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日本內戰錄 第七十一號記錄 ー 崩れゆく線 ー
前線は、明らかに押されていた。無線の報告も、戻ってくる兵の顔も、どこを見ても疲れ切っている。今日の任務は薄い森を抜けた先の迎撃線の維持。敵の数は読めなかったが、嫌な静けさがあった。
最初の銃声が上がってからは早かった。敵兵が散開して迫り、こちらは七名を撃ち倒したが、その代償は重かった。俺の横で一緒に伏せていた伍長が撃ち抜かれ、そのまま動かなくなった。叫ぶ暇すらなかった。
気づけば周囲は負傷者だらけ。七名が撃たれ、四名はその場で死亡。俺も脇腹に一発受け、息を吸うたび焼けるように痛んだ。それでも撃ち返して下がり、分隊はなんとか後退線まで撤収した。
医療班に渡されるころには、脚の感覚が半分無くなっていた。坂井の部隊が満杯らしく、俺はそのまま本部病院行きのトラックに積まれた。
窓の外の空はやけに低く見えた。
押されている――そう理解するには十分だった。
―― 大淵 貞男




