神官はかく語りき
「黒騎士様の明日はどっちだ?!」を読んでいないと意味不明ですので、ご注意を。
あまり関係ないですけれど、時系列的には2話目と3話目の間です。
あー、俺は一応、神官です。
すみません、こんな格好で。神官服が乾いてないもんですから。
えーと、白騎士様が前回、顕現されたのは、俺がまだ神官見習いしていたときだから今から十七年前、でしたかね。
あの時は、いつになく滞在時間が短かったんですよね、確か。
先代神官長様が随分、取り乱して……いや、大丈夫です、黒騎士様が慰めてくれたんで。
ああ、黒騎士様が直後に顕現されたんですよ。記録にある限りではこの時が2回目ですね。
おかげで、先代神官長、「黒騎士様に手を触れていただいた!」って、舞い上がってましたよ、そのまま昇天するんじゃないかってぐらいに。
黒騎士様も滞在時間はすっげー短かったですけど、気にならなかったみたいですよ、顕現自体がめったにないことだから。
俺達は黒騎士様に呪われたらどうしようと気が気じゃなかったんで、早くお帰りいただけて良かったんですが。
とりあえず、磨き係は女性限定にしろって黒騎士様が指定した、と解釈したんですが、それでよかったんですかね?
あ、いいんですね。よかった。
先代神官長は残念そうでしたけどね、日課だったから。
っつーか、そのせいで白騎士様が出てこなかったんじゃないかって俺達は噂してたんですよ。
いや、白騎士様って大体二十年おきくらいに顕現されるのに、先代は四十年間の在位期間中に1回だけしかお会いできなかったんで……あ、やっぱり。
気持ちはわかりますよ、はい。野郎に撫で回されるなんて、あっちの人間じゃない限り遠慮したいって。
そういや、黒騎士様は女性じゃないかって、噂してんですけどそうなんですかね? あんな残酷な呪いかけるのは女しかできないって思うんですがね。
あ、分からないんですか。へぇ。
先代神官長は、呪いを恐れることもなく黒騎士様もせっせと磨いてましたけど、磨き中に黒騎士様が顕現されたら、どうなってたんですかね?
そうそう、これまでの王国の歴史をお教えしなきゃならないんですよね。俺、そういうのは得意じゃないんで、神官長のところに行きましょう。
確か何代か前の神官長様が、白騎士様が顕現されたときは、その場に居合わせた者が、前回の顕現以降の大体の歴史を話して聞かせるようにって決まりをつくったんですよね。……ああ、3代目ですか。
3代目、かなり美人だったって本当ですか? へぇ、やっぱり美人だったんですか。いやー、どうせなら、その時代に神官をしたかったもんですね。
今の神官長は気ばっかり強くって。今朝も、ちょっと朝帰りしたくらいで水ぶっかけて「黒騎士様の祭壇掃除をして来い!」なんて言いつけて。
飲み過ぎただけで、浮気なんかしてないっつーの。
あ、神官長ですか? 俺の嫁です。
語り手は平民出身の神官。逆玉に乗った男。
どうでもいい設定ですが、この国の神官は結婚できます。
ついでに3代目美人神官長も多分、白騎士に会った頃には結婚してます。