表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
日本內戰錄 ― 彼等ハ 如何ニ戰ヒ、如何ニ散リシカ ―  作者: イグアナ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

53/77

日本內戰錄 第五十三號記錄 ― 崩れる陣形の中で ―

九月十一日。

今日は“戦闘”というより、

“崩壊の記録”に近い。


午前の巡視中、

西側の倉庫街で突然の集中射撃を受けた。

先頭を歩いていた五名は、

反応する間もなく倒れた。

銃声より先に、

肉が裂ける音が聞こえたような気がした。


部隊の三分の一が、

最初の十秒で消えた。


「伏せろ!」と叫ぶ声が、

自分のものなのか他人のものなのか分からなかった。


敵は建物の三方向から撃ってきていた。

数は三十前後。

こちらは混乱し、

弾を撃ち返すまでに数秒遅れた。


その数秒が、

死人を増やした。


反撃が整ったのは一分後。

そこからは流れ作業のような戦闘だった。


窓に影が見えたら撃ち、

瓦礫の向こうに動きがあれば撃った。

敵が何人倒れたか、

戦闘中には数える余裕はなかった。


終わった後、

生き残った兵が確認した数は二十九。

最後の一人は東の路地へ逃げたが、

追う価値はなかった。


銃撃が止んだ直後、

足に力が入らなくなった。

右脛の横に深くえぐれた傷があり、

血でズボンが貼りついていた。


撃たれた瞬間には気づかなかった。

戦闘中は痛みを感じる余裕がなかったのだろう。


「副長、立てますか!」


誰かが肩を支えた。


立てなかった。


地面の冷たさだけがはっきり分かった。


担架で後方へ運ばれたが、

途中で二度意識が途切れた。

坂井の医療所に着いた時には、

白衣の影がぼやけて見えた。


坂井は状況だけ短く聞き、

すぐに傷を確認した。


「骨は無事。……ただし深い。

 縫っても、歩けるようになるまでは時間が要る」


その声を聞いたとき、

戦場から一歩だけ外れた気がした。


外に置いてきた“二十九の死体”が、

急に重くのしかかる。


記録は以上。


―― 河合 慎


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ