最近のテンプレとはちょっと違うけどやっぱりテンプレ
感想、レビュー、評価をいただきありがとうございます(*´∇`)
多分2名様がブクマ解除されて、新規の御方が2名来てくださったような気がいたします!ブクマ登録いただいた方の名前がわからないのは不便ですねぇ・・・。
新しくご登録いただいた方々、また、ご登録いただいている皆々様へ感謝の言葉と共に、本編第39話を投稿させていただきますー!
ありがとーございますー!!
また、いつの間にやら文字数が30万字を突破してしまっていました!いつの間に?!
まだまだ連載は続きますので、これからも皆様が楽しんでいっていただけると幸いです(*´∨`*)
前回のあらすじ。
暴力娘現る
今度は左手ぐっちゃぐちゃ
テトに無限の可能性を感じる
なんだかんだと思い返してみると、いつの間にか異世界生活も19日目に突入していた。つまり、俺は生後19日ということになる。
普通に考えれば生後間もない幼児なんだから、ベッドやらなんやらでオギャーオギャーと泣き叫ぶことが仕事なんだろう。だがしかし、俺はそんな生き方を許されてはいないのである。
初日にやらかして右腕を失い、左脚を壊された。その後、紆余曲折っぽい展開を過ごし、気付けば老婆とポーションを作っているという謎ぃシチュをエーションしたりした。いまや心のササクレみたいな思い出だ。
更にその後、2人の天使と出会い系・・・もとい、出会うと、悪徳モブキャラおっさんだと思われる奴隷商を言葉巧み?に説得して天使ゲッチューしたりした。
労働力兼心の癒しを手に入れた俺は、破竹の快進撃を繰り広げたつもりになって怒涛の収穫行為に明け暮れ再度ポーション作りに勤しんだ。
もちろん婆さんと2人きりなんて湿気たことは言わず、愛くるしい我が天使たちと共に作り上げたのは言うまでもない。俺の記憶の中では、婆さんがいたと思われる空間は軒並み空白か背景によって処理されているので、なんら問題は発生していない。
そうして出来上がった天使の雫石を服用することにより、俺様ミルミル超元気!なんか100倍!マソパソマソ的な!感じで細々した負傷などどこ吹く風と超回復を見せたのも束の間のできごとに成り果てる。
すぐさま暴力を振り回すことに悦びを覚える変態少女によって、俺の大切な1本しかないお手てこと左手をぶち壊された。俺の左手は幻想をぶち壊す前に、夢現のようなアホ展開と頭ワロス少女の右ストレートによって儚くも見事にぶち壊されたのだった。
さて、何故に俺はこんな回想のような思い出に浸っているかと言うと・・・答えはそう、夢の世界にダイブ中だからだ。
(カナデさんは、俺の大切なズボン下ろしたり上げたりってできる?)
《いいえ、マスター。カナデは物理干渉ができかねますので不可能です。》
(そう・・・だよね。)
時は早朝、場所は宿屋。寝起きの俺はすべきことを前にして、絶望を味わいながら打ち震えるしかできやしない無力な小鹿。いや、四肢が満足にある分小鹿の方が大分マシってなもんだろう。なんせ、なんせ俺は・・・。
(自分でトイレもできやしないのだから。)
《何をさも重大事項のように語りに浸っているのですか?マスター。両手が不自由なのですから、テトにゃんかニコにでも頼めばいいと思われますが?》
(そーゆーわけにはいかないのが人間なの!お年頃なの!うぐぅ・・・カナデさんってばこういう羞恥心的なのもあんまり理解してくれないんだからぁ!)
いちおう、人工知能的な存在だから仕方ないとは思う一方、それくらいは察してほしいと切に思ってしまう俺は贅沢なのだろうか?わかってくれとは言わないけれど、そんなに俺が悪いのか?なんかララバイな心がギザギザしちゃうっつーの。
その後、悪戦苦闘の大激戦で大熱戦が我が下半身付近で起こったとか起こらなかったとか・・・。結論だけいうとギリギリのところで俺はなんとか勝利した、とだけ言っておこう。できれば深くは聞かないでほしい。あと、便座は結構冷たかったとだけ付け加えておこう。
《マスター、その表現は非常に危ういです。壁や便座にズボンを押し付けながら脱いだり履いたりしたと、しっかりと言っておいた方が恐らくまだマシでしょう。》
(だぁーー!言わないでよ?!それだってなんか絵面的にすっごくイヤなんだから!ボヤかしとけばまだなんとかなるかもしれない可能性が微レ存じゃん!!)
《・・・乙女ですか?》
うぐぅっ!乙女発言はマジでいただけない!だって、最近わりかし洒落になってないんだからぁ!(涙目)
カナデさんとの朝の攻防を終え、身支度はテトにゃんに手伝ってもらう。ニコ的には身長も腕力も厳しいものがあるからね。仕方ないのだ。うん。
決して、着替えの手伝いをさせる名目でテトにゃんを間近で堪能しようとか、あわよくば密着しようだとか、そんなゲスな考えは持ち合わせてはいないのにゃん!
《ギルティー。》
ぐふぅっ。
着替えが済んだら次は治療です。実はちゃんと治療方針というか、治療の計画は立てておいたのだ。主に脳内でカナデさんと一緒に。
それによると、お手てはあとでマーグル婆さんと相談しながら治療するとしており、まずはほっぺたを治すべし!とある。
とりまベッドで横になって、患部を覆っていた布とかをぺりぺり剥がすとちょーいたい!!でも我慢の子なの!男の子だもん!!
「テト、この傷をしっかりとくっつけてもらっていい?」
「わかったの。少し難しいけどやってみるの。」
「ありがと・・・そう、裂けちゃってるとこをずれない様にぴったりと・・・できそう?」
「ん、こう?なの?ソウは痛くないの?だいじょうぶなの?」
「うん、へーきへーき。俺、痛いの結構耐えられる方だから。」
《それでしたら痛覚一部遮断をやめましょうか?マスター。》
(すんませんちょっと調子乗りました!続けて下さい!俺痛いのダメなんです!ムリなんです!)
ちょっと男前な自分を演出しようとしてみたら、カナデさんのご不興を買ってしまった。八方美人は難しい。
「これでいい・・・かななの。」
「んむ~、ありがと。じゃあニコ、ポーションを傷口にゆっくり垂らしてもらってもいいかな?」
「ん。」
ニコが垂らしてくれるポーションが患部へと当たると、また緑色の光の粒になって弾けていく。それを先日ゲットしたばかりのスキル『魔力把握』を混ぜ込んだいつもの探知系スキルと作業用スキルで捕まえる。
『魔力感知』と『気配知覚』のお馴染みコンビで全体像を捉え、『魔力把握』でポーションの回復用魔力を鷲掴み。『システム読解・構築』でどの魔力がどんな感じで利いているのかをざっくり探り、『精密作業』を併用しながら傷口に回復用の魔力を集中させる。
ここで、『HP回復強化(小)』も意識的に導入してもう頭の中はてんやわんやだけども頑張って総てを『並列作業』でまとめ上げるのをカナデさんと一緒に演算演算演算演算演算演算演算。
「んっ。全部。」
「ソウ、ニコがポーション終わったって言ってるの。多分?」
「お、そかそか。2人ともありがとね。これでかなり傷口治ったと思うんだけど、どうかな?」
「すごいの!もうすっかり傷口がないの!キレイになってるの!」
「ん!へーき!」
「マジか!できるかわかんなかったけど、やってみてよかった!成功だな!」
どうやら回復強化の試験は成功したご様子だ。思ったよりもずっと効果があったかもしれないくらいだ。2人も一緒に治療にあたれたことでご満悦なご様子。今日は幸先良いな!イイ日になりそうだ!
一通り準備が済んだら食堂へゴーするのだが、その食堂手前で珍客が待ち受けていた。できればもう2度とそのご尊顔を拝見したくはなかった存在がそこにはいた。折角上がったテンションもなんだかやる気を削がれましたとさ。トホホ。
「あぁ、ミリー某とやらとバルムさんじゃん。おはよー。お手ての治療、ありがとねー?お陰様で動かすことは全然まったくできやしない絶望のまにまにな気分な俺だけども、なんとか生活は送れてるっぽいよ。主にこの娘のお陰で。」
「そうかい。身の回りの世話をしてくれる子がいてよかったさ。昨晩部屋の前で別れた後にそれが気になっちまってたんだよ。」
「心配してくれてどーも。生活するって点ではまぁ、大分不自由ではあるもののなんとかやれてるよ。ほんっと不自由極まりないけどね。誰のせいとは言わないけども。」
流し目でチラチラ赤に近い茶髪娘を見る。気をつけの姿勢のまま俯いて、握り拳をプルプルさせているけどトイレでも我慢してるんだろうか?お前さんは両手共に健在なんだからさっさと行けばいいのに何してるん?
それにしても何故かこちらに来てから赤系と茶系の髪色を良くお見かけするが、何か意味があるのだろうか?リーフさんとかヒゲ男とかもそんな髪色だった気がするし。
「ほら、ミリー。アンタは言うことがあるだろ?早いとこ言っちまわないと、お嬢ちゃんの時間をムダにしてまた迷惑をかけちまうよ。」
「・・・ごめん、なさい。」(ぼそぼそ)
「はぁ、用件はそれだけ?それならどいてくれないかな?朝ごはんにしたいんだけどー。」
「そ、それだけってなっ?!」「ミリー、やめな。」
納得のいかないお顔全開で凄んでくるミリーとやらを、それよりも凄い表情で押し留めるバルムさん。マジ怖い。
「ミリー、アンタはまったく反省してやいないんだね。それがよくわかったよ。」
「ちょ、ちょっと待って!あたしはちゃんと反省してるし、謝ってるじゃない!こんな変なヤツにホントは頭なんか下げたくないのに!!」
おいちょっと待て。お前さん、いったいいつ頭を下げた?俯くのと頭下げるのは全然別物で無関係なの知らないのか?それとも、あのたった一言の「ごめんなさい」がお前的にはしっかりと謝罪したことになるのかと小一時間くらいお問い合わせしたい気分だ。
「・・・どうやら、あたしの教え方が悪かったようだね。お嬢ちゃん、これから朝食だろ?ちょっと一緒しても構わないかい?」
「んむ~、いいけど、これ以上の面倒事は勘弁で。」
「ははっ、痛いことを平気で言ってくるね。いいよ、そういうのってさ。」
軽口を叩きながら食堂へ入り、席へと座る。すると、脳筋娘は全然懲りてないようで、次々に問題ごとを起こしてきた。
やれ自分は悪くないだとか、俺が怪しいことしてただとか、怪我をしたのは俺が脆いだけで自分のせいじゃないだとか、よくもまぁそれだけの勢いで舌が回るもんだと感心する程だ。
一方で、バルムさんはもうその愚行を止めるでもなくただただ受け流している。眼の奥に決意の光が宿ってる気もするが、イヤなフラグを拾った気がしないでもない。
そもそもなんで食堂で能力の鍛錬なんかしてしまったのだろうか?思えばあれがフラグ発動のキーポイント的な位置づけだった気もする。でもスキル生えたし、やってることは間違っていないハズ。
もしかして、そういう面倒なイベントだったのだろうか。ゲームとかだとありがちな展開だけど、現実で体験はしたくなかったと俺の左のお手ては叫んでいる。
考えながらも食事を進め、テトにゃんからの「あ~ん」を心ゆくまで堪能する。ちょっと勢いが強い気もするけど、そこはそれ。その慣れていない感が初々しくてイイ感じもするのだ。ってどこのオヤジ発言だコレ・・・。
「ソウ、これで最後なの。はい、あ~んするの。」
真剣な眼差しってか、無表情なままメチャクチャ見開いたおめめが食い入るように俺のお口を見てる。超見られてる。猫が得物をすっごく見まくってる時の表情まんまのテトにゃん。可愛いんだけど、ちょっと狙われてる感があって怖くもあるよ?
「あ~ん。んぐんぐ。うん、いつもよりうまかった気がする!ありがとね、テト。」
「んふふ、どういたしましてなの。」
今後はさっきまでと真逆の笑顔。やり遂げた!って感じの清々しさと嬉しさでもういっぱいなの!って微笑みだ。なんなのこの娘、マジ可愛いんですけど!
「ニコもしっかり食べきったな。偉いぞーニコ―!」
「んっ。いっぱい。」
「そろそろいいかい?」
楽しい朝食を終え、席を立とうとしたのにバルムさんから待ったがかかった。おっふ、これから面倒事か?
「そろそろって?まだ何か用あったっけ?」
「あぁ、こういうことはあとになって禍根を残さないようにきっちりしておかないと気が済まなくてね。悪いけど、この子の処遇を決めてもらってもいいかい?」
「ソイツの?それはまた、めんどくさい案件だな。」
バルムさんの横で「えっ?!なんで?!」みたいな顔芸を披露しているミリーとやらは、この事態を全く理解していない。いや、できていないのだろう。じゃないとそんなアホの子みたいな表情出てこないもん。
「とりあえず、冒険者資格は剥奪、全財産の没収、それから、一定期間の奉仕活動。もちろん、あたしのパーティーメンバーから出た不始末だからね。ミリーだけとは言わない。あたしも一緒に罪を償うつもりだ。これくらいで手を打っちゃくれないかい?」
「うえ~なにそれメンドー。重いし要らないし必要ないんだけどなー。なんなの?それくらいしないと捕まって奴隷行きなの?」
「あぁ、ミリーがしたことはそれくらいに重いことだからね。なんの罪のない一般人をいきなり殺そうとしたんだ。普通なら投獄されて選択肢なんかないまま犯罪奴隷行きさ。」
「普通なら、ね。」
「そう、普通ならだよ。少なくとも、殺されそうな目に遭った上にそこまでの大怪我を負わされてるんだ。アンタが憲兵なりギルドなりに訴え出ればそれだけでこの子はお縄さ。」
バルムさんはミリーの頭をポンポンと叩きながら苦笑している。その話しならバルムさんはせいぜい監督不行き届き程度なんだから、大した罰は受けないで済むんだろうに。なんでこんな脳筋の面倒を見ているんだか。
「そんなっ!あ、あたしが殴ったから?あたしが殴ろうとしたからってバルムさんまでそんなことに・・・。でもだって!誰も死んでないしコイツだってピンピンしてるんだよ?!なのになんでこんなことになるの??!」
「すげーなお前。この状況でもまだそんなこと言えるのか。マジ関心するよ。うん。」
「当たり前じゃない!だって、あたし悪くないもん!!」
言い切ったよ。マジでこいつの頭どうなってんの?ガチで引くんですけど・・・。
「あのさ、ミリーだっけ?お前さ、冒険者やってんだろ?じゃあ、普段モンスター殺すときってどうやってんの?」
「えっ?そんなの決まってるじゃない!こう、剣で切ったり、殴ったり蹴ったりよ!それがどうしたっていうの?」
「説明の仕方まで頭ワロすな。まぁいいや。つまりは、武器で殺したり肉弾戦で殺したりするってことだろ?」
「だからそうだって言ってるじゃない!」
「うん、だからさ、そのモンスターも殺せるお手てで人を殴ったら簡単に殺せるってわかるだろ?」
「えっ・・・?」
「はっ?」
「そ、そう・・・なの?」
「当たり前だろ。」
えっ?なにその意外過ぎる!って顔??もしかしてそんなこともわかってなかったの?どんだけバカなの?死ぬの?
「ミリー・・・アンタ、そんなこともわかってなかったのかい?」
「だ、だって、だってバルムさん!あ、あたし、1年前までそんな・・・こんなに力が強くなってるなんて思ってなかった・・・思ってなかったんだもん!!」
救いようのないおバカ様がご降臨された瞬間だった。てか猛獣?なんでこんなのが放し飼いにされてんの?この街の治安は大丈夫なんですか?いえ、ダメでしょう。(反語)
いちおう、ミリーの事情聴取が行われたが、その内容は本当に驚きに溢れガクブルな内容だった。
なんでも、ミリーが冒険者になったのは丁度1年程前。まだ14歳だったが、男勝りの暴れん坊だったので周囲の勧めもあってギルドへ入会。すぐにバルムさんと知り合いパーティーメンバーへ加入。
チーム内のレベル差もあり、狩る対象のモンスターもそれなりのレベルだった。つまりは急速にミリーのレベルは上がっていったと。
そして、バルムさんのパーティーはその名も『城壁の矛』といい、この界隈じゃ結構な有名どころらしくその加入にはとある制限もかけられているとのこと。それは、
「『魔硬』ができること?」
「そうさ。あたしらのパーティーはいまのところ全部で11人いるんだけどね、その全員がスキル『魔硬』を習得しているのさ。」
とのことらしい。ちなみにその『魔硬』とやらはスキル一覧表の説明文によれば、自身・または周囲の魔力を身体の一部へ集約して攻撃力を大幅に上げる技法なんだってさ。つまりは、アレだね。某狩人さん必須の技能の内の1つだね。
特に主人公の怒髪天スタイルの誰かを殴った時の音みたいな名前の少年は、それを昇華させて当たれば殺せるグーパンチを開発していたような気がする。
って、それってば俺が同等の能力で防御しないと、極寒の中に裸でいるとかってアレじゃないですかーヤダーもー寒いのきらーい。なんて言ってる場合か?!
「・・・それってさ、一般人が受けたらなんの抵抗もできずに弾け飛ぶヤツだよね?」
「おや、良く知ってるね。その通りだよ。流石に鎧を着ていたらそうはならないけどね。」
「アホか!!なんでこんな脳筋ノータリンほわほわ系導火線娘にそんなあっぶない技法持たせてるんだよ!ただの殺戮者じゃん?!」
「なっ!なにもそこまでいうことないじゃない!!」
「いいや!言うね!声を大にして高らかに宣言するね!!お前もう少し自分の手にした力を考えろよ!なんで思うが儘に使うんだよ!そんなに人を殺したいのか?!」
「な・・・なにもそんなに言うこと・・・ない、じゃない・・・。」
ええぇぇぇ?なになに?なんで?なんで泣くの?急に泣くとかマジ怖いんですけどー。マジ勘弁なんですけどー?
《マスター、相手は知能指数が著しく低い猿のような生命体ですよ?かろうじて言語が理解できる程度だと認識すれば、自ずと園児辺りと接していると思えるのではないでしょうか?》
(えっ、ちょっと待って?カナデさんって園児をそんな風に思ってたの?ヤダナニソレモコワインデスケド・・・。)
不意に訪れ急激に拡大していく混沌な空気感にまったくもってついていけないいたいけな0歳な私。なんだろう、人生経験が足りてないのかな?どうしたらいいんだろう。
とりまバルムさんと2人してミリーを慰め、場所を移動することに決めた。だって、なんか居づらかった雰囲気だったし。
「てかぶっちゃけて言うとさ、今回のことはマジ許せることじゃないけどそれとは別として、アンタらのこと特に奴隷に欲しいとも思ってないしアンタらが冒険者辞めようがどうしようがどうでもいいんだけど。」
「じゃ、じゃあ・・・あたしはやっぱり奴隷として・・・。」
「急にしおしおすんなよ気持ち悪い。別に憲兵に付き出したりもしないからさ、代わりに1つ『城壁の矛』さん達にお願いしたいことがあるんだけどいいかな?」
「お願いってことは、今回の落としどころを決めてくれるのかい?」
「うん。ちょっと欲しいものがあってさー。それ採ってきてくれたら今回の件はチャラってことで手を打たない?」
「・・・それは、こっちとしてはありがたいけど、どんなものだい?いまのこのご時世だからね、ポーション以外なら大抵のものは揃えられる自信はあるよ。」
「それは重畳。ならさ、できれば3つ、最悪1つでもいいからこれって採ってこれない?」
俺がバルムさんに提示したのは、火色蜥蜴の尻尾、アボの実の油、魔輝の結石。つまりは火傷用の中級ポーションの材料だ。きっと知られてないからへーきだろ。うん。
「・・・これはまた、厄介なモンを提示してくれるね。」
「んむ~、ムリそう?ムリならまた別のこと考えるけども。」
「いや、やらせておくれ。確かにこれくらいの危険を伴う依頼くらいが、今回の落とし前には丁度良いのかもしれないさね。」
「え~っと、頼んでおいてあれだけど、あんまムリされてパーティーの誰それが死んじゃったーとかは聞きたくないんだけど、大丈夫なの?」
「あぁ、問題ないね!この依頼、あたしら『城壁の矛』に任された!ちなみに期日はあるかい?なければ余裕を持って・・・10、いや、14日くらいは見ておいて欲しいもんだが。」
「それなりに遠いかんね~って、場所とかわかるの?具体的な日数出てきたけど。」
「全部はわからないね。だから、その情報収集も含めての時間さ。いまの所わかるのはこのアボの実ってヤツだけだね。前にクエストで採りに行ったことがある。」
「ふむふむ、それなら・・・。」
バルムさん達が情報収集するにしても、それなりに時間もかかるだろうしその情報の精度も不明だ。だから、カナデさん情報で良さげな場所やその対処・採集方法まで伝授してあげた。そして驚かれた。
「ず、随分と物知りなんだね。お嬢ちゃん。」
「あ、そういえば名前まだ名乗ってなかったっけ?俺はソウ。こっちは俺の妹達で、テトとニコ。よろしくね。」
「テトなの。よろしくなの。」
「ん。ニコ。」
「あぁ、よろしくね、お嬢ちゃんたち。あたしはバルムってもんだ。ほら、ミリーも挨拶しなって。」
「う、うん。あ、あたし、あたしは、ミリアリア。みんなはミリーって呼ぶわ。よろしくね。」
「ところでソウ。さっきの情報の詳しい話しをもう一度うちのメンバーに話してもらってもいいかい?小難しいことを考える担当がいるんだよ。あたしじゃ覚えきれてるか不安でねぇ。」
「んー、それくらいならいいよ。ただ、これから出掛けるからさー夜でもいい?バルムさん達も同じ宿に泊まってるんでしょ?」
「連れてきたいのは男だけど、食堂でなら問題ない・・・か。それじゃ悪いけど今晩お願いするよ。あたしらはいまからメンバー集めて出発の準備でも整えておくさ。」
「あ、それならこれ持ってきなよ。」
なんか大変そうな旅路になりそうな雰囲気だしてくるから、ポーションを2つだけ渡すことにする。これで残りはラスト1本である。
「こ、こいつは・・・?」
「ん?ポーションだけど?なんか、それなりに遠いとこ言ってもらうし何かあったらイヤじゃん?だから保険的な感じで持っていってよ。」
「そんな、アンタはいま酷い怪我してるってのに、償いの為に採集へ行くあたしらにこんなもんを・・・?」
「ん?いや、俺の怪我はゆっくり治すからいんだよ。でも、バルムさん達はこれから危ないとこ行くでしょ?その違いだよ。」
「・・・わかった。ここでアレコレ言うのは野暮ってもんだね。このポーション、預からせてもらうよ。」
んむ~、預けるんじゃなくてあげたつもりだったんだが。言葉って難しいな?その後、一緒にギルドへ行ってこの依頼を正式に立ててもらった。
なんでそんな面倒なことをするかというと、もしも遭難したりクエスト失敗と判断された時には救援が手配されるからだ。
彼女たちのパーティー『城壁の矛』は現在パーティーランクがC。この街の貴重な戦力の一端だ。また、メンバーの全員が戦闘系スキル持ちで構成させていることもあり、メンバーのランクも高めだったりする。
バルムさんがCランクで、他はほとんどがDランク。後方支援のメンバーがいるらしく、その人だけEランクらしいが、ちゃんと『魔硬』持ちだってさ。徹底している。
「そういえば、他のメンバーの了承を得ることなくトントンとお話し進めちゃってるけど大丈夫なの?」
「そういえばいってなかったっけね。『城壁の矛』のリーダーはあたしだ。だから、大体の事柄の決定権はあたしにあるんだよ。」ゴンッ
バルムさんが板金鎧越しに胸を叩い音が響く。鈍い音してるけど、どんだけ厚い金属使ってんすか?
「そうなのか。それならパーティー内での揉め事はなさそうかな。別に期日とかいう気はないから、安全第一でお願いね。」
「あぁ、この依頼は『城壁の矛』が必ず完遂させてみせよう。」
・・・格好いい風に締めようとしてるけど、罰ゲームのお使いみたいなもんなんですけど。本人がやる気なら別にいいんですけどね。うん。
どうせまた夜に会うからと、さっぱりわかれて用事を済ませようとしていたところ、見知った顔からお声がかかった。
「おーい!嬢ちゃん!いい加減荷車持って行っちまってくれねぇかー?」
遠く向こうの方から腕毛が何かをわめいているが、正直ムシしたい。だって、あれ重いし停めるとこないから邪魔なんだもん。
しかし、ここでスルーというのはどうだろう?確実に腕毛の声を捉えているテトにゃんイヤーがピクピク動いてるご様子からも、シカトという選択肢は取り辛い。だって、ムシとか教育に悪いじゃない?
こちらをしきりにチラチラ見てくるテトにゃんからは逃れられないので、他に選択肢がない。仕方がないから受け取りに向かうとするか。
「この荷車ってずっとここに置いとけないの?」
「バカ言うなよ。こんなもんいちいち預かってたらすぐに解体所が埋まっちまうわ。」
「あ~、それもそうか。ここって汚くてモノがゴチャゴチャしてて狭っくるしいもん。元々の広さはあるのに勿体無いよね。」
「好き勝手言ってくれるじゃねぇか。だがまぁ、その通りなんだがよ。ここには余計なモノが多すぎらぁな。」
腕毛が言うに、解体スペースを圧迫している1番の原因はモンスターの要らない部分なんだと。というのも、素材をキチンと剥いでこられる冒険者ばかりならいいが、どこが必要かわからずにそのまま倒したモンスターを担いでくるタイプも意外と多いらしいとのこと。
それなんて筋肉?この世界には脳筋が多すぎてイヤになるわぁ~。それに、モンスターの死骸は基本的には焼却処分しなきゃいけないから、その費用もバカにならないし何より邪魔で臭いんだって。知らんがな。
「なんてことだ。思った以上にここは不衛生だな。こんな汚らしくも非常識な所に長居は無用。テト、ニコ、そろそろ行こう。」
「うんなの。」「ん。」
幸いなことに、モンスターの死骸にはハエはたかりづらいらしく、絵的にはそこまでのグロさを感じることなくその場を後にできた。のちに聞いた話しでは、腐臭を防ぐための不思議な粉が撒かれているそうだ。なんでそんなとこだけ拘ってるのか意味ぷーだった。
お読みいただきありがとうございます。
誤字脱字・設定間違いなどのご指摘をいまかいまかと首を長くしながらお待ちしておりますので、見つけられた方は是非ともご一報いただきますようお願いいたします。
最近、PCとスマートフォンの両方を使って書いているのですが、変換がうまくいってないことホント増えてるんです。ごめんなさい気をつけます・・・。
次回予告
飛び出た骨の治し方
手馴れるほどにルーチン化
新キャラ登場の予感




