日本內戰錄 第四十一號記錄 ― 市街地の静けさは罠だった ―
復帰初日の任務は、市街地の巡視だった。
本来は落ち着いた地区らしいが、
最近は帝国側の浸透が増えているという。
編成は十二名。
俺は先頭と後方を交互に担当した。
胸の痛みはまだ残っているが、
動けないほどではない。
市街地は静かだった。
だがその静けさが、逆に落ち着かなかった。
最初の銃声は右の建物の屋上からだった。
乾いた破裂音が一つ、
中隊の兵が肩を押さえて崩れた。
すぐに射線を切って遮蔽物に伏せたが、
二発目、三発目が連続してきた。
帝国側の散発的狙撃ではなく、
“待ち伏せ”だった。
俺は建物の影に走り、
射手の位置を確認して撃ち返した。
倒れたのを見て、
一度だけ深く息を吐いた。
だが終わりではなかった。
路地裏から三名、
瓦礫の影から二名、
別方向の屋根からさらに三名。
市街区画全体に散開していた。
交戦時間は二十五分ほどだったと思う。
撃って、移動して、
角を曲がった瞬間に撃ち返す。
目の前で味方が倒れ、
別の兵が腕を押さえて座り込んだ。
いつの間にか、
俺の弾倉は三本目に変わっていた。
最終的に、
敵の排除数は十六名。
確認が取れない二名は“未確実”。
だが、交戦の混乱と地形から見て、
おそらく倒れている。
味方の負傷者は九名。
うち二名は歩行不能。
即時撤退が指示された。
撤退時、
通りのガラスが割れたまま風に揺れ、
自分たちが通る音だけが街に響いていた。
復帰初日でこれか、と思った。
胸の痛みとは別に、
胃の奥が重く沈んだ。
俺が離れていた数週間で、
前線は完全に変わってしまった。
今日の記録はここまで。
―― 河合 慎




