19. ぼっちの出会い part4
久々の更新です。よろしくお願いします!
アイリスが渡してくれた服は、先と同じように上等な服だった。色や飾りなど多少の違いはあれど、着易く着心地の良いもの。ただ、先の服より少し生地が厚い気がする。アイリスの気遣いだろうか。なによりも大きな違いは。
「…下着がある」
今回ばかりは何も言わずに使わせて頂く。
二度と同じ恥だけはかくまい。固く誓って下着をつけた。
ボロボロの服を抱えて外に出ると、待っていたアイリスが凛を見てぱぁっと顔が明るくなった。
「良かった、似合います!」
「そう?ありがとう」
「その服、預かりますね」
「…どうするの?」
「服としてはもう使えないので…雑巾にしようかと」
「そんな勿体無い!」
慌ててアイリスの腕から服を取り返す。きょとんとしたアイリスに、凛は言った。
「大丈夫、私が直すから」
「直す…ですか?リン、魔法は知らないって仰っていませんでしたか?」
「いや魔法じゃなくて…まぁいいや、とにかく私が預かっておくから」
「は、はい」
不思議そうに首を傾げたアイリスにそう言って、大事に服をかかえる。
どうやらアイリスの辞書に裁縫という字はないらしい。
薄々感じてはいたことだが、アイリスはやはりお嬢様なのだろう。
たかが服に大きな穴があいてボロボロになったくらいで雑巾にするだなんて、それ以外考えられない。庶民なら布が擦り切れるまで使い倒すのが常ではないか。
そんなことを思いながらも皆のいる大部屋へと入った。
「お待たせしました」
「…お騒がせして、申し訳ありませんでした」
入るなり深々と頭を下げると、背の高い女性が親しみを感じさせるような笑みを浮かべて迎えてくれる。その笑顔にハッとした。
「なに、気にしなくてもいい。それより体はもう大丈夫?」
「あ、はい。アイリスが治してくれたので」
「そう、よかった。服もちょうどいいみたいね」
「はい。あの…広場では助けて頂いて、ありがとうございました」
そう。彼女は、ヒキガエルに絡まれた時に助けてくれた女性だったのだ。彼女がもう一人の仲間だったのか。さっきは混乱していたせいで気付かなかった。
「リン、リズにも会っていたのですか?」
「助けてって…他にも襲われてたの?」
驚いたようなアイリスの声と、それに重なる呆れたようなヴィオラの声。
「他にもって…そういえば、酷い怪我をしていたけれど。あの後もあいつに襲われたの!?」
「い、いえ、あれとはまた別の人間です」
「すまなかった。私が最後まで責任持って送って行くべきだった」
「いえ!あの時助けて頂いただけで、とても助かりました。それに、その後はヴィオラさんに助けて頂いたので」
「…結果的にはね。間に合ったとは言えないけれど」
肩をすくめたヴィオラに、ソファに座っていた男前が納得したようにぼそりと呟く。
「…ああ、それで尻が」
「…今すぐ忘れて下さい」
「す、すまない」
にっこりと微笑んだ凛に気おされたのか、男前がふいと視線をそらした。
ああ、今すぐ彼の脳から記憶を消去してしまいたい。
魔法が使えたらと今、初めて強く思った。
「そういえば、ジェリーも彼女のことを知っていたみたいだけど」
凛と男前との会話に、今気付いたようにリズが声をかける。
なんて答えたらいいものか。
間違っても町中を尻丸出し状態で闊歩して彼に指摘されたとは言いたくない。
答えに窮していると、男前が口を開いた。
「―たまたま、近くで会った。怪我をしていたみたいだったから、応急的にタオルを渡したんだ」
「そ、そう。お礼が遅くなりました。ありがとうございました」
「いや、構わない。リズじゃないが、俺も軽率だった。きちんと送っていくべきだったな」
さすが男前。思わず惚れてしまいそうだ、…彼にはいい迷惑だろうが。機転の利いた答えに感心していると、唖然としていたアイリスが我に返ったように叫んだ。
「というか、何回襲われているんですかっ!」
「え、えと2、いや3回…あ、あれ?4回だったかな?」
「よ、4回!?一体どうしてそんなことに…リン、ちゃんと説明して下さい!」
詰め寄るアイリスの迫力に、思わず後ずさりしてしまう。
こんなに怒ったアイリスは、初めて見た。しどろもどろになる凛とアイリスの傍から、柔らかな声が響いた。
「まあまあアイリス、落ち着いて。心配するのはわかるけど、彼女も大変だったんだし」
振り向くと、落ち着いた雰囲気の、穏やかそうな青年が見つめていた。
彼もアイリスの仲間だろうか。他のメンバーとは少し異なった服を着ている。
どちらかといえば、ローレン司祭の弟子と見まごうような…。
そういえば、仲間の中に“神官”と呼ばれる人がいると聞いていた。
薄茶の瞳に、栗色の少しウェーブがかった長髪を緩く束ねて、本らしきものを小脇に抱えている。男前と同じく身長は高いが、アイリスに諭すように話す物腰はあくまで柔らかく、人を安心させるような雰囲気だ。
優しそうな瞳が印象的で、品の良さを感じさせる。男前とはまた違ったタイプの美形だった。
「エルバート…。そう、ですね。…ごめんなさい、リン」
「ううん、私の方こそ心配かけてごめん。…ありがとう」
「リン…」
こんな風に心配してくれる人が今傍にいるということ。
それがどれだけ幸せなことなのか、きっと凛が一番よくわかっている。
うまく言葉にできないのはもどかしいけれど。
想いを伝えるようにそっとアイリスを引き寄せて頭を撫でると、アイリスは涙が滲んだ目元をそっと拭った。
やっと出会いがパートが終わった…




