68/77
日本內戰錄 第六十八號記錄 ー 途絶エタ補給路 ー
九月二十七日。
補給部隊が襲撃を受けたとの報せが走った。
最初は「数名負傷」とだけ聞かされていたが、
搬送されてきた担架の数で、
それが嘘だとすぐ分かった。
黒田 翔。
名前の札は、負傷者の列ではなく、
覆い布の上に置かれていた。
脈は無く、体温ももう戻らない。
銃弾は胸を貫き、即死だったらしい。
治療の余地はなかった。
「河合に……明後日、伝えてくれ……」
仲間にはそう言っていたと聞く。
何を伝えたかったのかは、
もう誰にも分からない。
死亡記録を書き終えたが、
手が震えて字が乱れた。
本日の処置は以上。
だが、この死は終わらない。
―― 坂井 苑
九月二十七日。
今日は巡視もなく、ただ静かだった。
昨日黒田と少し話した時、
「あさって話すことがある」とだけ言われた。
珍しく落ち着かない顔をしていた。
何の話だろうか、と考えていたが、
今朝から黒田が戻らない。
補給部隊が出たまま連絡もないらしい。
胸の奥がざわつく。
嫌な予感は、戦場ではよく当たる。
明日には帰ってくるだろうか。
それとも――。
今日は記録を終える。
よく眠れそうにない。
―― 河合 慎




