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タイトルがあざといです。

作中、主人公が聞いているのは、タイトルになっているあの名曲です。

出来れば思い浮かべながらお読み下さい。

 男は壁に追い詰められ、床に這いつくばっていた。

 少年は無表情に、銃口を男に向けていた。

 おそらくは三つ揃えであろう、男のベストの右肩と、ズボンの左の太ももに小さく焼け焦げた穴が出来ていて、その穴の周りを血が赤黒く濡らしている。

「頼むから、殺さないでくれ。欲しい物は何でもやる。金か? 情報か? 言ってみろ」

 苦痛のせいで荒くなった息の下で、男は言った。

 男の言葉に、少年は銃を持った右手を降ろした。

「何でも? 本当に?」

 男の表情は、その顔に「助かった」という文字が読めそうなものになった。

「金か? 金だろう? いくら出せばいいんだ?」

 少年はそれまで無表情だった顔に、冷ややかな薄い笑みを浮かべた。そして再び、銃口をゆっくりと持ち上げる。

 男の表情が「何故だ?」という問いに変化する。その問いを言葉にする前に、男の額に三つ目の小さな穴があいた。その穴から、鮮やかな赤い血が一筋流れ落ちる。


「欲しい物は、確かにいただきました」


 少年はつぶやくようにそう言うと、銃を穿いているコットンパンツのベルトに挟み込み、上からTシャツをかぶせて銃を隠した。

 それからコットンパンツのポケットを探り、器用にイヤホンを引き出し、両耳に差し込んだ。

 そしてもう一度ポケットに手を入れ、イヤホンのつながったスマホを取り出す。

 少年は自分が作り出した死体の前で電話をかける。数回のコールの後、男が電話に出た。今はもう、聞き慣れた声だ。

「完了」

 少年はそう一言告げると、電話を切った。そのままスマホを操作して、音楽をかける。今はもうこの世にいない男が、バラードを歌いだした。

 スマホではなく、ラジオから聞きたいと少年は思う。ノイズ混じりの音の方が、この男の声に似合う気がした。出来るならその歌のとおりに、カーラジオで、今はもうこの世にいない少女と一緒に。


 最後のレクチャーを終え、死体を後に残して、少年は部屋を出る。

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