プロローグ
ミハイル・フルシチョフは大ロシア主義者だ。
正確に言えば、彼の一族は皆そうだ。だが彼はそんな一族の中で鼻つまみ者だった。
「祖国に巣くう無能は死すべし」
彼は、常にそう思い信じていた。
だが、これだけだったら一族の者たちから疎まれることもなかっただろう。似たような者が過去に存在した例はいくつもある。
だが彼は疎まれた。恐れられたと言ってもいいかもしれない。
理由は、彼が天才だったからだ。そして、同時に高い求心力も持ち合わせていた。
それゆえに、彼は一族のことなど気にも留めなかった。
そして、彼は自らの思想に同調する者達を集め祖国に有害な人間・組織・国家を駆逐するために世界を駆けずりまわる。
はずだった。
気がついたら転生していた。
自分でもよくわからんが、気がついたら転生していた。人体を改造できる能力とともに、1895年のロシア帝国のロマノフさん家に。
初めは信じなかった。「自分の夢想もここまできたのか」などと考え、現実逃避していた。が、五年もたてば、さすがにこの世界が現実であるということが嫌でもわかる。
そしてぶちギレた。無能な皇帝や貴族どもにたいして。一体、こいつらの頭の中には何が詰まっているのか、解剖して調べてみたくなるほどの無能っぷりである。
それはさておき、転生してから10年、粛清してから2年の月日が流れた。適当な人間をサクッと洗脳(よくわからん能力使って)して、アホ(皇帝)と間抜け(貴族)を追放or処刑して、祖国ロシアは改革の真っ只中。
イヴァン3世こと私ミハイル・フルシチョフは溢れ出す書類に人生を食い潰されております。