閑話 とある防具屋のお話し。
昨日本編の投稿をした時点でのブクマ登録者様が24名様。
そして、いま確認した時点でのブクマ登録者様が30名様。
・・・マジですか?
あまりの衝撃に更新ボタンを連打してしまったのは当たり前の所業なので言うまでもないのですが、1度スマホの電源落とし上げしたのもまぁ当たり前、ですよね??
なんでこんなに急に?!∑(○□○ )
お手てが震えてしかたありませんが、嬉しいので感謝の想いを叫びたいと思います。
ありがとうございます!
リアル世界では私の叫び声が轟いていることを追記しておきます。
文字に起こすとキリがないので!(ヒャッハーッ)
されさて、そんな状況?ですが今回も唐突に閑話が入っちゃいますごめんなさい。
本編は明日投稿します。
想君の立ち寄った防具屋のお話です。
僕の名前はビルダー。街の馴染みは気軽にビルって呼んでくれる。
しがない防具屋の店主だ。
元々僕の父さんが猟師をやっていて、僕は父さんの獲ってきてくれる皮を鞣して商売をしていた。
僕が子供の頃、まだ革師を始める前は父さんの皮はあまり善くない行商人に安く買い叩かれていた。
あの頃の生活は、決して楽なものじゃなかった。
でも、僕が革職人へ弟子入りしてから生活は随分とよくなった。
父さんの皮を適正な価格で引き取ってもらえるようになったし、少ないながら僕も店番などで給金を得ていたからだ。
でも、ある日僕の師匠はお偉い貴族様に目をつけられて連れていかれてしまった。
当時の僕はまだ幼い心持ちだったこともあって随分と憤っていたものだ。
それも父さんがうまく立ち直らせてくれたから、いま僕は街で革師をしていられる。
僕の腕はそんなによくなかったけど、父さんの獲ってきてくれる皮はいつも上質だった。
材質の、素材の良さだけで商売はうまく回っていた。
それから15年が経ち、僕は33になった。
父さんは54。もうすぐ55といった時だった。
正直な話し、僕は父さんにそろそろ猟師を引退してほしいと思っていた。
年齢のこともそうだけど、男手ひとつで僕を育ててくれたんだから、少しはゆっくりしてほしかった。
それなりに蓄えもできてきていたし、馴染みのお客さんも増えていた。
父さんと2人、生活していくくらいはできるつもりでいた。
そんなある日、父さんは街の騎士団の要請を受けて森を案内することになった。
森の奥から大型の魔物が出てきてしまったからだ。
普段は森の深部にいるソイツは、何を思ったのか森の比較的浅いところを寝床に決めてしまったらしい。
餌が不足していたのか、より強い魔物が生まれてしまって逃げてきたのかわからなかったが、早々に退治してしまわないと危険だという理由だったと思う。
そして、父さんは騎士団をしっかりと先導してみせた。
そればかりか、父さんは魔物を罠と機転で誘きだし、森の中でも比較的開けた場所へと連れ出して騎士団に有利な状況を作り出したらしい。
騎士団は普段森へ入らない。
彼らの戦場は専ら平地だ。
だからこそ父さんは彼らのために頑張った。
父さんは優秀な狩人だと聞いていたし、いつも持ち帰る皮も立派な物が多かった。
でも、正直そんなことができるような人だとは思ってなかった。
だって、家では寡黙であまり狩りの話をしてくれなかったし、商人を相手にしたらいつも弱腰の劣勢だった。
僕は母さんをあまり覚えていないけど、母さんにも頭が上がらなかったらしいから、この評価も仕方ないんじゃないかと思う。
そして、父さんの活躍もあって被害少なく魔物を退治できた。
その功績を称えて、討伐した魔物の皮を貰うことができたし、立派なお墓も作ってもらえた。
僕の自慢の父さんが眠るお墓は、僕ら平民が眠るには立派すぎるくらいだったから、多分父さんは居心地が悪いとぼやいていそうだ。
そして、更に月日は流れ、僕は43になった。
それなりにお店はうまく回っている。
猟師の皆は父さんにお世話になったからって言って、いつも良質な素材を回してくれたし、馴染みのお客さんも沢山増えた。
金属製の防具も仕入れているから、冒険者や傭兵、騎士団の人達もよく利用してくれている。
比較的忙しい毎日だったけど、この日は少し違った。
朝から来客がなく、昼時くらいになってようやく訪れたお客さんは黒髪黒目の少女だった。
僕はひょろ長いとよく言われているが、彼女も同じように細く、背丈もあった。
流石に僕よりは頭ひとつくらい低いけれど、女性にしては高い方だと思った。
艶やかな黒髪を腰の辺りまで伸ばし、前髪は右側だけが短く切り揃えられている。
それは、酷い火傷の部分をあえて出しているかのようで、彼女の心の強さを現しているようだと思った。
右腕は二の腕の半ばから失くしていて、左足も引きずっている様子からこちらも恐らく怪我をしているんだろう。
それなのに、彼女は一切の憂いがない表情で店内を見て回っている。
ツラい想いも大変な目にもあっているだろうに、そんな空気は全然感じられない。
暫くすると、彼女は僕に話しかけてきた。
「こんにちわー。今日は自分用の防具を見繕うと思ってきたんだけど、金属製品はどうにも重くてダメっぽいんだ。
ハードレザーとか革だけで、ある程度身を守れる装備とかってないかな?」
気さくに話しかけてくるが、内容があまり入ってこなかった。
だって、あまりにも澄んだ声で驚いたから。
それは昔、猟師のおじさんが言っていた言葉を思い出したくらいだ。
「森の中には妖精がいて、キレイな女の声で俺ら猟師を惑わすんだ。
いいか、ビル坊?声がキレイな女には気を付けるんだぞ?
ソイツは妖精かもしれん。
気を許したら森の奥へ連れてかれて喰われちまうぞ?」
確か、僕がまだ10歳くらいの時だったと思う。
今にして思えば、子供に聞かせる類いの作り話でしかないモノ。
なんで急にこんな話を思い出したのか。いや、彼女の声が原因なのはわかっているんだけど。
「え~っと、革装備だったらこっちの方にハードレザーのアーマータイプやベストタイプ、胸当てだけのタイプと、金属のプレートを組み合わせたタイプのものが・・・。」
「あ~、プレート入ってるのがホントは欲しいんだけどさ、見ての通りこの足だから重いのキツいんだよねー。
だからさ、革鎧系だけ試させてもらえないかな?」
彼女は言うが、革鎧とはいえそれなりに重いし、華奢な彼女が片腕で試着するのは難儀だろうと思う。
見ればギルドカードも最低のFランクだし、レベルも高くなさそうだから筋力もそんなにないだろうと思う。
「えー、一応試着は好きにしてもらってるんだけど、その、えっと・・・」
「あぁ~、この腕?確かに片手じゃキツそうだなー。悪いけど、手伝ってくれない?」
彼女は言う。
それってつまり、彼女の着替えを手伝うわけで。
いままでそういった手伝いをしたことがないわけじゃないけれど、普段とはちょっと違うっていうか、なんていうか。
言い淀んでいると、彼女はとても申し訳なさそうな顔で続けた。
「いや、なんかごめんね?ムリ言っちゃったかな。ちょっとキツいけど多分大丈夫だから自分でやってみるよ。うん。」
「いや、そうじゃなくって、別にムリとかイヤとかそうじゃなくって、むしろ今は暇っていうか、丁度手が空いてるといいますか、むしろ手伝わせてほしいというかなんというか・・・。」
「え~っと?良いってことかな?それならそれで助かるんだけど?」
「うん、うん!大丈夫!時間あるし、是非とも手伝わせてください!」
・・・正直この時は気が張っていて何を言ったか覚えていない。
その後、いくつかの鎧の試着を手伝ったけど、その間のことも良く覚えていない。
とてもいい匂いが・・・いや、ダメだ。
それはいけないと思う。ダメな気がする。うん。
髪が蕩けるようで、とても長いのに重さを感じない。
革鎧の内側へ入らないように押さえて持った時には、しっかりと持てているのか不安になったし、その髪の下に隠されていたうなじがとても白くて滑らかな肌がキレイで・・・ってこれもダメだ。
その後、彼女はその慎ましやかな胸部をしっかりと守れる胸当てを選んだ。
軽いし動きやすいしちょうどイイという。
また、しっかりとした造りの外套と、扱いやすい革靴が欲しいと言ってきたので、僕は悩んだ。
たっぷり時間をかけて悩んだ末に、父さんが遺してくれたあの魔物の皮を使った外套を渡した。
革靴もここ最近では1番の出来の、靴ずれを起こしにくくなるように工夫を凝らしたモノを勧めた。
彼女はそれらを気に入ってくれたようで、すぐに納得してくれた。
非常に嬉しい気持ちになったので、胸当てと革靴は原価ギリギリの価格にしてしまった。
加工賃分の赤字で、手入れ用の道具なんて完全に足が出ていたけど、そんなことも全然気にならなかった。
父さんの遺してくれた皮で作った外套も、僕の作れたものの中で最高の出来栄えで、不思議と傷みもしないし汚れもつかない品だった。
これに至っては赤字どころか散財だ。
それでも僕は満足していた。
だって、コレから恐らく冒険者として街の外へ行ってしまう彼女を守るための装備になるんだから、これほど嬉しいことは他にないとさえ思った。
もちろん、彼女が危険な目に遭わないように街の中にいてくれるのが1番だけど、きっと外へ行くのは彼女の意思だから。
防具を選ぶ真剣な眼差しが、彼女の潤んだように見えるその瞳の輝きが、僕にはそう見えたから僕は彼女の考えを尊重しようと思う。
「道具の使い方はさっき説明した通りにしてくれたら大丈夫だから、しっかりと手入れをしてくれると嬉しいな。
あ、ああ、あと、その、わ、わからないこととか、困ったことがあったらすぐに僕の元へき、来てほしい。
これでも長くここで店を構えているからね。相談くらいには乗れるかもしれないし。」
なんとか絞り出した僕の言葉に、弾けるような笑顔を魅せてくれた彼女は言った。
「うん、ありがと!何か困ったことがあったら寄らせてもらうよ!
この街の知り合いとか全然いなかったから、めっさ助かる!今日はありがとね!」
あまりの眩さに、僕は無言で手を振り返すしかできなかった。
きっと、この時にはもう・・・。
ビルダーさんのお話でした。




