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第五十二話:調整という名の安心


 朝。


 アラームは

 鳴った。


 今度は、

 確かに。


 澪は

 鳴っている最中に

 目を開けた。


 ――よかった。


 止める。


 指先の動きが

 ほんの少し

 遅れる。


 だが、

 止まった。


 止まったから、

 問題は無い。


 起き上がると、

 身体が

 少し重い。


 睡眠時間は

 足りている。


 数値上は。


 数値が

 正しいなら、

 感覚は

 調整すべきものだ。


 キッチン。


 コーヒーを

 淹れる。


 湯量を

 少しだけ

 減らす。


 香りが

 強くなる。


 強い方が、

 目が覚める。


 ――調整。


「おはよう」


 恒一の声。


 今度は

 すぐに

 返す。


「おはよう」


 早すぎたか、

 と思う。


 でも、

 恒一は

 気にしない。


 気にしない、

 という反応は

 優しい。


 優しさは

 調整を

 正当化する。


「今日は

 早いね」


「うん、

 ちょっと

 目が覚めちゃって」


 理由として

 十分。


 それ以上

 説明しなくていい。


 朝食。


 パンは

 いつも通り。


 焼き色も

 問題ない。


 昨日より

 少しだけ

 薄い。


 昨日より、

 という比較を

 する自分に

 一瞬、

 引っかかる。


 昨日を

 基準にする必要は

 無い。


 基準は

 常に

 「今」。


 そう思って、

 打ち消す。


 仕事。


 端末を

 開く。


 処理対象の

 感情ログ。


 今日の波形は

 細かい。


 揺れが

 多い。


 でも、

 許容範囲。


 パラメータを

 微調整。


 滑らかになる。


 ――ほら。


 出来る。


 出来ることは

 正しい。


 正しいことは

 続けていい。


 昼。


 通知音。


 澪は

 すぐに

 反応できない。


 一拍。


 二拍。


 開く。


 業務連絡。


 内容は

 普通。


 普通だから、

 遅れは

 問題にならない。


 自分の

 反応速度を

 メモしようとして、

 やめる。


 記録するほどの

 ことじゃない。


 午後。


 少し

 頭が

 ぼんやりする。


 処理速度が

 落ちる。


 落ちた分、

 集中を

 強める。


 集中は

 意志で

 補える。


 補える間は、

 大丈夫だ。


 夕方。


 恒一から

 メッセージ。


「今日は

 少し遅くなる」


「了解」


 短く

 返す。


 短い方が、

 相手に

 負担をかけない。


 気遣い。


 そのはず。


 夜。


 一人で

 夕食。


 簡単なもの。


 噛む回数が

 減る。


 でも、

 飲み込める。


 飲み込めるなら

 問題は無い。


 恒一が

 帰宅。


「ごめん、

 遅くなって」


「ううん、

 大丈夫」


 本当に

 大丈夫かどうかを

 確かめる前に

 言葉が出る。


 その速さに、

 少し

 安心する。


 ――ちゃんと

 反応できている。


 風呂。


 湯温を

 一度

 上げて、

 下げる。


 感覚が

 鈍い。


 だから、

 合わせる。


 合わせることは

 悪くない。


 眠る前。


 布団の中。


 恒一の

 寝息。


 昨日より

 数える回数が

 増えた。


 増えた理由は

 考えない。


 数えられるなら

 いい。


 今日も、

 大きなことは

 何も起きていない。


 ただ、

 調整が

 少し増えただけ。


 調整は

 日常の一部。


 だから、

 記録されない。


 〇・二秒。


 それは

 慣れとして

 吸収される。


 問題は、

 まだ

 起きていない。


 そう判断することで、

 今日も

 無事に

 終わる。


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