表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/13

4章:依頼人、再び。

「あんた…やっぱり朝は弱いみたいだな?」

その声で、目をぼんやりと開けてみようとしたが…瞼が上がらない…。

どうにも、顔に何かが乗っているようだ。


…お前な…起こし方にも色々あるだろうが…。

「叩いたりする程度では起きないと思ったからな…まぁ、サービスだ」

丁重にお断りさせてもらう…そういうサービスは。

とりあえず、どいてくれないと、起きることすら出来ないんだが…?

「おっと、それは悪かったな…今どけるからちょっと待ってくれ」

朝から、とんでもない起こし方は、遠慮願いたいね…。

「引っ掻かなかっただけ、ありがたいと思って頂きたいね」

はいはい、ありがとよ…。

「で、依頼人は、いつ頃来るんだい?」

えっと…後、30分程だな…ちょっと着替えるから、その間にこいつを見ておいてもらえるか?…お前の意見が聞きたいからな。

「ん?これは…何の図面だい…?」

例の廃ビルの図面さ。

「へぇ〜!よく、そんなものを持っていたね?」

持ってはいないさ…昨日、お前が帰った後に入手した。

「昨日?でも、たいして時間は無かったと思うんだが…どうやって手に入れたんだい?」

そいつは…企業秘密ってやつさ。

「ははっ、企業秘密か…それじゃあ、突っ込んだ質問をするのは野暮ってもんだね」

まぁ、そういうことにしておいてくれ…で、それを見てどう思う?

「う〜ん…なんともいえないけど…あのビルって、地下があったんだね…表からは分からなかったけど」

そうなんだよな…で、よく見てくれ…その地下から、表に直通で出られるルートが…ここにある。

このルートを辿ると、少なくとも、ビル周辺を徘徊するような人間と接触することなく、表の人間と接触することが可能になるんだ。

「へぇ…あのビルって、そういうつくりになっていたんだ…ん?でも…このドアのところの書き方だと…って、あんた、もう着替え終わったのか?」

まぁ、着替えるって言っても、ズボン替えて、シャツ着ただけだからな…わざわざスーツとかまで着込む必要も無いだろうしな。

「最もな意見だね」

で、お前が思っている通り、ここの表と繋がっているドアは、中から出ることが出来るが、外からは入ることが出来ないような構造になっている…らしい。

「ふ〜ん…てことは…中に住み着いても、外部と最小限の接触だけで生活できるって事か…流石に、そこまでの情報は無かったなぁ…僕のところにも…」

まぁ、情報源が違うからな…。

「で…ここまで分かったということは、行方不明になっているって言う人は…」

多分、あのビル内にいるんだろうな。


事務所に、来客を継げるベルの音が鳴り響き、俺は、事務所ドアを開ける。

「こんにちは…あの…あの人の行方は分かったんですか…?」

「えぇ…予測の域を出ないところはあるんですが…貴女は、例のビルには行ってみましたか?」

「…えぇ…行ったんですけど…元々、無人のビルだったので…ちょっと怖くて…」

「中までは…確認をしていないということでしょうか?」

「…はい」

…この辺までは、おおよそ予想通りだな…あのビルの中に入って、人の有無を確認した人間は、多分いない…いるとして、警察関係だろうけど…それを考えれば、警察の方が、彼女の依頼を断った形になった事も予想できるな…。

問題は、行方不明の報道後のニュースなのだが…俺は、そのニュースを見ていないんだよな…。

「話は変わりますが…例の行方不明のニュース後の続報については何か見ましたか?」

…生活スペースともなっている事務所にはラジオ以外存在していないし、それすらもまともに動かしたりしないしな。

そもそもの情報は、あいつから聞いたものだ…。

「えっと…そういえば、気が気じゃなくて、テレビとか…全然見ていませんでした…」

…ひょっとすると…悪戯でしたとか、勘違いでしたとか…そういった類のニュースが流されていたかもしれなかったが…地方で起きた事件だし、大々的に取り上げるようなことは無いか…。

「警察の方への連絡は?」

「一応…捜索願も出そうと思って相談したのですが…無駄になるだろうって…そういわれました」

…決定的だな…警察の方は相応の事情を知っている可能性が高い…問題は、何で婚約者って言う立場なのに、姿をくらませた状態を維持しているのかって言う話だな…。

「あの〜…」

おずおずとした声で言ってきたので答える。

「どうかしましたか?」

「猫ちゃんが…なついてしまったんですが…」

良く見たら、黒猫が対面で座る女性のひざの上に居座っている…いい気なもんだな。

「まぁ…放っておけばそのうち、どこかに行きますから…しばらく我慢してください」

「…分かりました…」

…どことなく、嬉しそうに見えるのだが…この人は猫好きなのかね?…ろくでもない奴なのだが…。

「さて…とりあえず、事情は移動中に話しますので、例の廃ビルに行ってみますか?」

「え?…やっぱり、あのビルに何かあるんですか?」

「…えぇ…恐らくですが…」

そう言いながら、女性のひざを独占していた猫の首根っこを掴んで引き上げる。

「フギャーッ!」

不機嫌そうに鳴くが…まぁ、気にしないでも良いだろう、どうせ、こいつも連れてビルの方に行くのだし。

「あれ?その猫ちゃんも連れて行くんですか?」

「えぇ…下手に事務所に置いて行って荒らされても困りますし、元々、隣街の野良ですから」

後半は、結構適当なことを言ったが、実際、こいつを事務所に放置して荒らされたことは何度かあったしな…。

「では、参りましょうか…?」

そう言って、事務所のドアを開けて、表に止めてある車に乗り込んだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ