↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
平和の守護者(書籍版タイトル:創世のエブリオット・シード)  作者: 池崎数也


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

262/329

第二百五十四話:ベールクト

 清香からの“命令”を伝えられた翌日。博孝は寝る間も惜しんで――正確に言えば寝る暇もなく『活性化』を発現していた。


 意識を集中し、右手に握った『進化の種』に対して『活性化』を発現。薄い桜色の『進化の種』が少しずつ色を濃くしていくのを見ながら、考え事を行う。


(これで六十個目、と……さすがにきつくなってきたな)


 色が濃くなっていく『進化の種』に茫洋とした視線を向けつつ、心中でそんなことを呟いた。『活性化』を何十回、それも毎回十分近く発現していたため、体力が限界に近づきつつある。

 『活性化』に必要なのは『構成力』ではなく博孝の体力だ。使えば使うほど疲労が溜まり、博孝は全身に大きな疲労を感じつつも『活性化』を発現し続ける。もしも柳のもとで『活性化』の扱いに関して学んでいなければ、今頃倒れていただろう。


 清香の見立て通り、一日に『活性化』を発現できる『進化の種』の数は五十個程度。これは休憩を挟みつつ行った場合だが、休憩を取らなければ途中で倒れてしまう。

 同時に複数の『進化の種』に対して『活性化』を発現したこともあったが、その場合は必要となる時間と体力が『進化の種』の数に比例して増えただけだったため、今は一つずつ『進化の種』を手に取って『活性化』を施していた。


「それでね……お兄様、聞いてる?」

「……ん? ああ、聞いてるって」


 そんな博孝に対し、ベールクトは頻繁に話しかけてくる。清香から博孝の見張りとして選ばれたベールクトだが、何が楽しいのか、機嫌良く話かけてくるのだ。


 何度か殺し合った仲だというのに、ベールクトは微塵も気にしていない様子で接してくる。博孝も最初は警戒していたものの、無邪気かつ無防備に話しかけてくるベールクトには毒気を抜かれてしまい、作業の傍らで話し相手を務めていた。

 ベールクトが殺すつもりで襲ってくるのならば話は別だが、あまりにも隙だらけな姿を見せられては博孝も手の出しようがない。


 『活性化』を発現するための集中力が少しばかり削がれるが、その程度で発現できなくなるような鍛え方はしていないため問題にはならなかった。加えて言えば、下手なことを言って里香に手を出されては困るため、ベールクトの機嫌が良いに越したことはない。

 そう考えていた博孝だが、ベールクトは予想以上に喋る。疲労を抱えた博孝がおざなりな反応をしても咎めず、楽しそうに話しかけてくるのだ。


 ベールクトは里香を部屋の外に待たせた状態で部屋に入り、思いついた端から話題を振ってくる。話題がなくなれば『活性化』を発現する博孝を笑顔で見守り、時折食事や飲み物を運んできた。

 また、博孝が清香に案内された部屋から『進化の種』を運び、博孝が『活性化』をかけ終えた『進化の種』は運び出すという作業を行ってもいる。それら一連の動き全てが隙だらけであり、不意を突くこともできそうだった。


 ――博孝にその気が湧けば、だが。


 『活性化』による疲労は大きく、万全とは言い難い。仮にベールクトを制圧できたとしても現在地が不明であり、『星外者』や清香から逃げられるとも思えない。『星外者』や清香は姿を見せないが、逃げようとした途端に姿を見せてもおかしくはないのだ。

 そして、それ以上に博孝に戦うつもりがなかった。清香が明かした事実――これまで麻痺していた恐怖感がこの場からの脱出を妨げ、結果として清香の言いなりになっている。


(せめて……せめて、情報収集ぐらいはしないとな……)


 部屋の外で人形のように立つ里香から向けられる眼差しが、どこか非難めいているように感じられた。実際には何の感情も浮かんでいないのだが、博孝も敵地に囚われているという状況が精神に負担を強いている。


 『活性化』をかけ終えた博孝は、濃いピンク色の輝きを放つ『進化の種』をベールクトに手渡してから壁に背を預け、大きく息を吐いた。

 まだ余裕があるが、休める時に休んでおきたい。それと同時に、休んでいる間はベールクトと話すことで情報を集めたかった。逃げ出す気概が湧くかわからないが、情報はあるに越したことはないのだ。


「お兄様、休憩するの?」

「ああ……さすがに少し疲れちまったよ」


 博孝が壁に背を預けると、すかさずベールクトが尋ねてくる。博孝は苦笑しながら肯定してみると、ベールクトは目を輝かせて博孝の隣に座った。


「喉は乾いてない? お腹は空いてない?」


 ベールクトはどこから調達してきたのか、水が入ったペットボトルと野戦食のパックを差し出してくる。部屋の隅にはベールクトが持ち込んだ段ボールが置かれており、その中には水や野戦食が詰め込まれていた。

 博孝は礼を言ってペットボトルだけ受け取ると、蓋を開けて水分を補給する。最初は毒などを警戒していたが、今の状況で毒を盛る意味もないと判断した。


 甲斐甲斐しく世話を焼くベールクトだが、博孝からすれば念願の玩具かペットでも手に入れた子どものように思える。高圧的に接してくるよりも楽なため博孝は何も言わないが、みらいと異なる歪さを感じ取っていた。

 情報を得ようとしても、素直に答えるかわからない。それでもこの場にはベールクトしか話を聞ける相手がおらず、博孝は緊張を隠しながら口を開いた。


「ベールクトも少しは休んだらどうだ? いくらあいつらの命令だからって、四六時中貼り付いとく必要もないだろ」

「“命令”ですもの。その重さはお兄様も御存知では?」

「……まあ、一応は」


 何でもないようにベールクトは答えるが、博孝は血を吐きながら息絶えた武治のことを思い出す。だが、『星外者』の命令はそれほどまでに強力なのかと、博孝は内心で首を傾げた。


 ベールクトは里香と違い、清香に操られているわけではないだろう。『端末』なのかは定かではないが、話を聞いた限り清香の能力は広範囲かつ強力過ぎる。

 『ES能力者』を操り、最悪の場合自害まで可能なその能力。武治のように機密を話そうとしただけで死に至るなど、あまりにも理不尽な能力だ。

 命令に従うと言うベールクトの返答も、当然と言えば当然だった。しかし、博孝はそこで疑問を覚える。


(……待てよ? そんなに強力ならなんで俺に使わないんだ? 里香を人質に取って言うことを聞かせなくても、俺を操って『活性化』を使わせればそれで十分のはず……)


 博孝も感情の一部を麻痺させられていたが、“それだけ”だ。改めて能力を使われれば、今頃操り人形になっていただろう。そちらの方が『星外者』や清香にとっても都合が良いはずだ。

 博孝は清香に操られていないであろう人物を脳裏に思い浮かべる。これまでの行動から、仮に清香や『端末』からの影響を受けていたとしても“軽傷”の者も含めて。


(長谷川中将、宇喜多大尉、柳さん……藤堂大佐や春日大尉は付き合いが浅すぎてわからねえ……隊長は危ない、か?)


 今思えば、砂原も何かしらの影響を受けていた可能性がある。しかしそれは武治のように命ごと操られるようなものではなく、軽いものだ。


(隊長も含めるとして……沙織、恭介、みらいはどうだ?)


 身近な人物達も思い浮かべた博孝は、それぞれの共通点を探し――すぐに見つけた。沙織や恭介、みらいは別として、他の者達は全員が日本の中でもトップクラスの『ES能力者』である。

 実力、実績、保有するES能力等々、並の『ES能力者』では束になっても敵わないような者ばかりだ。


(一定以上の実力があれば通じない? いや、それならフェンサーは……でも、清香の力が効くのなら隊長も今頃は……)


 砂原などは、わざわざラプターが直接殺しにくるほどだ。戦力を減らしてまで命を狙うよりも、操って自決させた方が楽だろう。

 自分が砂原達に匹敵する技量だとは到底思えないが、操られていない以上は理由があるはずだ。


(『活性化』が関係しているのか? でもなぁ……)


 通常の『構成力』を発現するよりも先に発現した『活性化』だが、それだけで勝てるほど『ES能力者』は生易しい存在ではない。たしかに便利な能力ではあるが、博孝としては納得ができないものがあった。


「お兄様……お兄様? ねえ、聞いてる?」

「ん? あ、悪い。考え事をしてた」


 思考に耽る博孝だが、ベールクトの声で我に返る。何度か話しかけていたらしく、ベールクトは不満そうに頬を膨らませていた。その外見に見合わぬ幼い仕草に、博孝はみらいの姿を重ねて無意識の内に頭へと手を伸ばす。


「んっ……」


 みらいにしてやるように、優しく頭を撫でる。ベールクトは博孝が手を伸ばした時点で僅かに警戒していたが、そこに殺気も戦意も感じられなかったため、無抵抗で頭を撫でられた。


「お兄様、これは?」


 どこか嬉しそうに、それでいて困ったように首を傾げるベールクト。博孝はそんなベールクトの反応に目を瞬かせ、バツが悪そうに手を離す。


「……いや、みらいを相手にするみたいについ、な」


 ベールクトは敵だというのに、何をしているのか。博孝がそんなことを思いながら釈明すると、ベールクトの目が鋭く細まる。


「ふーん……お姉様みたいに、ですか」


 みらいに執着しているベールクトへの返答としては、悪手だっただろう。博孝は遅まきながらそれに気付いたが、目を細めていたベールクトは予想外にも表情を緩ませる。


「そう……ふふっ、そうなんですね」


 クスクスと、どこか楽しそうに笑うベールクト。その反応は意外であり、博孝は頬を掻きながら尋ねる。


「あー……怒るかと思ったんだけどな」


 ベールクトは本当にみらいに似ている。外見だけでいえば幼いみらいの方がベールクトに似ているというべきなのだろうが、ベールクトの方がみらいを“姉”だと呼んでいるのだ。

 そのため、外見に加えて仕草まで似ていては博孝も戦意が湧かない。今の状況でも心を和ませる、貴重な存在だった。


 しばらくの間ベールクトの反応を見ていた博孝だが、これも良い機会だと判断して前々から気になっていたことを尋ねることにする。


「それで、だ……少し聞きたいんだけど、ベールクトはなんでみらいを目の敵にするんだ?」

「……気になるんですか? お姉様ではなく、“わたしのこと”が?」


 博孝としては、ある意味当然の質問。しかし、ベールクトから返ってきたのは驚くような声だった。予想外の質問だといわんばかりに目を見開いており、信じられないように博孝を見詰めてくる。


「……? 何度か戦ったけど、あんな風に襲ってこられると気にもなるって」


 ベールクトのことを気にしてはおかしいのだろうか。あまりにも反応に違和感があったためそう思いながら答え、博孝は頬を掻く。


「それにまあ、形だけでも妹として接してこられると弱くてな」


 ベールクトに『お兄様』と呼ぶように言ってしまったのは博孝である。みらいを『お姉様』と呼んでいたからという、その場限りの冗談のつもりだったのだが、ベールクトはその後も博孝を『お兄様』と呼び続けていた。

 他の敵と違い、博孝を“本気で”殺そうとしていたわけではないというのも大きなポイントだった。敵に囚われた状態と云えど、言葉を交わせる程度には距離が近い。少なくとも、『星外者』や清香よりは話が通じるという点も重要だ。


 ただし、恭介やみらいを傷つけたことも事実のため、すぐにわかり合えるとは思えない。しかし、折角の機会なのだ。清香の命じるままに『進化の種』へ『活性化』を発現する傍ら、ベールクトの“事情”を聞き出せればとも思う。


(話をしているうちに、何かしらの情報を得られるかもしれないしな……)


 情報収集を行うという目的にも沿うため、博孝は本腰を入れてベールクトの話し相手を務めることにした。


「それだけにみらいを狙われるのは困るんだけど……なあベールクト。そろそろその辺りの理由を聞かせてくれないか?」


 初対面の時からみらいに対して敵愾心を剥き出しにしていたベールクト。戦いの最中に色々と話を聞いていたが、ベールクト本人の口から詳しく聞いたことはない。そのため詳しい話を博孝が求めると、ベールクトは視線を宙に向けた。


「……本当にわたしのことを聞きたいの?」


 しばらく悩み、窺うようにして視線を向けてくる。博孝は意識して笑みを浮かべると、ベールクトを納得させるよう大きく頷いた。


「そう……そうですか……お兄様が聞きたいのなら」


 『星外者』や清香に関わることではないからなのか、武治やフェンサーのように言葉を濁すこともない。博孝はそのことに着目しつつ、話を促した。


「お兄様はわたしやお姉様の“個体番号”は御存知かしら?」

「個体番号? それは……乙1024号とか丙256号とかいうやつか?」


 一瞬何の話かと思った博孝だが、思い当たる話を記憶から引っ張り出して答える。すると、ベールクトは嬉しそうに笑った。


「あら、わたしの方も覚えていてくださったのね?」

「……まあな」


 砂原への報告書に何度も書いていたため、博孝も覚えていたのである。みらいと異なり、『天治会』の内部につながる可能性がある情報として考えていたため、素直に喜ばれると博孝としても複雑だった。


「では、その個体番号がどうやってつけられるかは?」

「いや……それは知らないな」


 みらいやベールクトの個体番号は覚えていたものの、その番号に関してそれほど深く考えたことはない。正確に言えば、情報がなさすぎて考えられなかったと言うべきか。


「……その番号分、ベルちゃんみたいなのがいたり?」


 冗談めかして尋ねる博孝。さすがにベールクトクラスの『アンノウン』が何百人もいれば、戦力的にも脅威だ。


「正解ですわ」


 そして、ベールクトはそんな博孝の冗談を肯定する。その答えを聞いた博孝は、思わず顔を手で覆ってしまった。


「……本当に?」

「ええ」


 短く、されど迷いなくベールクトは頷く。それはつまり、博孝が過去に殺した敵の中にはみらいやベールクトの兄弟姉妹が含まれていたということか。

 知らなかったこととはいえ、それは――。


「あ、でも番号を振られた全員が生まれたわけじゃないし、血縁もないんですよ? わたしとお姉様は“例外”の部類ですけど」


 博孝の心境の変化に気付いたのか、それとも話を続けただけなのか、ベールクトが言葉を紡ぐ。博孝はベールクトが気遣ったのだろうかと疑問に思いつつ、声を発した。


「全員が生まれたわけじゃないっていうのは?」

「え? それは単純な話ですわ。試験管の中で死んだり、成長途中で死んだりしただけです」


 こともなげに言ってのけるベールクトだが、その内容は凄まじい。博孝が絶句していると、ベールクトは己の言葉を気にすることなく話を続ける。


「わたしとお姉様は同じ“サンプル”を基に生まれた存在ですから、ある意味本当の姉妹になります……いえ、同一人物? 双子? 親子? でも、それなのにお姉様だけ自由で……だから殺す? ずるいから?」


 しかし、話している途中でベールクトの様子が変わった。みらいとの関係性について何度も呟き、剣呑な気配を放ち始める。


「あー……そ、それで? 乙とか丙とかってのは? 甲もあるのか?」


 危険な気配を感じ取った博孝は、強引に話を逸らそうとした。すると、ベールクトは身を震わせてから我に返り、曖昧な笑顔を浮かべる。


「わたしも詳しくは知らなくて……でも、存在するってことだけは知っています」

「へぇ……存在するのか」


 ベールクトの反応に疑問を抱きつつも、深く追求することなく流す博孝。藪を突いて蛇を出しては敵わないのだ。


(みらいが『ES能力者』、ベールクトが『アンノウン』。それなら甲は……『ES寄生体』か?)


 清香の話から考えれば、『ES寄生体』の発生にも『星外者』関わっている可能性が高い。そうなると、人工の『ES能力者』の前に人工の『ES寄生体』が存在していても不思議ではないだろう。


(そんなものを造って何をするつもりだったのか……)


 問題があるとすればそこだ。今では世界中に存在している『ES寄生体』だが、『星外者』が意味もなく

生み出すとは思えない。

 ベールクト個人の事情に関しては少しずつ聞き出せているが、『星外者』や清香につながる情報はほとんどない。それでも博孝はベールクトとの話を続けるが、あまり時間をかけては『進化の種』に『活性化』を発現する時間がなくなってしまう。


「ベールクトは何であんな奴らに従うんだ?」


 そのため、これが最後の質問としてベールクトに問いかけた。ベールクトは博孝の質問を受けて不思議そうに首を傾げ、純粋に問い返す。


「それならお兄様、逆に聞くわ。わたしの立場であいつらに逆らえると思うの?」

「……悪い、わかりきったことだったな」


 『天治会』か『星外者』かはわからないが、それらの手によって生み出されたベールクトの立場を考えれば答えは決まっていただろう。しかし、博孝はそれならばと質問を変化させる。


「じゃあ、もしも『星外者』達から解放されたら? それでも従うのか?」

「えっ……」


 博孝がしたのは、“もしも”の話だ。もしも今の環境から解放されれば、ベールクトはどうするのか。

 それぐらいならば違った答えが出てくるだろう。そう思っていた博孝だが、ベールクトは口元に手を視線を彷徨わせる。


「……そんなこと、考えたこともなかったわ」


 それは、『星外者』に勝てる者がいないと考えているからか。それとも生まれながらにして逆らうことがないよう刷り込まれているのか。

 戸惑った様子のベールクトに、博孝は特に考えることなく言う。


「俺としては、みらいとベールクトが争う理由になってるのなら是非潰れてほしいね。『星外者』に誰が勝てるかは……まあ……」


 『星外者』や清香に勝てる者がいなければ実現しない話だが、『星外者』達がベールクトとみらいが争う原因になっている可能性もあった。ベールクトは彼らに逆らえないようだが、それを取り除けばどうなるか。


 ベールクトが個人的にみらいを恨んでいる節もあるが、腰を落ち着けて話してみれば十分に話が通じる印象を博孝は受けた。あとは“誰かが”『星外者』に勝ってくれれば丸く収まる可能性もある。


(……そいつは逃げか)


 自分で倒すのではなく、他の誰かが『星外者』を倒すことを望んでしまう。それほどまでに『星外者』の強さに恐怖し、恐怖心を植え付けられた精神が脆くなっているのだ。

 ベールクトから情報を集めようとしたのも、少しでも『星外者』のことを知って恐怖を和らげようとしていたのかもしれない。博孝は気分が落ち込んでいくのを自覚しながらも、表面上は平静を装ってベールクトに笑いかけた。


「とりあえず、俺としてはみらいとベールクトが殺し合うのは嫌だって話さ……さて、作業に戻るか」


 結局、『星外者』や清香に関する有力な情報は得られなかった。それでも、ベールクトと話をすることができたのは意味があることだと博孝は思う。


 ベールクトはみらいに対して思うところが――『天治会』の所属ではなく自由の身になっていることを恨めしく思っているようだが、改善の余地があるように思えた。それならば、ここから脱出できれば殺し合わずに済むかもしれない。

 そんなことを考えながら博孝はベールクトから新しい『進化の種』を受け取り、『活性化』を発現する。


 今はとりあえず、清香の言うことに従っておこう。可能ならば情報も集めておこう。ベールクトと話していれば、何か情報を得られるかもしれない。


 ――それらの考えが恐怖から逃避するためのものだと、博孝は気付けなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。