サイドサイト 観察者からの視点
感想、評価をいただきありがとうございます(*´∇`)
新規ブクマ登録者様が6名様ご来店?で、現在93名様に・・・。拙い投稿を繰り返しながら約3か月くらいですが、ご支持いただけているという実感が何よりも嬉しくあります!ありがとうございます!
読んでくださる全ての方々へ感謝の祈りを捧げながら、本編第42話を投稿させていただきますー!
これからも皆様が楽しんでいっていただけると幸いです(*´∨`*)
前回のあらすじ。
森の中からおっさんうごうご
胸がないのがデフォルトですから
森の中からゴブとかうごうご
空の色も変わり始めたメタリカーナの街。その東の城門前で、少し風変わりな一団が門を預かる兵士と悶着をしていた。
先頭に立ち言葉を重ねるのは、腰ほどにまで伸びた長い黒髪を持つ少年に見えない少年。名を月城 想という。彼の前髪は右半分がキレイに眉の上付近で整えられており、その下の右眼を覆う火傷を隠そうともしていない。また、その眼のすぐ下を血塗れの包帯で覆い隠しており、いまは険しいその表情を半分ほどしか伺うことができない。
更に、濃茶を超え黒に近い色合いの厚手の外套を羽織っているために些かわかりにくいが、どうやら右腕を上腕部から失っているようだ。それだけでも十分な有り様なのに、残った左手までもが包帯に覆われていて、まさに満身創痍といった風体にしか見えない。
その少年のすぐ傍に控えるのは、赤くツヤのある黒味を帯びた髪を揺らす獣人の歳若い少女。髪は肩にかかるかかからないかといった程度の長さで、頭頂部には黒い耳がピンと立っている。眼はややツリ上がり気味だが、眉目が整いぷっくりとした唇が少々あどけなくもあるが愛らしい印象を与えてくる。
また、肩に羽織るポンチョのような外套は丈が短いため、少女の身体を覆うには大分足りていないようだ。薄く朱色に染められた服、革製のフレアスカートだけを見れば町娘の普段着のようにも見えるが、そのスカートから伸びる長くスラッとした白い太ももには双剣が括り付けられており、僅かばかりの冒険者然とした雰囲気を演出している。
更に、少女の後ろ姿へと目を向けると、耳と同じく黒い尻尾がゆっくりと揺れているのが見て取れる。少し不安げに少年、ソウの様子を伺っている。
黒髪の少年を挟み、黒耳の少女とは逆に位置する場所にはくすんだ茶色い髪を持つ少女が佇んでいる。先程の猫獣人の少女より幼い少女である。黒い長髪のソウ少年同様、こちらの少女も髪が長くあと僅かで腰に届きそうなほどだ。小さな少女は表情に乏しく、先程から変化らしい変化がないままに少し眠そうな眼でただ前を見ている。
半目、というほどでもないが少しばかり力なく瞼が落ちかけているように見えるが、どうやら眠いからというわけではないらしい。少年の外套を握りしめながらことの成り行きを見守っているようだ。少年の外套を握るのとは反対側にある手には、少女の背丈には少々不釣り合いな大きい杖を持っている。
そんな小さな少女は、くるぶしまですっぽりと自らの外套に隠れてしまっているために、細かな様相を伺うことはできない。
「だからさー、もう説明したからいいじゃん?俺的にはさっさと行きたい所があるから中に入りたいんだけど?他に聞くことないならよくない?」
「まだお前達からしか話しを聞けていない。後ろの連中からも話しを聞いてからにしてもらわないと困るのだ。」
「めんどくさ!そんなの『宣言宣誓』でも使えばいいじゃん!必要があればギルド経由ででも呼んでくれれば行くからさー!もうよくない?マジで!もう・・・ホントにアイツらのせいでさー、ちょぉっと良くない感じだよねぇ~?」
門兵から数瞬目を離し、後方で捕らえられている男連中へと視線を注ぐ少年。すると、目線を向けられた6人の男連中の内、5人は首の骨が外れるんじゃないかと思うほどの勢いで目を逸らし、1人は気を失ったまま動けずにいた。
「こんなことならきっちりとトドメを刺しておけば・・・。」ブツブツ
その男連中の様子を見て不満を呟く少年の声は、いまにも消えそうな程小さい。流石の獣人族たる傍らの少女でも、その呟きを拾うことができずに小首を傾げるばかりであった。
「もうすぐ応援が来る。そうすればすぐに事は済むだろうから、暫く大人しく待っていてはくれんか。」
呆れ顔の門兵が少年へと苦言を呈す。言われた少年は不満を浮かべはしたものの、すぐに取り繕って2人の少女達へと向き直った。
「まだ少しかかるってさ。なんでこんなに無為な時間を過ごさなきゃならんのか、甚だ疑問ではあるけれど待てというのなら待たせてもらおっか。ちょーどあそこに空いてる椅子があるみたいだから、ちょっとお借りしようか。そうしようか。」
「いいの?ソウ、何かまだお話ししなくちゃいけないんじゃないの?」
「んむ~、そうみたいだけど、なんか他にも人がワラワラ来てからじゃないと意味がないんだってさ。それなら初めから東門に全員詰めておけって話しなんだけど、そうもいかないのが人の世の煩わしいところなのかもしれないねー。」
少年は、2人の少女を伴い門兵の詰所へと進んでいく。門兵から特に許可も取っていないが、その行為は咎められることなく見逃された。代わりに、門兵と捕らえられた男連中からは安堵にも似た溜め息が吐き出されていた。
「何をするにしても遅いってのがこの街の特徴なのか、それともこの世界の文明だとこんなモノなのか・・・その辺が問題になりそうだけどいまはわかんないから別にいっか。」
詰所の座席にリラックスした状態でどっかりと座りこむソウ少年。黒耳の少女テト、幼い少女ニコも続いて椅子へと腰を下ろす。
「『宣言宣誓』ってなぁに?なの。」
「あぁ、そういえば2人は見たことなかったか。えっとね、パッと見は石版みたいな道具なんだけど、それに手を触れた人の魔力の波長を読み取って言ってることが嘘かホントか見極めるって道具らしいよ。」
「そうなの!嘘がわかっちゃうなんてスゴいの!」
「んむ~、正確にはちょっと違うんだけどね。細かい話しはスルーしちゃえば大体そんな感じかな。俺が見たのは冒険者ギルドの・・・あぁ、さっき1度寄ったよね?あのでっかく剣と盾の意匠がしてあった看板の、時計塔がある建物がギルドだよ。」
「ここからでもまだ見えるの。」
「そうだね。まだ明るさが残ってるから見えるけど、も少し暗くなったらムリかなー。あそこは少しむさ苦しいし、何かと絡んでくる人がいるから俺と一緒のとき以外は行っちゃダメだよ?お兄さんとの約束だ。」
「ふふっ、またお兄さんって言ってるの。けどわかったの。危ないから近付かないようにするの。」
「ん。ニコ、ソウ、はなれない。」
「どうして未だに俺の性別が理解していただけないのか甚だ疑問ではあるものの、聞き分けがよくって何よりだよ。うん。」
とてもイイ笑顔で返すテトに、真っ直ぐソウを見返すニコ。一方でソウは自身の性別がわかってもらえないもどかしさと、素直な返事がもらえた安心から苦笑で返す他なかった。
「・・・それにしてもソウはスゴいの。」
「ん?何かやったっけ?」
「色んなことを知ってるし、それにスゴく強いの!」
「んむ~、そうか。これも言ってなかった気がするからちゃんと話しておかんとダメぽいな。」
包帯に包まれた左手で、自身のアゴを支えるようにしながらソウは言った。
「実は俺、そんな強くないんだ。」
「えっ?」「ん?」
「2人にはモンスターをバッタバッタと倒す俺THUEEEEE状態に見えたかもしれないけど、ぶっちゃけるとレベルも低いし能力も低い。ただの魔法が使えるだけの一般人って程度なんだ。」
「そう、なの?ウチにはスッゴく強く見えるの。さっきも怖いおじさんたちや<ピクシー・ゴブリン>をあっという間に倒しちゃったの。」
「うん。それだけ見ると確かにそうなんだけど・・・。落ち着いて考えてみてほしい、アイツらって強いか?」
「えっと、おじさんたちはわからないけど、<ピクシー・ゴブリン>は数が多いと危ないって村の人たちも言ってたの。」
「そうなんだよ。数が多いと、なんだよね。じゃあ、はぐれた1匹だけだったらどうかな?強いかな?」
「それは・・・ウチはよくわからないけど、大人の戦える人たちはそうでもないって言ってたと思うの。」
「そうでしょ?つまりはそういうことなんだよ。俺は弱い敵をバカスカ倒しただけで、言っちゃえばゴブより強いってだけの普通の冒険者ってわけ。」
「で、でも!さっきはゴブリンも沢山いたの!沢山だと大変なの!」
「そう、普通は沢山だと大変なんだけどそれは囲まれたり押し込まれたりって状況の話なんだよね。でも俺は遠くから狙い撃ちにできるから、囲まれてない。極端な話し、一対一を6回繰り返してるみたいなもんなんだ。」
「遠くからだと、そうなの?」
「遠くからだと、そうなの。」
ソウはテトとしっかりと眼を合わせて柔らかく微笑む。心配させないように、落ち着かせるように。
「でも、遠くからならソウは強いの?」
「それはもちろん!条件さえそろえば、多分ここらじゃ俺はかなり強いんじゃないかな?そもそも魔法使う人自体が少ないみたいだし。あとはどれだけ強い弓術師がいるかってくらいかな?」
「それなら安心なの。やっぱりソウは強いの!」
「その条件が大事なんだけどね。だからさ、テトにもニコにもこれだけはしっかりと覚えていてほしいんだ。1つ、俺から離れないこと。2つ、危ないモノには近づかないこと。3つ、油断しないこと。これは街の外に出た時だけじゃなくて、街の中でも気をつけてほしい。」
「う~、わかったの。知らない人も危ないってわかったの。そういうことなの。」
「ん。ニコ、へーき。」
「2人ともいいお返事だね。危ないことはこれからきっといっぱいあるし、怖いこともいっぱいあると思う。でも、そういう時は俺がなんとかするから頼りにしてほしい。
あ、知り合いになっても違う意味で危ない人も沢山いるからそっちも気をつけないとだよ!特に防具屋のおっさんはヤバい!アレはそういう類に違いない!」
「ふふっ、わかったの。そっちも気をつけるの。」
「ニコもだぞ?世の中には色んなヤツがいるからな!小さい女の娘がめっちゃ好きっていう、変態さんってのがいるから気をつけるんだ!攫われでもしたら大変だ!」
「ん。へーき。ニコ、ソウ、いるから。」
少年たちが十数分ほど雑談を楽しんだころ、ようやく街の中から複数の門兵が出てきて声を挙げた。
「応援の要請を受けてきた!現況説明を求む!」
「応援感謝する!現在、盗賊と思しき6名を捕縛している。内1名はかなりの重症、2名は深手を負ってはいるが自立歩行が可能だ!他3名に負傷は見られない!」
「現況説明感謝する!それでは怪我人を優先して運搬する!」
「運搬感謝する!聴取は同舎屋で執り行いたい!交兵の用意はあるか?」
「交兵、前へ!」
「はっ!」「はっ。」
「2人を残す!重傷者の容体は如何か!」
「長くはないかと!もって1刻程度でしょう!」
「えっ?そうなの?」
門兵達の掛け合いに促され、いつの間にか詰所から出てきていたテトが声をあげた。
「んむ~、ちょろっと失血が多すぎたかな?でもできる処置はちゃんとしてるし、そんなすぐにダメになっちゃうって気はしてなかったんだけど。」
ひょいと身を乗り出し、最も重症だと思われるドゲムと言われていた男を見やるソウ。
「あ、麻酔がないからショック時の反動が大きすぎたのか。そっかそっか、それなら納得。」
「ソウ?どうにかできないの?」
「どうにか・・・ねぇ。コイツら盗賊?みたいなもんだし、多分色んな人に迷惑かけてたタイプだよ?それでもテトは助けたいの?」
「うぅ~、悪いことしてるとこ見てないし、内容も聞いてないからウチにはよくわからないの。けど、殺しちゃうのはなんとなくイヤかなって思うの。」
「ふむふむそっか。確かにどれだけの悪さをしたかが明らかになってない状態だもんね。いま負っている怪我が妥当かどうかってのはわかんないよねー。」
ソウは思案顔でテトの頭に手を置き、優しく撫でた。そんな2人の会話とは別に、男連中は門兵に抗議の声を挙げていた。
「なぁ!アンタら警備兵ならポーションの備蓄くらいあるだろ!頼む!ドゲムに使ってやってくれ!」
「ポーションじゃなくても、神聖魔法でもなんでもいい!どうにかなんねぇのか?!」
口ぐちに仲間の治療を懇願するも、返ってくるのは期待とは真逆の返答。
「貴様らもわかっているとは思うが、もうこの街にポーションの備蓄はほとんどない。先日も、領主家の方々に献上してしまったからな。少なくとも兵舎の在庫はすっからかんだ。」
「そんな!」「マジかよ・・・。」「もうダメだ。」「ちくしょう!俺の手は治せねぇのかよ!」
「それに、教会の治癒師の方は前線におられる。治療は最低限のものになると思うことだな。」
どうやらこの街には急を要する治療に充てる用意がないらしく、その事実を押し付けられた彼らはそれぞれに諦めの色を浮かべていく。
「・・・ソウ。何か、ないの?」
テトは、ソウを下から見上げた後にスッと視線を自らの肩掛けカバンへと落としていく。カバンの中に入った薬草のことを思っているのだろう。
「残念ながら途中でアイツらが邪魔してきたから材料が足りないなー。手持ちの分も全部使っちゃったし、いまから『城壁の矛』のバルムさんのところへ行くにしても時間も足りないし、そもそも勝手に動けないしねぇ。」
「・・・ウチが走ってバルムさんのとこまで行くの。それなら間に合うかもしれないの。」
胸の前で両の手を握りしめ、やる気を見せるテト。その額を軽くつつくソウはすぐにその提案を否定した。
「だぁめだって。1人で歩き回ったら危ないって話ししたばっかでしょ?もう陽が暮れて暗くなってきてるから危ないの。それに、バルムさんがまだ宿の食堂に来てなかったら居場所わかんないでしょ?」
「うぅ~、そうだけど、そうだけど・・・。」
「んむ~、そういうことなら仕方がないかな?カナデさん。出現場所はある程度任意でイケる?」
「ソウ?」
「んむ~、それならなんとかなるか。テト、これ見える?」
「ううん?何も見えないの。ソウの手のことなの?」
「やはし見えないか。それならこれでーっと。」
ソウは何やら虚空をなぞるように指を動かすと、最後に何もない中空をつつく仕草をした。それから外套の内側を探る様子を見せたかと思うと捕らえられた男連中の方へと歩み出した。
「やぁやぁ皆さん、ご機嫌いかが?自分たちがやったことを少しでも後悔したかい?」
「なっ!て、てめぇ!よくもドゲムを!」
「コイツはバカでクソな野郎だったが楽しいヤツだったんだぞ!」
「あ、アンタらを襲おうとしたのは悪かったが、何も殺すことなかったじゃねぇか!アンタの実力ならもっと穏便に済ませられただろう?!」
「よくも俺の手を!殺す!絶対に殺してやる!!」
「んん?なんか反応が違うのが1人いるな。カナデさん、こいつのこと覚えてる?・・・あぁ、こいつか。幼女だなんだと叫んでたヤツ。」
ソウは1人だけ悪かったと発言をした男を見て呟いた。路傍のゴミ屑を見下すかのような彼の瞳に映る男は、怯えながらも力強く見返していた。
「おい!無視するんじゃねぇ!俺の手をどうしてくれるんだ!!」
「おい、グロッド!てめぇ自分の手のことばっかじゃねぇか!」
「黙れよ。グロッドに、それにベーゴだっけか?お前らはダメだな。真っ先に俺らを狙おうって言ってたもんな。まぁ、こいつも幼女幼女言っててヤバいヤツだとは思うが・・・。」
幼女をよこせ、幼女に蔑まれたいと自身の欲望を声に出してはっちゃけていた男は、幼女発言のことをつつかれた途端すぐに力なく目を伏せ頭を垂れる。
「・・・まさかとは思うが、自分の発言を思い返して気弱になってるとかって言わないよな?さっきまでの威勢はどこにいったんだよ。」
「いえ、すんません。まさか街の外で幼女・・・小さい女の子を見ることができると思わなくてテンションが上がってしまいまして・・・誓ってやましいことをしようとしていた訳ではな」
「ああん?」
「すんません!実はちょっと思ってました!街中じゃ絶対に近付くことすら許されなかったもんで、つい魔が差したっつーか・・・ちょっとくらいお触りしてお話しさせてもらうくらいはできるかなって思ってましたー!!」
「・・・それだけか?」
「はい?」
「貴様が考えていたことはそれだけかと言っているんだ!答えろ!!」
「ひっ!ひえぇ!!すんません!すんません!あわよくば攫って他の街へ行って一緒に暮らして、い、色々しでかそうとか考えてましたー!よく考えれば姉さん方に酷いことした俺なんかに着いてきてくれるなんてことあるハズねぇのにそんな妄想してました!」
「クズが。だが、それがわかっているのなら次は同じ過ちを犯さないようにするんだな。いいか?別にお前がロリコンだろうがなんだろうが俺には関係ないしどうでもいい。だがな、小さな女の娘に危害を加えるな!悲しい思いをさせるな!それができないからお前はダメなんだ!わかったか?」
「は、はい!!今回のことでよくわかりやした!もう2度としません!・・・そっちのお嬢ちゃんたちも済まなかった。この通りだ。」
ロリコンの変態野郎は地面に額を擦り付ける様にゴリゴリし始めた。その額からはだらだらと血が流れるほどだが、彼の謝罪の姿勢は勢いを増すばかりである。
「やめろ。そんなことをしてもなんの解決にもならん。金輪際、今日のことを忘れず誠実に生きていくんだな。このあとのお前の扱いは知らんが、もし死刑になってもその気持ちを忘れるな。」
「・・・はい。」
ソウが声をかけようやく額を削る行為が止んだ。その男に対し、ソウは続けて要求を1つ付け加える。
「いいか?お前みたいなクズ野郎がいるにも関わらず、うちのテトは優しくしてやってって頼んできてるんだ。この意味を本気で考えろよ。考えながらコレをソイツに飲ませてやれ。」
投げ捨てる様に渡された薬瓶は、淡い緑色の輝きを放ちつつロリコンの手へと納まる。その輝きを呆けた顔で見つめていた男は、やがて弾かれたようにソウへと顔を向けた。
「こ、これは?!姉さん!い、いいんですか?姉さんだって見れば怪我をしてるのに、残しておいた1本なんじゃないんすか?!」
「かまわん。俺はソレを使わなくとも当分死ぬことはないが、そこのそいつは放っておけば間もなく死ぬだろう。その違いだ。アホ面してないで急げよ。」
「あ、ありがとうございます!ありがとうございます!!お、おい!ベーゴ!デンゲル!手伝ってくれ!ドゲムのヤツにコイツを飲ませてやらにゃ!」
「マジかよ・・・そんな、こんな俺達のタメに・・・?」
「どんだけお人好しなんだ・・・、信じらんねぇ。」
まだ無傷な男が3人がかりでドゲムの身体を支え、ポーションを飲ませる。すると、先程まで死相が大活躍をしていたドゲムの様相が変わり、どうやらすぐにでも死んでしまうような状態は脱したように見えた。
「貴重なポーションを・・・このような犯罪者崩れに・・・。」
「止めよ。アレは個人の持ち物だ。それ以上は言ってはならん。」
ことの成り行きをただ黙って見守っていた門兵達は、悔しげに拳を握りしめ歯を食いしばりながらただ見ることしかできなかった。
「ソウ、ありがとうなの。」
「うん、治療が間に合ったみたいでよかったな。これで間に合いませんでしたーとかってなったら恰好つかないからな。」
その後、予定より幾分か遅れはしたものの、捕らえられた者たちが協力的に動いたこともあり取り調べはスムーズに行われた。
「てかアイツらってまとまってたから1つのグループだと思ってたんだけど、違ったのか。」
「調査のためって言ってたけど、何かあるの?」
「あぁ、それは多分アレだな。あの森で普段は起らないようなことが色々と起きてるっぽいんだってさ。」
ソウは、ここ数日にあった出来事に推察を加えてテトへと話した。
「そうだったの。<ピクシー・ゴブリン>が普段森の外に出ないハズなのに外へ出てきたり、群れの大移動を始めたり・・・でも1番は<マーダージャック・ウルフ>なの。聞いてた話しだと、ゴブリンよりも異常なの。」
「どうやらそうらしいね。それも1度じゃないしなぁ~いったい何が起きているんだか。」
「失礼する!ソウ殿!取り調べは済みました!間もなくお帰りいただけます!」
「おっ、やっとか!連絡どうもー。あれ?でも間もなくってのは?」
「はっ!盗賊の捕縛には、規定に則り報酬が支払われます!ですので、その準備をただいまさせていただいているところです!」
「そうなのか。じゃあ、それができるまでも少し待てばいいのかな?それにしても、なんでそんなに声デカいの?抑えられない情熱でもあるの?」
「はっ!申し訳ございません!こちらは当兵団のしきたりでして、声を大きくすることによって報告内容に不備がないかや裏取引などを行っていないかなどをチェックしております!ですので、抑えることは致しかねますのでご容赦ください!」
「マジか。そりゃー五月蠅いわけだ。わかってもどうにもできそうにないな。教えてくれてありがと。もしできるなら後ろ向きに話してほしいな。それなら会話内容的に問題ないだろうし、こっちへの被害も少なそうだ。」
「はっ!わかりました!それでは後方へ向けて発声いたしましょう!また、暫くの間お待ちください!!」
それだけ告げると兵士は立ち去った。あとには大きな声に中てられた、小さな猫獣人の怯え震える姿があったが、ソウが慰めると徐々に落ち着きを取り戻せたようである。
そのまま舎屋で時間を潰していたソウ達だが、幾分もなく声をかけられ報酬を受け取る。どうやら盗賊1人当たり銀貨3枚らしく、合計銀貨18枚の臨時収入を得たことになる。
また、門兵が言うには、繰り返し犯行を行っているものはまず犯罪奴隷落ちになるだろうとのこと。その奴隷の売却益もソウへの報酬になるから後日連絡をするので詰所へ来てほしいそうだ。
「大分時間を潰しちゃったなー。マーグル婆さんのとこへ寄って声だけかけるか。色々足りないから作業もできないけど、今日行くって言っちゃったし。『城壁の矛』の連中も待ち合わせ時間過ぎてるけどまだ待っててくれてるかな?」
「きっと待っててくれてるの。遅くなっちゃったけど、まだ夕ご飯のお時間だと思うの。」
ソウの呟きにテトが答える。ニコはというと、先程から少し眠そうに眼元を擦っているようだ。
「ニコがそろそろ限界だから、なるはやでやんないとケツカッチンだな。まったく、次からは遭遇しないように気をつけるなりなんなりしないとダメだなこれは。」
少しだけ急ぎ足で街の中を行く2つの影。ソウがニコをおぶることで影が1つ減ったそれは、すぐに目的の場所へ辿り着いた。
「マーグル婆さーん!ちょっと開けてー!」
「・・・なんだい。随分と遅かったじゃないか。何かあったのかと思ったさね。」
「いや、実際に色々あったんだよ。実は出先でおっさん達に絡まれてさ、門兵に突き出してたら遅くなっちゃったんだよね。だから材料も全然。半端にしかないけど、コレ一旦預かってくれない?また明日続きやるからさ。」
「なんだいなんだい!そんなにいっぺんに言われたってわかるわけないよ!それにしたって盗賊だって?そんなのとやりあってたって割には随分と小奇麗じゃないかい。採ってこれなかったのならそういやぁいいのに、変な見栄張るんじゃないよ。まったく。」
「ん?俺が薄汚れていれば満足なのか?なんて性格の悪い老婆なんだ・・・教育に悪いからそういうのはやめてくれよ。テト、こんな大人になっちゃダメだぞ?これは、悪い例だからな!」
「なぁんてことを言うんだい!この小娘は!私が言ってるのはそういうことじゃないよ!ふつ」「いや!もう遅いから騒ぐなよ!それに、ニコが起きるだろ?!」
ワーキャーと騒ぎながらも手荷物を渡すソウ。それから証拠とばかりに兵士から受け取った袋を見せると、マーグルは片眉を寄せ訝しむがどうやらソウの言を信じるようだ。
「まったく。コイツは確かにメタリカーナ衛兵の紋章さね。どうやら言ってることはホントだったみたいだね。疑っちまって悪かったね。」
「わかればいいんだ、わかれば。それに、ちゃんと自身の間違いを認めて謝れるのはいいことだぞ!テト、こういうトコロは見習っていいんだぞ?マーグル婆さんの数少ない良いトコロだから覚えておくといい!」
「わかったの。けど、あんまり言ったら可哀想なの。ソウの仲良しな人なんでしょう?ソウも、あんまり悪口を言うのはよくないと思うの。」
「うぐぅ。別に全然仲良しな人じゃないけど、確かに悪口ばかり言うのはよくないな。マーグル婆さん、済まなかった。これから気をつけるからどうか許してほしい。」
「しおらしいアンタの姿が見えるなんざ貴重も貴重なんだけど・・・なんだろうね、違和感しかないからそんな殊勝な態度はやめておくれよ。別に怒ってたりなんかしやしないんだから。」
「テトさん、マーグル婆さんはああ言っておいでですが、いかがでしょう?」
「えっと、ケンカしてないならきっとへーきなの。ソウも、ちゃんと謝れて偉いの!」
身長差が大きい2人だが、いまはソウが頭を垂れているのでなんなくテトが頭を撫でられる。ひとしきり撫でて満足したのか、テトは撫でるのをやめ会話の再開をソウに促す。
「なんかグダグダしちゃったけど、そろそろいかないと。『城砦の矛』の連中待たせてるんだよ。」
「そういうことならさっさとお行きよ。明日もどうせこの店にいるからね。手伝いがいるんならまた訪ねてきなよ。」
「ご丁寧にどうも。じゃあテト、いこっか。マーグル婆さんも、また明日なー?」
「またね、なの。」
「あぁ、道中気をつけていくんだよ。」
挨拶を済ませ、街へと歩み出すソウ一向。ソウの背には変わらずニコの姿があったが、荷物を下ろした分多少は足取りが軽くなったようにも見受けられる。
「少し急ぎ足でいくけど、速すぎたりしたら言ってね?」
「へーきなの。それよりソウはニコ重くないの?だいじょうぶなの?」
「全然へーき!やたらと軽くて逆に心配になるくらいだよ。」
マーグルの店から目的の『防壁の憩い宿』へはそうそう距離もなく、ものの十数分ほどで辿り着いた。ソウはニコの重量分プラス、治ったばかりの左脚の筋力不足からかなりの疲労を湛えた表情をしているが、テトは運動できたことが嬉しかったのかはつらつとした表情を浮かべている。
「と、とりま着いたし食堂へ行ってみよう。まだいるなら話しをさっさと済ませて休みたい・・・マジで。」
「やっぱりニコ重かったの?ウチも交代で持った方がよかったかな?なの。」
「い、いや、ニコはそうでもなかったんだけど、治したばかりの脚が鈍っててね。リハビリに丁度いいって思えば、これくらいはなんてことない・・・よ。はぁ、はぁ。」
乱れた息をなんとか整えながら食堂へと入るとそこには『城砦の矛』のリーダーであるバルムと、今回の最重要人物であるミリアリアが座っていた。
その向かいには見たことのない女性が3人と、バルム達の背後には男性が3人立っていた。
「遅くなって申し訳ない。待たせちゃったかな?」
「いいや、今回の非はこっちにあるんだ。待たされるくらいでとやかく言うことなんかないさ。」
「いやいや、その件に関しては依頼で賄ってもらうからそれ以外はもう対等ってことでよろしくー。被害者と加害者なんて立ち位置だと、信頼関係って結ばれないと思うんだ。うん。」
やや驚いた表情を浮かべるバルムに、バツの悪そうにしかめた表情のミリアリア。更には周りの面々も各々驚きの表情を見せている。
「んむ~、そんなに驚かれるのもどうなんだろ。依頼でチャラにするって言わなかったっけ?」
「んんっ!いやなに、確かにそう聞いてはいたものの、普通では有り得ないもんだからちょっと驚いちまっただけさ。」
「そうか?別に普通だと思うけどね。まぁいいか、知らない人が増えちゃったから挨拶からやり直した方がいいかな?」
「そうさね。それじゃあ、改めて自己紹介をさせてもらおうか。あたしは『城砦の矛』でリーダーを預かってるバルムだ。改めてよろしくね。」
「自己紹介は上から順にするのが礼儀だの。儂はツオー。最古参のメンバーでサブリーダーのような役を担っておる。」
「じゃあ次は私かな。私はテッチ。いちおう3番目に長くメンバーやってるし、食事関連も取り仕切ってるよ。」
「なら次は俺だな。俺はモノリってんだ。バルムとは同郷でな。冒険者としてはバルムより年季が入っちゃいるが、誇れるのは腕っぷしだけの男だ。」
「はいはーい!私はカンロだよ!笑顔担当やってまーす!」
「何よその自己紹介は?真面目にやんなさいよね?あ、ごめんなさいね。この子いつもこんな調子で・・・。私はタンロ。この子の姉よ。」
「私はハンロ。見てわかると思うけど、この2人の姉よ。よろしくね。」
「そんでもって俺が情報担当のフッドだ!いやぁ、今回の依頼主が君みたいな可愛い子でラッキーだったな!」
次々に挨拶をする『城砦の矛』のメンバーたち。その様子を伺うことなく俯く1人の少女がいた。光の加減によっては赤に見えそうな茶色い髪で眼元が隠れ、その表情は見えない。
「ほらミリー。アンタこそがちゃんと挨拶しないとダメじゃないさ。わかってるね?」
「・・・はい。・・・ミリーよ。」
はぁ~やれやれと肩を竦めるバルム。他のチームメンバー達も半ば諦めているのだろう。同じような反応を示す。
「んむ~、いいかいテト?いい機会だから良く見てみるんだよ。アレがダメな例で、悪いことしても自ら反省することができなくて周りにまで迷惑をかけてる典型的なタイプだ。ああはなってはいけないよ。」
「ソウ、目の前で言っちゃうのは可哀想だと思うの。」
「あー、確かにちょっと可哀想かもしれないけど、こういうのはちゃんと教えてあげないと彼女にも悪いことだからね。ここは心を鬼にして言ってあげるのもまた優しさなんだよ。うん。」
「そうだね。ええっと、テトちゃん?って言ったかね。お嬢ちゃん、ソウさんの言うことが正しいよ。今回やらかしちまったことをしっかりと反省できなきゃ、ミリーは立派な冒険者になれやしないんだ。
ホントはあたしが教えておいてやらなきゃならないことなんだけどねぇ。ソウさんにはそんな役回りを押しつけちまって悪いやね。」
「半分好きでやってることだから気にしないでいいよ。歳若い子を導くのも年長者の義務みたいなもんだしね。」
「「「・・・・・・えっ?」」」
ソウの発言に場が凍りつく。正常に動けているのは当人を除けばニコは寝たままなのでテトだけである。
「・・・ソウさん、大分しっかりしてるとは思っちゃいたけど・・・いったい幾つなのか聞いても?」
「バルムさん、そんなに改まらなくていいんだけど?てか俺は見た目通りの年齢だからそんなに驚くことなくない?普通になんの変哲もない19歳だよ?」
「うそだろ?!」「アリエナイ!」「うっそでしょ?!」「信じられません・・・。」「マジでか。」「そ、そんなバカな・・・。」「エルフか何かか?」
「いやいや、いくらなんでも衝撃受け過ぎっしょ?どうしてそんな反応するのか全然わかんないんだけど?てか解せぬ!」
「い、いやぁ、ソウさんの見た目はそっちのテトちゃんと変わらないくらいに見えたからね。流石に驚いたよ。・・・想像より6は上だったさね。」
「うそでしょ?!なんで俺が中1なんだよ!厨二って言われんのもイヤだけど、中高一貫で吹き飛ばしちゃうのはマジ勘弁なんですけど?!」
その後、場を収拾するのに時間を費やし、更には食事を始めたことですぐに1刻程が過ぎてしまった。和やかに食事を進める中にも、依頼の打ち合わせや細かい情報の照らし合わせなどを済ませていく。
「てことはだ、この目印になってる池とその山とが一直線になる方角に、例のモンスターが生息してる可能性が高いってことになるのか!うっしわかったぜ!」
「そうそう。そんで、魔輝の結石は山から流れてる川の上流にあるんだってさ。これは歩いて辿っていけばすぐだって。目印は黄色い岩があるからそれだね。黄色い岩が見えたら周囲を探ってみればすぐに見つかると思うよ。」
「あぁ、わかった!そんだけ情報をもらえれば十分だな!この依頼、俺らに任せてもらうぜ!」
「いちおう私も聞いたから、二手に分かれても探索可能よ。それと、この依頼は必須だから断ることなんて有り得ないから。」
フッドと名乗った男へ向けて冷たく刺さるような視線を飛ばすハンロ。それもいつもの光景のようで、特に気にする者はいないようだ。
「やっぱメンバー多いと担当分けれて効率いいな。あと、フッド?だっけ?俺男だからそっちの期待すんなよ。あとうちの妹たちに手を出したら切り落とすから。マジで。消し済にしてやってもいいぞ。」
「またまたぁ!そんなこと言ってもムリっしょー!いくら男装したって誰も騙されたりしないって!年齢のことは驚いたけど、性別は流石に見間違えたりしないっつーね!」
ソウがジトるがフッドは一切気にした様子もなく、早々にソウが諦めざるを得なかった。流石にここで服を脱いだりする気はないからだ。
「情報のすりあわせはもういいかい?それならそろそろ解散するとしようかね。あ、そうそう。ソウさんに1つだけお願いがあるんだけど、いいかい?」
「んむ~、叶えられることなら?結構ムリなお願いしちゃってるしね。」
「それはよかった!それなら、このミリーを暫く預かってくれやしないか?」
「それはちょっとお断りさせていただきたい!まだ死にたくないし。」
「ど、どういうこと?!あたし、お、置いてかれるの?!」
「ミリー、今回の依頼はアンタの不始末が原因だ。泊りがけの探索となると逃亡の疑いが強くなるのさ。たから、そんなつもりがあろうとなかろうと関係なくアンタは連れて行けないんだ。
まぁ、それがなくったって危険が多い旅程になる。どちらにしても置いていかざるを得ないだろうね。だから、今回はあたし達の帰りを待ちながら少し普通の生活に戻っていておくれ。」
「・・・あ、たしが、ちからの加減とか、うまくできないから?」
「あぁ、それもあるが、あたし達は街にいる時間がいつも短いからね。たまにはゆっくりして、冒険者になる前の感覚ってヤツを思い出すのも必要だろうさ。」
「あれー?俺の意見は完全スルーなの?」
《そうみたいですね。何やら彼女達だけで世界を作ってしまっているようです。》
「って、カナデさんこそ兵舎辺りからナレーションずっと入れてたけど、これって何なのさ?」
《たまには気分を変えて自己アピールをしようかと思い立ちまして。キャラが増えるとカナデの出番が減ってしまいますのでこういった工夫も必要かと。》
「そんな理由で?!案内役としての新たな役割が始まったのかと思って焦ったわ―。」
どうやらカナデさんの中では、ナレーションというのは遊びのようなものらしい。人工知能(AI)が考えることは相変わらずよくわからんぷー。
《最近はマスターの記憶情報からアニメというものをピックアップして精査をかけていますので、その影響もあるかと思われます。》
「自由気ままに俺の個人情報が・・・。」
どうやら今生の俺には、人権というものが欠片も存在していないことが確定した瞬間だった・・・orz。
お読みいただきありがとうございます。
今回から主人公視点じゃなくなったのかな?と思われた方がいらっしゃいましたらごめんなさい。
カナデちゃんの1人語りなので、ナレーションではありませんでしたー!というオチです。
すみませんちょっとやってみたかっただけなんです他意はありませんごめんなさい!
次回予告
前衛追加
信じられない話し
これは便利だ




