終わりから舞い戻った王妃
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フィルティーカ視点でのエレーナを書きました。
異世界に異性転生、しかも王女様に産まれ早25年。もう前世の享年と同じ年だ
そんな元男が今の旦那と結婚したのは14歳の時だった。こちらでは14歳が成人で、その当時クーデターも解決し、俺は王女ではなかったのだ。いや、王女生活に未練は無い。なにせクーデターが起きのは、俺が生後4日の時なのだから、身に覚えなどとんと無いのだ。当時は、語意が違うため話は分からなかったが、目が覚める度、父親と思われる豪奢な男を見た時は大丈夫か? と思っていたら、駄目だった。クーデターの発生だ。
その後クーデターを起こしたラトーク公爵家に預けられ、生活する中でクーデターの理由を知った。何でも祖父が暴君で臣民皆が疲弊している時に、金遣いが荒く女癖も悪い上仕事をしない、お姉様曰く3難王だったとか。そらクーデター起こすわ! 起こさなきゃ国が破綻してたんだもんよ。
ま、まぁ、身体に引き吊られたのかライサス・ルーク・ラトークに恋をして14歳の成人の日に結婚式を挙げ、俺ことフィルティーカ・ルッツ・ハールヴァルはライサスと結ばれた。よ、夜の常識は、い、未だに、その、恥ずかしいだが……。
そ、そうだ。結婚は一応俺が、む、婿を取った事になっている。元王女でも王女だった事には変わりなく、国名を変えず、ラトーク公自身国王には着かず宰相として国政に携わっていたのだ。国のトップたる“国王”が居ない状態では、外交で下に見られ侮られる事も多くあったと聞く。ラトーク公を国王に押す勢力があったのは知っていた。それでも、頑として頷かなかったのだ。
俺と結婚した事でライサスは、ライサス・ルッツ・ハールヴァルと名乗り、名実共に国王になった。
ただ、ライサスと結婚するに当たり、俺は悲しい別れをした。俺の同母姉エレーナ・ルッツ・ハールヴァルとの別れだ。
クーデター当時、両親と上の兄二人に一番下の兄を始め多くの者達が処刑&刑罰を受け、上の姉と三番目の兄は逃亡した。三番目の兄は逃亡先で過労で亡くなり、上の姉がエレーナお姉様に反乱の手助けを求めて来たのだ。
エレーナお姉様は、4歳年上でライサスと同い年、俺から見ても王女として見本の様な人だった。自身を平凡と称していたが、努力を積み重ねる秀才タイプの人で、俺は非凡と評される度に無性に謝りたくなった。前世の記憶があると言えば、芋づる式に男であった事を言ってしまいそうで、いくらシスコン気味のエレーナお姉様とはいえ、嫌われる可能性があるのは嫌だったのだ。
そうこうしている内に、エレーナお姉様は自身を餌に、上の姉と腐敗した貴族を釣り上げていた。気が付いた時には遅く、エレーナお姉様は生涯幽閉を言い渡されてしまった。されど、最後まで俺の事を考えてくれていた。
「フィルティーカ、姉として最初で最後の命令です。今後、手紙を含め一切の接触を禁じます。素直になり、幸せにおなりなさい」
この言葉がエレーナお姉様との別れの言葉になった。
その後俺は、1週間部屋に籠っていた。その間考えていたのはエレーナお姉様の言葉だ。エレーナお姉様が居なくなりライサスと結婚できる元王家直系の姫は俺だけになった。ライサスと結婚できると分かり俺は喜んだ。ライサスに恋をしてから、男だったからと恋心に蓋をして、気付かない振りをしていた。それなのにエレーナお姉様が表舞台から消えた事で、俺にライサスとの結婚の話が舞って来て、浅ましくも喜んでしまったのだ。エレーナお姉様だってライサスに恋をしていた。それを取ってしまうのに喜ぶとは、なんと俺は醜いのだろうと。
俺が部屋に籠り、ライサスやラトーク公夫妻が変わり代わり何かを言って行く。だが耳に入っても頭まで届かなかったのか、何も覚えていない。
そんな中、頭に入って来た言葉があった。
「フィルティーカ、エレーナに何時か会わせて挙げるから、結婚して欲しい」
この言葉を聞き、ライサスと結婚すれば恋心も満たせ、エレーナお姉様とも何時か会える事を知った俺は部屋から出て気絶してしまった。
「いやいや、母上の弱味に漬け込んでいるではないですか?!」
珍しく甘えて来た、8歳になる長男クリストファーに、これまでの事を話せる範囲で掻い摘んで聞かせて居ると、我慢できないと突っ込んで来た。
まあ、周囲からすればそう取れるだろう。
「あの時は、ああでも言われないと部屋から出て行かなかったもの」
仕方ないだろう? と首を傾げると、椅子から立ち上り身を乗り出して叫んでくる。
「そんな訳ないだろう! 母上は父上に騙されているんだ。あいつは砂糖菓子の様な言葉は母上にしか言わないし、丁寧な言葉遣いだけど滅茶苦茶毒舌なん……いふぁいですふぁふぁうふぇ」
「ふふふ、言葉遣いが悪くてよ。それにお父様を“あいつ”呼ばわりはいけないわ。悪ぶりたいお年頃なのね」
ライサスが丁寧語毒舌なのは知っている。その昔、俺を慰める様になるまでは、ライサスの毒舌を聴くのは俺の役目だったからだ。
そう言えば、前世の俺も小さい時から、父親には楯突いていたっけ。
言葉遣いの悪くなった息子の頬を抓りながら説教すれば、息子の顔が羞恥で赤くなる。それにしても頬っぺた柔けーな、もう暫くぷにぷにしていよう。ああ、癒されるわー。
「わかりまふた。いいかふぇんはなふぃてくだふぁい」
「ふふふ、愛しているわクリストファー」
最後までお読みいただきありがとうございます。
作中のクリストファーが怒られて赤くなっていますが、フィルティーカの顔を間近で見て赤くなってるだけです。クリストファーに取って母親であるフィルティーカが初恋の相手で、後にマザコンに。
キャラクターファイル
フィルティーカ・ルッツ・ハールヴァル
髪:プラチナプロンド(金髪がかった)。ストレート
瞳:エメラルド
儚げ美人。少々抜けた所有り。おてんば
エレーナ・ルッツ・ハールヴァル
髪:金髪。天パ
瞳:エメラルド
強き美人。シスコン。努力家
ライサス・ルーク・ラトーク(ルッツ・ハールヴァル)
髪:金茶。天パ
瞳:黒
丁寧腹黒ドS。フィルティーカラブ
クリストファー・ルッツ・ハールヴァル
髪:プラチナプロンド(金茶混じり)。天パ
瞳:黒
マザコン
修正
02.10
愛しているは→愛しているわ