日本內戰錄 第六十二號記錄 ー 補給路遮断ノ代償 ー
九月二十三日。
本日付で、俺は一時的に別部隊へ移籍となり、
そのまま臨時隊長を任された。
理由は簡単だ。
「人が足りないから」
それだけだった。
新たに編成されたのは百名。
経験の浅い者が半分以上だった。
今回の任務は、
帝国側補給路の遮断。
成功すれば敵前線は一気に動きが鈍る。
失敗すれば、我々が消えるだけだ。
出発してすぐ、嫌な予感がした。
森の影が揺れていた。
風ではない。
獣でもない。
気配が多すぎた。
接敵は突然だった。
銃声が合図のように一斉に響き、
前列の兵が二人、何も言わず倒れた。
そこから先は地獄だった。
敵は補給部隊ではなく、護衛の小隊だったらしい。
想定より多かった。
斜面上から撃たれ、
横から装甲車の重い音が迫った。
命令を出す声が自分のものか
誰のものか分からなくなるほどの騒音だったが、
撃ち返すほか方法はなかった。
こちらの戦車が進路を切り開き、
突撃班が脇から入り、
狙撃手が装甲車の外付け機銃を止めた。
そこから一気に押し込んだ。
敵は散り、倒れ、
それでも撃ってきた。
部隊全体で
六十七名を射殺し、二十六名を捕虜にした。
任務は成功した。
だがその数字の後ろに隠れているもののほうが重い。
こちらの損害は壊滅的だ。
百名のうち、
五十一名が死亡。
二十四名が負傷。
十一名は重傷。
俺は腹の右側を撃たれた。
衝撃で視界が一度白くなり、
気づいた時には土の上に転がっていた。
立ち上がれなかった。
衛生兵に担架へ乗せられ、
揺れを感じながら野戦病院へ運ばれた。
そこで処置を受けたが、
止血だけで限界だと言われ、
すぐに本部病院へ後送された。
任務は成功。
数字だけ見れば、そうなる。
だが、
空っぽの中隊編制表を思い出すと、
何を得て、何を失ったのか
分からなくなる。
今日はここまでだ。
また生き残っただけだ。
―― 河合 慎




