日本內戰錄 第三十六號記錄 ― 白い天井と鈍い痛み ―
八月二十三日。
目を開けたら、
白い天井が揺れて見えた。
最初は何が起きたのか分からなかった。
胸のあたりが焼けるように痛む。
右腕も包帯で固められ、
少し動かしただけで嫌な汗が出た。
看護兵が言うには、
昨日の中規模戦闘で負傷し、
輸送車で本部の病院へ運ばれたらしい。
光太は別の野戦病院だと聞いた。
意識を失う前の記憶は断片的だ。
味方が崩れかけていたこと。
煙で前も見えず、
敵の影が近づくのがやっと分かる程度。
光太が七名倒したのは確かだが、
それでも押し返すには足りなかった。
あの場で、
自分がどれほど撃ち返せたのかも曖昧だ。
病院は静かだ。
だが静かすぎて落ち着かない。
廊下を通る担架の音が重く響く。
呻き声が遠くで一度だけ上がり、
すぐに止んだ。
この数時間で何人が戻り、
何人が戻らなかったのか、
誰も口にはしない。
光太は生きているだろうか。
あいつは撃たれても倒れないような顔をしているが、
“絶対”なんて戦場にはない。
医師が来て、
もうしばらくは安静と言われた。
前線復帰までどれほどかかるのかは教えてくれない。
教えられないのだろう。
男が戦えない時間が長いほど、
中隊は崩れていく。
頭では分かっていても、
体は動かない。
今日は記録できるのはここまでだ。
痛み止めが切れてきた。
―― 大淵 貞男




