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独身税を免れるために再会した学園1の美少女と0日婚したのだが、最近嫁の様子がおかしい  作者: 田中 又雄


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7/12

始まりの同棲生活

 あれから数週間が経過した。

あの偽装デートから、梨央奈の計画は着実に進んでいた。


 まず、婚姻届を役所に提出し、正式に夫婦となった。

それから俺の両親への挨拶、細かい設定のすり合わせ、擬似デート…。


 一応、偽装とはいえ、戸籍上は結婚した事実が刻まれる。

会社の同僚たちには、ぼんやりと「結婚したよ」と報告しただけだ。


 もちろん、今のところ結婚式の予定はないので、ひとまずおめでとうとは祝ってくれた。


 特に雫は大興奮で、「おめでとう! パーティーしようよ!」と騒いでいた。


 両親は大喜びで、母は「早く孫の顔が見たいわね」と早くもプレッシャーをかけてきていた。


 あくまで嘘であるが故に心が少し痛むが、既に経済的なメリットは実感していた。


 独身税の負担がなくなり、共通の通帳には補助金が入るようになった。


 それだけでと無駄な支出が抑えられ、生活に余裕が出る。

まさに梨央奈の計算通りだった。


 そんな中、いよいよ同棲生活が始まることになった。


 多分、1年間はしばらく行政の人がチェックしにくる可能性があるので、偽装は完璧にしないといけなかった。


 そんな中、梨央奈が選んだマンションは、街の中心部から少し離れた閑静な住宅街にある3LDKの物件。


 広々としたリビングに、寝室が一つでお互いの仕事部屋が一つずつ、そしてバルコニー付き。


 家賃はそれなりに高そうで、俺は少し心配になった。


 それにこれまで俺は狭いアパートで一人暮らし。

だらしない生活を送ってきた——散らかった部屋、インスタント食品の山、洗濯物の積み重ね……。


 女性と親密な関係になること自体数年ぶりなわけで…。


 そんな俺が、美人の梨央奈と同居するなんて、信じられない。

しかも、ベッドはダブルベッド一つ。


 偽装のためとはいえ、「調査の時ために寝室一つ」って設定が、現実味を帯びてくる。

心のどこかで、期待が膨らむ。

ドキドキするけど、彼女はあくまで対応は事務的。

俺のそんな思いなど、知る由もないだろう。


 引っ越しの日、俺はレンタカーを借りて、自分の荷物を運び込んだ。


 梨央奈はすでに家具を搬入済みで、部屋はそれなりに整っていた。


 シンプルでモダンなインテリア——白いソファ、木製のテーブル、観葉植物がアクセント。彼女のセンスが光る。


 俺の荷物は、古いゲーム機や本の山、服の詰まった段ボール。

既にだらしなさが溢れ出ており、俺のものが彼女の完璧な空間に混ざるのが、少し申し訳ない。


「ね、ここ、家賃結構するよね……」


 俺は段ボールを下ろしながら、呟く。

梨央奈はキッチンで荷解きをしながら、淡々と答える。


「そうね。まぁ、家は私が決めたことだし、家賃は私負担でいいわ。それ以外は折半しましょう」

「え!? いや、それは悪いよ……」


 俺は慌てて振り返る。

彼女は手を止め、目を細めて微笑む。

いつもの合理的で、一切の無駄がない表情。


「いいのよ。その代わり、買い物とか何かお使いを頼もうかしら。私、免許ないから車がないのよ。だからそこら辺でうまく折り合いをつけましょう」

「でも……お金大丈夫?」


 俺は心配になって尋ねる。

彼女は肩をすくめ、キッチンの棚に食器を並べ続ける。


「えぇ。それなりの会社で働いているから」


 そこで初めて知ったのだが、梨央奈は誰もが知るような大企業で働いていた。

名前を聞いて、俺は目を見開く。

あの有名なIT企業か……。


 年収は俺の倍以上…下手したら3倍とかだろう。

それなら、独身でもお金に困らないはずだ。

なんで偽装結婚なんて? と思うが、彼女の合理性からすれば、それでも結婚した方が税制面や補助金、更に車持ちの扱い安い夫が手に入るのならプラスだと計算したのだろう。


 本当に損得勘定の塊みたいな人だ。

でも、それが彼女の魅力でもある。

俺は自分の荷物を運びながら、心の中で呟く。お金持ちの美女と同居なんて、夢みたいだな……。


 家具の搬入が終わり、部屋が家らしくなってくる。


 梨央奈の指示で、俺も本棚を組み立てたり、カーテンを掛けたり。


 汗を掻きながら作業する中、彼女の横顔をチラチラ見る。


 長い髪を耳にかける仕草、集中した瞳。

高校時代から変わらない美しさ。


 元カノの裏切り以来、恋愛から遠ざかっていた俺にとって、この状況は刺激的すぎる。

無駄に意識してしまう。


 彼女の香りが部屋に広がり、心臓が少し速くなる。


 でも、梨央奈にはそんなそぶりは一切ない。あくまで事務的で、淡々と作業を進める。

俺の視線に気づいているのか、いないのか……。

作業の合間に、ふと質問する。


「そういや、俺は両親に挨拶しなくていいの?」


 梨央奈は手を止め、静かに答える。


「問題ないわ。あの人たちは私に無関心だから」


 その言葉に、少しの戸惑いが湧く。

無関心? そんな親がいるのか。

彼女の表情は変わらないが、声のトーンが少し低くなった気がする。


 これ以上は何も聞くな、という雰囲気。

俺は何も聞かず、作業を続ける。


 彼女の過去に触れるのは、まだ早いのかもしれない。

心の中で、彼女の孤独を想像する。

完璧に見えて、意外と脆い部分があるのかも……。



 夕方ごろにはすべてが終わり、新しいソファでくつろぐ。


 部屋はすっかり住みやすい空間になった。

梨央奈はキッチンで何かしている。

俺はソファに沈み、疲れた体を休める。

窓から差し込む夕陽が、部屋を橙色に染める。


「何か飲む?」


 梨央奈の声が聞こえる。俺はソファから身を起こす。


「いやいや、それぐらいは自分でやるよ」

「いいのよ。私もちょうど喉乾いてたから。紅茶でいいかしら?」


 彼女は笑い、キッチンでティーバッグを準備し始める。


 慣れた手つきで、お湯を沸かし、カップを並べる。


 俺はソファから彼女の背中を眺める。

あの学園のマドンナと、10年越しぐらいにこんな関係になっているなんて、想像もつかないよな。


 高校時代、遠くから見ていた彼女が、今、俺の「妻」として紅茶を淹れてくれている。


 偽装とはいえ、胸が熱くなる。

彼女の髪が揺れ、夕陽に輝く。

心の中で、淡い期待が膨らむ。

この生活が、続くといいな……。

そう思っていると、家のインターホンが鳴った。


「ん? 誰だ?」


 俺は立ち上がり、モニターに向かう。

まだここに住むことは俺の知り合いには伝えていない。

両親に報告はしているが、来るなんて話は聞いていない。

梨央奈がキッチンから顔を出し、静かに言う。


「……ちょっと待って」


 彼女はモニターを軽くタッチし、画面を確認する。そこに映ったのは、一人の男性の姿。


 スーツ姿で、ボサボサの髪。

梨央奈の表情が、固まったのがわかった。

彼女の目が少し細くなり、肩がわずかに緊張する。


「……誰?」


 俺の質問に、彼女は小さく答える。


「……会社の上司」


 その声に、ただならぬ気配を感じる。

梨央奈のいつも落ち着いた様子が、少し乱れている。

俺は心の中でざわつく。

この上司、何者だ?

そして、なぜここに?


 インターホンが再び鳴り、部屋の空気が重くなる。

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