第二百七十六話:最終決戦 その3
富士山周辺までは博孝に運ばれ、その後地上へ降下した里香は予定通りの行動を取っていた。地表ギリギリまで『構成力』を抑え、『瞬速』の応用で落下速度を減速。さらに空中に発現した『盾』を蹴りつけて落下速度を殺し、地面へと着地する。
着地するなり即座に『瞬速』を発現してその場から姿を消すと、傍の林に飛び込んで気配を殺し、その場に伏せた。『探知』に『構成力』は引っかからなかったが、降下中の姿を見られた可能性がある。
そのため敵が駆け付けてこないかを確認し、何もないことを確認してから立ち上がった。
(現地の部隊と合流しないと……)
微塵の油断も滲ませず、『瞬速』を発現してその場から走り出す。背後から奇襲を受けないよう、時折木々を盾にするようジグザグに走り、夜明け前の森の中を疾走していく。
空を飛ぶ博孝達と比べれば移動速度は劣るが、『ES能力者』の身体能力ならば一日に数百キロを移動することも容易い。そこに『瞬速』が加われば、降下地点から集合地点までの移動時間も短く済んだ。
里香は進行方向に気配を察知すると走る勢いを殺し、懐に手を入れる。そして細長い筒――鳥笛を取り出すと、規則正しく三回吹き鳴らした。
既に日が昇り始めており、鳥が活動していてもおかしくはない。そのため仮に敵が聞いてもおかしいとは思われないだろう。そう判断した里香の耳に、返事をするように鳥の声が三度届く。
そうして姿を見せたのは、先行していた陸戦部隊の面々だった。ただし、そこには多くの顔が欠けている。この場にいたのは市原と紫藤の二人であり、里香の顔を見てほっとしたように表情を柔らかくした。
里香は二人が清香に洗脳されていないことを感じ取ると、口を開こうとした二人を制して口元に人差し指を当てる。周辺を窺う限り敵の気配はないが、何が起こるかわからないのだ。
そのためハンドサインだけで指示を出すと、市原と紫藤を連れて走り出す。富士山周辺には招集した陸戦の『ES能力者』が約三個大隊、百人ほどが潜んでおり、それぞれが清香の元へと向かった博孝達を援護するべく動いている。
しかし、いくら『ES能力者』が百人近く集まっているとはいえ、彼らは陸戦だ。『ES能力者』としては一流に届かず、使えるES能力も良くて四級特殊技能止まりである。それでも数が揃えばできることは広がるため、この状況においては有り難い援軍と言えた。
(敵の数は……)
市原と紫藤を連れて富士山の方へと移動した里香だが、木々の合間から敵陣の様子を窺って絶句する。空に浮かぶ敵性『ES能力者』の数は軽く五百を超えており、想定の倍近い戦力が集まっているのだ。
敵は富士山を覆いながら空へと伸びる虹色の光を囲むよう、円陣を組んでいる。そのため正確な数を数えるならば、もっと多いだろう。
(どうしますか?)
(敵の数が予定よりも多い……)
市原と紫藤がアイコンタクトで里香に尋ね、里香は僅かに思考する。町田の斥候で得られた敵の数ならば辛うじて突破できる目算だったが、この状況では良くて敵陣の深くまで斬り込んで失速し、袋叩きに遭って各個撃破となるだろう。
運が悪ければ接近する前に一斉射撃を受けて撃ち落されるに違いない。そうなれば博孝達第三空戦小隊が清香と戦うどころの話ではなく、短時間で全滅するだろう。
(でも、地上からの援護射撃でどうにかなる数じゃない……ここから丸山少尉を狙っても回避されるだろうし……)
傍にいる紫藤にチラリと視線を向けた里香だったが、いくら遠距離攻撃が得意な紫藤でも無理だ。また、清香に『狙撃』を命中させたのとしても、それで倒せるとは思えない。
富士山周辺には百人近い『ES能力者』が伏せているが、それらの火力を全て集中させても通じるかどうか。博孝や沙織の話を聞く限り、『星外者』に近い力を発揮したみらいの防御は頑強で、全力の『収束』を叩き込んでようやく僅かに貫ける程度だ。
“至った”みらいではなく、元々『星外者』である清香の防御力がみらいを下回ることはないだろう。また。相手が『星外者』となるとただの攻撃では弾かれる可能性がある。
(この場にいる戦力でできるのは、丸山少尉じゃなくて周囲の戦力を削ぐこと……でも、今はまだタイミングが整ってない。今攻撃を仕掛けても、反撃で全滅するのが目に見えてる……)
里香としては悔しい限りだが、百人集まった陸戦の者達では清香が操る敵性『ES能力者』を僅かに削るだけで精一杯だろう。いくら奮闘しても、自分達と同じ数の敵を道連れにすることはできまい。
(……それを“可能にする方法”はある……けど……)
清香が選ぶ可能性がある、損耗を度外視した自爆突撃。それを選べば陸戦の『ES能力者』でも敵の損耗を増やすことができるかもしれない。
しかし、里香はそんな手段を選ぶつもりはなかった。自爆は一人一発限りで、なおかつ接近されるまでに撃ち落される可能性の方が高い。里香の心情としても、戦術としても、選べない手段だ。
――ならば、敵に勝てる環境を構築するしかない。
里香は市原と紫藤に両手を差し出して握らせると、接触した状態で『通話』を発現する。こちらの方が周辺に『構成力』が漏れないため、戦闘時以外では使い道があるのだ。
『先行部隊の動きを報告して』
『はい。岡島先輩の命令通り三個大隊を残し、それ以外の人員については走らせて増援を呼びに行っています』
『その選別は?』
『先輩の言う通り、『瞬速』を使える人だけで構成してる……してます』
市原と紫藤の返答は予定通りのものだ。予め走らせていた者達のことを考えれば、早い段階で援軍が駆け付けるかもしれない――が、それは不確定要素に過ぎないだろう。あくまで可能性の話だ。
どう動くべきか思考する里香だったが、頭上に巨大な『構成力』を感じ取って視線を上げる。それは敵襲というわけではなく、不自然な『構成力』の集中を感じ取ったのだ。
地上への攻撃という可能性もあったが、『構成力』は集中するだけで放たれることはない。ただし、『構成力』を集中させながら博孝達の方へと突撃するその姿を見て、里香は思わず視線を鋭くしてしまった。
それは敵に行われると攻撃が困難になる一手。戦力をすり減らすことに頓着しなければ、おそらく最も有効である“防御”手段を清香が選択したことを示している。
(ざっと見積もっても二個師団以上の空戦による自爆……小出しにしているけど、一斉に自爆されれば富士山が丸々吹き飛んじゃう……なんて話じゃ済まないよね)
空戦可能な『ES能力者』による集団自爆などされれば、四方何十キロメートルに渡って吹き飛びかねない。その威力は富士山を丸ごと吹き飛ばし、地表を抉り、どれほどの被害をもたらすか予測できないほどだ。
(……でも、“今は”まだ大丈夫なはず)
非情で冷酷な手を打った清香だが、本当に自爆させるつもりがあるのか。富士山を取り巻くようにして発生している虹色の光を考えれば、なるべく影響が出るような真似はしないのではないか。
それは楽観かもしれないが、里香からすれば清香が本当に配下を自爆させるかは懐疑的だった。それでも里香としては対策を講じなければならず、手をつないで『通話』を行っている市原と紫藤に視線を向ける。
『予定を一部変更します。二人は伏せている各部隊に伝令を。近隣の部隊への救援要請に回す数を増やします』
上空からの一斉攻撃もそうだが、敵が一人下りてきて自爆をされるだけで多くの戦力が失われる。どれほどの威力があるかわからないが、少なくとも『爆撃』よりも弱いということはないだろう。
『救援要請に向かうのは『瞬速』が使える人を中心に選抜。あとは防御が苦手な人も回すよう伝えてください』
現状では地上からの援護射撃も難しい。そう判断した里香は移動速度が速い者、防御が弱い者は救援要請に回すことにした。
『了解です』
市原と紫藤は里香の指示に頷き、『瞬速』を発現して姿を消す。里香は二人が駆け出した方向とは別の方向へと視線を向けると、二人と同じように『瞬速』を発現して駆け出した。
まずは間宮と合流し、援護射撃の準備も進めなければ。そう心の中で呟き、上空で行われる戦いに気を払いながら森の中を走るのだった。
ベールクトが発現した赤黒い光。それは以前見た『火焔』よりも禍々しく、強烈な違和感を伝えてくる。
『さあ、敵の一切を燃やし尽くしますわ!』
敵の前面に出てきたベールクトは赤黒い光弾を扇状に発現すると、そのまま一斉に発射した。見た目の変化もそうだが、以前と比べれば弾速も速い。『構成力』をしっかりと練り込んでいるらしく、飛来する光弾からは見た目以上の威圧感が放たれていた。
柳もベールクトが放つ光弾には危機感を覚え、『飛刃』を放って迎撃していく。空中で赤黒い光弾と刃状の『構成力』がぶつかり合い、互いに相殺し合ってその場で炸裂。しかしその熱量を少なからず感じ取り、柳は大きく舌打ちをしていた。
「ちっ……ずいぶんと厄介な敵になったな」
『柳刃』で直接叩き斬らなかったのは、その熱量を警戒してのことである。柳が鍛え上げ、決して折れないようにと切れ味と柔軟さを両立させた『柳刃』だが、さすがに莫大な熱量を前にしては分が悪い。
そう簡単に折れるような鍛え方はしていないが、何度も『火焔』を斬っていると『柳刃』が熱で溶けてしまいそうだ。仮に溶けなくとも、普段通りの能力は発揮できなくなるだろう。
敵や敵の攻撃を斬る際は自身の『構成力』を使うことで強度を増しているが、『武器化』で生み出した刀と違って高温による影響を無視できない。
何があったかはわからないが、本当に厄介になったものだ。柳は内心でそう呟くと、背後の博孝に声をかけた。
『あっちの嬢ちゃんは何やらお前さんに執着しているみたいだが……一体何をやったんだ? 男らしく責任を取ってこいよ』
『誤解を招くような発言は止めてくれませんかね……生憎と俺は沙織一筋ですよ』
責任を取らなければならないようなことはしていない。そう反論する博孝だったが、引き合いに出された沙織は首を傾げる。
『でもあの子には色々と“お世話”になったんでしょう? 責任を取る必要があるのならそうするべきだと思うわ』
『……おかしいなぁ。そこは止めるところだと思うんだけどなぁ……』
沙織の“基準”がわからない。今更ながら恋人の価値観に対して疑問を覚えた博孝だったが、敵は待ってはくれない。今もベールクトからは赤黒い光弾が放たれており、博孝達は回避を強いられていた。
余裕のつもりなのか、それとも何か意図があるのか、清香はベールクトに攻撃を任せて静観の体勢を取っている。ベールクトの攻撃に合わせて自爆覚悟の敵が突っ込んでくると厄介だったのだが、清香はベールクトの戦い振りに目を細めているだけだ。
ベールクトは笑いながら『火焔』による光弾を撒き散らしており、その勢いは衰えることがない。むしろ時間が経てば経つほど勢いを増しており、迎撃する博孝達に負担を強いる。
遠距離攻撃に徹しているのは、接近戦を仕掛けるのはさすがに分が悪いと判断しているからだろう。突撃してくれば柳が仕留めることも可能だろうが、距離を離して攻撃を行うだけの理性は残っているようだ。
『威力は高いし『構成力』も尽きる様子がない……厄介な固定砲台だね』
『かといってこっちが攻撃を仕掛けるには距離があって、接近すれば容赦なく自爆特攻を食らうと……どうしたもんかねぇ』
飛来する光弾を『射撃』で誘爆させつつ、町田と斉藤が言葉を交わす。ただでさえ接近するのが困難だったというのに、ベールクトの攻撃が加われば難易度は一気に跳ね上がってしまう。
清香は静観しているが、元々戦力が隔絶しているのだ。何かしらの手を打たなければこのまま押し切られてしまう。
(清香は動かない、か……いや、動けないと考えるべきか?)
先程から部下やベールクトには指示を出しているものの、清香本人が動く様子はない。地面から空へと向かって立ち昇る虹色の光の渦を守るよう、立ちふさがっているだけだ。
最初に接近した時は虹色の光を守る形で円陣を組んでいた。それを考えれば、距離を取れば追ってくることもないかもしれない。
(超長距離からの『狙撃』……周囲の戦力が迎撃して終わりか。挑発しても乗ってくるとは思えないし、ここで必要なのは圧倒的多数の敵が相手でも面制圧が可能な能力を持つ『ES能力者』……)
博孝の脳裏に『零戦』の隊長である藤堂の顔が思い浮かんだが、この場にいないのでは意味がない。現状の戦力で最も射撃系ES能力の制御に向いているのは博孝だが、ここで力を使い果たすのは論外だ。
戦いは数の多い方が有利である。『ES能力者』の中には数の不利を単独で覆す者もいるが、さすがにここまでの戦力差を引っくり返すのは不可能だ。加えて、清香が操っている以上士気の低下や連携の不足も期待できないだろう。
「……おにぃちゃん」
そうやって思考を練る博孝だったが、傍にいたみらいから声をかけられて意識を切り替える。視線を向けてみると、みらいは何故か悲しそうな顔をしながらベールクトを見ていた。
「あのこ、かわいそう。さびしい、かなしいってないてる」
「……みらい?」
哄笑するベールクトを見詰めつつ、みらいが語ったのは真逆の感情。ベールクトが可哀想だと、泣いているのだと、みらいはそう言った。
「いや……そうなのかもな」
ベールクトに対して複雑な感情を抱いているのは、博孝だけではない。みらいは博孝や恭介を傷つけられたことで怒りを覚え、しかし、それと同時にベールクトからは寂しさや悲しさといった感情も読み取れた。
それはベールクトに姉と呼ばれ、ベールクトの話を聞く限り“血縁”があるみらいだからこそ感じ取れたのかもしれない。博孝もベールクトと接したことで理解できるが、みらいのように直感と感覚だけで読み取れるわけではないのだ。
どうするべきか迷う博孝だったが、このままではベールクトも暴れるだけ暴れてそのまま力尽きそうな気配がある。叶うならば博孝が止めてやりたかったが、博孝は清香を倒さなければならないのだ。
「あー……くそっ、もっと俺が強ければなぁ」
もっと強ければ、ベールクトを救った上で清香を打倒できたのではないか。そう考えた博孝だったが、それは所詮仮定の話でしかない。いつでも、どこでも、持っている力でぶつかるしかないのだ。
博孝はみらいの頭に手を乗せると、くしゃくしゃに撫でる。
「ベルはみらいに任せる……頼めるよな?」
「うんっ!」
頼む博孝に、みらいは笑顔で頷いた。そんなみらいを見て、いつの間にここまで頼れるほど成長したのかと苦笑したくもなる。
博孝がみらいに対して『活性化』を発現すると、みらいはそれに応えるようにして『構成力』を発現した。それはベールクトに勝るとも劣らぬ、巨大な『構成力』である。
『……お姉様の力を、感じます……』
そんなみらいの『構成力』を感じ取ったのか、それまで笑っていたベールクトは笑顔を引っ込めて真顔になった。そしてみらいをまっすぐに見据え、前へと出てくる。
『そう……そうでした……お姉様を殺さなきゃ……そうしないとお兄様を取られちゃう……“だから”殺さなきゃ……』
空を飛んでいるにも関わらずフラフラと、まるで出来の悪い操り人形のような動きでゆっくりと迫るベールクト。そんなベールクトの姿を見たみらいは一瞬悲しそうな顔をしたが、すぐに表情を引き締めた。
みらいは『構成力』を全開にしたままで博孝達から大きく離れると、ベールクトもそれに追従する。そして博孝達が見えなくなるほどに距離を取ってからみらいは動きを止めた。
『ここがお姉様の死に場所で良いんですか?』
みらいと同じように動きを止めたベールクトが問いかけるが、その瞳はギラギラと刃物のように輝いている。みらいを殺すと、濁った感情を宿して睨み付けている。
『わたしはしなない。あなたにころされるつもりなんてない』
殺気溢れるベールクトに対し、みらいは静かに言葉を返した。赤黒い『構成力』を放つベールクトに対し、白い『構成力』を放ちながらベールクトの目を真っ向から見返す。
『死にますよ。わたしが殺しますから』
挑発するようにベールクトが言うが、みらいは微塵も動揺する様子がない。変化があったとすれば、自身を殺すと宣言するベールクトを痛ましげに見たことぐらいだ。
ベールクトとは初めて戦うわけではない。これまでにも交戦したことがあり、目の敵にして襲ってきた。清香によって精神に異常を抱え、放たれる『構成力』の質も大きく変化しているが、みらいがベールクトに対して抱く印象は変わらない。
――何故、これほどまでに“寂しそう”なのか?
みらいはそんな疑問を覚えたが、もしも立場が逆だったならばと思えばそれも納得できる。
『天治会』の一員として生きてきたベールクトと異なり、みらいは周囲の者達に優しく、温かく、大切に育てられた。時には砂原などから厳しく鍛えられたが、みらいの周囲にいた者は悪意を持って接してきたわけではない。
むしろ、その全てがみらいを成長させるためにあったのだ。そんな機会を得られず、『天治会』の命じるままに動いてきたベールクト。二人の立場を比較すれば、みらいにもベールクトの抱く感情の一端が理解できた。
もちろん、ベールクトの全てが理解できるなどとは口が裂けても言えない。しかし、自分と容姿も生まれもよく似た――それこそ間違いなく“つながり”がある少女が自分を殺すというのなら、やることは決まっていた。
『なら、わたしがとめる。だって……』
そう、止めるのだ。ベールクトが殺すというのなら、それを絶対に止める。みらいには殺されてやるつもりもなければ、ベールクトを殺すつもりもない。
『――“おねぇちゃん”だから!』
相手が“妹”ならば、それを止めるのは姉の役目なのだから。
『余計な手出しはしないのか?』
みらいが離れるなり即座に追い掛けたベールクトの姿を見た博孝は、警戒心を滲ませながら清香に問いかける。二人は富士山から遠く離れた山間部を戦場に選んだらしく、巨大な『構成力』同士のぶつかり合いが始まっていた。
清香が動くと思っていた博孝だが、予想に反して清香の動きはない。もしも部下を向かわせれば敵戦力を削る契機になったのだが、清香は一人たりとも部下を動かそうとしなかった。
『ここにいる手駒を向かわせてもあの子が燃やしそうだしね……それに、興味があるのよ』
『興味?』
清香の思考など理解できないが、興味という曖昧な言葉で動くようには思えない。ベールクトがみらいを追ったことで戦いは振り出しに戻ったが、清香は相変わらずの様子で笑うだけだ。
『人造の『ES能力者』同士、そして姉妹同士の殺し合いがどんな結末を迎えるのか……それがとても興味を惹くの』
くすくすと笑いながら答える清香に対し、博孝の中で嫌悪感と疑問が膨らんでいく。だが、清香を問い詰めてもはぐらかされる気がしたため言葉を止めた。
(みらいは単独で動く方が戦いやすいタイプだ……恭介はまだ動かさない方が良いな)
その代わりに考えたのは、みらいのことである。恭介と共に動かそうと思っていた博孝だが、みらいの様子を見る限り周囲の“助け”はいらない。
ベールクトの能力は厄介だが、みらいもまた『星外者』に近づいた『ES能力者』だ。博孝を除けばこの場の戦力で最もベールクトとの戦いに向いている。
『それで? これからどうするの? あの子だけに戦わせるつもり?』
余裕のつもりなのか、清香は博孝達から視線を外してみらいとベールクトが戦っている方向へと顔を向けた。その姿は隙だらけであり、接近さえできれば一撃で仕留めることができそうである。
何百という敵性『ES能力者』の妨害を突破できれば、だが。
『――ならば我々も混ぜてもらおうか』
しかし、睨み合う博孝達を遮るようにして声が響いた。それと同時に三十を超える『構成力』が地上に出現し、対空砲火のように無数の光弾が放たれる。
(里香が動いた……いや、違う!)
放たれた光弾の雨は清香を挟んで博孝達とは反対方向、虹色の光を守るように円陣を組んでいた『ES能力者』を強襲した。放たれたのは『射撃』のようだったが、光弾の数と速度、そして威力は並の陸戦部隊員では到底出せないものである。
里香が援護のために動いたのかと思った博孝だが、その攻撃は掻き集めて急造でまとめ上げた陸戦部隊には行うことが不可能な練度。まるで単独の『ES能力者』が発現したのかと思えるほどに統制の取れた、正確で強力な一斉射撃だった。
『“招待状”もなしに飛び入りでパーティに参加するなんて、礼儀を知らないようね……どちら様かしら?』
いくら空戦の『ES能力者』と云えど、数百発もの一斉射撃は堪えたのだろう。落下していく数人の部下を冷たい眼差しで見送った清香が尋ねると、その返答は即座に行われた。
『第一陸戦部隊隊長、渡辺陸戦中佐だ。“援軍要請”に従い、貴様の邪魔をさせてもらおう』
それは陸戦部隊の中でも空戦部隊を超えると評される第一陸戦部隊、『空撃』とあだ名される渡辺が率いた援軍の到着を知らせる一声だった。




