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日本內戰錄 ― 彼等ハ 如何ニ戰ヒ、如何ニ散リシカ ―  作者: イグアナ


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日本內戰錄 第三十五號記錄 ― 静かな穴のあいた中隊 ―

八月二十二日。


昼過ぎ、

第二中隊から負傷者が四名搬送された。

河合が所属していた中隊だが、

彼は今ここにはいない。


血に濡れた担架が二つ、

泥にまみれた制服が二つ。

いずれも前線の土の匂いが強い。


まず一人目。

右上腕部貫通。

出血量は多いが、骨は無事。

止血と洗浄後に縫合。


二人目は胸部に浅い裂創。

破片が跳ねたものと思われる。

呼吸音に異常はなく、処置後に安静指示。


三人目は左足首の裂創。

破片が骨のすぐ近くに入り込んでいた。

摘出に時間を要した。


四人目だけは重かった。

右脇腹に深い貫通。

弾は背側に抜けているが、

周囲の筋肉が広範囲で損傷していた。

輸血が必要かと思ったが、

ぎりぎり踏みとどまった。


処置を終えたころ、

第二中隊の兵が外で待っていた。

彼は泥と血で顔が汚れていた。


「河合は…あいつは今どうしてるんだ?」


そう聞かれた。

怪我で離脱していること、

命に別状はないことだけ伝えた。


彼はほっと息をつき、

それから小さく呟いた。


「……あいつがいないと、

 前線がやけに静かなんだよ」


意味は分からなかったが、

その表情は不安に沈んでいた。


中隊の“穴”というものは、

こういう形で表れるのかもしれない。


今日の診療は以上。


―― 坂井 苑


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