33/77
日本內戰錄 第三十三號記錄 ― 病室の窓の外 ―
八月十八日。
病室の窓から見える森は、
前線とは別世界のように静かだ。
ここに吹く風は血の匂いもしないし、
銃声も届かない。
胸の包帯は厚く、
少し動くだけで痛む。
医師は一、二週間は安静と言ったが、
戦場の二週間は永遠に近い。
その間に何がどう変わるのか、
考えるだけで落ち着かない。
昼前、黒田から手紙が届いた。
内容は相変わらず妙に雑で、妙に元気で、
不意に肩の力が抜けた。
補給物資にAKMが紛れ込んでいた話には
さすがに声を出して笑いそうになった。
だが、笑えるのはそこまでだ。
廊下では担架の音が途切れず聞こえる。
誰かが前線から運ばれてきて、
誰かが処置を受け、
誰かがそのまま二度と戻らない。
中隊の状況は分からない。
俺が撃たれた後、
前線がどうなったかも聞かされていない。
知らされていないのではなく、
“まだ分からない”のだろう。
静かな病室にいると、
逆に胸がざわつく。
戦場よりも落ち着かないのはおかしい。
今日はこれで終わりにする。
余計なことばかり考えてしまう。
―― 河合 慎




