閑話 とある武器屋のお話し。
第3者的な、サイドストーリーをちょこちょこ書いてみようと思ってます。
ただ、本編の流れが半端な所なので、あとで話数調整します!
世間様は3連休の中、お仕事真っ只中なので時間ががががが、な状況だったのでっていう言い訳をしてみます!
あとあと、ブクマ登録者様が急にお2人も増えてまして、とてもびっくりしたのと、嬉しいのでワタワタしてます(*´∇`)
ありがとうございます!
想君の立ち寄った武器屋のお話しです。
俺の名はマーシャル。
このメタリカーナの街で、鍛治の真似事を始めてから今日で22年。
8つの時から丁稚奉公してたから、既に30になる。
たまたま叔父が鍛冶師なんかしてたから弟子入りして鎚を振い続けてきたが、大してうだつの上がらねぇままこんな歳になっちまった。
そして、20年修行を続けてようやく合格を貰ってこうして店を構えちゃいるが、その合格さえ2年前程前になってやっとこもらったもんだ。
20年修行してやっと。
つまりはまぁ、俺の腕なんざそんな程度のもんってなもんだ。
この街の中でも良く言って中堅どころ。
普通に言っちまったら下から数えた方が早いかもしれねぇ。
自分のことながら情けねぇがな。
だからか知らねぇが、俺の店には冒険者連中の若いのや傭兵崩れなんかがよく来やがる。
連中は大半が野郎で、ムサいのバッカだしお世辞にも柄がいいとは言えやしねぇ。
ま、その点は俺も奴等と大差ねぇ自覚はあらぁ。
今日も代わり映えしねぇいつもの1日になる。
そんな刺激も何もない、繰り返しのような毎日がやって来る。
朝時が過ぎる頃までは、いつものようにただそう思っていた。
「なぁ、おっちゃん。
なんかこうさ、俺に合いそうな武器見繕ってくんない?」
細い鉄が響くような、やもすれば聴き逃しちまいそうなほど高い声に驚いて顔を振り上げる。
見ればいつの間に店に入ってきていたのか、線の細いお嬢ちゃんが立っていた。
見るからに異国人。
しかも訳ありに違いない。
町人風の仕立ての服を着てるが、ありゃあそれなりに上等もんだ。
小綺麗でこざっぱり。
色合いこそ地味にしてるが目立った汚れひとつとない。
お貴族様や、それなりに金を持ったヤツらに仕えてる類いの連中がお忍びのツモリで着てる服にそっくりだ。
背丈は俺と大差ねぇくらいだからそれなりだ。
ただ、この辺じゃ珍しい黒髪黒目。
ただし隻眼。
顔の右っ側はひどい火傷を負っていて眼も開いてねぇ。
でも、だ。
反対の顔は幼いながらもハッと息を飲む程に整っている。
変な言い方かもしれねぇが、キレイに整いすぎた顔をしている。
そんな風に思っちまった。
コレはどうしたって訳ありだ。
いま並べ立てたことだけでも十分すぎる悩みのネタなのに、更に隻腕で脚を引き摺ってまでいやがる。
こいつは下手したら、上流階級のところから逃げてきたのか、捨てられてきたのかもしれねぇ。
顔立ちの良さから拐われたか、売られてきたのかもしれねぇ。
そんな自分の境遇をどうにかしようと自ら顔を焼いたとか、悪趣味な拷問まがいな行為に無理矢理付き合わされたが見映えが悪くなったから捨てられただとか、考えられるもんはいくらでもある。
何よりも、そう考える決め手になるのがお嬢ちゃんの首からぶら下がってる冒険者ギルド員証明板だ。
色から見て、最低のFランク。
ってことは冒険者に成り立てだ。
なのにあの怪我ってことは、アレはどう考えてもここいら辺りのモンスターとの戦闘で負うような怪我じゃねぇ。
逆にランクが高けりゃ、過酷なダンジョンや秘境にでもいきゃ負うかもしれないっつーくらいに酷いモンだからだ。
そんな怪我を負った年若いっつーか幼いお嬢ちゃんが、生活のためにか、故郷に帰るためにか知らねぇが冒険者になる。
有り得ない話じゃないだろう。
何より、こんな格好じゃ反貴族の連中に絡まれたり
「お~い、おっちゃーん?
おっちゃーん?
聞こえてる?
俺の声ちゃんと届いてるかー?
俺ちゃんとココにいるよー。
無視しないでー?」
「お、おお。
悪い、ちょっと考え込んじまってたな。
それでなんだ、あんたに似合いの武器だったな。
ちょっと待ってろ。」
おっといけねぇ。
つい考え込むばかりに呆けちまってたな。
しかし、このお嬢ちゃんに似合いの武器、か。
こいつは難問だな。
どう見ても線が細くて力があるようには見えない。
しかも隻腕だ。
となるとロングソードはもとよりショートソードも厳しいだろう。
だが、魔物の蔓延る街の外を彷徨くの、にナイフや短剣じゃぁそれだって無茶ってもんだろう。
軽い武器にはすばしっこさが必要だ。
だが、お嬢ちゃんは脚も悪いときたもんだ。
これにはいくらなんでも、頭の悪い俺には解けない問題、ってなもんだ。
軽くて丈夫で、それなりの長柄なんざ短槍くらいなもんだがそれも隻腕じゃあ・・・って、そうか。
アレがあったな。
「お嬢ちゃん、ちょっと待ってな。」
いったん店奥に引っ込み、大事に閉まっておいたブツを取り出しカウンターに戻ると、店先においてある武器をお嬢ちゃんがまだ眺めていた。
「お嬢ちゃん、そこらのはお嬢ちゃんには無理だ。
悪いことは言わねぇ。
コイツを使いな。」
「コレは・・・。」
お嬢ちゃんに差し出したのはダガーとショートソードの合の子みたいな半端な剣だ。
ぶっちゃけちまうと、コイツが短いのは材料を買う金が足りなかったからだ。
コイツを打ってから早2年。
売る気なんざサラサラなかったが、いまとなっちゃまったく惜しくない。
むしろ、この日の為にとっておいたんじゃねぇかって気さえしてきやがる。
「少し長くない?このダガー?」
首を傾げ、警戒心のない呆けた面を見せるお嬢ちゃん。
やっぱ見るからに頼りねぇな。
「小娘にはそれが丁度いい程度だろう?
隻腕で、しかも刃物の扱いに不慣れと見える。
悪いことは言わない、それにしときな。」
「んむ~。ま、いっか。
じゃーこれちょーだい。」
「はいよ、銀貨2枚だな。」
値段を告げると、あからさまにびっくりしたって顔をしながら店先に転がってるロングソードと見比べ出した。
「言っておくが、そっちの数打ちの品と違って、こっちのダガーはしっかり造り込んである。
値段はその手間賃だ。」
適当なことを言ってコイツを押し付ける。
正直な話し、この半端な剣には数打ちのロングソード10本分程度の材料費がかかってる。
なぜなら、コイツはそこそこの質の鋼に黒鉄を混ぜた特別製だからだ。
そんな高ぇ素材を使ったのは、後にも先にも叔父に、お師匠に腕前を認めて貰うために打ったあの時限りだ。
強引に勧めると、見るからに渋々といった表情をしたお嬢ちゃんがやっと折れてくれた。
どうにも頼りない。
「オマケだ。」
ついでに剥ぎ取り用のナイフも渡す。
ロングダガーをなんでもかんでも使ってたら、いざって時役に立たないナマクラになっちまうかもしれねぇしな。
そして、納得いってなさそうなお嬢ちゃんにダメ押しの一言を加えとく。
「お前さん、冒険者だろ?それくらい持っときな。」
冒険者ならモンスターの素材を剥ぐのにナイフは必需品。
見たところ、これから装備を整える腹づもりなのも丸わかりだ。
伊達に長く武器屋にいるわけじゃねぇ。
修業時代を含めても、イヤって程に多くの冒険者を見てきたんだ。
間違いねぇ。
お嬢ちゃんはイカにもびっくりって顔をしつつも、ナイフを受け取った。
こういう時に遠慮しねぇのは評価できるが、果たしてこの先、このお嬢ちゃんは無事にやっていけるんだろうか?
・・・いや、十中八九ダメだろうな。
あんな身体で冒険者なんざ、普通に考えても自殺行為だ。
でも、きっとそれしか生活費を稼ぐアテがなかったんだろう。
「それにしても、なんでこんなに気になっちまうのかねぇ。」
願わくば、あのロングダガーがお嬢ちゃんを守ってくれることを。
ただそれだけを願って、今日も俺は鉄を打つ。
マーシャルさんのお話でした。




