森の中から現れたのは、蠢く影
感想、評価をいただきありがとうございます(*´∇`)
少し更新の間が空いてしまいましたが、その間に新規ブクマ登録者様が6名も来てくださっているとな?!ありがとうございます!日に日に増えてくださるブクマ登録者様へ感謝の気持ちを!感謝の祈りを捧げながら、本編第41話を投稿させていただきますー!
ありがとーございますー!!
これからも皆様が楽しんでいっていただけると幸いです(*´∨`*)
前回のあらすじ。
改造人間のような修復作業
月城家家訓?
ピクニック気分で森辺を散策
楽しい楽しい家族団らんピクニックタイムを満喫しつつ、薬草採集に励んでいると森の奥から物音が・・・。ガサガサ、ガサガサと木々や落ち葉の音が響く。まだ陽が高いけれど森の中は薄暗く、明るいこちら側からではまともに様子を伺うこともできない。
まぁ、俺は『視覚強化』があるからそれなりに見えてるけど。テトにゃんとニコは影すら見えていないみたいで、ちょっと怖がってるご様子だ。たが、多分心霊現象系じゃなくってモンスターを警戒しているんだろう。
その辺りの心持ちというか、恐怖の対象っていうのがやっぱりあっちと大きく違うのかなって最近思う。
「ソウ、何か・・・いるの?」
「うん、ここから確認できるのは6人だね。」
「・・・人、なの?」
怯えながらも森の奥を伺うテトにゃんは、並んで伺う俺の外套の端を掴んで離さない。逆サイドにいるニコも同様だ。外套大人気。
「そうみたいだね。多分冒険者連中だと思うけど、少し下がろうか。ここだと逆光になるから、あっちの方からは見えづらいかもしれないし?」
ずっと暗い中を歩いてきたと思われる彼ら冒険者連中は、きっと暗がりに目が慣れてしまっていて森の外が眩しくて仕方ない状態だろうと思う。
多少の明かりは使っていたかもしれないが、昼日中の日光には遠く及ばないだろう。というか、流石にそんな激しく光るものを使ってたら音より先にそっちで気付くし。
「人なのに?・・・うぅ~、人だから、なの?」
どうやら哀しいことに、テトにゃんは理由に気が付いてしまったらしい。できればこういうことは知らないままに、気が付くことがないようにいてほしいと思ってしまう。そんな甘い考えはやっぱりまだまだ日本人気質が消えないな~と、少し複雑な気分になっちゃう。
ニコは・・・多分初めからずっと警戒モードだな。それは当然で当たり前か。
「このまま後ろへ下がるよ。転ばないように気をつけようね。」
「はいなの。」「ん。」
3人一塊で森の中を見据えながらバックオーライ後ろへ進む。下がっているのに進むとはこれ如何に?という至極どうでもいい疑問が頭をよぎるが、いまはそんな場合と違うので気持ちを切り換えて周囲を探り倒すつもりで限界まで厳戒する。
(いまのところは他にモンスターも、隠れてる人間も見つけられないけどカナデさんはどう?)
《はい、マスター。マスター同様捉えている人影は6体です。また、対象はまだこちらに気付いていないようです。先制攻撃を仕掛けますか?》
(あはは。それはね、危険思想っていうんだよカナデさん。いくらなんでも発想が物騒だって?サーチ&デストロイが許されるのは相手が人外か害悪に限るのよ。マジで。)
ぶっ飛んだ殺戮思考なキラーマシーンがそこにはいた。ていうかそれは俺の相棒だった。俺にいったい何を目指せというのか?甚だ疑問である。ゴルゴ十三か?
森辺から少し離れ、広い視野を確保。遮蔽物がないので隠れることはできないが、今回はこれでいいだろう。大切なのはしっかりと見ることと素早く対処することだし。
「2人とも俺の後ろへ下がって。この外套は例の危ない防具屋さんがくれたものなんだけど、かなり丈夫だから壁だと思ってくれていいよ。」
「うんなの。・・・壁・・・なの?」
テトにゃんや、なんで俺の胸板を見つめながら言うんだい?そこが膨らむことは物理的に、生物学的に、将来的に普通に起こりえないことだからどことなく悲しそうな眼をするのはやめてくれないかな。俺ってば立派に男の子なんだよ?
一方ニコはというと、俺に言われるより早く外套の陰に隠れていらっしゃった。自分で言っといてなんだけど、こうも完全なる盾代わりにされてしまうというのも心にくるものがある。いや、自分勝手なわがままだってわかってるんだけどさ。そういうこと、あるよね?
2人が俺の陰に隠れたのを確認して、再度森の方を見つめ直す。どうやら全員出揃ったらしく、各々の装備や怪我なんかの確認をしているようだ。
「いまの所はおかしなとこはないな。カナデさんはどう思う?」
《はい、マスター。カナデも同意見です。ただ、見覚えのある的がいますね。》
「カナデさん言い方言い方!それじゃ標的かなにかに聞こえるから!まだダメだから!」
《失礼いたしました、マスター。的改めまして、目標物に見覚えがあります。》
「アウト―!はいアウト―!!既に対象が人である可能性を排除しちゃうような言い方はやめましょう!それはダメだ!まだ物じゃあない!」
《相変わらず細かいですね、マスター。A型ですか?》
「それ、わざわざ俺に聞くこと?!知ってるクセに!俺の記憶いつも覗いてんじゃん!覗いてたらわかるよね?知ってて聞いて・・・る・・・クセに?あ、あれ?いまの俺ってどっち?ねぇ、血液型って前と同じなの??」
《いいえ、マスター。マスターは既に人ではないので、ABO式血液型では判別できません。失念しておりましたがいま伝えたのでまぁ良いでしょう。》
「よよよよよよくないよ??!なんでそんな大事な事サラッといまいうの?カナデさんは俺の身体をなんだと思ってるのさ?!」
「ソウ?どうしたの?カナデさんが何か言ってるの??」
「ねぇ、テト!聞いてよ!カナデさんがヒドいんだよ!大事なこと伝え忘れてたからって、いま適当にサラッと言ってきたの!なんでいまなの?いまじゃなくてもいいでしょ?気になっちゃうじゃん!」
《失礼いたしました、マスター。それではこの話題はまた後程にしましょう。戦闘中でよろしいでしょうか?》
「アリエナーイ!!急にボケ役になるのやめてくれない?!カナデさんは案内役でしょ?アイデンティティーとキャラ付けをもっと大切にして!」
なんで普段のキャラをかなぐり捨ててまでカナデさんがボケ始めるのか?その疑問の答えは森から出てきた冒険者連中にあったりする。
先程までウゴウゴと蠢きながら自分たちの身の回りを確認していた烏合の衆が、ようやくのそのそと動き始めた。うん、おっそいな。
どうしてこんなに行動が遅いのかよくわからないくらいにトロトロとした緩慢な動きを見せる彼らに対して、これだけ警戒を密にしていた自分達が逆に恥ずかしくなってくる。
まだ森を出ただけなのにそれだけで安心しきった感を演出している彼らは、まだまだ熟練者とはいえない程度の冒険者なのだろう。てか駆け出しって言われても信じるわ。
「飽きたなら飽きたって言えばいいのに、なんでボケ倒そうとしてくるんだか。最近のカナデさんちょっとよくわかんないな。」
《マスターの記憶情報を参照したところ、ここはふざけるべき場面だと判断したのですが、ご不満でしたか?》
「・・・まだふざけてない?」
もしかしてカナデさんは暇なの?暇なら森の中を警戒しておいていただきたいものだ。あの連中はもういいとして、森からは何が出てくるかわかんないんだから油断とかしないでいただきたい。
それじゃあ程度の低い冒険者連中と同じレベルになっちゃうじゃんね。イヤじゃんね。
「しかし、あいつらホントに何してんだ?森から離れようとしないのはどうしたことだろうか。死にたいのかな?それとも様子に反してめっさ強いから自分らの心配が必要ないとか?」
「ここの森ってそんなに危ないの?」
「んむ~、微妙に?なんか、<ピクシー・ゴブリン>とか<バルボル・ビー>とかがまとめて出てくるし、たまに<マーダージャック・ウルフ>もこの周辺でお散歩してるくらいだよ。」
「ぜ、全然大丈夫じゃないの!」
他の森を知らないから対比できないでいたが、どうやらここの森は危ないらしい。カナデさん情報とはまた違った生の声だからこその臨場感と危機感。テトにゃんアナウンスの方が危険度が伝わってくる気がする。
「そうだったのか。いままで特に気にしてなかったけど、ここって危ない森って位置づけだったのか。名前とかあるのかな?」
《いいえ、マスター。特に正式な名称は決まっていません。単純に東の森などと呼ばれているようです。》
「特にないならつけちゃうか。色々なモンスターが出てくるみたいだし、『ちゃんぽんの森』とかどう?」
《センスの欠片も感じられませんね。》
「ちゃんぽんってなんなの?」
カナデさんには絶不評らしい。何がダメ?ゴロもそんなに悪くないと思うんだけど・・・。
「んーっとね、確かごちゃ混ぜとかそんな感じ?だったと思うけど、ごめん俺もよくわかってなかったわ。」
「ごちゃ混ぜの森・・・なの?」
カナデさんのご指摘事項はその辺なのかもしれない。安易に聞きかじっただけの言葉を使ったことにより、その意味を正しく本来の意味で使えていなかったとか?それなら納得である。
《ダサいと思います。》
おおうぅぅ・・・ガッデム!意味とか以前にお気に召さないらしい。それにしたって投げ遣りすぎると思うのですが・・・ダサいかな?ダサくないよね?ね?
そのあとで、カナデさんとのトーク内容を教えてほしいと頼まれたので1人2役になってご披露した。馴染みがない言葉が多いので理解しづらいみたいだが、その辺りは許していただきたい。だってそういうノリだから。うん。
これだけ長いことグダグダやってるのに、例の冒険者連中はまだ森近くにいた。お前らいつまでいるんだよ?薬草とか採集できないじゃん。邪魔だから帰れよって思うんだけど、むしろ俺たちが他へ移動した方がいいのか?待ってたら遅そうだ。
そろそろ移動を開始しようかと決断しかけた時に、ザコ(仮)冒険者連中がこちらへ気が付いたご様子だ。今更感が半端ないが、そういう空気を読むことに長けているのかもしれない。それが彼らなりの処世術なのかもしれない。
「どうやら気付かれたみたいだな。ここまで騒いでおいていまさらだが、見つかってしまったからには多少の警戒を続けておくとしますか。」
《はい、マスター。》
俺らと彼らの距離は、ざっくり50メートルくらい?走れば数秒の距離だから案外近いといえば近い。だが、話すとなるとまだ遠い状態ながら先に声をかけられた。
「おーい!こんな所で何をしてるんだー?お嬢ーちゃーん!」
早速先制口撃を受ける。1イラである。プンプン。
「お使いをを頼まれている最中だから、お構い無くー!」
無難に返しておく。すると、彼らは何やら仲間内でゴニョゴニョと相談をし始めたではないか。人様の目の前で密談とは、人の神経に障るのがうまい連中である。
「テトは会話内容拾えそう?」
「う~、全部はムリなの。けど、集中すれば少しは・・・。」
「あ、じゃあ聞くのはやめにしようか。あんまり聞いてて気分の良いものじゃないかもしれないし。」
テトにゃんの頭に手を乗せて軽く撫でる。もしかしたら下卑た内容かもしれないし、聞いても不快なだけの可能性が高いもの。
「わかったの。」
「ニコも耳を澄ませて聞こうとしたらダメだよ?悪い言葉覚えちゃうとよくないからね。」
「ん。」
お返事をくれたニコのことも同様に撫でてあげる。2人ともそれなりに気持ち良さそうだけど、やはし包帯越しではそこまでうまく撫でれないのがもどかしい。
(ちなみにカナデさんは音拾えそう?)
《はい、マスター。後方を向いている者の声など一部拾えない音声はありますが、概ね会話内容は理解できそうです。》
(・・・マジでか。ムリだとは思いながらに聞いてみたんだが、まさか可能だとは思わなんだ。)
《マスターの聴覚では些か足りませんが、感知系スキルから空気の震動波情報を得られています。あとはその分析をするだけで事足ります。》
(何そのチート?ホントにズルじゃん。)
マジで人間にはできないことをやってのけるカナデさん。ちょっと怖いんですけど・・・。
《ですのでマスター、マスターにできないことを平然とやってのけるカナデに憧れても痺れても良いですよ?》
まさかのご提案!ご本人から催促されるのはある意味斬新!マイペースを崩すことのない流石のカナデさんである。
ちなみに、冒険者連中の会話内容は大体予想通りだったので割愛したい気分だ。
火傷は惜しいがそれ以外はそれなりだ、とか。
後ろにいるのも運がいいことに女ばかりだ、とか。
大した武装もしていないからヤっちまおう、とか。
売るにしてもヤるにしても森へ連れ込めば問題ない、とか。
中には「あの1番小さいのがいい。金を出してでもアレがいい。」なんて言ってる危険なヤツもいるとか。
お前らそれなんて盗賊?冒険者じゃなくて犯罪者だったのか?非常に胸くそワロス。俺のイライラ度もグングン上昇し、最早10イラを超えようとしている。
「雑談するなら他所でやってくれないかなー?こちとら急いでるんだけどー!」
これが初犯かどうかは知らんが、こんな危険思想を持ったクズ共相手に遠慮もいらんだろ。うん。
「なぁに、ここいらはいま物騒だからな!そのお使いとやらを手伝ってやるよ!お前さんも冒険者なのかー?」
言いながら近付いてくるバイ菌共。まだ武器こそ抜いていないものの、そのニヤけた顔が既に凶器だ。ばっちいし気持ち悪いから3イラ追加だ。
「それ以上近付かないでくれ!俺はアンタらが何者か知らんし、信用もできない!」
ついでに言うと臭そうだから近付かないでいただきたい。そんな思いは我慢して控えはしたが、彼らは面倒そうに顔をしかめつつも一応は止まってみせた。
「コイツを見てくれ!この通り、俺はDランク冒険者だ!他の奴らはEランク!依頼でここに来ていただけだ!怪しいもんじゃない!」
ギルドランクを提示しただけで何も安心材料が出てきていない。あんたバカぁ?
「悪いが、それだけを理由に信用することはできない!このままもと来た道を引き返してほしい!」
俺が至極真っ当うに正しく当たり前で非の打ち所のない主張をしてみせたら、彼らは急に怒り狂い始めたではないか。キモ怖い限りである。
「こっちが下手に出てりゃあつけ上がりやがって!我慢ならねぇ!」
「おいグロッド!どうせ相手はガキばっかだ!さっさとヤっちまおうぜ!」
「俺はベーゴに賛成だ!もういいだろ!抵抗するなら殴り倒せば済むだろ!」
「幼女だ!幼女をよこせー!」
化けの皮のなんと薄いことか。さっきまでの大根演技にゴミ脚本はどうなったのやら。呆れて声も出せそうにない。てか最後のマジでヤバいだろ。ヒャッハー予備軍か?
「久々の女だ!せいぜい楽しませてもらうぜ!・・・ちっ、1匹獣人が混ざってやがるな。しかも黒耳だと?目障りだぜ!」
ブチンッ!!
「術式 冒険級火属性 実行!火の精霊よ!!我が魔力を糧に、30の炎弾を成し、回り、廻れ!1!2! 我が敵を射ち貫け」
ゴミクズ野郎の両足の脛をしっかりと指差し、意識を集中させる。
「炎弾 発射!!」
二筋の赤い光が生きる価値のない最底辺ゴミクズ野郎の両の脛に吸い込まれていく。
ボボッ
まだガヤガヤとガヤッてる他の連中と違い、目標物の動きが止まった。数瞬停止しているかと思ったら、汚ならしい赤黒い液体が出来たばかりの孔から飛び出し、続けて転げ回りながら孔の持ち主が叫びだす。
「ぴげええぇぇぇぇ!!あが!あが!あぎいぃぃぃぃええぇぇぇぇ!!」
「な、どうしたドゲム?!」
「グロッド!見ろ!アイツの回りを赤い光が舞ってやがる!」
「まさか!魔導師か?!ヤバい!逃げろ!!」
思いの外決断が早くて的確だな?見たとこ全員が革鎧に多少の金属板をつけてるだけの軽装だ。斥侯集団だったのか?それにしては色々お粗末だったが・・・。
まぁ、その辺りはどうでもいいか。さっきのムカつく発言によってすでに万のイラを数え、堪忍袋がプッツンしちゃったし。緒じゃなくて袋ごと弾け飛んだから特に逃がすつもりはなくなってしまったので手軽く牽制しておこう。
「逃げるヤツはコロ助!あ、違った。逃げるヤツは殺す!止まれ!!」
俺が怒気を含んで叫ぶと、ベーゴとか言われてたヤツがピタッと止まってこちらを振り返った。中々に聞き分けがよくて結構だな。釣られて他の連中もパラパラと足を止め、こちらへ振り返るが絵面がどうにも汚らしい。
「グロッドとかいうのだけ聞き分けないな。」
1番ランクが高いとか言ってた割りに、生き残る術ってヤツを知らないらしい。
「3 我が敵を射ち貫け」
今度はグロッドとかいうヤツの左手付近に適当な感じで指差し、意識を集中させる。
「炎弾 発射!!」
キュンッ
詠唱に続き一筋の赤い光が伸びていく。装備の様子からグロッドとかいうヤツは右利きっぽいから、左手は最悪どうなっても構わないだろうと思うの。
「ぐお・・・おおおああぁぁ!!」
絶叫1番、グロッド氏が真横に飛んでゴロゴロと無様に転げ回る。
「マジか!外れた!」
俺の魔法が初めて標的に当たらなかった瞬間である。しかも、バッとこっちへ振り返りどうだ!とばかりにドヤってきやがった!100イラである!
「へ、へへへ!なんだ!こんなもんかよ!これなら簡単に避けられんぜ!何度でもヤってみやがれってんだ!!」ドヤァ
ボッ
プシッと血が吹き出るグロッドの左手が見える。ははっ!ざまぁ!アホみたいに勝ち誇って人のこと指差してるからそうなるんだっつーの!
「あぁ?あ・・・ああああえあぁぁぁ!!?」
「すごいの!外れちゃったかと思ったのに落ちて来たの!」
「ふふんっ!誉められると嬉しくなっちゃうな!もっと誉めてくれてもいいんだよ!」
テトにゃんに絶賛されて気分は上々である!ちょっと外れちゃったと俺も思ったけど、結果当たればいいと思うのだ!
《追尾の術式も組んでいましたので、あの避け方なら当たるのも当然かと。》
(いや、そうは言っても避けられたの初めてなんだから仕方ないじゃん?危うく焦って追撃するとこだったよ。)
そうなのだ。実は照準から外れるとイヤなので、毎回ちゃんと対象を意識して目標設定を施していたのだ。今回は見事それが功を奏したってわけだ。
(それにしても、避けられた瞬間に急角度で追尾するんじゃないんだな。縦回転して落ちるとは思わなんだ。)
《今回は対象物が直前になって避けたため、角度の修正が間に合わなかったのが原因です。通りすぎてからでは指定した手の甲ではなく、掌に当たってしまいますから。》
なんと、裏表まで意識して当たりにいくとは我が魔法ながら天晴れである!
「さて、逃げたバカはあれでいいとして他のヤツラはどうする?抵抗するなら頭を撃ち抜くか、胸を貫こうかと思うけど。」
残りの連中はドゲム?とグロッドとか言うのをキョロキョロ見比べ、ぎぎぎ・・・とでも擬音が出そうなくらいにぎこちなくこちらへと向いてきた。
「うわっきったない!鼻水垂れてるヤツとかなんなの?見たくないからあっち向けよ!シッシッ!」
「うぅ~、確かにばっちいけどあんまり言うのも可哀想なの。これだけの魔法を見せられたらこうなっちゃうのも仕方ないと思うの。」
か、可愛い上にお優しい・・・だと?!うちのテトにゃんどんだけ天使なの??
「テトは優しいな。あんな悪いおっさんにまで気遣いができるだなんて。
お前ら!聞いたか?こんな心優しい少女を前にしてのその愚行!恥ずかしくないのか??」
大切なことなのでしっかりと問いただしてみるが、彼らは顔を見合わせるばかりで返事をしようとしない。なんだ?シカトか?いい度胸してんじゃねーか!
「えっと、多分なんだけど、ウチの声聞こえてないと思うの。」
テトにゃんの気遣いができる優しさがまた1つ証明された瞬間だった。てか何気にちょっとハズいっす。
「まったく!天使のお声を聞き逃すとはこの愚か者どもめ!恥を知れ!!この可愛い可愛い俺のテトが、お前らのことを可哀想だと憐れんでくださったんだぞ!跪いて頭を垂れて感謝し許しを請え!」
苦し紛れに責任転嫁をしてみたが、なかなかどうして悪くないんじゃない?とっても真っ当なことを言えていると自負しちゃう!
「バカか!なんで獣人ごときに憐れまなきゃならねぇんだよ!ふざけんじゃねぇ!」
「ガキが!舐めた口きいてるんじゃねぇよ!」
「よ、幼女に蔑まれたい・・・。」
「4 我が敵を射ち貫け炎弾 発射」
獣人ごときとかふざけたことを抜かしたヤツの左手も処分しておく。
「ひげえええぇぇぇぇぇぇ!!お、俺の手がぁぁ!!」
「獣人ごときとか何言ってんの?てめえら如きが言っていいセリフだとでも思ってんの?わけのわかんねぇこと言うならマジ・・・殺すぞ。」
段々とっていうか、ドンドン急速に殺意が上昇してきてさぁ大変。どじょうの様に手足失くしてやろうか?あぁん?とか言いたいけど、ここは幼い娘たちがいるから自重せねば。
スーハ―スーハ―と深呼吸を繰り返し、テトとニコの何かしらの成分を体内へ取り込んでいく。ん~、気持ちが落ち着いてきたー。
《・・・流石にその行為はどうかと思いますが。》
(だって、イラが積み重なりすぎて自我を保つのがきっついんだもん。怒りに我を忘れそうだよ。)
緊急避難行為だと思って許していただきたい。誰も傷つくことのない素敵な解決策だと思わない?思うよね?
「気を取り直してアンタらに問おう。抵抗するか黙って言うこと聞くか、どちらか選べ。」
暫く待ってみたが、彼らからは反応が返ってこなかった。抵抗する気はないってことかな。これ以上は面倒だからそういうことで話し進めていいか。
「ムダな抵抗をしないのなら殺すことは控えてやろう。それも全てはお前らを優しさから憐れんでくれた、この天使のお陰だということを忘れるなよ!」
テトにゃんの頭を撫でながら大切なことをお伝えする。これだけは忘れちゃいけない大事な話しなのだ。
「ウ、ウチは何もしてないの。それに、獣人に対する風当たりが強いのもわかってるの。」
「そんなもん俺は知らんしどうでもいい。これからもテトが不当に評価されたり、貶められてたりしたらなにがなんでもどんな形であっても徹底的に抗議するし、否定するよ。それはテト自身に対してもだ。仕方がないとか思わないように。」
「・・・はい、なの。」
「さて、こんな所にいつまでもいても面倒事が起きるとしか思えない!さっさと怪我人の止血をしろ!街へ連れてくぞ!」
ポカンとしたまま動くことのないアンポンタンども。言葉が理解できないのか、もしかして伝わっていないのか?神(笑)の加護がサボってる可能性が急浮上してきた。またサボってんのか?許すまじ!
「テト、俺の言ってること理解できる?」
「えっと、言葉がわかるかって意味?なの?それならちゃんとわかるの。あっちの人たちにも多分伝わってると思うけど、きっと理解が追いついていないと思うの。」
予想以上に的確なお返事が返ってきて驚いたが、テトにゃんが聡い・・・というか空気読める娘なんだな。テトにゃんの素晴らしいところが次から次へと発見できる。今日は実のところ良い日なんじゃないのか?
「ありがと、テト。それなら単純に彼らが怠けているだけってことだな。おらー!言ってることが理解できるならキビキビ動けー!血の匂いに誘われてモンスターも集まってくるぞー!」
ここまで言ってようやく動き出す彼らは、やはり鈍重だ。そんなに頭の回転遅くてよくいままで生きてこられたものだなぁ。テトにゃんとは違う意味で憐れんでしまう。
ドタバタドタバタと煩わしくも怪我人を一ヵ所へ集めて治療を開始する。そこまではそこそこ手際がよかったのだが、そこまでで彼らの手が急に止まってしまった。
「どうした?包帯持参してないとかバカなこと言わないよなー?」
「ほ、包帯はある!血止めの薬も多少は持ってきてる!だが、こうまで出血が酷いともうどうしようもねぇ!手も足も諦めて、根元をキツく縛るくらいしかできねぇんだ!」
「んむ~、止血の知識があんまないってことか?孔は確かに開いてるけど、付近を紐で捩じりあげながら縛れば血も止まるだろうに。」
《そういった知識は持ち合わせていないのでしょう。見たところ彼らは抑えるかただ縛るくらいしか頭がないようです。》
「じゃあー、左手怪我してるヤツは左腕をそこそこの強さで縛ってから手を頭の高さまで上げろ!」
治療がダメなら止血だけして連れて行く方向にしよう。近付いて代わりにやってやる気にもなれないし。
「両足ダメなヤツは諦めろ!捨てていく他ない!」
「なっ?!」「マジかよ!」「いくらなんでも・・・。」
「お、置いてかないでくれ!あ、足なら諦める!だ、だから頼む!連れて帰ってくれ!」
一切怪我をしていない無事なヤツらは抵抗を見せるが、既に怪我をしているヤツらは大人しいものだ。下手に騒いで自分たちまで見捨てられたくないんだろう。いまは風向きも森方面へ向かっているからあまり時間なさそうだし。
「だってさー!両足壊死した状態だと連れ帰っても助からないじゃん!切り落としたらお前死ぬだろ?」
「イヤだ!まままだ死にたくないぃぃ!」
ドゲムとかいうヤツは諦め悪く喚き散らしている。見苦しい限りだ。そんなに死にたくないのなら自分で縛って這ってでも進めばいいのに。
「そんなに喚くなら命だけは助けてやろう!だが!足は諦めろよ!」
「わ、わかった!頼む!足なら諦めるから!たた助けてくれぇ!」
「ソウ、殺しちゃうのは可哀想なの。助けてあげられないの?」
「んむ~、テトは甘いなぁ。アイツラのしようとしてることわかってるんだろ?それでもいいのか?」
「うん、まだウチたちは何もされてないの。だから、今回はいいの。」
「聞いたかお前ら!テトはな!お前らがやろうとしてたことを理解した上でなお!そこのクズ野郎の命を助けてくれと俺に頼んできた!この意味がわかるか!」
盗賊連中はバツの悪そうな顔をしながら俯いていく。下向くなよ。質問してんだから答えろよ!と圧迫面接ばりに責め立てたいが、テトの手前あんまり意地悪くするのも憚られるので今回は見送るとしよう。
「じゃーそのドゲム?だっけ?それを助けたいヤツは剣かナイフを抜いて掲げろ!」
訳もわからず剣を抜き放ったヤツが2人。もう1人はキョロキョロと様子を伺うばかりで何もしようとしていない。まぁ、足りるからいいか。
「56我が魔力を糧に炎を象れ 我が敵を焼き尽くす業火よ 燃え上がれ」
「うおっ?!」「わっ!わっ!わっ!」
盗賊2人が掲げた剣に炎が灯る。あまりやりすぎると金属が溶けちゃうから気をつけないとーって思っていたが、流石に1/30の威力じゃそこまでじゃないか。すぐに炎が消えていく。
「その剣で傷口を焼け!血が止まるハズだ!!」
「ま、マジか。そんなことを人にしていいのか?」
「でも、前に戦場帰りのヤツに同じことを聞いたことがあるぞ。」
「お、俺も。」
「早くしろ!温度が下がったら意味ないだろ!!」
「うっ。や、やるしかないのか。ドゲム。これがお前の助かる方法らしい。我慢、しろよ?」
「逆らったら俺達もやべぇんだ!一思いにやらせてもらうぜ!」
「そこの手が空いてるお前!足抑えてろ!暴れさせるなよ!!」
ドゲムの足を焼く作業はテトとニコに見せないようにした。あんまり気分の良いモノじゃないし、見る必要もないだろ。
一通りの治療?が済んだので街へ向けて歩き出す。ドゲムとか言うのは白目剥いて泡吹いてるけどきっと生きてるだろ。他の連中が担いで運んでいる。グロッドともう1人の怪我してるおっさんは手を挙げながら青い顔して歩いてるけど、まぁへーきだろう。
「なんだか精神的にドッと疲れた気がする。本来の目的も満足に終えることができなかったからなぁ~。」
「仕方ないの。ウチはソウとニコが無事だったから全然イイの。」
「ん。ソウ、なでる?」
心配し、労ってくれる妹たちがあな可愛。字余り。とりまニコの頭を撫でて癒されよう。
「ありがとね、2人とも。2人は疲れてない?楽しいお散歩がこんな形になっちゃったけども。」
「ウチはへーきなの。お外で動けただけでも満足なの。」
「ん。いっしょ、たのしい。」
うぐぅ。笑顔が今日も眩しいぜ!さっき感じた疲労感や徒労感はすぐに霧散し、俺の精神的HPは全回復まっしぐらだ!
「でも、<ピクシー・ゴブリン>が出たのはびっくりしたの。それをあっさり倒しちゃうソウにも驚いたの。」
「術式展開中だったからあれくらいはすぐだよ。死体は燃やすしかなかったのが痛いけどねぇ。」
「燃やすのも魔法だから大変なの?」
「いや、それくらいはわけないんだけど・・・今度説明するよ。いまはアイツらいるし。」
「わかったの。あとで聞かせてほしいの。」
(くそー、6匹しかいなかったから大した量じゃないとはいえ、DP獲得を逃したのは痛かったなー。)
《見られても気付かれることはないでしょうし、吸ってしまうのも1つの手だったのではないでしょうか?》
(そうはいうけどさ、なるべく目撃者は残したくないんだよね。見られたから消すとかなったらテトにゃんの意思を尊重できないしね。)
そう、治療?のあとのことだが、モタモタとしていたら血の匂いとか肉の焼ける匂いとかに釣られてゴブがゴブゴブ森から飛び出してきたのだ。しかも6匹って盗賊と同数じゃん。仲間のピンチに乗り込んできたみたいなノリなのかな?
もしかしたら盗賊連中の仲間かもしれないそれを1匹辺り2発の炎弾で撃破し、魔石を盗賊連中に取り出させてから燃やした。つまり合計消費炎弾は18発。残りは6発なので、捕虜6人に1発ずつは残った計算になる。
燃やしたらホントは我がダンジョンに吸引・吸収してDPに変換したかったんだが、有象無象の目があったので諦めたのだ。しょぼんぬ。
「これだと約束の時間にギリギリだな。ホントは汗くらい流してからにしたかった。間に合わなかったらお前らのせいだかんな?マジで。」
前を歩く元冒険者改め盗賊連中へ声をかけるが、「はぁ」とか「へぇ」とかの曖昧な返事しか返ってこない。まともに返事もできないのか!だからロクな大人になれなかったに違いない。
帰りの道中それほど時間はかかっていないと思ったが、空の色があかね色へと変わっていく。どうやら真面目に時間がヤバそうだ。残りの警戒用の炎弾を解除しつつ門兵さんへ声をかける。
「コイツら盗賊紛いのことしてたから捕まえといたよ。あとは然るべきバツを受けさせておいてね。よろぴくー。」
お手てをフリフリ門を通ろうとしたら何故か止められてしまった。解せぬ。
「コイツらを捕らえた経緯の説明をしてもらいたい。」
「それってこれからまだまだお時間がかかるってこと?」
「悪いがそうなるな。」
「あ、これ足りないや。」
マーグル婆さんとの約束も、今日の夕飯の待ち合わせも間に合わなくなることが決定した瞬間だった。
お読みいただきありがとうございます。
今回登場の新キャラはなんと6人!名前が判明しているのは3人だけですけど。
今後繰り返し登場するかは彼ら次第なので、どうするかは彼らに考えてもらえばよさそうですね。
次回予告。
取り調べ
待ち合わせ
それはちょっとお断りさせていただきたい




