第二部
Q.雅雪君に妹居たんだ
A.やっぱり必要です(作者は弟♂持ちです)
【7月16日 午後1時 とある場所にて】
そこは人類未開の地、または伝説の大地と謳歌された土地であった。
俺らは今、その大地に足を踏み入れた。
そこには高校の教科書、あの人の書斎で見た歴史書にも記されてない景色であった。
「天国」、と呼べるだろう。
しかし今ここは、天国と呼べる場所では無いのだ。
【7月17日 午後1時 学校にて】
「顕治、俺の話を聞け」
「嫌」
顕治の返答速度は更に早まったと思う。
そこまで俺の話を聞きたく無いのだろうか。
だがしかし、
「昨日さ俺、幽霊見た」
ガタン、と椅子から落ちる顕治を見下す。
「お…おおお前、やっぱどうしちまったんだよ…」
震え声の顕治に対し、いつもの俺ならば「正常」の返答をする。
「やっぱり俺、おかしくなっちまったわ…」
頭を抱える。
俺は「異常」になってしまったようだ。
昨夜、幽霊と呼べる幻覚を見た。
確かにあの時間、俺は活動していた事が博多の塩が散らかっていたことから分かった。
とりあえず俺は顕治にその旨を話した。
「やっぱりお前…取り憑かれたんだよ、幽霊に…!」
確かにそういった考えで筋が通るかもしれない。
俺が見た少女は、あからさまに幽霊だった━━━━。
幽霊に取り憑かれたらどうなる?死ぬのか?
いやだが、守護霊という形の幽霊かもしれない。
彼女の言っていた言葉を全力で思い出そうとする。
何かそれに関したキーワードがあったはずだ。
「雅雪、除霊してもらうことをオススメするよ」
「……だな」
思い出そうとしただけで冷や汗をかいた。
顕治はそれを察してくれたのだろう、この結末に至っては正しい選択だった。
【7月17日 午後5時 自宅にて】
「おかえり兄貴〜」
帰宅した。
リビングに通じる扉を開けるとそこには妹の彩音がソファで寝ていた。
「ん?お前がニュース見るなんて珍しいな」
いつもの彩音ならドラマに熱中しているはずだ。
「別に、何も見るの無いしさ」
ニュース…。
あの件についてもやるかもしれない。
「━━━━今日午後2時、南極大陸の氷が溶けた所から、遺跡のような物が発見されたとの事です」
ほー。
前にもこのような事があったのを思い出す。
ヴァラール文明、マグノリア文明、エコール文明、エクスコア文明………。
アメリカの調査隊、アレクシス調査団がこの四つの新たな古代文明を発見した。
元あった古代文明の文字の解読により、この文明の存在が明らかになったらしい。
俺らの中ではこの新たな古代文明は「新・古代文明」と呼ばれている。
新しいのか古いのかどっちなんだか。
そして調査隊は、活動方針をその新・古代文明に変えると発表したのはもう3年前だ。
遺跡を発見してはこれただの岩だの、噂を聞いて駆けつければガセだのあまり調査は良好では無いようだ。
「こんなの見つけて、どうするのかねぇ…」
「全く、それな」
【7月17日 午後9時 自宅にて】
「彩音、何か欲しい物あるか?コンビニ行ってくるが」
「んー、アイス〜」
いつまでダラけてるんだこいつ…。
「へいへい」
俺はドアノブに手をかけた瞬間、少し頭痛がした。
『とにかく今外は危険です、絶対に出ないでくださいね!』
…最近暑くなって来たし、疲れてんのかな、俺。
やはりアレなのか…。取り憑かれてんのかあいつに。
まあ、どちらにしろ今を生きるに変わりは無い。
俺はドアを開け、黒に染まる世界に出た。




