日本內戰錄 第四十八號記錄 ― 復帰後の空白 ―
八月二十八日。
復帰して最初の任務だった。
前線の西側斜面で敵の小規模部隊を確認。
こちらは十八名。
装備は十分とは言えないが、歩ける者から順に前線へ出しているため、
全体の士気は高かった。
接敵は午前十時頃。
森の縁に散開して進むと、
敵がこちらに気づき、散発的に撃ってきた。
交戦は二十分ほど続いた。
乱戦というほどではないが、
敵は掩体と木陰を使って粘ってきた。
結果、敵二十三名を射殺。
残りは北側へ逃走していったが、
深追いすればこちらが逆に孤立する。
無線で「追うな」の命令。
妥当な判断だ。
撤収に移ったのは正午前。
負傷者三名、うち一名は歩行困難。
担架を組んで坂を下り始めた。
その時だった。
乾いた一発が、
谷側からこちらの列に向かって飛んだ。
前を歩いていた伍長が胸を押さえて倒れた。
血が地面に薄く散った。
「伏せろ!」
全員が土に沈み、
射線の方向を探った。
敵狙撃兵は一名。
距離は百五十ほど。
位置は最初、木の影に隠れて分からなかったが、
二発目が僅かに軌跡を見せた。
射線を計算し、
右側の岩陰へ回って角度を変えた。
撃ったのは隣の兵だ。
狙撃というより、
慎重に置きにいった一発だった。
敵兵は木の根元に倒れ、動かなかった。
狙撃一名に対して死者一名。
数字で言えば損だ。
だが、この戦場では珍しいことではない。
伍長の顔は穏やかで、
声を出す暇もなかったらしい。
若い兵が泣きそうになっていたが、
葬送は後方に任せるしかなかった。
帰還時、隊は静かだった。
人が一人欠けるだけで、
歩く音の密度まで変わる。
記録は以上。
―― 大淵 貞男




