日本內戰錄 第四號記錄 ― 七月四日・山間陣地前線 ―
七月四日。
夜明け前から砲声が続いた。
こちらの射程外なのに、山に反響して近く聞こえる。
初めての前線勤務で、耳が慣れない。
配置されたのは山間の簡易陣地。
視界が悪く、敵影は掴みにくい。
上官は「革命派が近くまで来ている」とだけ言った。
本当かどうかは分からない。
ただ、湿った土と焦げた匂いが残っているから、
何かがあったのは間違いない。
隣の分隊が午前に一名負傷した。
銃声は聞こえなかった。
斜面からの跳弾だと聞いた。
運が悪ければ俺だったかもしれない。
偵察班が戻ってきたが、表情は硬いままだった。
「森の奥に動きがあった」
そう言ったが、詳細は教えてくれなかった。
情報が少ないときほど、想像が敵になる。
小休止のたびに、弾倉を確認してしまう。
緊張している証拠だと自分で分かる。
上官に見られたら笑われるだろうが、
笑われてもいい。生き残れるなら。
夕刻、銃撃が短く続いた。
こちらの部隊ではなく、
少し離れた谷沿いの中隊らしい。
その後、誰も状況を話してくれなかった。
前線では沈黙のほうが多い。
夜になり、焚き火を小さくした。
銃を膝に置いて、ただ息を整えた。
怖くないと言えば嘘になる。
けれど、逃げたいとまでは思わない。
今はまだ、ここで踏ん張れる。
―― 中原 光太




