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独身税を免れるために再会した学園1の美少女と0日婚したのだが、最近嫁の様子がおかしい  作者: 田中 又雄


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10/15

多分、この時

 アラームの音が、ぼんやりとした意識に響く。

スマホの振動がベッドサイドテーブルを震わせ、俺は目を細めて手を伸ばす。


 まだ暗い部屋に、梨央奈の声が優しく入ってくる。


「アラーム鳴ってるわよ。起きなくて大丈夫?」


 目を開けると、そこには彼女の顔がすぐ近くにあった。


 朝の柔らかな光がカーテンの隙間から差し込み、彼女の長い髪を優しく照らす。


 パジャマ姿の彼女は、昨夜の疲れが少し残っているようだが、目がぱっちり開いていて、既に起きていたらしい。


 距離が近すぎて、息が混じり合う。

寝ぼけた頭で、思わず本音がポロッと漏れる。


「あっ……可愛い……」


 彼女は少し驚いた顔をし、それからくすりと笑う。


 俺の頰を軽くつねってくる。

つねられた感触が、ぴりっと痛くて、ようやく目が覚める。


「ありがと。でも、起きなさい」


 彼女の指先が温かく、頰が少し熱くなる。

俺は慌てて体を起こす。

やばい…寝不足だ。


 昨夜、梨央奈の過去の話を聞いたことと、ベッドで美女と2人という状況に興奮と心配でなかなか眠れなかった。


 ベッドの端で寝ようとしたけど、結局彼女の寝息を聞きながら、ドキドキが止まらなかった。

時計を見ると、まだ6:30。


 いつも二度寝するために早めに設定している1回目のアラームだった。


 二度寝をしようと考えたが、彼女の姿を見てい気持ちを改める。


 すると、彼女は散らかった引っ越し後の小物を片付け、窓を開けて空気を入れ替える。

テキパキとした動きに、俺は感心する。


「……」


 俺は起きたもののぼーっとしていると彼女が笑う。


「もしかして寝れなかった?」

「…ううん。大丈夫」


 確かに、この新居から駅までは今までのアパートより近い。

通勤時間が短くなった分、余裕がある。


 それでもベッドを整える。

梨央奈はキッチンに向かい、朝ごはんの準備を始める。

俺もついていき、手伝う。


「朝ごはん何作る?」


 キッチンで、彼女は冷蔵庫を開け、パンや卵、野菜を取り出す。


 俺はトースターをセットし、卵を焼く。

彼女はサラダを切り、ヨーグルトをボウルに盛る。


 朝の光がキッチンを明るく照らし、卵の焼ける音が心地よい。

彼女の髪が少し乱れ、朝の素顔が新鮮だ。

俺はコーヒーを淹れ、テーブルに並べる。


「紅茶でいい? それともコーヒー?」

「コーヒーで。ありがとう」


 俺たちはテーブルに向かい合い、朝ごはんを食べる。

パンにジャムを塗り、卵をフォークで刺す。


 彼女はゆっくり噛み、窓の外を眺める。

朝の街並みが、穏やかだ。


「ごめんね。寝れなかったの私のせいよね」


 彼女の声は少し申し訳なさげ。

俺は首を振る。


「いや、話してくれてありがとう。嬉しかったよ」


 すると、彼女は微笑み、コーヒーを飲む。


 朝の時間がすごく心地よい。

そのまま、食事が終わり、片付けを一緒にする。


 彼女は洗い物をし、俺はテーブルを拭く。

それから準備を終え、出社する。

ドアを開け、彼女と別れる。


「行ってらっしゃい」


 彼女の声が、背中を押す。駅に向かう道中、昨夜のドキドキを思い出す。

この生活が、好きになりそうだった。



 ◇


 会社に向かう地下鉄の中で、雫と遭遇した。混雑した車内、吊り革に掴まっていると、彼女が隣に立っていた。


 ショートヘアが少し乱れ、大きな目が俺を捉える。


「秀太先輩! おはようございます。寝不足ですか? 目が赤いですよ」


 彼女の声は明るい。俺は苦笑する。


「まぁな……引っ越しで疲れたよ」


 雫は目を輝かせ、肘を突く。


「引っ越し? 新居ですか! 新婚生活、どうですか? 奥さん可愛いから、毎晩ハッスルしすぎなんじゃないですかー? w」

「ハッスルなんかしてないから。後輩が先輩にセクハラすな」


 俺は小声で返すが、雫はくすくす笑う。


「え!? してないんですか!? マンネリですか!?」

「ばっか、声でけーよ! 周り見ろ」


 車内の視線を感じ、俺は慌てる。

雫は肩をすくめ、声を小さくする。


「ごめんなさい!でも、先輩、新婚さんなのに寝不足って……奥さんとの生活、詳しく聞きたいです」

「普通に朝ごはん食べただけだ」

「へえー、いいですねー!私も結婚したいなー」


 それから会社に着き、デスクに座る。

雫はすぐに寄ってきて、質問攻め。


「先輩、奥さんのお弁当は? 手作り?」

「まだだよ。引っ越ししたばかりだし」


 雫は目を細め、「えー!それは残念ですね!」とはしゃぐ。


「こんな話聞いて楽しいか?

「私、先輩の幸せ話聞くの好きなんですよ!」


 俺は曖昧に笑う。

雫の好奇心に、梨央奈の過去を思い出し、守りたい気持ちが強くなる。


 それからは仕事に集中し、コードを叩く。

午後、ミーティングで上司の話を聞く。

いつものルーチンだが、今日は梨央奈のことが頭から離れない。



 ◇


 いつもより清々しい朝だった。秀太くんとの日常は……想像以上に私にとってプラスな気がしていた。


 偽装結婚を焦ったのがストーカー被害にあっているからという理由もあったことに対して、少なからず嫌な顔をされると思っていたが、秀太くんはただ本気で心配してくれていた。


 それが嬉しかった。

それに寝る時も色々と私に気を遣ってくれていて……久しぶりに熟睡することができた。


 今までの不眠により少し寝不足気味ではあるが、今までより体が軽い。


 会社に行く支度をしながら、鏡の自分を見る。

少し顔色がいいかもと思った。


 会社に着き、デスクに座る。

モニターを起動し、メールをチェック。

今日のタスクを整理する。


 チームメンバーの挨拶が飛び交う中、紙風先輩のデスクが目に入る。


 ボサボサの髪、陰気な表情。

視線が私に向く。心の中で、警戒する。


 新居に現れた彼の姿が、フラッシュバックする。


 どうやって住所を知った?

会社のデータベース?

それとも、また尾行?


 不安が胸を締め付ける。

それからミーティングで、彼の隣に座らざるを得ない。


 声が低く、「梨央奈ちゃん、資料見ておいて」 息が近く、不快だった。


 それからも何かと視線が絡みつく。

仕事に集中しようとするが、集中力が散漫になる。


 なんとか1日が終わり、早く退勤しようとする。


 エレベーターを待つ間、後ろに気配を感じる。振り返ると、彼がいた。


 目が合う。


 心臓が鼓動を早める。


 エレベーターに乗り、階下へ。

早歩きで会社を後にしようとする。

後ろを振り返ると、彼もエレベーターから降り、ついてくる。

足音が同期する。


 誰か助けて、と思う。

会社を出た瞬間、声がかけられる。


「梨央奈!……迎えに来たよ」


 そこにいたのは秀太くんだった。

私は思わず、彼に抱きついた。


 いきなりのことに驚く彼だったが、すぐに事情を察してか、彼も私を抱きしめてくれた。


「ごめんなさい……ッ」


 色々な意味での謝罪をすると、「大丈夫。とりあえず……俺についてきて」と、彼に手を引かれてそのまま家に帰ることができたのだった。


 私は……多分この時……。

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