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シュールナンセンス掌編集

微振動する星

作者: 藍上央理

「微振動する星」



 真っ黒い漆塗りのはしごをもってきて、私は空に立て掛けた。

 宇宙にぼんやりと浮かぶ白い屑から星を拾い集めて、つかえるもの以外をシュレッダーにかける。

 ギラギラいぶし銀に光る屑をそのまま黒いポリ袋に詰めて火曜の夜に捨てに行く。

 捨てに行く途中で野良猫にあったので、屑を投げてやるとウニャンと鳴いて、まんまと手なずけてやれた。

 野良猫の好物はいぶし銀の星屑らしい。 

 それをほかの連中に知られれば仕事を横取りされるので秘密にしておこう。

 ぎしぎし音を立てながら、はしごを登っていく。

 紺染めのマストに銀や蒼銀、赤銅色の星を引っかけていく。

 だれかいたずらものが帆柱にしがみついて揺らしている。

 ビリビリとマストが揺れて、私は宇宙に振り回された。叫んでも怒鳴っても振動は収まらない。

 星が泡を吹いて発泡している。

 二酸化炭素の星なのだ。できるならよく冷やして飲んでほしい。

 今はだめだと叫ぶのに、だれも聞き入れてくれず、マストごとひっくりかえされた。

 ガチャガチャと星が落ちていく。降り注いでいるのか?

 地面にブスブスと突き刺さり、地球の空気が抜けていく。

 それとも地面はお皿のように平らだったろうか?

 だれも私を助けてくれないので、はしごを横にかけ直した。

 運よく星に両端が引っ掛かり、私は今でははしごに腰掛けている。

 片手には黒のポリ袋。

 シュレッダーびきの星屑をかじると、メザシの味がした。

 野良猫が欲しがって鳴くはずだ。

 そしたら、あの立派な土星の輪はししゃもでてきているのだろうか? 

 光りものの好きな寿司屋に言わせてみれば、サバよりアジ、アジよりマグロらしい。

 そうすれば、宇宙にちらほらと浮かんでいるあの目だたない大星雲は、回泳するマグロの大群のせびれの反射とは言えないだろうか?

 しかし、そこまで行ってみて確かめて見る気はない。

 なにしろ魚は生臭くて、生臭いのは星屑だけでよくて、それが好きなのは野良猫だけでよろしい。

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