日本內戰錄 第七十號記錄 ー 山間拠点制圧任務 ー
九月二十九日。山間部にある敵拠点の破壊と、帰還路に展開しているはずの戦車隊の偵察を命じられた。編成は五十名。夜明け前に渓谷沿いを進み、斥候の報告で敵兵力は三十ほどと確認。
開戦は突然だった。茂みから飛び出した敵兵を二名、続けて五名を撃ち倒したところで、右腕に一発受けた。骨まではいっていないが、力が入らず銃が滑りそうになる。それでも退く余裕はなく、遮蔽物を回り込みながらさらに四名を射殺。制圧戦は二十分ほどで決着し、拠点は完全に沈黙した。
拠点調査後、工兵が爆薬を設置。離れる前に遠方で戦車の排気音を確認したが、追撃はなし。任務達成と判断し、指定地点まで後退。そこへ味方のヘリが到着し、負傷者優先で収容された。
ヘリの床に固定された腕が脈打つたび、昨日聞いた訃報が頭をよぎる。痛みも疲れも、今日は妙に遠い。
野戦病院に運ばれて数時間後、腕の処置が終わったころだった。幕の向こうでざわめきが走り、隊長代理が俺の名を呼んだ。戦車隊の偵察に向かった残存部隊の結果が届いたという。
「……半数死亡。残りは敵に拘束されたらしい」
言葉が耳に入った瞬間、胸が冷えた。戦車相手の偵察など、最初から生還を期待されていない任務だ。わかっていたつもりだったが、数字として聞かされると重さが違う。敵拠点を潰した達成感など一瞬で消えた。
名前を読み上げる声が淡々と続く。知っている顔ばかりだった。昨日まで同じ飯を食っていた若い兵も混ざっている。助かったはずの者たちが、今は縄で縛られ、どこかで震えているのかと思うと胃が捻れるようだった。
「河合、お前はもう休め。動ける状態じゃない」
そう言われても、落ち着けるわけがなかった。布団に横になっても、耳の奥で銃声が鳴り続けた。ただの偵察が、ただの任務が、こんなにも簡単に人を消す。
俺たちの戦場は、いつも突然終わり、突然奪われる。
―― 河合 慎




