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怪我とかいつまでも言ってられないし、治すときには治しましょう

感想、レビュー、評価をいただきありがとうございます(*´∇`)

新規ブクマ登録者(ユーザー)様が2名様いらっしゃいましたー!

ありがとうございます!そして、これからよろしくお願いいたします!

皆様が楽しんでいっていただけると幸いです(*´∨`*)


前回のあらすじ。

人体実験とりま自分で

犯罪奴隷とか要らない

解体所が不衛生すぎてイヤな気持ち

汚らしい解体所と腕毛から旅発つ。今度こっそりあの廃棄物をダンジョンにぽいした方がいいのだろうかと真剣に悩みながら皆で雑談しつつ着いたのはマーグル(バー)さんのお家。

俺のお手てが使い物にならないからテトにゃんと一緒に荷車を押してきたが、マジめっさきっつい。これダメなヤツ。

街中はそれなりに整備されてるけど、やっぱり道がガタガタなのがいけないと思うの。荷車的には不快な道だもの。

いつもの通りに不法駐輪で放置しながらトビラを攻める。


「って、お手てがこれじゃノックできないじゃん?!」


いま明かされる衝撃の事実!俺はこんなにも無力な存在だったのか・・・くぅっ!


「んむ~、どうするべきか・・・足でノックははしたないし、肘や肩でやるのは痛そうだ。」


「ん!」


「お?ニコ、ノックしてくれるのか?」


「ん、んっ!」


「じゃ、お願いしちゃおうかな。え~っとね、そのちょっと左下の辺りがよさそうだな。結界が弱い感じがするから!」


「んー!」


ガチャ


「何をやってるさね?人様の家の玄関口で、雁首揃えて呆けてるんじゃないよ。まったく。入るんだったらお入りよ。」


なんということでしょう。いままで、様式美の如く連綿と続けていたノッキングブレイク(トビラ破壊工作)が、こうも簡単になきものにされるとはいったい誰が予想しえたというのでしょうか?

これが酸いも甘いもどうでもよくなった、老婆独特の感性が成せる技なのでしょうか。お約束を理解できない老婆に対して落胆しかない。ニコだってちょっとしょげてるし。

とりま嘆いていても仕方ないのでドカドカと土足で上がり込む。別に土足厳禁とかこの辺りの風習にはないから気がねることはまったくない。

もしかしたら靴の裏側にモンスターのなんやかんやがついているかもしれないけれど、ここは老婆しか住んでいないんだからどうでもいいだろ。うん。


「それで、今日はいったい何の用さね?見たところ、特に何も持ってきてやしないみたいだけど?」


「モノを乞うなよ。施しなんかやらないぞ?俺にはそういう趣味も趣向も、慈愛の精神とかも一切ないんだから期待とかはしないでくれたまえ。」


「誰が物乞いさね!そうじゃないよ!アンタがここに来る度に例のモノを作っていってたから聞いてるんだろうに!」


「え?そうだったの?ごめんごめん、ちょっとマーグル婆さんの正気を疑ってしまったよ~あはははははははー。」(棒読み)


「毎度毎度、アンタは変わりやしないね。そんなことより、そいつはどうしたのさね?顔も、手もかい?ボロボロじゃないか。」


「あ、これ?これはちょっと凶悪な小ダヌキみたいなのに出会ってねー。」


そんなに話すこともないんだが、赤っぽい茶髪の小ダヌキに殴られた事件に関してお話しをしてみた。テトにゃんたちが意外にも興味ありげな感じで聞いてくれたから、ちょっと気合いを入れて話しの内容を盛り気味にご披露したのは内緒だ。

そんなに面白い内容でもないんだけど、何か気になることでもあったかな?本人にもご対面してるし、話しに入り込みやすいとかイメージしやすいとかそんなかな?


「『城砦の矛』の娘っ子とかい。よくもまぁその程度で済んだもんさね。」


「なんだ(バー)さ・・・マーグル(バー)さん、知ってたのか?」


「それなりにね。あの娘っ子は良くも悪くも噂に出てくるからね。どうしたって覚えちまうんだよ。」


なんと、あのミリー(なにがし)は暴力を振り撒くだけに飽き足らず、老婆の残り少ない記憶領域を圧迫しているというのか・・・恐ろしい。

このままでは世にアルツ的な症状を持った老人が溢れかえってしまうではないか。やはりあの時躊躇わずにしっかりとヤっておくべきだったな。今度会うときは先制攻撃をするとしよう。そうしよう。


「小ダヌキの話しはその辺でいいとして、今日来たのは治療を手伝ってもらいたくてきたんだよ。左手は甲から骨が出ちゃっててさ、ひと手間加えないと下級ポーションじゃ治せそうになくってね。」


「骨が?そんなもん、いくら良質でも下級は下級、ポーションをどれだけかけたって治るもんじゃないんじゃないのかい?」


「あ、やっぱりこっちの認識だとそんな感じなの?何気にこのほっぺただって、それなりにぱっくりいってたんだけどキレイさっぱり治ったよ。」


テトにゃんに頼んで顔の包帯をとってもらうと、すべすべだと思われる俺のほっぺたが露わになった。ちょうど火傷痕の下だったからよかったものの、火傷痕とかぶってたら多分キレイには治らなかったと思う今日この頃だったりする。


「全然傷痕なんか見えやしないんだが、それなりの怪我があったってことみたいさね。」


テトにゃんが持つ使用済包帯をマジマジと見つめる(バー)さん。小さな女の娘を食い入るように見つめる様はちょっと怖いからやめてくれないかな。森深くにいるオカシな魔女に見えてくるよ。あれ?お菓子だっけ?


「あんまりうちの可愛い妹を変な目で見ないでくれませんかね?ただでさえ見た目がアレなんだから、自重ってもんを考えてほしいよ。マジで。」


「バカなことお言いでないよ!アンタの顔に傷がないから包帯の具合から傷の程度を見てただけさね!」


「んむ~、自分のことって案外わかんないもんらしいし、も少し周りからの視線とか気にした方がいいと思うよ。」


ちゃんと真面目に一般常識を老婆に教え込んであげてはいるのだが、果たしてこの老婆のメモリの空き領域(記憶容量)はまだ残っているのだろうか?余計な記憶が沢山入ってるみたいだから、残念ながらもうほとんど残っていない可能性も高い。

きっとデフラグ(整頓)処理も満足に走らせることができないくらいに切迫しているに違いないから、古いファイル(記憶)を圧縮したり消去したりゴミデータをどんどん削除していかないとおっつかないんじゃないんだろうか?

いや、そもそもメモリ()も相当に古い物だろうから、色々ガタがきてたりとかするっぽいもの。そう思うと、古ぼけた家電のように思えてきたな。可哀想に。


「・・・なんて眼で私の顔を見てるんだい?」


「えっ?そんな変な顔してた気はまったくしないんだけど、俺どんな顔してた?」


「う~、悲しそうな感じだった気がするの。寂しそうだったかもしれないの。」


「そんないいもんじゃないさね!残念そうな、憐れむような冷めた感じしかしなかったよ!!」


おうふ。どうやら無意識が表層部分を浸食して表情筋を操作してしまっていたらしい。おかしいな?俺ってば結構ポーカーフェースを貫けるニヒルなナイスガイだった気がするんだが。


「そんなことよりさっさと治療を始めよう。マーグル(バー)さん、少量の炭酸ナトリウムと熱湯用意してもらっていい?あと、きっついお酒とかってあると嬉しいんだけど。」


「・・・はぁ、どれも用意できるさね。大きい方の、テトって言ったかい?ちょっとこっちへ来て手伝っておくれ。」


「うん、わかったの。」


なんと、とても自然な感じでテトにゃんを()き使い始めた(バー)さん。何勝手にうちの妹を顎で使っちゃってくれちゃってんの?あ~でも、テトにゃんがやる気見せてるからちょっと(バー)さんを怒り辛い。なんだこの()瀬無(せな)い感じは?

これが子離れできない親の気持ちなのだろうか?なんともアンニュイな気持ちが胸の中にもやもやと拡がっていく。


(どうしようカナデさん、この胸の中に疼く行き場のない黒い感情をコントロールする術がいまの俺には・・・。)


《急に厨二ぶらないでください、マスター。単純に、テトにゃんが自分以外の誰かと接することに対して嫉妬を覚えているだけでしょう。親バカというか、バカ親です。》


(うぐぅ。普段は感情の機微をそんな気にしてないのに、なんでこんな時だけ的確に俺の心情をトレースしてくるのでしょうか?いじめですか?)


《いいえ、マスター。マスターの感情に関しては、過去の記憶(データ)が参照できますのでそこから推測が可能なだけです。つまり、精神的に成長されていない証拠ですね。》


勝手に記憶(かこ)を漁られた上にディスられる。俺に味方はいないのだろうかと考えさせられるには十分すぎる口撃だった。


「ソウ、ニコは?」


はっ!そ、そうだ!俺にはニコがいてくれたんだった!そうだ。そうだよ!ニコはいつも俺の味方でいてくれる貴重な存在だったじゃないか!しかも自分に手伝えることがないかと催促してくる可愛らしさ(愛嬌)頭のよさ(機転)を兼ね備えた最・強の存在!

こんなに力強い援軍が他にいるだろうか?(いな)!断じて否である!!唯一無二にして至高の味方!ニコである!!


「ニコはいつも俺の味方してくれて優しいな~。じゃあ、このお手ての包帯とるの手伝ってくれる?血が固まっててちょっと難しいかもしれないけど、ゆっくりやれば多分大丈夫だと思うから。」


「ん。ニコ、やる。」


2人で力を合わせて難解な(ほど)き作業へ取り掛かる。何回固結びしたのかしらないが、やたらと難儀する固さに辟易しながらどうにかこうにか包帯をとることができた。できたっていうか、とってもらっただけですけど。

流石は最終兵器彼()の少女!お陰様でお手てが解放されました!って、かなりグロ成分多目だな?!成分の半分以上はおどろおどろしさでできているに違いない!これってあんまニコに見せちゃダメかもしれない!


「ありがと、ニコ。でもちょ~っとこれは見るに堪えない状態かもしれないんだけど、見てて平気なの?てかなんでそんなに興味津々にガン見なの?ちょっとニコさん?コワインデスケド!コワインデスケド?!」


我が方の唯一の味方であるニコ隊員のお口から、涎のような分泌液を確認いたしました!緊急事態発生(メーデー)緊急事態発生(メーデー)!頭の中にパトライト(警告灯)が鳴り響く。

えっ?なんで?この娘人間でしょ?まさかの吸血鬼とかそんな感じなの??それはそれでテンプレだけど、この娘普通に陽の光浴びてるし食事も同じ食べ物だよ!?

こみ上げる不安感に押し潰されそうになりながらもニコの一挙手一投足を確認する・・・が、特にそのままオレサマオマエマルカジリモードになったりはしないようだ。しないよな?

もしかしたら、ただ単に骨付き肉のように見えて、お腹が減っちゃってるのかもしれない。けどそれはそれで倫理感とか道徳観とかちゃんと教えてあげないとヤバいのかもしれないと焦燥感を覚える。

人のお肉は食べてはいけない。それは食べ物に(あら)ず、と教えなきゃいけないのだろうか?そんなにサバイバルしてるイケイケな状態なのだろうか?違うと信じたい。人を信じる心って、大切だと思うの。

ニコってば実はヒャッハーなんじゃないかと怯えながら思考にふけっていると、テトにゃんとおまけの(バー)さんが戻ってきた。ちゃんとどちらも用意できてるっぽいな。


「(あとで(バー)さんの部分は記憶から消去しておくけど)2人ともありがとー。あ、あと、マーグル(バー)さんハサミかナイフある?なければナイフは自前の使うけど、戦闘用と剥ぎ取り用しかないからできれば用意してほしいんだけど。」


「次から次へと注文が多い小娘だね。まったく。そういうのは1回で言ってくれないかい?あっちにこっちにと動くのが億劫なんだよ。」


悪態をつきながらじゃないと動くこともままならないのか?息を吸うとき以外は口煩い気がするんですけど、そういうの疲れませんかね。俺的には疲れるから勘弁願いたいんですけど。

ブツクサ言いながらも、(バー)さんが色々と用意してくれたので準備はおk。そろそろ始めますかー。


「じゃあ、まずは炭酸ナトリウムを溶かした熱湯でハサミを熱して・・・。」


なんちゃって手術に使用する器具を煮沸消毒し、脇の下へボール代わりの麦っぽい穀物が詰まった麻袋を挟み込む。いちおう緊縛止血法も同時に行う心積もりだが、口頭でどこまで指示できるかわからないし加減をそもそも知らないから全部調整しながら行う予定だ。

麻酔はカナデさんが多少はなんとかしてくれるし、知識面でのサポートも充実の遠隔(口頭)操作手術だけど多分きっとなんくるないさー。ケセラセラの精神でいきましょう。


「そう、布越しにちからこぶの下辺りを紐で縛って・・・。」


予防処置を進めていくと、どんどんとお手てに流れる血が少なくなっていくのを感じる。んむ~、止血しすぎ?これって壊死る?わかんないけどやってみないと始まらナイト!


「じゃ、お酒を患部に振りかけて。いってててててて!!あー、うん。大丈夫へーきへーき。」


意識が飛びそうになるほどクソ痛いけど、なんとかまだセーフだ。俺が夢の世界(あっち)へ逝ってしまうと手術が半端になってめっさ危険だから、真面目に気をつけないと。


「うぐぅ。これはヤバそうな感じがめっさするっぽい。だけどやらなきゃあとが怖いもんなぁ・・・。中指の骨はそっちに曲がっちゃってるからこっち側にその部分を・・・。」


指で骨折していたのは、中指だけだった。人差し指と薬指は脱臼で済んでたけど、骨入れるの痛すぎでしょ。痛覚遮断ってそんなに利いてないのかもしれないけどそれはカナデさんには決して言えやしない。だって、切られると死ねるもん。


「マーグル婆さん、そこのダメになっちゃってる部分切っちゃって。いっっっ!!うぐぅ・・・。その次そっちもね・・・。」


《マスター、不要部分の切除完了いたしました。》


(ありがと。これで下準備はできたかな。あとは、婆さんの体力次第かー。不安でしかないな?)


「ひとまずはこれでおk。でだ、マーグル婆さんには飛び出た骨を押し込む作業をやってもらいたい。そんで、テトには腕のこの辺にある血管を圧迫してほしい。出血が多い時は力強めでお願いします。ニコはポーションかける役をお願いしてもいいかな?

タイミングとしては、マーグル婆さんが骨押し込めたあとでお願いします。俺は基本的に我慢するのとかで忙しくなりそうだから合図出せそうにないのよ・・・。」


「わかったよ。」「はい、なの。」「ん。やる。」


「あーそれと、もしマーグル婆さんに余裕があれば傷口の筋肉的な部分をしっかりとくっつけた状態にしてほしいんだ。こう、手繰(たぐ)り寄せるような感じで?」


「そんなフワッとした指示でできるもんかい!せめてマシな指示を出しなってもんさね。まったく。」


「できたらでいいからよろしくね。テト、そこの布を俺に噛ませて。それしないと歯が砕けちゃうかもしれないし。なので、指示が出せるのはここまでだから、ここから先は指示がないものと思ってやってね。うまくいくことを祈りましょう・・・天使に。」


「全知神じゃないのかい?」


「・・・ソウは全知神知らないみたいなの。」


「見たままの異国の流れモンだとは思ってたけど、そこまで常識が違うもんなのかい。ただ、なんなのかわからないものには祈れやしないから、私は祈ったりするのはやめにしておくよ。」


「何を言っているのかわからないが、天使はここにいるぞ?テトとニコだ。俺の為に天が使わした御使いだ。」(キリッ)


「・・・呆れてモノも言えないね。」


「できるだけ頑張るの!」フンスッ


「ん!やる!」フンスッ


頭の回転が遅く心が薄汚れている婆さんには理解ができなかったご様子だが、我が家の天使たちマイ・スイート・エンジェルズのやる気が(みなぎ)っているからきっと大丈夫だろう。あとは結果をご(ろう)じろってなもんだ。


「よし!やるか!!」


声をかけ、手術を開始する・・・ように促す。結局やるのは俺じゃないし。俺はスキルの制御と痛みを我慢することだけに集中するしかできませんから。はい。


「じゃあ、骨を押し込むから気合い入れて耐えることことさね!」


「いいいいいいいいいいいいいいがああああああぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・・・・・・・!!!!!」


んがおjのじゃんそえんがpkめあぴあmふぁgんpじゃrpjkんがpskrんがsprkんが!!!!


《マスター、意識の割合(リソース)はなるべくスキル制御へ向けてください。痛みを感じてる暇はありませんよ。》


(っっっっっっっっ!!!!????まままま、ままじじ・・・よ、よよ、しゃねてててっててててっっ!!!)


ぴちょん


永遠に続くかと思われた苦痛が急に和らいできた。嵐のようなっていうか、嵐そのものを超えるほどの激痛の最中(さなか)微かに感じることができた回復用の魔力(ポーション)の光。

その僅かな光明へと感覚を伸ばし、手繰(たぐ)り、(すが)り付く。すると、ホンの小さな光の粒だったそれが急激に広がり俺のお手てを包み込んでくるような感覚に襲われる。

意識が鮮明(クリア)になり、思考が加速する。慣れ親しんだスキル動作が、ルーティンワーク(繰り返す作業)のように滑らかに動き出す。なんか回復用の魔力が増えていく気もしないでもないような?

壊された細胞を、千切れた筋繊維を、破れた血管を修復していく柔らかな光。繋がっていく骨、神経・・・皮膚まではムリっぽいな。それでも結果は上々だ。完治までは程遠いが、形は以前の状態に近い形状を取り戻せたみたいだ。


「ん。全部。」


「・・・ポーションは全部かけ終えたみたいなの。」


「んん~っ!ふぁふぃふぁふぉー?」


あ、布取り忘れてた。噛んだままじゃそりゃちゃんと喋れないっての。ハズいなぁもぅ!


「ごめんごめん。布のことすっかり忘れてたよ。みんな、ありがとう!感覚的にはかなりうまくいったっぽいよ!見た目の上ではまだ皮膚がちゃんと繋がってなくて微妙な雰囲気だけど・・・。」


見ると、どこか禍々しいような、学校でお馴染みの人体模型君のお手てに近いような、中身が軽く見えちゃう状態の左手がそこにはあった。うわぁ~地獄先生に寄り気味のビジュアルっすわぁ~。我が左手に封じられし鬼○、いまこそその力を示○ー!的な?

伏字が若干ズレてしまったような気がしないでもないが、きっとそれは手術もどきが痛すぎたせいだな。業界の皆様にもお許しいただけることだろう。


「かなり醜悪なお手てになっちゃったけど、多分そんなに時間かからずに完治するっぽいからおkとしよう。」


「す、すっごく痛そうなの。だいじょうぶなの?へーきなの?」


心配そうに服の裾を掴みにくるテトにゃん。やはし疲れた精神には癒しの可愛さが必要不可欠ですな。荒んだ(ハート)が元気になっていくのを感じる。ニコは・・・また凝視してるけど、それマイブームなの?


「呆れたもんさね。ホントに下級ポーションだけでこれだけの治療を成し遂げちまうとは恐れ入るよ。まったく。」


皺枯れた声の方を向くと、そこにはいつも以上に老婆老婆した老婆がいた。なんか疲れたのかな?また一段とお老けになって・・・およよ。


「随分とお疲れみたいだな?老婆には重労働すぎだったのか。これは申し訳ないことをしたという感じの態度を示さないといけないな。気持ち的には特に思っていないが、すまんな。」


「おざなりを通り越して、投げ遣りなセリフをいちいち吐くんじゃないよ!あたしゃ疲れたんじゃなく、アンタの異常なやり方に呆れ返っているだけさね!」


「そんなに言うほどか?だって、ポーションがやってくれる回復の過程を人が手でやれば、その分の回復パワーを他所に回せるんじゃないかって思うのは当然のことだろ?」


「少なくともいままで生きてきて、そんな突飛な発想をするやつなんざ1人として見掛けたことすらないね!」


なんと!この国の医療水準はレッドゾーン(警告域)まっしぐらかもしれない、だと?ヤバい、それは完全に予想外だ。ポーションがそもそもそんなに普及率高くなかったんだから、少しは医療技術が発達しているのかと思いきやそっち方面は全然ですか?マジですか?

この街の建築物や生活水準を見るに、それなりに進んでいると思ったんだがそこら辺はどうなってんの?なんか所々チグハグな感じがして微妙だなー。でもこの老婆が見たことも聞いたこともないっていうんだから、そういう発想に至った人間がそもそもいないのかもしれない。

・・・まさか、その辺も宗教国家の手回しか?治癒魔法系統の技術やらなんやらを独占して国際的な立場を維持しているとすればそれも有り得るなぁ。主にラノベ情報なので実際どうなのかは一切知りはしないのだけど、基本関係ないからスルーするとしよう。そうしよう。

ムダなことは考えない、日本人的思考(さきおくり)でお茶を濁す。この行為も慣れたもので、どこに出しても典型的日本人として恥ずかしくない完璧なスルーぢからを手に入れつつある気がする。そろそろスキル化するかもしれない。


「面倒そーだから、この辺の話題はまた今度ってことで。それよかまた包帯巻いてもらいたいんだけど、テトに巻き方教えてくれない?こういうのって口頭で教えるのが案外難しいんだよ。」


婆さんに頼むと、仕方ないとかなんだとか愚痴りながらもしっかりと包帯の巻き方を教えてくれた。使う布も、俺のリクエスト通りに外側はさっきまで巻いていた布で、患部に直接あてるのは新しいキレイな布にしてもらってあるので、誰かに見られても安心設計である。


「見た感じは治療前後と大差ない、かな?」


「うん、それなら他の人に見られても変に思われないの。」


「いちいちこんな小細工しなきゃいけないような怪我を、よく気軽にこさえてくるもんさね。今回は後学の為に手伝ってやったけど、こんなに大変なんじゃそうそう気軽にできやしないからね。肝に銘じておきなよ。まったく。」


「当たり前だっつの。こんな大きな怪我頻繁にしてたまるかっつーの。痛いんだぞ?マジで。」


老婆のツンとか需要がなさすぎてテンションが落ちる。どれだけ俺の精神的HPを痛めつければ気が済むんだろう?早くちゃんとしたツンツンドリルでも仲間に引き入れたい所存です。


「んむ~、治療も一段落したし、例のブツの材料でも仕入に行こうか。まだ骨が脆く繋がってるだけだから台車は諦めて持てる分だけにすればすぐ帰ってこれるだろうし。」


「なんだい、また仕入に行く気なんてどういうことさね。それなりに数を持ってただろうに、そんなに急ぐほどなのかい?」


「えっ?もうないけど?」


「はっ?」


「うわっ、見るに堪えない。」


老婆の呆けた顔を見せつけられるこっちの気持ちも考えてほしいもんだよ!急すぎて直視しちゃったよ!


「な、なんでもう無いのさね?すぐに使える量でもなかっただろうに?」


「普通に使ったけど?左脚の治療とかに使った分と、左手とほっぺたに使った分であんなもん一瞬でなくなるって。あ、『城壁の矛』の連中に2本だけ渡したの忘れてた。」


「渡した・・・だって?アンタ、その怪我をこさえたのは『城壁の矛』の娘っ子にやられたって言ってなかったかい?奪われたのかい?」


「違うって。発想が物騒だな。ただ成り行き上依頼(クエスト)出すことになったから、その旅費代わりに渡しただけだよ。ちょっと危ないのと戦わないといけないとこ指定しちゃったからね。」


「・・・ちゃんと口止めはしたんだろうね?」


「必要ないよ。そもそも自家製だなんて思わないだろうし、俺のこの出で立ちだろう?異国人がたまたま持ってたとかって思ってくれるさ。それに、もし何かしら勘繰られても痛くもかゆくもないしな。」


「そういうことかい。確かに、仮に自作してるってことがバレでもしたとしてもそれを言いふらすことも(はばか)られるようなご時世だしね。私みたいに根城があるのとはわけが違うってわけかい。」


「そういうこと。」


「えっと、どういうことなの?」


「ん?そっか、テトたちにちゃんと説明してないのは良くないな。ん~っと、あまり遅くなるのもアレだし歩きながら話すか。マーグル婆さん、今日はずっと家にいるの?」


「あぁ、今日は特に予定なんかありゃしないさね。用意はしておくから、さっさと行っておいで。」


婆さんからのGOサインが出たのでさっさと採集へ向かうとしよう。道すがらテトにゃんたちには説明をしておいた。

もし『城壁の矛』の連中が俺達の自作に気付いたとしても、大きな声でそれを言いふらすことができない最大の理由は、お貴族様だ。

俺が製法を知っていても、俺がポーションを大量に保有していても、俺が秘密裏にポーションを仕入れることができるとしても、とにかくお貴族様に情報が流れるのはマズい。

何がマズいかというと、お貴族様にバレた時点で俺達はお貴族様に攫われるか強引に勧誘されるか、最悪殺されることになるだろう。そのどのルートを辿ろうとも『城壁の矛』の連中に利益はない。

まぁ、若干の金銭的なプラスはあるかもしれないがその程度だ。それよりも、俺と仲良くなって極秘のままにポーションを融通してもらいたいと考えるだろうし、そもそも現在は償いの最中だ。

あのバルムさんは責任感強そうだから義を通そうとするだろうし、あの小ダヌキはバカだから何か言っても誰もロクに相手にしないだろう。つまりはそこまでリスクは高くない(危ない橋じゃない)ってことだ。

それに、1番高い可能性で言っちゃえば、俺が異国から来る際にたまたま持ち合わせがあった説を推してくるだろうからそもそもの問題が発生しない確率がナンバーワンだったりするし。


「ってことなんだ。だから特に危険じゃないからいいかなって。」


「そうなの。不思議に思ってたのがわかってスッキリしたの。」


不思議に思ってたのに話しの流れ上大人しくしていてくれたらしい。やだ、なにこの娘かしこかわいいんですけどー?


「テト、不思議に思ったことがあれば聞いてくれ。話しの流れとかもあんま気にしなくていい。だってテトの方が大事だし。」


まだまだ痛む手だが、テトにゃんの頭を優しく撫でる。ちゃんと疑問を持てることはいいことだ。それを、より深く考えることができればなおいいと思う。


「わかったの。わからないことは聞くようにするの。でも、話しの流れは・・・ちょっと切りづらいの。」


「そうか?それなら自分のタイミングで聞いてくれればいいからね。ニコもだよ。遠慮なんかしなくていいんだから、もっと伸び伸びとするといいよ!」


2人に我が家の教育方針を示す。こういうのはちゃんと言っておかないと、後になって溝になりかねないからしっかりしておかないとだ。

雑談をしているうちにいつも目印にしている大岩へと到着。軽くお昼を済ませ、先日と同様森へ向かって左方面。つまりは北の方向へしゅっぱーつ。

この前この辺りの素材は根こそぎ採っちゃったから少し遠出も覚悟しておかねばと思いつつ歩くが、思えば俺のあんよが完治してるから気軽にサクサク進める。しっかり歩けるって素晴らしい!


「んむ~、あの細い木の向こうに見えるのがそうかな?」


「うぅ~、全然見えないの。おかしいの。ウチは半獣人(ハーフ)だから普通の人間種(ヒューマン)よりずっと眼がいいハズなの。」


「いやいや、いちおうこれスキル使ってるし、種族的な問題とまた別だから。」


『視覚強化』はこれでも下級スキルだから、結構それなりのスキルだもん。身体能力だけで並ばれたら立つ瀬ないって。

それでもテトにゃんは必死に眼を凝らしている。ちょっとお顔つきが険しくなっているのでそろそろ止めた方がよさそうだ。変な癖ついちゃいそう。


「テト、ムリに見ようとしなくていいんだよ。もう少し近付いたら見えるようになるし。それに、いまはムリでも将来的に見えるようになる可能性だってあるんだから、焦ることないよ。テトがスキル取得するかもしれないだろ?」


「う~、そうかも、なの?」


納得と疑問の半々顔で小首を傾げるテトにゃん。上目遣いで攻撃力は更に倍ドンだ!せ、戦闘力が跳ね上がっただと?!状態ですねごちそうさまです。

ほどなく薬草の群生地へと辿り着き、採集を始めるってか始めてもらう。俺ってばなんか役立たずじゃね?とかツッコミは入れないように気を付ける。俺の心が可哀想だから。


《マスター。》


びくぅっ


もしかしたら役立たず宣言かもしれないという恐怖が俺を襲う!


《こちらの足跡をご覧ください。》


「足跡?この辺のこれとかか。なんか沢山あるけど、全部靴の跡だな。冒険者か?」


《はい、マスター。恐らくは5~6人程度の冒険者パーティーでしょう。目的は不明ですが、足跡から推測すると真新しいようですね。》


「最近になってこの辺りをうろついてる冒険者がいるってことか。こっちって不人気なんじゃないの?」


《はい、マスター。東の森は割のいい得物が少なく人気がありません。ですので、確率的に最も高いのは先日の《ピクシー・ゴブリン》の件の偵察ではないでしょうか?》


「あ~、そうえいばあったねそんなこと。ミレーさん?とかっていう人が討伐隊がどうのこうのって言ってた気がする。」


《女性の名前はしっかりと覚えているんですね、マスター。》


「いやいや、それなりにお話ししてるし、1回しか会ってないゼダールらへんと同じ括りに入れないでよ?あれは一瞬だったしのちのち会うこともないと思ってたから顔も名前も覚えらんなかっただけで・・・。」


薄ぼんやり覚えている限りでは、数VS数のガチンコ勝負をするって計画だったハズ。その前準備としてゴブの状況とか調べているんだろうが、まだこんな近くにいるの?あれから数日経ってるけどゴブもギルドものんびりやってるなー。

そんなどうでもいい感想とともに各種情報をテトにゃんとニコにも拡散していたら、森の奥からガサガサと近づいてくる複数の影があったとかなかったとか。

お読みいただきありがとうございます。

今回は怪我の修復?治療?は手早く進んだみたいで何よりです。まだ完治はしていないみたいですが。

怪我しまくり主人公の彼は、いったいどの方面を目指しているのでしょうか?グリッチ○とかイズ○君とか目指してますか?

ってネタが両方わかる人はなかなかも猛者認定ですw


次回予告。

ある日、森の中で

約束の時間

あ、足りないや

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