日本內戰錄 第四十號記錄 ― 処置台が足りない日 ―
八月二十七日。
今日の負傷者は、
この三週間で最も多かった。
午前中だけで七名。
うち二名が重傷。
午後にはさらに四名追加された。
前線が押されているのだろう。
ここまで短時間に集中して運ばれてくるのは、
明らかに“異常”だ。
処置台は三つしかない。
当然、足りない。
床に毛布を敷き、
その場で止血する者もいた。
一人目、肩部の貫通。
破片が筋肉に入り込んでおり、
摘出に二十分。
二人目、大腿部裂創。
前線での応急処置が不十分で、
出血量が多い。
縫合よりも輸液を優先した。
三人目、顔面に浅い破片傷。
命に別状はないが、
震えが止まらず会話にならなかった。
四人目、胸部下側に深い刺入。
これは危なかった。
肺をかすめていたが、
幸運なことに貫通していない。
処置中に二度気を失った。
五人目は歩いて来たが、
腹部の皮下出血が広がっていた。
殴打か、爆風かは不明。
痛みを訴えず我慢していたため、
逆に危険だった。
中隊に復帰した河合が
負傷者を医療所まで運んでくれたらしい。
様子を見に来たが、
彼の顔色も良くなかった。
「前より、ひどいな」
その一言だけ残して去った。
前線に戻る覚悟はあるようだが、
“前の戦線”とはもう別物なのだろう。
夕方、
包帯と麻酔薬の在庫が棚から消えていた。
誰かが勝手に使ったわけではない。
単純に、数が足りないだけだ。
補給部隊の壊滅の影響が、
ここにも出始めている。
今夜、まだ追加が来るかもしれない。
明日の人数は読めない。
記録は以上。
―― 坂井 苑




