらもいつまでもフリーズばかりしていられないのでいざ参る!とばかりに起き上がろうとしたけど失敗しました!なんで?!
「倒したハズの木偶の足か!」
急いで自身の現状を確認してみると、なんと共倒れした木偶の足が俺の美しいラインを持った両脚をがっちりホールドして離してくれない!少しくらいのフラグは見逃してくれよ!
このままでは起き上がれないままにボッコにされる未来しか想像できない!全身を使って横に転がり木偶の下半身を俺の上にある状態へと移行する。続けてロングダガーにて斬るべし斬るべし!木偶足を切断し身柄を解放自分を助け出すことに成功だわーい!
「ってそんなの言ってる場合と違うし!」
足と上半身を失くした木偶1号を蹴り飛ばし身を翻しながら立ち上がると2~4号が間近に迫ってきていた。思いの外早いな?!
向かって左から2号、3号、4号と命名し、すぐに2号へと駆け出す。さっきの失敗から学んだことを忘れることなくまずは左へ駆け抜けながら2号の右脚を袈裟切り上げにて切断する。と同時に2号からのカウンターが見舞われる!あふん!またもや左ブローかよ!!
ガラ空きだった俺の右腹部を2号の左腕が襲う。超痛い!これ折れてるかも?折れてるかもだよ?!すんげー痛いけどなんとか踏ん張り切り上げた腕を垂直に振り下ろして2号の右腕を奪う。ここまでやってようやく倒れた2号を放置し続いて3号へと振り向くと既に3・4号が肉薄していた!マジびっくり!
振り向きざまに斬りつけようとしていたダガーをなんとか引っ込め後ろへと飛び退けるが、ムリに止まったからかジャンプのタイミングがズレ2体の腕が微妙に掠めた。あっぶね!
そのまま2歩3歩と後退し、少しのゆとりを得た俺は改めてコイツらを観察していく。じーっと見る。観る。視る。
「んむ~?なんかコイツら魔力の波長がおかしくない?すげー似てる、というかまったく同じ?」
《そのようですね。似通っているというよりも、同一であると言えるレベルで同じ波長のようです。》
それってつまり、え~っと、ほら、なんだ?なんかあんだろ!思い付きそうで思い付かんが、きっとそれが殺しても死なない理由だろ!多分きっとそんな気がする!うん!
「よくわからんが、とにかく倒す方法か無力化する方法を探さないとだ!今のところは四肢を斬り落とすしか選択肢がないんだけど、カナデさん的には何かあったりする?」
《ホンの僅かですが全ての個体の左足の甲辺りの魔力反応が強いように見られます。ここを破壊、ないしは切り離すというのはいかがでしょうか?》
・・・違いなんかあるの?全然さっぱルンルンなんですけど?
「けどまぁ、カナデさんが言うならきっとそうに違いない!その作戦採用で!」
作戦が決まり第2ラウンドが始まろうとしていたが、
「ア、アアア、アアア"ア"ア"ア"ア"ア"アアアアア!!!!」
激しい咆哮が聞こえ慌てて後ろを振り向いた時、ニコが襲われていた。
お読みいただきありがとうございます。
連戦につぐ連戦に想君サイドは満身創痍ですね・・・。
テトちゃんもミリーちゃんも気絶して想君は魔力枯渇に散々右腹部を攻め立てられ、ニコちゃんも足掴まれてたの大丈夫か心配です。ていうか最後襲われてますし!
次回予告
ニコVS???
想の全力
ムリゲー




