日本內戰錄 第六十三號記錄 ー 消耗ノ報 ー
九月二十四日。
本日の補給行程は通常通りのはずだったが、
朝から中隊本部の空気が重かった。
理由は誰も言わなかったが、
無線の量がいつもの倍になっていた。
昼前、別部隊から負傷者が五名運ばれてきた。
服は泥で硬く、血の匂いが強い。
そのうち二名は担架のまま動かせず、
即座に衛生兵が処置を始めた。
状況を訊いても、
皆「分からない」としか答えなかった。
戦闘の規模を把握できていない時は、
得てして大きな損害が出ている。
午後、補給物資の整理をしていると、
中隊長が俺の名前を呼んだ。
その表情で、何を聞かされるか察した。
「河合が……重傷だ。
本部病院に送られた」
言葉はそれだけだったが、
十分だった。
河合は臨時隊長として別部隊に出ていた。
任務内容は知らされていない。
だが、帰ってきた人数と担架の数を見れば、
どんな戦闘だったか想像はつく。
補給所の隅で作業を続けながら、
どうにも落ち着かなかった。
箱を持つ手に力が入りすぎ、
釘が掌に刺さりかけた。
夕方、別の兵が小声で言った。
「敵六十以上を倒したらしい。
こっちは……半分やられたって」
数字としては勝利だ。
紙の上では、そういう扱いになる。
だが、補給名簿の死亡欄が増える音が頭に鳴っていた。
河合は生きている。
それが唯一の救いだ。
だが、生きて帰ることと、
“戻って来られる”ことは別だと知っている。
夜、寝袋に入ったが、
眠気はまったく来なかった。
風で揺れる布の音が、
銃声に少し似ていた。
―― 黒田 翔




