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grave ーTrue storyー  作者: 久遠芽愛
episode1 一本の白き刀
4/6

第四部

一日空いてしまいました。

因みにこの物語は完全にフィクションです。完全にフィクションです。大切な事なので二回言いました。

【7月16日 午後2時 とある場所にて】

 森を抜け、神聖なる場所に辿り着いた。

 奥には巨大なゲートが設けられていた。

 この墓は自分の墓なのか。

 どちらにせよ、助かる方法は……一つ。

 俺に課せられた使命を果たす事であった。


【7月17日 午後10時 研究施設にて】

 あの後、30分くらいだろうか。

 長い道のりを歩き、街外れにある薄暗い研究施設が目についた。

 少女によってここまで連れて来られたのだ。

 道中は一層、警戒を怠わらなかった。

 また幽霊に襲われても厄介なだけだ。

 だが実際、俺は少女の方に気を配りすぎた。

(そろそろ仕掛けてくるか…?)

 研究施設の外壁には、ツタが生えていた。他にも亀裂が入っていたり、コンクリートが地面に落ちていたり、と若干危険そうだ。

 歴史を感じる…というよりも誰も使っていない…廃墟と化したように感じた。

 少女は入り口と思われる場所に、俺を誘導する。

「…自動ドアなのか」

 電気は生きているようだ。

 と言う事は…ここでこの少女が生活している…?

 いや、仮にこいつは幽霊だ。

 幽霊なら食事だって、寝る必要だって無い……のかな。

「雅雪君…」

「んあ?何だ?」

「疲れて無いですか?」

 つくづく心配される。

 優しさ、なのだろうか。

「まあ、もう疲れたどころじゃないけどな。最後まで付き合うよ」

 折角助けて貰ったんだ。

 しかし、彼女は俺を狙うと思っていたが、そうでは無いようだ。

 ここまででそんな素振りを見せない所か、逆に他の幽霊を警戒している様に見えた。

「……っ!」

 ……そうか。結局コイツも俺を欲しがっていたのか。

 ここは研究所…例えば、だ。

 俺の魂は特殊な物で、幽霊を生き返らせる事ができる…何て単純な話でも今は筋が通る。

 結局、か……


 中は電気が付いている物の、少し薄暗い。

 外から入る風が妙に冷たく、俺を不安にする。

「……教授。連れて来ましたよ」

「教授?」

 立ち止まると、目の前にあった大型のコンピュータが一斉に起動した。

 そして、コンピュータの前にあった椅子が回転し、こちらに向いた。

 そこにはまだ若そうな、白衣を纏った男性が座っていた。

「……ありがとう、紅葉(もみじ)

 紅葉…?

「雅雪君。この人が、教授。何の教授かって言うと……説明しづらい、かな」

「てか、あんたは人、間……?」

 紅葉と呼ばれた少女とは違い、身体は透けていない、気がする。

 感じる気も、違う。

「ああ、僕は人間だよ」

 教授は、ニッコリ笑ってそう言った。

 何だか不吉だ。

 コイツ等は、一体二人揃ってここで何をしているのか。

 そして俺をここに呼んだ理由は何か。


「色々聞きたいことがあるんだが…」

「まあ、座って座って」

 俺はぎこちなく、誘導された椅子に座った。

「…突然で悪いね。君を呼んだのは他でも無い。あることを、伝えようと思って、ね」

「あること…?」

 俺は首を傾げた。

「そう。って言っても、ここまでの状況で説明する事は少ないかな」

「あの、幽霊…みたいな奴の事ですか…」

 俺は少女に目をやる。

 先程とは違って大人しく突っ立っている。

「……。そこの女の子から聞いたんだが、俺は……狙われてるのか?幽霊に」

 教授と呼ばれた男は頷く。

「まずアレを幽霊と認識するのは正しいだろう。生きてはいない、死者だ」

「じゃあ何で俺は幽霊何かに狙われているんだ?しかも突然。今までそんな事は一切無かったんだが…」

 教授は白衣のポケットから一枚の写真を取り出した。

 そしてその写真を、こちら向きに机の上に置いた。

「外人…?」

 写真に写っていた人物は人間の男性だった。

「そうだ。セシル、と言ってな。古くからの友人だった」

 セシル…

 その人物が何か、この騒動と関係があるのだろうか。

「その、セシルって人は一体何なんだ?この人も幽霊ってオチか…?」

 横に首を振る教授。

「君と……同じだ」

「俺と……同じ…」

「そうだ」

 教授は立ち上がり、大型コンピュータの前に立ち寄る。

 そして、その横にある一つの大きな箱に手を掛けた。

「君にはある能力が秘められている。それが、幽霊に狙われている理由の一つだ」

「能力…?」

「幽霊、死者が求める物は何か。それを考えてくれ。答えはすぐ出るはずだ」

 答えは待たずとも、一瞬で出た。

 死者が求めるもの…

 財産でも、恋人でも何でも無い…

「……復活…。生き返る、事か…?」

「そうだ。その答えこそが、君の能力だ。……信じ難い話だと思うが、君には、『死者を生き返らせる事ができる魂』を持っているんだ。例えるなら、三蔵法師」

「………はぁ…」

 死者を生き返らせる魂、ねぇ…。

「……誰が信じるか!?」

 教授、後ろの少女諸共、驚いていたようだ。

「死者を生き返らせる魂?俺はそんなもの信じないね。死んだものが生き返れる事ができたら、今の社会は偉人で溢れているぜ?」

「君は、君みたいな人が何人いるか分かっていないようだね。私の記録では、今まで10人にも満たない。増して、今生きて居る人は……一人、君だけだ」

 一人…?

「待ってくれ、一人じゃ話の筋が通らないぞ。じゃあ、セシルは何なんだ」

「セシルさんは……」

 少女に悲壮感が漂っていた。

 まさか……

「セシルは、死んだよ。幽霊の襲撃によってな。だから、次は君の番って事だ」

「嘘、だ……」

 教授は手を触れていた箱を開けた。

 そして、中から一本の白い刀が取り出された。

「何だよそれ…」

白妖刀(はくようとう)だ。中々の物だろう?」

「それが…この話に何か関係があるのか?」

 教授は再び、こちらに戻ってきた。

「この刀、セシルが作った物で、ちょっと特殊でな。一応尖っているが、君を切ってもただの打撲程度にしかならないだろう」

「弱いな」

「そう、人間である君に使った場合ね。この刀、地球上の素材で作られていないんだ」

 地球上の素材じゃない…?

 何だ、オーパーツか何かか?

「いつから、幽霊って存在していたと思う?」

「いつからって言われても……宗教が始まって、人が極楽浄土で行ける様に祈った頃くらいか?そして、悪行が働いた人間は、成仏させてもらえ無かった…」

 今まで幽霊を否定し続けた俺だ。こちらからの視点となって話すのは、難しい。

「正解とも、不正解とも言いづらいな。昔は祈っても、幾ら良い事をしても、極楽浄土……成仏はできなかったさ。そして魂だけが抜け、実態の無い幽霊となって、彷徨い続けていたんだ」

 この人は何者だ。

 教授……研究者にしては知り過ぎな気がしてきた。

 分かり易い話だが、これが本当の話かどうか分からない。


 だが、目の前で起きた事は真実であった。この話を信じるしか無いだろう。俺はそうやって生きてきた。


「教授!近くに幽霊が迫って来てます!」

 後ろの少女が声を上げた。


「こんな時にッ…!」


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