第八話:入校 その5
初日と同じく、午後になるとグラウンドに集まった博孝達は三列に並んで砂原の到着を待っていた。
「さあ、二日連続での恐怖体験になるのか……」
「言わないでほしいっす。さすがにそれはないと思いたいっす……」
拳銃で撃たれたり、槌で殴られたり、砲丸でキャッチボールするのは勘弁してほしい二人である。砲丸キャッチボールについては慣れれば楽しかったが、人としてどうかと思わざるを得なかった。
「昨日が拳銃だから、今日はきっとアレだよ、マシンガン」
「連続で衝撃を受ける……だけで済むっすかね?」
「じゃあロケットランチャーで」
「さすがにそれは無事でいられる自信がないっすよ!?」
等々、博孝と恭介は馬鹿話をしている。これでもし砂原がロケットランチャーを担いできたら、走って逃げようと思った。今のところ、インパクトの強い体験でトップバッターを任されるのが博孝か恭介のどちらかだ。何かあれば、また最初に“実験台”にさせられるに違いないと内心で恐怖する二人だった。
「お、教官が来た」
「物騒な物は……持ってないっすね。銃器の次は刃物が出てくるかと思ったっすけど……兵士の人もいないっすよ。その代わりに、見慣れない人が三人ほどいるっすけど」
そう言われて博孝は目を凝らす。
「ん? んん? おおっ!? バッジをつけてるぞ!?」
「え? ということは、『ES能力者』っすか?」
博孝と恭介の声を聞いて、周囲からも僅かに声が漏れる。それでも大騒ぎにならなかったのは、砂原がすぐ近くまで来ているからだ。クラス全員が私語を止め、砂原が口を開くのを待つ。
「全員揃っているな。午後の授業では、実際にES能力を扱う授業を行う……と言っても、素人でしかない諸君らはその方法もわからないだろう。そのため一班八人ずつに分け、それぞれの班に『ES能力者』をつける」
そう言って砂原が背後の三人を紹介するが、砂原のように正式な教官ではないらしい。本来の仕事はこの訓練校の防衛に当たるのだが、時折授業の手伝いにも駆り出されるそうだ。特に、新入生にES能力を教える場合に駆り出されることが多いとは砂原の弁である。
「全員四級特殊技能を持つ『ES能力者』だが、実戦経験もある。よく学べよ。そして班割りについてだが―――」
そこでふと、視線が博孝と恭介に向けられた。その視線を受けた二人は、咄嗟に視線を横に逸らす。
「河原崎と武倉。お前ら二人は“元気が良い”からな。俺が直々に指導してやる。どうだ、嬉しいか?」
獲物を見る肉食動物のような視線を向けられた、博孝と恭介は慌てて姿勢を正す。
「はい! 嬉しいです教官!」
「嬉しすぎて涙が出るっすよ!」
「そうかそうか。ならその期待に応えてやろう。さて、残りの割り振りについてだが……」
色々な意味で、本当に涙が出そうだった。それでも博孝と恭介は顔を見合わせると、仕方がないとため息を吐く。
絶対に砂原を怒らせないよう気をつけようと、互いに誓うのだった。
「うおおおおおおおおお! 目覚めろ! 俺の秘められたパゥワアアアアアアアァァァ! 具体的に言うと空を飛べえええぇぇっ!」
「なんで無駄に良い発音してるんっすか!?」
「そこはほら、ノリと気合い?」
「ノリと気合いでできるんっすかねぇ……じゃあ俺も……はああああああああああああああぁぁぁっ!」
「おっ、バトル漫画っぽい掛け声! やっべぇかっけぇ!」
「って、全然できないじゃないっすか!?」
「誰もできるとは言ってねえよ!?」
十分も経てば、二人は誓いを忘れてはしゃいでいた。しかし、砂原は呆れたような顔をするだけで特に止めてはいない。
ES能力は、“こうすればできる”というマニュアルのようなものはない。『ES能力者』ごとに得手不得手があり、同じ技能を使うにも、一人がAの方法でできてももう一人が同じようにAの方法でできるとは限らなかった。
最初の段階として自身が持つ『構成力』を感じ取り、それを全身に纏うことで『防殻』となる。この時点で『構成力』の感知と操作を学ぶのだが、その段階で教官ができることはアドバイスと補助ぐらいだ。
「そこの阿呆二人」
「とうとう阿呆扱い!?」
「酷いっすよ教官!」
砂原が話しかけると、恭介と博孝は叫び声を上げるのを止めた。四班がグラウンドの各地に散っているため他の班に迷惑はかからないが、同じ班の人間には十分に迷惑になるのだ。
「感情を昂らせるというのも方法の一つではあるが、何かつかめたか?」
「いえ、全然」
「そっすねー。なんかこう、胃の中に重たいものを感じるぐらいっす」
「いやいや、それは昼飯の食い過ぎだろ」
「む、違うっすよ! 食べすぎとか食あたりじゃないっす! なんかこう、違和感というか、破裂しそうな感じっす!」
博孝の言葉に恭介が食ってかかるが、それを聞いた砂原は片眉を上げた。
「ふむ……武倉、服を脱いでみろ」
「……え? い、いや、申し訳ないっすけど、俺はそっちのケはないっすよ!?」
「安心しろ、俺もない。良いから脱げ。上の服だけで良い」
ドスの利いた声で言われ、恭介はしぶしぶ上着を脱ぐ。
「腹の中の違和感に集中しろ」
「っと、了解っす」
砂原が何かをすることを察し、恭介は自身の腹部の違和感を感じ取ろうと集中する。そして、そんな恭介の腹部に砂原が手を当てた。
「……これか。武倉、その違和感を全身に広げるよう意識しろ」
そう言われて、恭介は自身の違和感を“操作”するように全身へ移動させる。すると、弱々しいながらも白い光が恭介の身を包み始めた。
「おわっ!? なんっすかコレ!?」
「集中を乱すな! いいか、これが『構成力』だ」
言いつつ砂原が手を離すと、その光がすぐに霧散する。それを見た砂原は顔をしかめた。
「集中を乱すなと言っただろう。だが、自身の『構成力』はつかめたのではないか?」
砂原がそう言うと、恭介は自身が行ったことを遅れながらも理解する。
「ちょ、い、今のが『構成力』っすか!?」
「うわ、マジかよ! すげーな恭介! あっさりとできたじゃねーか!」
恭介の体が白い光に包まれたのを見ていた博孝は、驚きながらも恭介の肩を叩く。肩を叩かれた恭介は、気を取り直したように目を閉じた。
「も、もう一回やってみるっすよ!」
そう言うなり、恭介は集中を始める。そして三十秒も経つと、再度恭介の体が白い光に包まれ始めた。
「そうだ。あとはその『構成力』を全身に回したままで維持しろ。それが『防殻』だ」
砂原がそう声をかけると、恭介は目を開いて自身の体を見下ろす。
「お、おおおおっ!? お、俺、できてるっすよ! ってああ!? 光が消えた!?」
喜びの声を上げるなり、恭介の光が消える。どうやら集中を切らしてしまったらしい。それでも『防殻』を発動することに成功して嬉しいのか、両手を突き上げて喜びの声を上げた。
「早い者なら数時間程度で習得できるが……武倉、お前は『ES能力者』として中々才能があるのかもしれんな」
「え? マジっすか!? そんなこと言うと、俺調子に乗っちゃうっすよ!?」
笑顔で恭介が言うと、砂原は苦笑する。
「調子に乗りたいなら、まずは『防殻』を維持できるようになれ。熟練者は息をするように『防殻』を発動できるぞ」
砂原がそう言うと、恭介は肩を落とした。
「少しでも良いから調子に乗らせてほしかったっす……」
「ははは。まあ、修練を重ねれば難しいことではない。『防殻』を発動できるようになったら、次は歩きながらでも発動できるようになれ。その次は走りながらだ。その次からはもっと複雑なことをしながらでも『防殻』が維持できるようになれ」
「先は長いっすね……でも了解っす! 頑張るっすよ!」
拳を握りながら頷く恭介。それを見た博孝は、負けてられないと言わんばかりに自身の集中に移る。
恭介はその横で『防殻』の発現の練習をしつつ、砂原に話しかけた。
「ちなみにっすけど、早い人なら数時間。なら、遅い人ならどれぐらいでできるようになるんっすか?」
「そうだな……遅くても、一週間もあればできるようになるだろう」
「へー……でも、一時間かからなかった俺ってば、もしかして天才っすか!?」
どうあっても調子に乗りたいらしい。それを聞いた砂原は、顎をしゃくる。
「それは、“アレ”を見てから言うんだな」
「へ?」
砂原に言われて視線を向けた先には、沙織の姿があった。博孝や恭介と同じように砂原の班に選ばれたのだが、少し離れた場所に一人で立っている。目を瞑り、集中しているようだった。すると、すぐさま体の周囲が白い光に覆われる。だがそれは恭介のように弱々しく不安定なものではなく、力強さを感じさせるものだった。
「長谷川は俺の補助なしで『防殻』を発現させているぞ? 天才と呼ぶなら、向こうだな。見ろ、その上もう歩き出している」
二人の視線の先で、目を開いた沙織がゆっくりとだが歩き出す。それでも『防殻』は消失しておらず、そこからさらに屈伸運動を始めた。
「どうやら、走りながらでも『防殻』を維持できるか試すようだな」
「ぐぬぬ……お、俺も練習するっすよ!」
沙織から視線を切り、恭介も練習に戻る。それを見て、砂原は少しだけ優しげに笑うのだった。
四時間ほど経ち、徐々に傾いてきた太陽が照らすグラウンドで、博孝は腕組みをしていた。
「……うん、わからん!」
砂原の言うところの『構成力』がまったくつかめず、思わず両手を上げて降参のポーズを取る。
「って、わからんじゃねえよ俺!」
そしてすぐさま空中に向けて突っ込みを入れるが、それに反応する恭介も近くにおらず、ため息を吐いた。
「全然わからんぞ……恭介はよく簡単にできたな……」
視線を巡らせてみれば、『防殻』を維持しながら歩いている恭介の姿が見えた。そして、そんな恭介を抜き去って走り去る沙織の姿もある。
遠目に見てみれば、グラウンドに散っているクラスメート達の中でもちらほらと『防殻』を発現している者がいた。砂原の班では八人中四人が『防殻』の発現に成功しており、その中には里香や希美の姿もあった。
砂原は博孝と同じように『構成力』が感知できていない生徒にアドバイスを行っており、傍にいない。
「あー……こうなったら、できている人からアドバイスもらうか」
そう言って歩き出すが、近くにいたのは里香だった。希美は少し離れた場所に立っており、博孝と同じことを考えたのか他のクラスメートから質問を受けている。故に博孝は里香の元へと歩み寄ったのだが―――。
「んん~~~~~~っ!!」
両手を胸の前で構えて、顔を真っ赤にしながら『防殻』を発動している里香の姿がそこにあった。余程集中しているのか、自身が声を出していることに気付いていないのだろう。一日二日の付き合いしかないが、それでも大き目の声を出している里香に新鮮さを覚える博孝だった。
(もしや……あの構えと掛け声に秘密がっ!?)
そう思うなり、博孝は両手を胸の前に構え、体を丸め、腰を落とす。しかしそれは、傍から見ればボクシングのピーカブースタイルにしか見えなかった。
「んお? 何やってるんっすか?」
そこで休憩のためか、恭介が戻ってくる。しかし博孝の構えを見るなり首を傾げた。
「ボクシングの練習っすか?」
「岡島さんを見習ってこの構えをしているんだが……どうだ? 光は出ているか?」
「全然違う構えにしか見えないっすよ。『防殻』じゃなくてデンプシーロールを練習しているようにしか見えないっす」
すっぱりと言い捨てる恭介。それを聞いた博孝はゆっくりと体を振り始める。
「よし、それじゃあデンプシーロールごっこしようぜ。お前サンドバックな!」
「ちょちょちょっ!? それ昨日もやったっすよね!?」
8を横にしたような軌道で頭を振りつつ、恭介に近づいていく。それを見た恭介は慌てて『防殻』を発現させた。
「暴力反対っす!」
「ひ、卑怯な! 『防殻』を使うなんて……って、『防殻』を殴ったらどうなるんだろ?」
『ES能力者』同士ならば拳も攻撃として意味があるそうだが、と博孝は首を傾げる。それを聞いた恭介も、『防殻』を維持しながら首を傾げた。
「たしかに……殴った方が痛いとかっすかね?」
恭介も疑問に思ったらしい。しかしすぐに右手を広げて構えると、楽しげに口を開く。
「試してみるっすか?」
「おうともさ! ……でも、何かあったら困るから軽くな?」
そう言って、博孝は恭介の手の平を軽く殴ってみる。すると、まるで金属でも殴ったかのような感触が拳に伝わってきた。
「つっ!?」
その感触に、博孝は拳を引く。そして恐る恐る拳を見てみると、僅かに赤くなっていた。
「それ、めっちゃ硬いぞ……」
「みたいっすね……」
手の平を殴ったはずなのに、博孝の拳の方が痛むほどである。博孝は自身の拳を見下ろしながら、深刻そうな息を吐いた。
「ES能力が使えないと、これだけの差があるのか……『ES能力者』としての“素”の身体能力だけじゃどうにもならないな」
「博孝は『構成力』の感覚がつかめないっすか?」
「全然つかめない。それで『防殻』が発言できる人のアドバイスをもらおうと思ったんだが……」
そう言いつつ博孝が里香に視線を向けると、丁度息継ぎをしていた里香と目が合う。
「っ!? な、なにっ?」
驚いたように、顔を真っ赤にしたままで一歩後ろに下がる里香。それを見た博孝は、ついからかいの言葉を口にした。
「いやー、顔を真っ赤にして可愛いなーって」
特に考えなく博孝が言うと、里香はさらに顔を赤くしながら後ろへと下がる。
「お? なんっすか? 助言をもらうんじゃなくてナンパっすか? 岡島さんを選ぶとは、博孝もお目が高いっすね!」
「え? お目が高いって、もしかして訓練校に入るよりも前の知り合いか?」
「いや、全然知らないっす!」
「ノリで言っただけかよ!?」
恭介の発言に対して拳で突っ込みを入れるが、『防殻』を発現したままだったので容易く防がれる。むしろ拳の方が痛かったので、博孝は恭介を恨めしそうな目で見た。
「突っ込みを拒否するとか、お前はそれでも芸人か?」
「誰が芸人っすか!? 自分が芸人です、なんて自己紹介をした覚えはないっすよ!?」
「え、えっと……」
博孝と恭介が騒いでいると、里香は戸惑いながら首を傾げる。それを見た博孝は慌てたように手を振った。
「っと、邪魔してゴメン。俺、『構成力』が全然わからなくてさ。良かったらアドバイスがほしいんだけど……」
「あ、アドバイス?」
「イエス。あ、まずは土下座か土下寝をしてからの方が良いですかね?」
そう言いつつ博孝が地面に膝をつこうとすると、里香は慌ててそれを止める。そして博孝の求めるアドバイスを考え、小さな口を開いた。
「そ、その、えっとね? わたしの場合は、その、自分の中に違和感があったから、それを教官に伝えて、それで……」
「えっ? まさか、恭介みたいに服を脱いだの?」
「ええっ!? ち、ちがっ!」
「博孝さん、それはさすがにセクハラだと俺は思うっすよ……」
恭介に呆れたような目で言われて、博孝は自身の発言を振り返る。そして、真顔になった。
「いや……マジすんません。今のは素で疑問に思っただけでした。他意はありません。でも、それで納得できないのなら土下座しますんで、頭を踏んで『それで謝罪のつもりかこの豚め!』と罵っていただければ……」
「博孝、博孝! 落ち着くっすよ!? もしかしてそんな趣味があるんすか!?」
「ば、バーローオメー! んんんなわけねーですよ!?」
「ならなんでどもった上に目が泳いでるんっすか!?」
再び博孝と恭介が言い合いを始めると、里香は困ったように笑いつつ、一歩後ろに引く。その動きを見た博孝は、絶望に染まったような声を絞り出した。
「ああっ!? 一歩引かれた!」
「さすがに頭を踏んで罵れと言われたら、誰でも引くっすよ……俺もドン引きっす」
「冗談なのに……」
そう言って、博孝は思考を切り替える。さすがに冗談が過ぎた。
「で、岡島さんも違和感を覚えたのか……そうなると、まずはその違和感とやらがわかるようにならないといけないな」
「え? あ、う、うん……違和感があって、あとは教官にそれを伝えたら、手を取られて、それで集中したら、『防殻』が、その、できた……よ?」
「博孝ー、切り替えが急すぎて岡島さんが目を白黒させてるっすよー。言うならば、今の博孝に違和感を覚えるっす」
「上手いことを言ったつもりか……岡島さん、ありがとう。色々試してみるよ」
恭介の茶々に答えつつ、博孝は里香にアドバイスの礼を口にする。恭介も里香も“違和感”とやらを覚えて、そこからすぐに『防殻』の発現までたどり着いていた。ならば自分もその違和感を掴もう、と決意をした博孝は集中のために目を瞑り―――そこで、午後の授業の終了を告げるチャイムが鳴った。
「……明日に持ち越しか」
「まぁ、『構成力』の感覚さえつかめればすぐっすよ」
肩を落とす博孝に笑いかけつつ、恭介が肩を叩く。肩を叩かれた博孝は、唇を引き結んだ。
「へーん、すぐに追いついて強烈な突っ込みを入れてやるからなー。覚悟しろよー」
「なんっすかそのリアクション……あと、『ES能力者』同士だと突っ込みも痛いっすから、ほどほどにしてほしいっす」
ほどほどなら良いんだ、と話が聞こえていた里香は思った。チャイムが鳴ったため整列に向かっていたのだが、二人の会話が聞こえたのである。
博孝達は背後で里香が不思議そうな顔をしていることに気付かず、そのまま整列した。
午後の授業で『構成力』の感覚を掴めた者が九名、『防殻』の発現ができたのが六名の計十五名だった。クラスの半分ほどの人数だが、それに漏れた博孝は拗ねたような顔で視線を逸らしている。
その拗ねた顔が先ほどまで騒いでいた博孝の姿に似合わず、里香は内心で少しだけ笑うのだった。
(今日一日だけで、クラスの約半分が次のステップかー……俺も、早く『構成力』を理解できるようにならないとな)
当の博孝は表面上拗ねた顔をしつつ、内心ではそんなことを考えている。博孝が目指す『飛行』は三級特殊技能。まだまだ先が長いのだ。こんなところで躓いていたら、実現するのは不可能になる。
(よし、部屋に戻ってからも練習してみるか)
こっそりと自主練習を行うことを決意し、博孝は砂原の解散の言葉を待つ。
(明日の訓練で、『防殻』を発現した状態で恭介に突っ込みを入れてやるわ……)
くっくっく、と悪い笑みを漏らす博孝だった。
しかし、その目論見は見事に失敗することになる。
―――訓練開始から一週間が経っても、博孝は『構成力』を感知することができなかったのだから。