表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
日本內戰錄 ― 彼等ハ 如何ニ戰ヒ、如何ニ散リシカ ―  作者: イグアナ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/77

日本內戰錄 第四十四號記錄 ― 復帰までの空白 ―

八月二十二日。

前線復帰まで、あと一週間ほどと言われた。


胸の痛みはまだ深く、

腕の可動域も十分ではない。

担当医は「前線に戻すには早い」と言ったが、

上からの圧力もあるのか、

“あと一週間で判断する”という曖昧な言葉に変わった。


病院の廊下は静かだ。

だが、その静けさは前線の静けさとは別物だ。

ここでは痛みと呻き声だけがひっそり流れている。


今日も三度ほど、

担架が急いで運ばれていった。

誰が運ばれたのかは聞かない。

聞いても意味がない。


光太は別の野戦病院にいる。

彼の負傷報告が届いたのは昨日だ。

命に別状はないとだけ記されていた。


胸の奥がじんとした。

自分より若い部下が、

前線で血を流し続けているという現実が重い。


看護兵が薬を持ってきたとき、

廊下の奥から怒号のような声がした。


「輸血パックが足りない!

 補給が来ていないんだ、急げ!」


補給部隊が襲撃され捕虜になった件は、

病院側にも確実に影響を与えているらしい。


もし補給が滞り、

傷病兵の治療が滞るようなことになれば、

前線復帰どころか

部隊全体が崩れる可能性だってある。


窓の外では、

訓練機か、あるいは前線へ飛ぶ攻撃機が一機、

低く通過していった。


日比谷という新兵の名を、

航空隊の兵が話しているのを聞いた。

“新人が弾を当てながら帰ってきた”と。


戦況は悪い。

悪くなる一方だ。


前線に戻るのが怖いわけではない。

ただ――

戻ったとき“誰がまだ残っているのか”

それだけが気に掛かる。


今日の記録はここまで。


―― 大淵 貞男

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ