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日本內戰錄 第三十二號記錄 ― 異物混入 ―
八月十七日。
前線第二補給所での積み込み中、妙な箱がひとつ紛れていた。
外装は日本軍式の木箱だが、
封の仕方が明らかに“急ごしらえ”で、釘の新旧が混ざっている。
嫌な予感がして箱を開けると、油紙に包まれた二丁の自動小銃が出てきた。
ストックは赤褐色の合板。
黒く粗い防錆塗装。
見た瞬間に分かった。
AKM。
革命派に正式に入るはずのない装備だ。
弾倉が三つ、
中には7.62×39mm弾がぎっしり。
薬莢の刻印は“75”ではなく、**“78”**と読めた。
つまり今年製造の弾。
送り状をめくると、
日本語の紙の下にかすれたキリル文字のラベルが残っていた。
輸送経路を偽装している。
整備兵が周囲を見回して、低く呟いた。
「……ソ連の連中、表の窓口じゃなく、
“裏ルート”を使い始めたってことか。
誰を信用していないのか、はっきりしてきたな。」
補給記録には当然書けない。
書けば誰かが消える。
この銃が“恩恵”なのか“罠”なのかは分からない。
だが戦場では、撃てる武器があれば拾うしかない。
そうしなければ仲間が死ぬ。
今日の記録は以上。
―― 黒田 翔




