日本內戰錄 第四十二號記錄 ― 空から落ちていくもの ―
八月二十八日。
初めての実戦だった。
離陸後すぐに、
地表の色が不自然に見えた。
森の切れ目に規則的な線。
よく見ると、
革命軍の戦車部隊が縦列で移動していた。
「攻撃許可を求む!」
声が震えていた。
無線の向こうで中隊長が即答した。
「許可する。
日比谷、行け」
エンジンの振動が操縦桿に伝わり、
爆撃態勢に入ったとき、
妙に世界が静かになった。
投下。
機体が軽くなる感覚と同時に、
下から閃光が上がった。
爆風で土煙が舞い、
一両が横転したのが見えた。
成功だと思った瞬間、
――機体右側に衝撃。
警告灯が赤く点滅し、
右翼の動きが重くなった。
高射砲か、対空ライフルかは分からない。
ただ、“撃たれた”という事実だけが体を冷やした。
「日比谷、損傷しているぞ! 帰投しろ!」
返事をしようと口を開いたが、
声が震えて出なかった。
帰投中、
後方で味方機二機が急降下に入った。
援護のつもりだったのだろう。
次の瞬間、
一機が黒い煙を引きながら回転し落下した。
もう一機も直後に炎を引いた。
爆発の光が、
雲の下で一瞬だけ赤くなった。
無線が途切れた。
名前を呼ぶ声も、
応答も、
何もない。
基地が見えたころ、
手が震えて操縦桿を握り直すのに苦労した。
着陸脚を出すとき、
胸が締め付けられた。
地上に降りても、
耳の奥で爆破音が鳴り続けている気がする。
初任務の結果は、
「敵戦車数両破壊。味方二機損失。日比谷一名帰還。」
数字になった瞬間、
何もかもが軽く見えた。
だが現実は、
数字よりずっと重い。
今日は記録をここまでにする。
明日、また飛べと言われたら、
俺はどうするんだろう。
―― 日比谷 守




