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16. ぼっちの出会い part2

遅くなってすみません!

(っていうか、教会に向かってる?)


迷いのない歩調で教会へと進む女性に、凛ははたと気付いた。


(この人、ひょっとして―…)


教会にたどりつくと、扉を開けて振り向いた女性が微笑む。


「着いたわ。今、ここに泊まっているから」

「あ、あの、――ふぐっ!?」

「リン、お帰りなさい!」

「アイリス!?」


凛が口を開きかけた途端、飛び出してきたアイリスにタックルを喰らい、変な声が漏れた。凛に抱きつくように出てきたアイリスの姿に、妖艶な女性が驚いたように声を上げる。


「ヴィオラ!?」

「アイリス、貴女どうしてここに?」

「ヴィオラこそ、どうしてリンと一緒に?」

(やっぱり―…!)


驚いたように声を上げて顔を見合わせる二人。凛はアイリスに抱きつかれたままの体勢で、ふぅっと息をついた。唯一この場で事情を把握している凛に、アイリスが説明を求めるように凛を見上げる。


「リン、一体どういう――」

「えっとね、実はすぐそこで、」

「その顔、どうしたんですか!?」


話し出した途端に遮られた。凛の顔を見て、再び驚いた声を上げたアイリスが、慌てて凛の顔を覗き込む。

その視線が険しくなり、顔をよく見ようとしたアイリスの手が凛の首元を掴んだ。心配からかアイリスの手に力がこもっている。嬉しいが苦しい。目を白黒させていると、隣りから妖艶な女性が説明してくれた。


「そこで、変な男達にやられたのよ」

「ええっ!?」

「…アイリス、彼女、苦しそうだから放してあげたら?」

「あっ…ご、ごめんなさい、リン」

「い、いや大丈夫。心配してくれてありがとう」


多少せきこむ羽目になったが、この程度どうということもない。むしろ、こんな風に心配されることなんて滅多になかったことだから、正直嬉しかった。けれど、そんな気持ちもアイリスの泣きそうな顔を見ればあっという間に申し訳ない気持ちに変わる。


「男って…もしかして、彼らですか?」

「うん…。あ、でも大丈夫。彼女がすぐ助けてくれたから」

「ごめんなさい、リン。わたしのせいで…」

「アイリスのせいじゃないよ。そんな風に言わないで」

「でも…!」


今にも涙が零れそうになっているアイリスの目元をそっと拭う。

こんな風に自分の為に誰かが泣いてくれるなんて、ありがたいことかもしれないが、嬉しくはない。


「アイリスのせいじゃないよ。だから謝罪はいらない。それよりも、アイリスの笑顔が見たいな」

「リン…!」


そう言うと、ようやくアイリスは笑ってくれた。笑った瞬間に目じりから涙が零れ落ちるが、その程度はご愛嬌だ。落ち着いたアイリスをよしよしとなでていると、それまで黙って見ていた女性が口を開いた。


「とりあえず、部屋に行きましょう。その怪我の手当てもしないと」

「うん!――リン、部屋に戻りましょう!」

「うん」


返事をしつつ、あれっと思った。アイリスの言葉に、どことなく違和感を感じた。アイリスは、凛の片腕を両手で胸に抱きかかえるようにながら歩く。若干歩き辛くはあるが、まるで幼子が大事な物を守るようなアイリスの姿に、凛は思わず口を綻ばせた。アイリスはぎゅっと凛の腕を抱きながら、妖艶な女性に話しかけている。その口調がいつもと違うことに気付いてそうか、と納得した。


(ようやく“仲間”に、会えたんだもんね…)


この教会に宿泊中だという女性。聞いた瞬間にアイリスの仲間だと気がついた。二人の会話からも親しい間柄だということがわかる。いつもより少し幼い口調が、アイリスの心情を表しているようだ。


「ヴィオラがリンを助けてくれたの?」

「結果的には、そうね。…完璧にとはいかなかったけれど」


ちらりと凛の顔を見て、ヴィオラと呼ばれた女性はそっと目をそらす。そんなに酷い顔なのだろうか。自分では見ることができないが、いまだ痺れるようにじんじんしているその痛みが、怪我の程度を理解させる。


(…ひどく腫れてなければいいな~)


望み薄なことを考えながら部屋へと戻る道すがら、そういえばこの世界ではまだ、鏡を見ていないということに気付いた。じんじんと痛む顔に眉をしかめていると、アイリスが気付いて心配そうに凛の顔を覗き込む。


「リン、痛みますか?」

「ん…、ねぇ、鏡を見たいんだけど、ある?」

「は、はい。シャワールームの外にあります」

「そっか」

「……鏡、見るなら、治療を終えた後の方がいいと思うわよ」


ヴィオラなる女性がぽつりと呟いた。アイリスも無言で頷いている。やっぱり相当ひどいのか。神妙な顔になりながら、階段を上がった先、大部屋に入る。すると、そこにはソファに座っている男性の姿があった。


「――おかえり」

「ジェリー!」

「やっと会えたな。探したぞ、アイリス」


落ち着いたバリトンの声。ゆっくりと立ち上がったその身姿と声に聞き覚えがある気がして、凛は顔を上げた。


「―――あ」

「ん?」


思わず声が出た。その声に反応して、男性は凛に視線をよこし―――固まった。


「あんた…さっきの」

「ああーーーっ!!」


さっきの男前!!!!

凛の生尻を見た男が、目の前にいた。


「な、なに、どうしたの?」

「り、リン?ジェリーとも会っていたのですか?」


凛の大声に驚いて二人が声をかけるが、それどころではなかった。


(み、見られた相手が…なぜここに!)


いや、既に理解している。彼はおそらく、アイリスの仲間なのだろう。そういえば、仲間の中に異性もいると聞いていた。


(聞いてはいたけど…!よりにもよって、一体なぜ)


まさか彼がそうだったなんて、お釈迦様でも思うまい。あまりのことに、目まいがしてよろけた。…それがよくなかった。


「リン!?」


とっさに支えてくれたアイリスの手が、凛の腰を抱きかかえるように触れたその時。

かろうじて凛の腰に巻かれていた、タオルが落ちた。


「「「あ」」」

「アイリス様、ただいま戻りました」

「アイリス!無事でよかった!」

「心配したよ、アイリス」


そのタイミングで、凛の背後からがやがやと声がして―――止まった。

次の瞬間、つんざめくような絶叫が部屋中に響いた。

なかなか進みませんが、まったりペースでいきますのでよろしくお願い致します。

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