02話
ゲーム内時間で2晩程たった。
これも最新技術の賜物で、現実世界の5分の1の時間でゲーム内は進んでいく。つまりゲーム内の5日は現実の1日という事で、まだまだゴロゴロしていられそうだ。
2晩過ごしていて、ずっと寝ていた訳ではない。
ゴロゴロと寝返りをうったりもしたし、周りの物を観察したりもした。
そこでわかった自分の状況はこうだ。
大き目のあったかい芋虫に体中覆われてちょこちょこ噛まれてる。
おかげであったかさを提供してもらっている訳で、
多少の気持ち悪さはご愛嬌だろう。
しかし、現実と同じくここ仮想現実でも他人の目がある事を私はすっかり忘れていたのだ。
○●○
リアルオンラインというVRMMOのサービス開始からゲーム内時間で2日、大学生の美少女廃人ゲーマーを自称する大橋真理子は充実した生活を送っていた。
サービス開始に合わせて全ての予定を消化し、学校の単位を取得。2週間はまるまる引き籠もってゲームができる状況だ。
さて、始まりの町プライマリーから伸びる攻略ルートは東西南北に分かれており、初日に判明した難易度は高い方から順番に北の樹海、西の荒野、南の草原、東の街道となっている。
真理子が自分の分身であるアバター、マリとして訪れているのは最も難易度の高い北の樹海だった。
リアルオンラインはキャラクターのレベルとスキルのレベルが存在し、基礎ステータスはレベルが上がった際に取得できるステータスポイントを割り振り上昇していき、スキルは自分の行動により獲得、レベルアップしていくシステムになっている。
北の樹海の入り口にポップするモンスター、ポイズンコクーンがその場から移動しないタイプの、遠距離攻撃スキルの絶好のサンドバッグとなるという情報を得て、ここまで駆けてきたマリだったが、入り口の沸き場は既に満員でモンスターの
取り合いとなっており少し奥まで入り込んでしまっている。
「ひぇー。入り口で引き返しときゃよかったかなぁ」
ただでさえ難易度の高いマップ。敵のレベルはどれも高く、目的のポイズンコクーンでさえ近接職でタイマンすれば、トッププレイヤーですら勝てるかどうかというレベルである。
今のところ上手い事モンスターをかわしてここまで来ているが、交戦してしまえば死に戻りは避けられないだろう。
あたしの経験値を失ってなるものかと、自分に喝をいれて樹海を移動していた時だった。
木々の間の少し開けた広場のような空間に、人型の赤い物体が転がっているのを発見したのは。
「も、モンスターよね?」
攻略サイトや掲示板をサブスクリーンで検索してみるものの、北の樹海に人型モンスターの情報はなし。
未発見の初夏モンスターだとすればソロでは戦いたくないマリは、せめてモンスター名だけ確認しようと、ターゲットウィンドウが開く距離まで足音を殺して近づき、
赤い無数の芋虫で形作られた人型の物体の頭上に表示された、プレイヤーの証である青ネームを確認して思わず叫んだ。
「ちょ!?あなた大丈夫!?」
これが廃人ゲーマーマリと無気力系引き籠もりカスミの出会いであった。