日本內戰錄 第五十七號記錄 ― 大淵 貞男
九月十八日。
前線北側の監視任務に就いた。
昨夜から風が強く、木の枝が落ちて歩きづらい。
索敵には向かない日だ。
移動中、南の方角でジェット音が響いた。
雲の切れ間から F-86F が三機、並んで飛んでいくのが見えた。
高度は低く、腹の増槽がはっきり見えるほどだ。
そのまま東の林へ突入するように進み、
直後に爆炎が木々越しに立ち上がった。
地面が波打つように震え、土が跳ねた。
本部無線で、数時間前に
「敵小規模戦車隊を発見」と報告があった。
たぶん、あれがその攻撃だ。
我々の任務は追撃ではなく視察。
予定地点に着き、周囲を慎重に見た。
履帯の跡は深く、土がえぐれていた。
ただ、兵の姿は一人も無い。
破片も血の跡も見えない。
爆撃の熱で草が寝ている場所があるだけだ。
敵が全滅したのか、
あるいは爆撃直前に退いたのか、判断はつかない。
ここ数日の敵の動きは読みづらく、
我々の側でも情報が揃っていない。
指揮所からは「追跡せず帰還」の指示。
それに従って撤収した。
空の爆撃だけで戦闘が片付いているのを見ると、
どうしても落ち着かない。
姿を見ていない相手というのは、
倒したのか逃げられたのかすら分からない。
帰る途中、隊の一人が
「腹の奥がまだ揺れてる」と苦笑していた。
確かに爆風は遠くても体に響いた。
俺自身、胸の震えがまだ残っている。
今日はそれだけだ。
敵影を一度も見ない日というのも、
別の意味で神経を使う。
―― 大淵 貞男




