日本內戰錄 第三十七號記錄 ― 捕虜という知らせ ―
八月二十四日。
昼食の後、
診察の時間でもないのに将校用の腕章をつけた兵が病室に来た。
無駄な言葉が一切ない歩き方だった。
「第二補給隊の件で伝達があります」
黒田が所属していた部隊だ。
その瞬間、いやな汗が背中に滲んだ。
兵は書類を一枚取り出して、
机の上に静かに置いた。
「第二補給隊は二日前、補給路で待ち伏せを受け壊滅。
確認できた生存者は、敵側へ拘束された四名のみ。
その中に――黒田翔が含まれています」
言葉を理解するまでに、
数秒かかった。
“拘束”
つまり、捕虜。
死んだわけではない。
だが、生きて戻れる保証もない。
兵は続けた。
「補給隊の護衛は即死が多く、
現場の状況から見て、交戦時間は非常に短かったと思われます。
捕虜の所在は現時点で不明。
以上が本部からの伝達です」
それを聞いて、喉が、砂を詰められたみたいに動かなかった。
黒田は臆病な男ではないが、
撃たれたあの日から、
“死ぬ可能性”を本気で理解していたはずだ。
それを笑って誤魔化すようなやつでもなかった。
捕虜。
死んだよりはいい。
そう言い聞かせようとした。
だが胸の底は重く沈んだままだ。
兵は敬礼し、
ドアを閉めて去った。
静かな病室の中で、
その「閉まる音」だけが妙に耳に残った。
黒田が生きているのか、
どんな場所にいるのか、
次の知らせが来るのか――
何ひとつ分からない。
今日はこれ以上書けない。
―― 河合 慎




